離島で癒やされる筈が疲れた22時間【東海汽船ミステリーきっぷ】

黄色い船体の橘丸が見える。

橘丸は、さるびあ丸が訪れない、神津島以遠の島を巡る。三宅島、御蔵島、八丈島の3島だ。八丈島まで行ったら、その日のうちに竹芝まで戻ってくる。これも夜行便。

さるびあ丸よりも遠くに行く船だし、途中に黒潮を横断するのに、船は小ぶりだ。僕はこの船に乗ったことがないが、結構揺れる気がする。

一方、さるびあ丸は橘丸よりも相当大きい。

今まさに船首部分にコンテナを積み込む作業の真っ最中。フォークリフトが猛烈なスピードで走り回り、船のクレーンがどんどんとコンテナを釣り上げて船に積み込んでいた。

そのテキパキさたるや、ものすごい。雨が降っているし夜だし冬だし、という悪条件なのに、よくこんなスピード感で作業ができるものだ。弊息子タケはフォークリフトに目が釘付けだけど、僕ら親も「すごいなぁ」としばらく見とれた。

対岸には、中央区勝どき・豊海エリアのタワマン群が見える。巨大なビルがそそり立ち、部屋の明かりが無数に見える。数千世帯・数万人があそこに住んでいると思うと、圧巻だ。写真だと迫力が損なわれて見えるが、実際生の目で見ると、タワマンがそそり立つ屏風のように見える。

あんまり便利そうな場所には思えないのだが、レインボーブリッジをはじめとする眺望が開けているのが人気の秘訣なのだろう。ここからタワマンの窓の明かりが見えているということは、逆もまたしかりで、タワマン住人が窓を見下ろすと竹芝桟橋を発着する船を眺めることができる。それは貴重な体験で他の土地では替えがきかない。

ライトアップされる橘丸。

黄色くペインティングされた船はやや奇抜だけど、こうやって闇夜にライトで照らされているととても美しい。

さるびあ丸と比べて随分小さく見えるが、さるびあ丸の指定席が733に対し、橘丸が596。席数だけでいったら、そこまで圧倒的な差はない。

21:43
乗船開始。列を作って船に並ぶ。空港のターミナルにあるようなボーディングブリッジが用意されていて、そのブリッジを渡ってさるびあ丸に乗船する。

ワクワク感がMAXに達する瞬間だ。この瞬間のために旅行をしていると言って過言ではない。

弊息子タケに対しても、「おい、ウロチョロしていないでこの瞬間を堪能しろ」と言いたいのだが、まだ2歳の彼には旅情も、旅のクライマックスも、なにもわかっちゃいない。言うだけ無駄だ。

それよりも、彼の日常においては既に就寝の時間を過ぎているのに、まだ一家揃って見慣れない場所で外を歩いている状況だ。彼はその異常事態になにやら興奮し、どうも落ち着きがない。いや、落ち着きがないのはいつものことか。

船に一歩足を踏み入れると、漫画SPY X FAMILYのヨルさんの等身大パネルがお出迎えしたのでびっくり。なんだなんだ、東海汽船とタイアップしているのか?

自分の寝床はどこかな・・・と船内入り口でおもわず立ち止まりたくなるが、そうすると後ろの行列がつかえてしまう。なので、テキパキと前に進むのが大事。

ええと、「さるびあ丸」は夏季運行の納涼船として乗ったことが2度ほどあるが、この新造船になってからは初めてだ。なので構造がどうなっているのか、わからない。

地図を見ると、全体で7階建て。1階は機関室なのだろう、一般客の入場はできないので艦内図には記載がなかった。

今我々がいるのが5階。

7階:屋外の展望デッキ
6階:屋根付きのデッキ、レストラン
5階:特等、特1等、1等客室
4階:特2等、1等、2等(椅子)、2等(和室)客室
3階:特2等、1等、2等(椅子)、2等(和室)客室
2階:特2等、2等(和室)客室

という構成になっていた。

僕らは5階の1等客室が割り当てられていたので、そちらに向かう。

特等はツインルームで、トイレ・シャワーが部屋に備わっている。この船では6室しかないので、お金がある人は早いもの勝ちだ。

特1等は2段ベッドが2つある四人部屋。トイレ・シャワー付き。混雑時には相部屋になるというのはトラップだが、4人家族なら1部屋を独占できるので良い。

で、僕らが泊まる1等は、カーペット部屋で雑魚寝スタイルになる。これは2等と一緒。

残る特2等は、二段ベッドの相部屋だ。相部屋とはいえ、ベッドなので個人のパーソナルスペースは完全に確保できるということで人気があるようだ。先程の艦内図を見ても、「意外と特2等の部屋が多いんだな」という印象を持つ。

1等の部屋の中から部屋の入り口を見たところ。

テレビのリモコン、艦内放送の音量、部屋の照明スイッチや空調スイッチが並ぶ。

雑魚寝部屋なので、僕はてっきり山小屋スタイルなのだと勝手に思い込んでいた。消灯時間になったらバチッと電気が一斉消灯されるものだと思っていたのだけど、全然消えない・・・と不思議に思っていたら、自分で消すスタイルだった。

さるびあ丸の1等客室。

2等との決定的な違いが、布団が付くということだ。マットレスと毛布、そして枕がついてくる。

また、電源コンセントが各席についているので、スマートフォンの充電が可能になる。もっとも、外海を運航中は電波が入らないので、インターネットに接続した何かをすることは不可能だ。

感心するのが、隣との間にちょっとした間仕切りがあるということだ。

はるか昔、小笠原海運の「おがさわら丸」の2等客室を利用した際、単なる大広間状態だった。床の上に敷いた毛布の横幅が、自分の陣地という扱いだった。それから比べると、このほんのちょっとの間仕切りがあるだけでも大違いだ。安心感が段違いだ。

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(つづく)

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コメント

コメント一覧 (4件)

  • 利島(以遠)タッチを目論んでたら大島ターンになっちゃったと。
    飛行機でのステータス修行風に言うとこんなとこですね。
    おととし全日空のプラチナ目指してた時は小松ー羽田ー那覇ターンとかやってたので
    交通機関は違いますが何となく懐かしく読んでます。
    那覇だとわりと何でもあるので、乗り継げる最終便まで4時間空いても何とかなるんですが
    大島8時間はちょっとキツそうですね。タケ君の興味と集中力が8時間続くよう、お祈りしときます(笑

    能登の地震当日は飛行機で八丈島タッチやってました。
    機窓からの景色は最高でしたが、足止めは余計でした…

  • ティータさん>
    元旦から修行ですか?お疲れ様です。正月の離島路線の値段はいかがでしたか?帰省が一段落して安いのか、それとも年末年始は高止まりなのか。

    気がついたら、いつのまにかANAの三宅島路線がなくなっていたんですね。知らなかったです。
    ということは、三宅島に飛行機で行くには、調布飛行場からしかないのか。

  • >おかでんさん
    いや、ステータス修行はさすがに卒業しました…羽田那覇一日2往復とかやれる体力もないですし懐が…(笑
    プラチナメッキも3月末で禿げます。
    コロナ明けで需要喚起しててPP大盤振る舞いしてた頃に旅行してたら「…あれ?あと新千歳那覇乗っちゃえばプラチナ(5万PP)行けるんじゃね?」って感じだったのでノリっで取っちゃっただけなので。
    面白かったですけどね。

    島路線の値段はちょっと覚えてませんが、だいたい羽田小松線と同じくらいか福沢さん一枚二枚くらい安かったかなぁ。

    八丈島線、国鉄の急行みたいな雰囲気で良かったです。
    行きの搭乗口も島流し(67番→48番乗継)食らって、whillも無いルートなので車椅子のお世話になりました。

    三宅島、噴火とか色々ありましたもんね。もし今も残ってればDHC-8-Q400(通称ボンちゃん)が飛んでて
    そろそろATR42に世代交代ってなってるんでしょうか。乗ってみたかったなぁ…

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