おかでん結婚式前後のできごと【倉敷・吉備路】

エッグベネディクトをナイフで割ると、見事なまでに半熟な黄身が出てきた。

思わず「ウェーイ」と声が出てしまうが、場違いで下品なので慌てて声を引っ込める。

周りを見ろ。みんな身なりがいいし、朝ごはんにウッキウキな人なんて全然いないぞ。コーヒーカップを前に、さっそく真面目な顔でビジネスの話をしてるっぽい欧米人もゴロゴロいる。

こちらは「タワーズオムレツ」。お店の名前(タワーズ)を冠した料理なので、自信作なのだろう。

実際、オムレツに見えないくらい美しいオムレツがデンと鎮座して恐れ入る。添え物のベーコンは完璧なまでにクリスピー。

ポーチドエッグもすごいビジュアル。

割る時に「ウェーイ」という下品な言葉をかけるのは厳に謹んだが、そのかわりナイフを差し入れる際に「えいっ」と声を出してしまった。やっぱり声が止まらない。

こちらはフレンチトースト。完璧な焼き加減で、フワフワかつカリカリかつしっとり。べったりしたフレンチトーストとは大違い。

やけにカラフルな食卓になった。

あれもこれも取りたい、となると、つい写真右下のように青梗菜といったものまで取ってしまう。料理の優先順位付けなんて到底できない品数なので、目についたものを取っちゃった。

申し訳ない。前言撤回だ。

前の文章で、和食について「3回くらいこのお店に通わないと、ご飯にたどり着けない気がする」と書いていた。でもこの写真を見てみると、きっちりご飯も味噌汁も、なんならサバも鮭も取っていた。あれこれ取りすぎて何一つ記憶に残っちゃいない。

だいたい、パン・オ・ショコラの脇にご飯と味噌汁があるっておかしい。しかもご飯の隣にはナシゴレンがあるし。

大混乱の食卓。

こちらはベーカリー。どれもプリッとして美味しい。

よせばいいのに、普段食べないシリアルなんかも食べる。どれも美味しいけれど全メニューを食べるのは無理だ。だから、それぞれ各ジャンルの料理から選抜して、まんべんなく全ジャンルを食べておきたかった。

滞在時間は1時間ちょっと。結局、どんなに豪華な料理があっても、豪華な空間でも、胃袋のサイズは限りがある。

お会計はサービス料と税金を入れて、2人で11,484円だった。朝食で一人5,000円以上!?と一瞬ひるむが、僕らは普段居酒屋にいってお酒を飲んだりしない。夜の宴会にかかるお金が朝に回った、と思えばそんなに高くはない。金額は大きいけれど、それ以上の満足感を得られたのでとても嬉しい時間となった。

これにて僕ら夫婦における一連の結婚式関連行事は終わった。

入籍してから4日後、自分たちの新しい戸籍ができたことが確認でき、いしは引き続きアフリカ行きの手続きを進めていった。

・・・はずだったが、忍び寄ってきたのが新型コロナウイルスの波。この1ヶ月半後、2月1日に豪華客船ダイヤモンドプリンセス号で新型コロナウイルス罹患者が確認され、3,713人の乗客乗員のうち712名が罹患、少なくとも14名が死亡するという事件に発展した。

横浜の港に船は着岸していたものの、乗客乗員の下船は認められず、「船内で感染がまん延するのをみすみす許すのか」「未知の病気なので船内に隔離するしかない」と世論は二分した。その間にバタバタと感染者が増えていくという痛ましいできごととなった。

そのあと、船内にとどまらず日本国中にコロナは広まっていき、ついには2022年4月7日、政府は「緊急事態宣言」を発して全国民に不要不急の外出自粛を呼びかけ、飲食店に対しては営業自粛を求めるという展開になっていった。

僕ら夫婦は、出会ってから結婚まで早い展開だったけど、そのおかげでコロナ流行前に間一髪で結婚式を挙げることができた。あと数ヶ月遅れていたら、結婚式は無期限延期になっていた。実際、2020年は結婚式ができずに悔しい思いをしたカップルが非常にたくさんいたし、ブライダル業界は大打撃を受けた。

その点では良かったのだけど、残念だったのはアフリカ行きを予定していたいしだ。2020年4月からアフリカ行きの本格準備だったのだけど、とてもアフリカに行ける状態ではなく、かねてからの夢を断念せざるをえなくなった。医療体制が十分とはいえない国に行く予定だったため、当時はワクチンもできていない未知の病気にかかったら命にかかわる問題だった。

長年の夢がかなわなかったのは大変気の毒に思う。でもその断念と引き換えに子どもを授かり、2021年に弊息子タケが生まれるに至った。いしはタケを「かわいいかわいい」と溺愛している。アフリカに行っていればタケは生まれていなかったので、いしがタケを可愛がってくれていてほっとしている。

そんなわけで、この先数年「単身赴任のいし、東京にとどまるおかでん」という遠距離夫婦というスタイルにはならず、夫婦揃って東京に住み続けることになった。ただ、いしはアフリカに行くということで2020年3月末で勤務先を退職する手筈が整っており、そこから子どもが生まれるまでの1年間は契約社員としてコールセンターで働いていた。

そのコールセンターが、新型コロナウイルスの相談窓口なのだから、不思議な縁だ。

(この項おわり)

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コメント

コメント一覧 (5件)

  • ご結婚されたんですね。おめでとうございます。20年近く前、カレーのまんてんとえぞ松の記事を拝見し、その後は牛サシか何かでお店の全メニュー制覇など、楽しく読ませて頂いておりました。久しぶりに閲覧し、コメントをさせて頂く次第です。

  • idekenrrさん>
    お祝いメッセージありがとうございます。久しぶりのこのサイト、外観も中身もすっかり変わってしまって驚かれたと思います。
    「美貌の盛り」をやっていた頃から基本的に何も変わっていないつもりなんですが、昔連呼していた「無茶してナンボ」という言葉は今だと全然使わなくなったな、とふと気づきました。無茶できなくなったんだろうなぁ。
    また20年後、「まだやってたのか」とidekenrrさんから言われるよう、これからも頑張ります。

  • おかでん殿
    結婚式前後の事連載が完結してからコメントさせていただこうと思い、遅くなりました。
    連載もさぞ工夫された事とおもいます。
    今まで通りのアワレみ隊ontheWeb連載の流れで、スペシャルイベントを違和感なく読ませていただきました。
    奥様そしてご子息と末永くお幸せに!
    にしても両家参列の式とは言え準備がこんなにも大変だったとは…。
    自分達は諸事情により2人だけで新婚旅行を兼ねてのラスベガス挙式(ジョン・ボンジョヴィと同じチャペルを妻が熱烈希望)だったので、現地日本人コーディネーターにお願いしたくらいですが。
    話は飛びますが、高校野球選抜大会の日程次第では、大阪から広島へ延泊してますゐ訪問を企んでおります。昼・夜・昼&特ランチ弁当なんてシミュレーションし始めただけで涎が止まりません!

  • 軍曹殿>
    ラスベガス挙式すげー。そんなことをやっていたんですか。しかも2人だけって、逃避行みたいですごいですね。
    そういえばラスベガスって、質屋とチャペルが非常に多かったような気がする。
    結婚もギャンブルといいますが、軍曹殿はそのギャンブルに勝ったようでなによりです。

    ますゐ詣で、ぜひご堪能あれ!僕も最近のますゐについては全然疎いので、最新情報入手のために足繁く通ってみてください!!

  • おかでん殿
    事実上の高飛びってやつです。
    その前は同級生とか野球部同期の友人達がお祝いの会を開いてもらったので、感謝しています!
    (実家出禁も半年後には解除されました。)

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