お昼ごはんを那須のどこかで食べよう、ということでいしに探してもらったところ、「ペニーレイン」なるお店がセレクトされた。ベーカリーカフェなんだという。へえ、那須には何度も訪れたことがあるけれど、知らなかった。
那須はほんとうに奥が深い。那須街道をはじめとする主要幹線道路沿いにお店が立ち並ぶのは当然として、裏道と言えるようなところにひょっこりお店があったりする。
しかも、那須は案外高低差や谷がある土地で、そのせいで道が複雑だ。那須街道のひどい渋滞は那須を知る人なら常識だけど、那須という広い場所にもかかわらず、迂回ルートが限定的だからだ。裏道を縫うように進んでいくには、道が狭かったり曲がりくねっていて骨が折れる。
そんな裏道とも言える場所に、ペニーレインはあった。
それにしても驚いた!
ここ、店の外まで行列ができている。
夏の那須は観光シーズン真っ盛りなので人が多いのは当然だけど、穴場スポット的な場所なのに人が大勢いる。さっきの小太郎茶屋と一緒だ。あそこほどマニアックな立地ではないけれど。
コロナで緊急事態宣言が発令され、人が町から消えていたのがつい最近の話だ。なので、「人が多くて並んでいる」というシチュエーションにはびっくりさせられる。東京でもあまりみかけない光景だからだ。
屋外のテラス席に人がいっぱいいる。
これ、料理を待っているのではなく、入店を待っている人たちだった。
料理のお値段は結構高い。
フードメニューの先頭に出てくる、「グリル 海の幸のマリアージュ」は2,250円。おう、この段階で腰が引ける。ランチタイム限定メニューであるバゲットサンド(1,000円)などがお財布事情を考えると現実的な選択肢だろうか?
なにせこの界隈には別荘地がたくさんある。別荘に住むお金持ちならこういうお金はぽんと払えるのかもしれない。
このお店の繁盛っぷりはすごい。
「お席へのご案内まで60分」、さらにそこから「お料理のご提供時間45分」。つまり、ごはんが食べられるまで1時間45分がかかりますよ、と宣言している。
目安を提示してくれるお店のスタンスはすごくありがたいが、それにしても目を疑う数字だ。これだと到底ここでごはんを食べるわけにはいかない。諦めよう。
かわりに、テイクアウト専門のベーカリーがこのお店にはあるので、そこでパンを買って帰ることにする。朝8時から17時までの営業。
ベーカリーもかなりの行列だ。入場制限を行っていて、店の外で結構待たされる。
そりゃそうだ、ベーカリーって客の回転は遅い。トングをカチカチ鳴らしながら、「さて・・・何を買おうかな」とあれこれ悩んで選んで、お会計をするときには店員さんがパンを一つ一つ数え、包装し、袋詰めし、お会計する。なかなか店内の人が入れ替わらない。
一人客が外に出たら一人中に入る、というスタイルではなく、店内のお客さんの数がある程度少なくなったところで、まとまった数のお客さんを新たに入れる、という運用になっている。
人気1位がブルーベリーブレッド、2位がリンゴスター・・・などと並びながら予習をしておく。
このお店は、ビートルズに触発された店名になっている。なので、メニューにはビートルズの似顔絵が描かれている。いわゆる「ピースマーク」が店名ロゴに入っているのは、ジョン・レノンを意識してのことか。
そんなビートルズ大好きなお店なので、パンのクオリティは二の次・・・?と一瞬油断させておいて、店内に入ってギョッとする。あ、これはすごい、とすぐにわかる。見ただけで「これは美味いに決まってる!」とわかる、そんな迫力がギラギラとしていた。
街のパン屋さんにありがちな「惣菜パン」に傾くことなく、ハードボイルド感あるパンのラインナップでありながら品数は豊富。ワインを傾けながら食べるのに向いているようなパンがとても多い。大人好みとでも言おうか。
こういうパンは大好きなので、俄然目の色が変わった。これはあれこれ食べたい!
しかも、値段がこちらの想定よりもちょっと安い。お求めやすいお値段だ。ベーカリーって、値段は大事。「つい、あれこれ買っちゃった」という後悔をさせるだけの種類とクオリティ、そして油断させる値付け。
そんなわけで、しこたま買ってしまった。
僕だけが興奮したんじゃない、いしも興奮していた。
どれも美味しそうだ、という基本的な話だけでなく、「今買っておかないと、次はいつになるかわからない」という気持ちが山積みのパンとなることを許容した。
これが東京からはるか彼方だったら、「もう二度と訪れないだろう」と思って諦めの境地になる。どんなに美味いものだからといって、あれもこれも、とはならない。しかしここは那須。その気になれば再訪はできる場所だ。
「だったら、今回お試しで買ってみて、美味しかったらまた今度買いに来ればいいじゃん」
とはならない。だって、試すまでもなく、こいつァ美味しいに決まってるから。なので、欲しい!と思ったものをどんどん買っちゃう展開になった。「また今度買いに来る」ときは、今回食べて美味しかったものをリピートするんだ。
お会計を済ませる前に、早くもそういう計画が立った。
そんなwかえで、買ったパンはトレイ2つ分11個。
お会計をしてみたら、5,000円近くになった。やあ、結構買っちゃったな。でも全然後悔していない。
これでもまだ遠慮していたくらいだ。もし一人だったら、お店にあるものを一通り買っちゃうくらい羽目を外していたかもしれない。それくらい、どれも魅力的なパンだった。
(つづく)
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