2019年12月10日(火)
岡山を発つ最終日。結局結婚式の前後で3泊したことになる。
この日は、岡山界隈に住むおかでん家側の親族に結婚のご挨拶をし、午後からは「吉備路(きびじ)」とよばれる岡山県総社市あたりのサイクリングをする予定だ。
吉備路と呼ばれるエリアは、五重塔がそびえる備中国分寺があったり、日本有数の古墳である造山古墳があったり、独特な境内や建物をもつ吉備津神社があったりする。そういう神社仏閣などをオリエンテーリング感覚でサイクリングできるので、今日は楽しんでみようと思う。
親戚にご挨拶に行く際、母親から「手みやげは橘香堂(きっこうどう)の『仲よし』にしておきなさい」と言われた。橘香堂は「むらすずめ」というとても美味しい倉敷銘菓を作っている和菓子屋さんだが、「仲よし」というお菓子は聞いたことがない。でも、具体的な名前を挙げてお勧めされたので、少なくともおかでん家の親戚づきあいに過不足ないレベルの手みやげなのだろう。
お店で買ってみたら、六角形の箱に入っている和三盆の落雁だった。飴玉のような小ささで、紙にくるまれてたくさん箱に入っている。上品な外装と中身で、たしかに手みやげに良い。しかも、結婚の報告で「仲よし」という名前の手みやげを持っていく、というのはいいアイデアだと思った。
道中、阿智神社西参道のたもとにある「えびす饅頭」に立ち寄る。
ここで売っている「えびす饅頭」とは、いわゆる二重焼・大判焼・今川焼のことだ。僕が物心ついたときからやっているので、半世紀は営業している老舗だ。
老舗といっても、お店が開いていたら「おっ、今日はやっているのか!」と驚くような不定期な営業形態だった。途中で経営者が変わったりしながらも、長い間のれんが守られている。
最近じゃ、観光客が行列を作ってここの饅頭を買う。今どきの観光ガイドに載っているのかもしれない。昔はがらんとしていたものだけど。
2019年時点で1個のお値段が75円。猛烈に安い。安くて不安になるレベルだ。この安さなら、生地が分厚かったり、あんこが偏っていたり、一般的な今川焼よりも小ぶりなことに文句を言ってはいけない。人気が出るのも納得だ。
ただし、あくまでもオーソドックスな今川焼なので、並んでまで買う観光客心理は僕にはよくわからない。
なお、その後折からの円安物価高資源高に耐えられなくなったらしく、90円に値上がり、2022年時点では100円になっていた。そりゃそうだ、これまで75円で売っていたほうが異常だったんだ。値上がっても相変わらずの大行列。30分以上待つ日もあるそうだ。
12時。親戚参りの流れで、車で総社駅までやってきた。
倉敷市の北、高梁川に面した場所。JR伯備線と吉備線、そして第三セクターの井原鉄道の駅がある。
この駅前に駐車し、レンタサイクルを借りるつもりだ。
12時ということで、レンタサイクルを始めるにはちょっと時間が遅い。本当はお昼ごはんを挟んで、朝から夕方までたっぷり時間を取れるとよい。そうすれば、行ける範囲がさらに広がる。なにしろこのあたりは平野なので、スイスイと移動できる。
総社駅前にレンタサイクル屋があると聞いていたので探してみたら、なにやら自転車が整然とたくさん停まっているピンクのビルがある。きっとあれに違いない。
でも近づいてみると、これが単なる「路駐」であることがわかった。全部バラバラ、個人の自転車だった。
おそらく周辺の人がここに自転車と停め、総社駅から電車・列車に乗って通勤通学に旅立っていったのだろう。駐輪場を整備しなくても事足りる総社駅前事情にびっくりしたし、まるで自転車屋さんの商品のように整然と自転車が並べられていることにも驚いた。総社の人は几帳面なのかもしれない。
改めてぐるっと総社駅前ロータリーを見渡すと、「あらき」と書かれた看板を発見した。これだ、ここがレンタサイクル屋さんだ。
「吉備路めぐりレンタサイクル」の看板あり。ここにも自転車がずらっと並んでいる。
今日は平日だし、オフシーズンの冬だし、既に時間が遅いし、僕らの他に誰もいなかった。
というか、車でやってきて、レンタサイクルを借りて周辺観光をするというのはあまりいないパターンだろう。多くの観光客は、鉄道でやってきて、そして自転車を借りる。
ここのレンタサイクルが優れているのは、乗り捨てができるということだ。
この先、JR吉備線で岡山駅方面に向かっていった先にある備前一宮駅。その近くにある自転車屋「上土」に時間内に返却すれば1,100円。だいたい距離にして15キロくらい。
「吉備路史跡めぐり」と銘打たれたサイクリング地図を貰った。今いる総社から、乗り捨て先の備前一宮まで、一筆書きでいろいろな史跡を見て回れるようにルートが引っ張ってある。
どうしてもルートの都合上、豊臣秀吉が水攻めをした「備中松山城」や、日本三大稲荷の「最上稲荷」、桃太郎の鬼ヶ島のモデルとなったという説がある「鬼ノ城」などは除外されているが、それでも盛りだくさんの内容になっている。
正直言って、このルート上にあるお寺とか古墳とか、そんなに見たいわけではない。でも、オリエンテーリング感覚で地図を片手に先に進んでいく体験が楽しい。辛気臭いなどと思わず、探検気分で挑めばきっと楽しいと思う。少なくとも僕はそうだ。
自転車を借りて、いざ出発。
実質的な新婚旅行が、「吉備路サイクリング」だぞ。しかも冬の。マニアックだな、我ながら。
僕が子どものころ、自分の両親が新婚旅行で東北に行ったという話を聞いて「えっ、海外旅行じゃないの!?」と驚いたものだ。僕が子供の頃はバブル景気で、新婚旅行で海外というのは当たり前という雰囲気だったからだ。「成田離婚」という言葉も流行った頃だ。
そんな僕が、親から遅れること約半世紀で、東北どころか総社をサイクリングしているというのはまったく想像していなかった。人生ってどうなるかわからないものだな。
そんなわけで、まずは総社市役所を表敬訪問。自転車で素通りするだけだけど。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (5件)
ご結婚されたんですね。おめでとうございます。20年近く前、カレーのまんてんとえぞ松の記事を拝見し、その後は牛サシか何かでお店の全メニュー制覇など、楽しく読ませて頂いておりました。久しぶりに閲覧し、コメントをさせて頂く次第です。
idekenrrさん>
お祝いメッセージありがとうございます。久しぶりのこのサイト、外観も中身もすっかり変わってしまって驚かれたと思います。
「美貌の盛り」をやっていた頃から基本的に何も変わっていないつもりなんですが、昔連呼していた「無茶してナンボ」という言葉は今だと全然使わなくなったな、とふと気づきました。無茶できなくなったんだろうなぁ。
また20年後、「まだやってたのか」とidekenrrさんから言われるよう、これからも頑張ります。
おかでん殿
結婚式前後の事連載が完結してからコメントさせていただこうと思い、遅くなりました。
連載もさぞ工夫された事とおもいます。
今まで通りのアワレみ隊ontheWeb連載の流れで、スペシャルイベントを違和感なく読ませていただきました。
奥様そしてご子息と末永くお幸せに!
にしても両家参列の式とは言え準備がこんなにも大変だったとは…。
自分達は諸事情により2人だけで新婚旅行を兼ねてのラスベガス挙式(ジョン・ボンジョヴィと同じチャペルを妻が熱烈希望)だったので、現地日本人コーディネーターにお願いしたくらいですが。
話は飛びますが、高校野球選抜大会の日程次第では、大阪から広島へ延泊してますゐ訪問を企んでおります。昼・夜・昼&特ランチ弁当なんてシミュレーションし始めただけで涎が止まりません!
軍曹殿>
ラスベガス挙式すげー。そんなことをやっていたんですか。しかも2人だけって、逃避行みたいですごいですね。
そういえばラスベガスって、質屋とチャペルが非常に多かったような気がする。
結婚もギャンブルといいますが、軍曹殿はそのギャンブルに勝ったようでなによりです。
ますゐ詣で、ぜひご堪能あれ!僕も最近のますゐについては全然疎いので、最新情報入手のために足繁く通ってみてください!!
おかでん殿
事実上の高飛びってやつです。
その前は同級生とか野球部同期の友人達がお祝いの会を開いてもらったので、感謝しています!
(実家出禁も半年後には解除されました。)