離島で癒やされる筈が疲れた22時間【東海汽船ミステリーきっぷ】

「さるびあ丸」乗船までの間、竹芝桟橋フェリーターミナルの中を探検する。

たぶん、僕は旅行の中でこの「旅立つ直前の時間」が一番好きだ。飛行機に乗る前の空港とか、鉄道の駅とか。「あとは乗り物にのるだけだ。それまで、微妙にやることがない時間が余っている」というのが、高揚感とリラックスの絶妙なバランスを生む。

掲示板に、「伊豆大島 三原山ハイキング&絶景温泉」のツアーパンフレットが貼ってあった。

往路はさるびあ丸に乗ってゆっくりと夜行で伊豆大島へ。帰りは高速船でビューンと一気に竹芝桟橋に戻ってくる船中1泊の旅が企画されていた。途中、朝ごはん、お昼ごはんが出て、大島温泉ホテルで入浴2回。そしてバスの代金も含まれている。

ずいぶんお得だ。

あれっ、僕らは7,000円を支払って伊豆大島に行くわけだが、伊豆大島に行くということが最初っから決まっていれば、このツアーの方が安い気がする。もちろん、ツアーなので自由度はないが、お得だ。

結局、この東海汽船のミステリーツアーは、「どこの島に行くことになるのか、わからない」というドキドキにかなりのお金を払っていることになる。最初っから行きたい場所があるなら、ミステリーツアーはむしろ割高。

ちなみにこのツアー、帰りは高速船とはいえ、伊豆大島を出港するのは14:35。早朝に島に到着するとはいえ、昼過ぎにはもう島をでなければならないので慌ただしい。それは僕らも一緒で、さるびあ丸の場合は14:30の出港だ。17時発くらいの便があるともっと便利なんだけど。

こちらのチラシは、伊豆大島往復のきっぷ。

先程のツアーは開催日が決まっているのに対し、このきっぷは毎日・全便が対象になる。要するに、閑散期である冬の間は正規運賃よりも割り引きますよ、というわけだ。

往復で11,000円。高速船でシュッと行って帰ってこられるので、時間の効率がよい。

こういうチラシを見ると、「東京発着」などという表現を東海汽船は使っている。あ、竹芝桟橋の事を「東京」と呼んでも問題ないのか。

そのあたりのニュアンスというのは、ちょっと気にしていたところだ。というのも、伊豆大島もれっきとした東京都だからだ。「竹芝桟橋行き」のことを「東京行き」などと表現すると、「じゃあ伊豆大島は東京じゃないのか?のけものにするのか?」というハレーションが起きるのではないかと心配していた。でも、東海汽船が「東京発着」と表現するなら、そういう言葉で問題ないのだろう。

こういう表現に対する配慮というのはあちこちにあるものだ。「伊豆七島」という言い方をすると、青ヶ島がカウントされなくなってしまうので「伊豆諸島」という言い方をするようになった。また、「伊豆諸島」というと小笠原諸島が入らなくなるので、「島しょ部」という言い方をしたりする。

「新島港津波避難施設について」という張り紙。

展望台か?というような建物が、新島港の防波堤付け根に建っているらしい。

南海トラフ地震が発生した際、地震発生から約13分で最大17メートルの津波が来ることが予想されることから、港周辺および船に乗っている乗客乗員が全員避難できるように高さ27メートルの建物を建てました、という案内だった。

この施設に避難できる人数がものすごく、その数600名。さるびあ丸の定員からこの建物のスペックが決められたのだろうが、規模の大きさにびっくりさせられる。

新島も行ってみたいなぁ。今回のミステリーツアーで神津島行きを引き当てていれば、この新島の津波避難施設も船の上から見ることができたのに。

で、その神津島については別の張り紙が貼ってあった。

「宿泊施設の予約が必要 予約なしでは来島できません」
「野宿・キャンプできません 有料キャンプ場は来島前の予約が必要です」

つまり、行き当たりばったりで島に来ないでくれ、というわけだ。

じゃあそれ以外の島なら「ふらっと立ち寄りました、一泊したいです」ということができるのか?というと、たぶん原則できないはずだ。神津島だけ特にこういう記述があるのは、さるびあ丸で神津島に行った場合、着岸して30分後には船が東京に向けて出港してしまうからだ。神津島観光をしようと思っている人は、最低でも1泊が必要となる。

ターミナルの奥まったところに第二待合所があった。「島民用」と書かれている。

トイレに立ち寄ってみる。

広くて立派なトイレにびっくりする。これだけゆったりとした公衆トイレは珍しい。

Shop竹芝。ヤマザキYショップと東海汽船が運営する、コンビニのような施設。

営業時間は「1)7:00~10:00、2)11:00~13:30、3)16:30~22:30(大型客船出航時間まで)」と一般的なコンビニと比べると変則的な営業なのが面白い。

このターミナル内には、特産品販売所「東京愛らんど」がある。そちらが、観光客向けの伊豆諸島のお土産物を売るお店なのに対し、こちらは船旅に必要なものだったり、東京に一時的にやってきた島民が使うものだったりが売られている印象だ。

店頭に、群馬県のマスコットキャラクター「ぐんまちゃん」が描かれたお菓子が売られていたのにはびっくりした。これから島しょ部に行こうとしているのに、海なし県である群馬県が「どうもどうも」と姿を見せたからだ。

しかもややこしいことに、この「ぐんまちゃん旅がらす」というお菓子の、明日葉味が売られている。明日葉といえば言わずとしれた、伊豆諸島名産の植物だ。ややこしい。

写ルンですが売られていたのにもびっくりした。あ、まだこれが売られているんだ?

しかも、お店の入り口で目立つところに吊るしてある。そして長旅のお供として定番の将棋とか、耳栓とかと並べて売られている。ということは、「売れ残りを置いているだけ」とか「店主の趣味」なのではなく、きっとこの写ルンですが売れ筋商品なのだろう。

誰が買うんだ?

のし袋や筆ペンが売られているのを見て、いいなぁと思う。こういう、このお店ならではの立ち位置がうかがえる商品ラインナップって、見ていてとても面白い。

冠婚葬祭があるから、島から東京に出てきたり、逆に東京都市部から島に渡ったりということも多いだろう。そういうときにここで買い物ができるのは便利。

菓子折りが売られている。

東京クリーム大福、文明堂のカステラ・どら焼き、草加せんべい、江戸限定焼き、横濱バターサンド、安納芋スイートポテト など。

東京駅などターミナル駅で売られている、ゴリゴリにエッジの立った昨今のお菓子ラインナップとは全然違う。どちらかというと、高速道路のサービスエリアで売っているような、ちょっとユルめのお菓子だ。これも、島民の方が買うものだろう。

(つづく)

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コメント

コメント一覧 (4件)

  • 利島(以遠)タッチを目論んでたら大島ターンになっちゃったと。
    飛行機でのステータス修行風に言うとこんなとこですね。
    おととし全日空のプラチナ目指してた時は小松ー羽田ー那覇ターンとかやってたので
    交通機関は違いますが何となく懐かしく読んでます。
    那覇だとわりと何でもあるので、乗り継げる最終便まで4時間空いても何とかなるんですが
    大島8時間はちょっとキツそうですね。タケ君の興味と集中力が8時間続くよう、お祈りしときます(笑

    能登の地震当日は飛行機で八丈島タッチやってました。
    機窓からの景色は最高でしたが、足止めは余計でした…

  • ティータさん>
    元旦から修行ですか?お疲れ様です。正月の離島路線の値段はいかがでしたか?帰省が一段落して安いのか、それとも年末年始は高止まりなのか。

    気がついたら、いつのまにかANAの三宅島路線がなくなっていたんですね。知らなかったです。
    ということは、三宅島に飛行機で行くには、調布飛行場からしかないのか。

  • >おかでんさん
    いや、ステータス修行はさすがに卒業しました…羽田那覇一日2往復とかやれる体力もないですし懐が…(笑
    プラチナメッキも3月末で禿げます。
    コロナ明けで需要喚起しててPP大盤振る舞いしてた頃に旅行してたら「…あれ?あと新千歳那覇乗っちゃえばプラチナ(5万PP)行けるんじゃね?」って感じだったのでノリっで取っちゃっただけなので。
    面白かったですけどね。

    島路線の値段はちょっと覚えてませんが、だいたい羽田小松線と同じくらいか福沢さん一枚二枚くらい安かったかなぁ。

    八丈島線、国鉄の急行みたいな雰囲気で良かったです。
    行きの搭乗口も島流し(67番→48番乗継)食らって、whillも無いルートなので車椅子のお世話になりました。

    三宅島、噴火とか色々ありましたもんね。もし今も残ってればDHC-8-Q400(通称ボンちゃん)が飛んでて
    そろそろATR42に世代交代ってなってるんでしょうか。乗ってみたかったなぁ…

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