コロナ時代、帰省を諦めテントを張って川で過ごす【みよりふるさと体験村1】

17:54
運賃表兼、路線図が壁に掲げられいた。

これを見るとかなり豪華な地名が並ぶ。左端には東京の浅草、東京スカイツリーのお膝元である押上などが並び、その他千葉県の船橋、群馬県の伊勢崎、同じ栃木県の宇都宮や日光、鬼怒川と連なっている。

おい!そこのお前!この路線をど田舎路線と思ってるだろ!ちがうぞ、すごい路線なんだぞ!

そして、路線図の右側末端には会津若松の文字。これもさすがだ。路線がまたがっているとはいえ、これだけの距離が1枚の路線図として書かれているのはあまり例がないのではないか。

それにしても、野岩(やがん)鉄道って特殊だな。東武鉄道と会津鉄道に挟まれていて、駅数は9つ。その全てにおいて川沿いの谷間を鉄橋やらトンネルやらを駆使しながら走っている。

採算が取れるのだろうかと心配になって決算書を見てみたけど、やっぱり相当厳しい。資本金10億円だけど、利益剰余金がマイナス8億円ほどになっていて、純資産がのこり2億円を切っている状態。とはいえ、1年間の純利益がせいぜいマイナス100万円いかない程度なので、この調子ならば資本金を食いつぶしながら当分はやっていけるかも、という状況だ。これは株主もわかっている持久戦なのだろう。

株主といっても第三セクターで、筆頭株主が福島県になっているのが意外だった。だって、9つの駅のうち8つが栃木県で、「会津高原尾瀬口」駅だけが福島県だからだ。おそらく、会津若松という福島の主要都市とのアクセスを確保することが大事、と福島県は考えているのだろう。

なお、この「会津高原尾瀬口」駅だって、この駅を利用する人の多くは群馬県にある尾瀬沼・尾瀬ヶ原を目指す人たちだ。なんとも不思議な路線だ。

「こんなローカル路線、大丈夫かな?」と余計な心配をしてしまうのだが、その割にはさっきから時折電車が通過するシーンを見かける。偶然かな?とおもったら、時刻表を見ると偶然でもなんでもなくしっかりダイヤが埋まっていた。

13時台が上りも下りも1本もない、という空白地帯になっているが、それ以外は1時間に1本ないし2本が行き交う、侮れない密度の路線だった。

しかも「特急リバティ会津」や「AIZUマウントエクスプレス」といった特急列車や観光列車も停車しているから立派だ。この駅がすごい、というよりか、野岩鉄道内は各駅に停車するからなんだけど。

だとしても、「特急や観光列車は土日祝日・特定日のみ運行」なのではなく、毎日走っているのだから立派だ。よく見ると、この駅に停車する電車のうち3便は浅草行きだった。すげえ!乗換なしでここから浅草なのか!

階段を上がり、ホームに向かう。

島式2面ホーム。上りと下りでホームがわかれている。

そして、ホームの端に待合室。

ホームの幅が狭いので、ホーム中央に待合室を作るのは無理だったのだろう。そして、冬は寒いので電車到着まで待合室が必要なのだろう。

こういうのもワクワクするよな。

標高は648.3メートル。さすが山あいの駅だけあって、思った以上に標高が高かった。

海抜0メートル地点とくらべて気温が約4度低いことになる。それに加えてアスファルトが少ない環境であること、谷間であることから夜はもっと冷えそうだ。

中三依温泉駅のホーム。

左奥にバーベキュー場が見え、右側に僕らがテントを張っているスキー場跡キャンプ場がある。そば打ち体験道場の白い建物が目立って見えるけど、実はあの裏手がキャンプ場なんだよな。

確かにこれは、鉄道とキャンプの融合だ。駅から右を見ても左を見ても、どっちもキャンプ場だから。

バーベキュー場界隈から煙が上がっているのが見える。そうか、もう夕ご飯の時間だもんな。

僕ら、外食ですませちゃおーっと、という気楽な状態なので全然気にしていなかった。これからお風呂に入りに行くくらいの余裕だ。

17:54
階段を下りて、外に向かう。

コンクリートがあまり古びておらず、新しいな?とおもったら、野岩鉄道が開通したのは1986年と比較的新しかった。もっと古い路線なのかと思ったが、今年で開業34周年。

中三依温泉駅の出口。

改札・・・と呼べるほどではない。一応集札箱はある。

イベント時に駅員さんが駐在する用なのか、窓口は用意されている。エアコンの室外機が見えているので、中に人が入る用だろう。シャッターをガラガラと上げたら自動券売機が出てくるわけではなさそう。

さて問題なのは、こういう無人駅において中を見学した際、入場料はどうすればよいのか?ということだ。

野岩鉄道の営業規則は駅構内で見つけられなかったので確認していないが、少なくとも運賃表や改札周辺に入場券・入場料に関する記述は見当たらなかった。

入場券を買おうにも無人駅なので売っていません、入場料を払おうにも金額が書かれていません、という場合はどうすりゃいいんだ。

こそっと駅に入って「ほほう」と感心して立ち去るだけなら、「まあその程度なら」とお目こぼし扱いなのかもしれない。しかしこの記事のようにブログに掲載しちゃっても良いものなのかどうか。ダメだったらゴメンナサイして後日お金を払わなくては。

17:58
受付棟にやってきた。ここで入浴の手続きをする。

売店はガッチリとビニールカーテンで覆われている。後の世代の人からすると笑われると思うが、混乱の2020年はマスクが争奪戦になり、アルコールが店頭から消え、そしてアクリルパネルやビニールカーテンも品薄で大変だった。さらには、急激に食べ物のテイクアウト需要が高まったため、飲食店が作る弁当を入れる容器が入手困難になった。

そんな時代。

売店で売られているちょっと心をくすぐる品物の数々。

オリーブオイルやマヨネーズ、アルミホイルといったものを売っているかと思ったら蚊取り線香があったり、パックごはんが売られていたり。充実した品揃え、とまではいかないけれど、飢えないだけの食べ物と酒のつまみは売られている。

こういう厳選した品揃えの中に、「天津甘栗」が入っているのが渋い。

お酒、ソフトドリンク、お茶なども売られている。

お酒はスーパードライと清酒の「天鷹」だけ。「天鷹」は大田原市の地酒なので、ご当地のお酒と呼ぶにはちょっと遠い気はする。

感心するのが、この手の支払がすべてPayPayによるセルフレジ方式になっていたことだ。

PayPayはコロナ前から資金力と根性を武器にグイグイと加盟店を増やしていたQRコード決済のパイオニアだが、せいぜいレジにて電子マネーのかわりに使うくらいの活用方法だった。それがこのお店はセルフレジだ、という。

売上伝票みたいなものはリアルタイムでスタッフが見ることができるそうで、そこで店員さんはチェックする。だから客はいちいち「これとこれを買いますねー」と言わなくても、商品を手に取って勝手にQRコードで決済してくれればいいという仕組みだ。

雑なチェックではあるので、性善説に立っての運用となる。でも、それが実現できちゃうのがこの場所なのだろう。

(つづく)

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