離島で癒やされる筈が疲れた22時間【東海汽船ミステリーきっぷ】

10:10
深い入り江になっている波浮港の東側が、波浮の小さな集落になっている。

狭い一本道の両側に建つ建物が風情があって、伊豆大島の観光ガイドでは必ず紹介されるエリアだ。僕らも、ここが目当てでてくてくと歩いてきた。

そして、その一本道の突き当りに、朝9時半から営業をしている商店があって、そのお店が注文が入ってから揚げるカツを提供していて美味しいらしい。波浮で、朝はやくから何かを食べようとすると、このお店しか選択肢がない。

漁船が停泊している岸壁を歩いていくと、正面に漁協の建物が見えた。そして、それと同時にぎょっとするものが見えた。

おい!この先の道、水没してるぞ!

今日は雨の日だ。しかし、高潮というわけでもないし、台風が迫っているわけでもない。なのに、こんなに堂々と陸地が海水に洗われている状態だなんて、信じられない。

これが通常モードなのだろうか?土のうや防潮堤で海水の侵入を防いでいる気配はない。誰も人がいないのではっきりとはわからないが、どうも地元民はこの状態にびびってはいないらしい。

今僕らが建っているところから見て、漁協があるあたりは岸壁の高さが低くなっている。意図的に海水面に近づけるように工事をしたようだ。

そんな、僕らがあっけにとられている場所のすぐ脇に波浮港バス停があった。

「なんだ、バス停あるじゃん。さっき見たのはダミーだったのか?」

と思ったが、やっぱりここにも「波浮港バス停 使用不可」の張り紙が貼ってあった。あ、やっぱり駄目なんだ。

そりゃそうだよなあ、すぐ近くの道がこれだけ海水でビシャビシャになってるんだし。

・・・と思いながら張り紙をもう一度よく見ると、「付近の道路脇にて建物崩壊の恐れがあり」と書いてあった。あれっ、そうなの?

いま来た道を振り返ってみたけれど、特に崩壊しそうな建物はないように見える。でもわざわざ、バス停を移すくらいだからよっぽど危ないのだろう。バス停を動かすとなると、国土交通省に申請を出すとか相当面倒な手続きがあるはずだ。それをしてでも移設したくらい、この界隈は危ない?ということ・・・なのか?

10:11
波浮港周辺の地図。

地図の上の方から僕らは歩いてきた。南北が逆になっていて、上が南で下が北の表記だ。

1800年の開港以降、船のたまり場として栄えたこの地は、小説「伊豆の踊子」にも出てきたような舞子さんがお座敷で芸を披露したり、宿が軒を連ねて賑わっていたという。また、船に水や食料を提供する商店などもあり、さぞや栄えたことだろう。風待ちの場所としては最適の港だ。

海沿いの狭い平地とは別に、急な階段を登って崖の上に登ったところにはお屋敷が立ち並ぶ。

海沿いの一本道を歩く。

さほど長い距離はなく、すぐに歩き切ることができる距離だが、風情がある。

観光客向けに営業をしているような建物は少なく、多くは個人の民家だ。でも、その商売っ気のなさも風情に一役買っている。

波浮港といえば、伊豆大島で必ず紹介される観光地だ。なので、ここで商売をやろう!と意気込む人がこれまでもっと現れても良いはずなのだけど、そうはならなかった。

僕らが今日、ミステリーツアーを使って格安運賃で伊豆大島を訪れているように、離島旅行というのは冬はオフシーズンになる。やっぱり安定した集客がないと、観光客相手の商売というのは難しそうだ。

10:15
この風情ある通りの突き当りに、鵜飼商店がある。

営業しているかな?と心配だったが、ちゃんと営業していた。

店頭に、「営業時間 9:30~12:30、15:00~18:00」と書かれている。結構ガッツリとお昼休みを取るので、昼時にここを訪れる際は12:30前に到着していないといけない。

感心するのが、こういう島の商店でも決済手段でPayPayが実装されているということだ。PayPayの営業マンが全国津々浦々お店を巡って営業活動をしているのだろうし、お店にとってもキャッシュレス決済はそれなりのメリットがあるのだろう。

実際僕ら観光客にとって、離島でのキャッシュレス決済は本当にありがたい。現地でお金をATMからおろすことが困難であることくらいは承知しているのでお金不足になることはない。しかし、「1万円札しかなくて、小銭がない!」という事態は十分にありえる。せっかくお金を払いたくても、僕も、お店も小銭がなくて途方に暮れるという残念なことが起こり得る。なので、キャッシュレス決済はとても安心感がある。

鵜飼商店の前は、ひさしがせり出していて雨の日でも濡れない。ありがたい。

ここにやってくる観光客は、お店でコロッケなどを買ってお店の外で食べる。今日みたいな雨のとき、外でも濡れなくて済むのはとても助かる。

鵜飼商店、店内。

店の奥に厨房があり、マダムが注文に応じてどんどん揚げ物を揚げていた。

壁には芸能人のサインがいっぱい。

島の商店の品揃えを見るのは面白い。

都会のスーパーのようになんでも揃えるわけにはいかない。商店周辺の住人のニーズを御用聞きのように聞きつつ、長い年月をかけて築き上げてきた品揃えだ。「ひょっとしたら売れるかも」という商品はわざわざ仕入れないはずだ。

そういう観点で見ると、このお店は乾麺や缶詰がよく売られていることに気づく。やっぱり島なので、なんでもかんでも生鮮品が手に入るというわけではないのだろう。

そして売られている缶詰で「おやっ」と思ったのが、缶詰コーナーで一番目立つところに鯨肉の缶詰が置いてあったことだ。タワーのように積み上げられ、しかも「大和煮」と「焼き肉」の2種類が置いてある。この2つの缶詰は魚缶詰の定番、サバ缶よりも手に取りやすいところに置いてある。つまり、缶詰としては一番の売れ筋っぽい。へえ、鯨肉が人気だとは面白い。

一方、弊息子タケは乾麺のそうめんを手にとり、「これ、食べたい・・・」と何度も主張する。御冗談を、何で伊豆大島土産で讃岐産のそうめんを買って帰ることになるんだ。

「これからコロッケ、食べるよ?」と彼をなだめても、とうぶんの間、「チュルチュル、食べたいよぅ」とダダを捏ね続けた。

(つづく)

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コメント

コメント一覧 (10件)

  • 利島(以遠)タッチを目論んでたら大島ターンになっちゃったと。
    飛行機でのステータス修行風に言うとこんなとこですね。
    おととし全日空のプラチナ目指してた時は小松ー羽田ー那覇ターンとかやってたので
    交通機関は違いますが何となく懐かしく読んでます。
    那覇だとわりと何でもあるので、乗り継げる最終便まで4時間空いても何とかなるんですが
    大島8時間はちょっとキツそうですね。タケ君の興味と集中力が8時間続くよう、お祈りしときます(笑

    能登の地震当日は飛行機で八丈島タッチやってました。
    機窓からの景色は最高でしたが、足止めは余計でした…

  • ティータさん>
    元旦から修行ですか?お疲れ様です。正月の離島路線の値段はいかがでしたか?帰省が一段落して安いのか、それとも年末年始は高止まりなのか。

    気がついたら、いつのまにかANAの三宅島路線がなくなっていたんですね。知らなかったです。
    ということは、三宅島に飛行機で行くには、調布飛行場からしかないのか。

  • >おかでんさん
    いや、ステータス修行はさすがに卒業しました…羽田那覇一日2往復とかやれる体力もないですし懐が…(笑
    プラチナメッキも3月末で禿げます。
    コロナ明けで需要喚起しててPP大盤振る舞いしてた頃に旅行してたら「…あれ?あと新千歳那覇乗っちゃえばプラチナ(5万PP)行けるんじゃね?」って感じだったのでノリっで取っちゃっただけなので。
    面白かったですけどね。

    島路線の値段はちょっと覚えてませんが、だいたい羽田小松線と同じくらいか福沢さん一枚二枚くらい安かったかなぁ。

    八丈島線、国鉄の急行みたいな雰囲気で良かったです。
    行きの搭乗口も島流し(67番→48番乗継)食らって、whillも無いルートなので車椅子のお世話になりました。

    三宅島、噴火とか色々ありましたもんね。もし今も残ってればDHC-8-Q400(通称ボンちゃん)が飛んでて
    そろそろATR42に世代交代ってなってるんでしょうか。乗ってみたかったなぁ…

  • 本日ミステリーツアーに参加 神津島でした 30分の港に降りると 海カメが湾内に居て出港すると イルカが舟の後を追って来て 行きは 罰ゲームだと思いましたが 結果オーライでした

  • Kさん>
    いいですねー、神津島!本当に神津島を引き当てる人がいるのか!
    というか、今もミステリーツアーをやってたんですね。知らなかったです。
    一生の思い出になったのでは?素晴らしい体験でしたね!

  • 行き先は決まってるんですが、船で往復するだけのツアーは
    オレンジフェリーでもやってましたね。
    でも確か、神戸発がド深夜なのでなかなかハードルが高そうでしたが…。
    確か折返しの間も下船はなしだったような(ひょっとしたら事前申告でOKとかだったかも)

    昼間の瀬戸内海が楽しめる、というのが売り文句だった気がします。

  • ティータさん>
    もはや全国各地のホテルが軒並みインバウンド&人手不足&物価高&ダイナミックプライシングのせいで値段が高すぎる。
    もうこうなったら、フェリーでのんびり旅をする、というのが一番安くて楽ちんかもしれない。ミステリーツアー的なことにしなくても、まだまだ集客できそうな気がする。

    先日なんて、宮崎県にある日本百名山に東京から日帰りですよ。ホテルなんかが高すぎて、泊まるのが躊躇しちゃったから。特に熊本空港近辺だと、TSMC誘致の関係でかホテル高いっすねー。

  • >おかでんさん
    宮崎の山へ日帰り?!…お、お疲れさまでした(^^;;;;

  • ティータさん>
    ジェットスター朝7時15分成田発、というのは相当キツかったです。LCCなので保安検査場通過時間が厳しいし。
    そのくせ、成田空港に着いてみると「機材手配遅れで出発は30分遅れ」と言われ、「やべえ、現地での登山時間が30分減ってしまった。山に登れるだろうか?」と別の意味でキツかったです。

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