
波浮港から、高台に上がる。「文学の散歩道」と呼ばれる、石段。
明治期頃、与謝野晶子や幸田露伴などの文人がこの地に逗留したことから、その名が付けられたそうだ。
火山の噴火口を活用している波浮港なので、水辺から高台までは急な坂だ。
歩いていて、「静岡にある、東照宮みたいだな」と思った。あそこも、海沿いから神社がある山の上まで、延々と石段が続く。
僕は登山経験が多いので、この手の「雨の中、身体がしんどいアップダウンを歩く」ことに抵抗がない。でも、いしと弊息子タケにとっては「なんでこの雨の中、坂を登らなきゃならないんだ・・・」と思うだろう。
なので、小心者の僕としてはヒヤヒヤしている。怒られるんじゃないか、と。怒られないにしても、いしの機嫌が悪くなってあたりが強い喋り方をされるんじゃないか、と。
この坂を登った後、楽しいことが待ってますように。頼む。「登っただけ無駄だった」は困る。

10:45
文学の散歩道を登っている途中、古い建物があった。
「みなとや」という旅館の跡地らしい。木造の立派な作り。ただし、崖に建っているので広いお庭があるとか、車寄せがあるとか、そういうものは一切ない。門から入ったらすぐ玄関。
中の電気が点いているようだ。見学ができる・・・のか?
玄関のガラス戸には、「開館時間 午前9時から午後4時まで」と書かれた張り紙が貼ってあった。
「ごめんください・・・」
と中に入ってみたが、誰もいない。受付もない。お金を払わないで見学ができる施設、なのだろうか?

「不法侵入」ではなさそうだ。一応、観光客向けと思われる展示がある。
漁港として賑わっていた頃のこの旅館の様子を再現しているのだろう、大広間では大宴会を繰り広げているろう人形がずらりと並んでいた。踊り子も舞を舞っている。
でも、全体的に薄暗く、ほこりっぽく、ふすまが倒れている場所があるなど、お化け屋敷に入った印象を受ける。このろう人形が飾られている広間まで歩いてきて、ようやく「ああ、ここは観光客向け施設で間違いない」と安心した。それまでは、若干心配だった。入って良い場所なのだろうか、と。
お金を取っても良いのでもっと整備して欲しい。当時どのようにこの港が賑わったのか、学ぶ機会が欲しい。
しかし、入場料500円を徴収したからといって、受付の人の雇用をどうするのかとかこれ以上どうやってクオリティを上げるのかという問題はある。狭い土地なので展示できる内容は限られるし。

ろう人形の館「みなとや」は、今は「踊子の里資料館」という名前なのだそうだ。Googleマップを見て知った。現地に行ってもわからない情報をスマホから学ぶって、時代は変わった。
滞在時間はものの数分。ざーっと1階を見て、2階を見て、下りてきておしまい。殆ど立ち止まらず通過する。ほこりっぽく感じる(実際にほこりっぽいのかどうかはわからないが、雰囲気として)ので、痔病の鼻炎症状が出たら困るので早めに退却だ。
現地にちょこっとだけあった解説によると、当初は玄関入ってすぐのところにある大階段しか二階に上がれなかったのだけれど、宴会で人や料理がひっきりなしに行き交うので、奥にもう一つ階段を増設した、という。そのおかげで僕らはぐるっと1階から2階、そして1階へと周回して戻って来ることができた。
こういう、繁栄した時期を経た旅館の増改築話を知るだけでも面白い。

10:57
高台に登りきると、急にそこは平坦な土地になる。
このエリアは広い敷地を持つお屋敷が多く立ち並び、海沿いのギュウギュウな店や家とは違う世界だ。波浮港を訪れた船に水や食糧などを提供していた商人が居を構えていたのだろう。
そんな中に、「たい焼き 島京梵天(とうきょうぼんてん)」というお店がある。
11時から営業を開始しているということなので、訪れてみた。

島京梵天店内の様子。
屋内なのに黒い砂利が敷き詰められている。お客さんが食べ物をこぼした場合、お店の人は掃除をするのが大変そうだ。

窓際にはカウンター席あり。

このお店では羽根付たいやきを売っている。1個300円。
大納言粒あんは珍しくないが、玄米チーズリゾットなんてものも売られているので「おっ!?」と驚く。
たい焼きの中身にリゾットが入っているらしい。しかも玄米リゾット。

お持ち帰り用のたい焼きはショーケースの中に入って売られていた。

羽根付たいやき。
たいやきの羽根付きといえば、多くの場合は羽根の部分がパリパリしている。しかしこのたい焼き、そしてその羽根部分はもちもちしているのが特長だ。
盛大にタイの型から生地がはみ出ていて、隣のタイの型まで侵入している。大きなたいやき。
このあたりは食事をするところ、ちょっと一息をつくところが少ないので、こういうお店があるとありがたい。

ありがたいついでに「明日葉ラテ」も頼んでみた。
伊豆諸島の名物である「あしたば」。どこでもあしたば料理はあるので、いつでも食べられる・・・と油断していたら、結局食べないままで伊豆大島を離れてしまいそうだ。というわけで、今のうちに。
飲んでみると、確かに「明日葉」だし、「ラテ」だった。美味しいんだが、明日葉を堪能したいと思っているならもっとパンチがあったほうが良い。このラテはあくまでも明日葉をカジュアルに楽しむものだ。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (10件)
利島(以遠)タッチを目論んでたら大島ターンになっちゃったと。
飛行機でのステータス修行風に言うとこんなとこですね。
おととし全日空のプラチナ目指してた時は小松ー羽田ー那覇ターンとかやってたので
交通機関は違いますが何となく懐かしく読んでます。
那覇だとわりと何でもあるので、乗り継げる最終便まで4時間空いても何とかなるんですが
大島8時間はちょっとキツそうですね。タケ君の興味と集中力が8時間続くよう、お祈りしときます(笑
能登の地震当日は飛行機で八丈島タッチやってました。
機窓からの景色は最高でしたが、足止めは余計でした…
ティータさん>
元旦から修行ですか?お疲れ様です。正月の離島路線の値段はいかがでしたか?帰省が一段落して安いのか、それとも年末年始は高止まりなのか。
気がついたら、いつのまにかANAの三宅島路線がなくなっていたんですね。知らなかったです。
ということは、三宅島に飛行機で行くには、調布飛行場からしかないのか。
>おかでんさん
いや、ステータス修行はさすがに卒業しました…羽田那覇一日2往復とかやれる体力もないですし懐が…(笑
プラチナメッキも3月末で禿げます。
コロナ明けで需要喚起しててPP大盤振る舞いしてた頃に旅行してたら「…あれ?あと新千歳那覇乗っちゃえばプラチナ(5万PP)行けるんじゃね?」って感じだったのでノリっで取っちゃっただけなので。
面白かったですけどね。
島路線の値段はちょっと覚えてませんが、だいたい羽田小松線と同じくらいか福沢さん一枚二枚くらい安かったかなぁ。
八丈島線、国鉄の急行みたいな雰囲気で良かったです。
行きの搭乗口も島流し(67番→48番乗継)食らって、whillも無いルートなので車椅子のお世話になりました。
三宅島、噴火とか色々ありましたもんね。もし今も残ってればDHC-8-Q400(通称ボンちゃん)が飛んでて
そろそろATR42に世代交代ってなってるんでしょうか。乗ってみたかったなぁ…
ティータさん>
67番から48番というのはきつい!端から端ですね。
本日ミステリーツアーに参加 神津島でした 30分の港に降りると 海カメが湾内に居て出港すると イルカが舟の後を追って来て 行きは 罰ゲームだと思いましたが 結果オーライでした
Kさん>
いいですねー、神津島!本当に神津島を引き当てる人がいるのか!
というか、今もミステリーツアーをやってたんですね。知らなかったです。
一生の思い出になったのでは?素晴らしい体験でしたね!
行き先は決まってるんですが、船で往復するだけのツアーは
オレンジフェリーでもやってましたね。
でも確か、神戸発がド深夜なのでなかなかハードルが高そうでしたが…。
確か折返しの間も下船はなしだったような(ひょっとしたら事前申告でOKとかだったかも)
昼間の瀬戸内海が楽しめる、というのが売り文句だった気がします。
ティータさん>
もはや全国各地のホテルが軒並みインバウンド&人手不足&物価高&ダイナミックプライシングのせいで値段が高すぎる。
もうこうなったら、フェリーでのんびり旅をする、というのが一番安くて楽ちんかもしれない。ミステリーツアー的なことにしなくても、まだまだ集客できそうな気がする。
先日なんて、宮崎県にある日本百名山に東京から日帰りですよ。ホテルなんかが高すぎて、泊まるのが躊躇しちゃったから。特に熊本空港近辺だと、TSMC誘致の関係でかホテル高いっすねー。
>おかでんさん
宮崎の山へ日帰り?!…お、お疲れさまでした(^^;;;;
ティータさん>
ジェットスター朝7時15分成田発、というのは相当キツかったです。LCCなので保安検査場通過時間が厳しいし。
そのくせ、成田空港に着いてみると「機材手配遅れで出発は30分遅れ」と言われ、「やべえ、現地での登山時間が30分減ってしまった。山に登れるだろうか?」と別の意味でキツかったです。