
16:45
僕が乗ろうと思っている高崎行きとは逆、下仁田行きが山名駅にやってきた。
さっき僕がくぐり抜けてきた参道の上を堂々と走ってくる電車見ると、意味もなく「おおー」と思う。
「神社の参道の上を鉄道が走る」ということに対して、氏子や神社はどう咀嚼しているのだろう。「無礼である」という考えがある一方、便利だから許容しようとなったのか、それとも「いやー、神道っていうのはおおらかなものですよ」とあっけなく決まったものなのか。
このあたり、まさか神道という様式が確立した時点で「参道に鉄道が走る、しかも参道の上を」というシチュエーションなんて想定されていなかった。だから後世の人たちが、そのときの価値観で神様や参拝者に対して失礼のないようになっていればよい、という事後解釈でなんともでもなるような気がする。
ちなみにこの下仁田行き、わかっていてもうっかり乗ってしまいそうなので注意が必要だ。通常のホームとは逆向きのホームに到着するから。

17:00
上信電鉄に乗って、高崎駅にやってきた。
今頃気がついた。あれ?上信電鉄なのか、と。つまり、この乗り物は電車だった。てっきりディーゼルかと思っていたけど、電機駆動だった。今頃になって気がつくのが遅い。
それはともかく、終着駅で行き止まりの線路と櫛形のホームってワクワクするよな。ロマンだよな。僕は大好きだ。こういうのを見るとソワソワして、ホーム上をウロウロしてしまう。

しかも「0番線」だぞ。「0番線」ってなんだよ。おかしいだろ。1番から数は数えるんじゃないのかよ。
・・・というのも、ワクワクしっぱなしだ。いいよな。
さらには、この線路の両側にホームがあって、電車の両側から出入りできるようになっている、というのも大好き。
僕が育った広島にはこういうホームがないので、本当に好きだ。
ちなみに大学に入ってから、西武新宿線や西武池袋線といった、こういうホームを備えた電車にはよく利用するようになった。社会人になってからは、東武東上線をよく使った。ここも、どん詰まり線路がある。でも、それらはあんまりワクワクしなかった。ホーム長が長すぎるし、ターミナル駅なので「もうこれ以上先には行けないんです。残念なことですが。」という雰囲気がない。
線路の行き止まりのところに、黒い板に白い風車のようなバッテン印が書いてあって、「これ以上はもういけませんよ」という表示があるのを見るのが大好きだ。あと、電車がオーバーランして線路に激突しないように、巨大なスプリングが線路の上に仕込まれていて、衝撃を緩衝するようになっているのを見るのも好きだ。そもそも、鉄の塊を人ごときが動かそうとするのだ。暴ぶる益荒男をどうやって鎮めるか、というのは大事。

ということで、名残惜しいが上信電鉄のホームからそろそろさようなら。
この写真の奥に、上信電鉄の改札があって、その奥に0番線がある。
フェンスの左側にみえる1番線は、JRの駅。

ほほう。駅そばも高崎にやってくると見たことがないお店が入っているものだな。
こういうのを観察するだけでも楽しい。
「そば・うどん・らーめん」と書いてある。そういえば東京の立ち食いそば屋って、ラーメンの取り扱いってあったっけ?あんまりないような気がするのは、地域差なのだろうか。いや、それとも僕の記憶違いか。
それはともかく、「黙食・静食」という張り紙が貼ってある。これが2021年コロナ時代の外食産業。
「黙って食え」というのはまあ、そうだろうなと思う。でも、それに加えて「静かに食え」というのが入っているのも面白い。「黙れ」と何が違うのかと困惑したが、おそらく「ズゾゾゾゾッ、と音を立てて蕎麦をすするんじゃねーぞ」という警告なのだろう。
笑っちゃうけど、コロナ2021時代はこんなことが大真面目に語られていたし、もし守っていない人がいたら見知らぬ人にいきなりぶん殴られてもおかしくないくらい、殺伐とした空気感の世界だった。マジで。

17:12
高崎の駅ビルの中を歩く。
この写真を撮ったのは、「駅ビルの中にまでDAISOか・・・」と思って撮った記憶があるが、それ以外にもなにか複合的な気づきがあって撮ったんだが、理由は忘れた。
それにしても、日本の商業施設ってどこも似たようなラインナップだな。アパレルを除くと。無印、ABCマード、100円ショップ、ユニクロ・・・。実は日本人って、あんまりいろんなものがなくても生きていけるんだろう。

17:12
夕ご飯を買い求めにやってきたのは、鳥めしで有名な「登利平」で鳥めしの弁当を買うためだ。
せっかくの高崎泊なんだから、外食でバーンと盛大に!という考えは全くなかった。今回の旅はだらりと過ごすためにやってきたのだから、ホテルの部屋で弁当とノンアルコールビールで一人乾杯でいいじゃないか、と思ったからだ。
これで夕食は外食だ、と決めると、お店探しをどうしようとあれこれ調べなくちゃいけないし、ホテルの大浴場でのんびり風呂に入る時間も計算に入れないと行けない。面倒でたまらない。ホテルの部屋で、好きなタイミングで、頃合いを見てメシを食いたい。そして、しこたまノンアルコールビールを飲みたい。そうさせてくれ。それが一番の癒やしだ。

いろいろ美味しそうなメニューがあるんだが、お目当ては弁当だ。
そもそも、この「登利平」は高崎界隈の人々がお弁当の大定番としてよく買うものなのだという(秘密のケンミンショーが言っていたので、どこまでオーバーに表現しているのか、それとも本当なのかは不明)。
なので、弁当を買ってこそ意味がある。

目指す「鳥めし弁当」にも、安い「竹」と高い「松」がある。竹が730円、松が830円。その差100円。
こういうときは欲張って高いほうを選ぶのではなく、一番安くてオーソドックスなほうを買うのが正解だ。
・・・とわかってはいたのだがッ・・・くっ、ついつい「松」を買ってしまった。
今日一日、相当歩いた。ノンアルコールビールをガーンと飲みたい気持ちがいっぱいだ。そしてこの後は大浴場での入浴も控えている。だったら「松」を頼んでもバチはあたらないんじゃないか、という心の迷いが生じてしまった。

鳥めしを買ったのち、レストラン街を巡っていたらみつけたお店。

「サラダボウル ケイジャンチキン」というのが気になる。1,280円。どすっと野菜やチキンが入っているように写真では見えるが、実際の容器の深さはどれくらいなんだろう。
コロナになって一個人として良かったことは、イートインしかやっていなかったお店がテイクアウトを気軽にできるようになったことだ。僕みたいに一人でふらふら歩くのが好きな人にとっては、本当に好都合だ。店の中にはいって食べるには一人じゃ無理だなーというワインバルだとか、敷居が高そうなお店だとかもテイクアウトをやっていて、あれこれ食べられる時代になった。
この飲食業界の流れは今後も持続するんだろうな、良い時代になったものだな、と当時は思ったものだが、コロナが一段落したらすっかりテイクアウトが廃止され、とてもとても残念だ。お店からしたらスゲー面倒だったんだろう。
Uber eastsや出前館といった宅配を受け付けているお店は増えたけど、店頭でテイクアウトを承ってくれる飲食店は減った。もっともっとテイクアウト飲食店天国が日本に訪れてくれると嬉しいのだけれど。特に僕みたいに酒を飲まない人にとっては、お店で食べる必然性があまりなかったりするので。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (2件)
応仁の乱の西軍の総大将山名宗全につながる山名氏は、この地方の豪族が発祥だそうです。
歴史を感じる地名ですね。
ゆうどんさん>
おおーーー山名宗全!久しぶりに聞いた名前だ!赤入道!
僕は高校時代、社会の選択は日本史だったんですが、
・明治大正あたりで時間切れになって、戦後まで習わなかった
・明治時代に入ってから文化・芸術・政治・経済・世界情勢が入り乱れ、わけがわからなくなった
・南北朝・応仁の乱あたりのゴタゴタをちゃんと記憶できなかった
ということで今や殆ど覚えていないです。みなさんはどうなんですかね?覚えてます?日本史。
一応学生時代に日本史の成績は良かったので、当時は記憶力のみでなんとかなっていたんでしょう。でも、すぐに忘れてしまったのは残念。