離島で癒やされる筈が疲れた22時間【東海汽船ミステリーきっぷ】

15:08
帰りの船も1等客室だ。帰りは時間的に寝ないので、備え付けの布団は全く使わなかった。

布団を使わないなら、値段が高くなる1等客室を使う理由というのはほぼない。でも利用しているお客さんがそれなりにいたのは、おそらく僕らと同じく「ミステリーきっぷ」でこの島を訪れたからだろう。

先ほどの乗船の様子を見ていると、かなりの数のお客さんがこのさるびあ丸に乗り込んでいた。日曜午後とはいえ、オフシーズンとは思えない客数だ。ミステリーきっぷでお客さんが相当増えたんじゃないかと思う。

調子を取り戻した弊息子タケだが、寝ている間にお昼ご飯のラーメンもおやつのジェラートも食べ損なっている。お腹が空いた!というので、お土産用に買っていた「大島牛乳」とせんべいを食べさせた。

彼は熱心に牛乳をチュウチュウ吸い上げ、その殆どを飲んでしまった。おいちょっと待て、お父さんお母さんの分も残しておいてくれ。

我が家では、親の唾液を介して虫歯菌が子どもの口腔内に定着することに対して警戒している。そのため、親が食べかけのものを子どもに与えることはしないし、大皿料理などを直箸で取ることもしない。

そんなわけで、この牛乳も、まず子どもが飲んでから、残りを親が飲むという段取りになる。この際、タケが調子にのってグイグイと飲んだ場合、親二人の取り分が減ることになる。油断も隙もない。

タケはさっそく元気を持て余しはじめたので、いしがタケを連れて館内探検に出かけていった。昨晩は乗船後すぐに寝かせなくては!ということで館内探検が全くできなかったからだ。

僕は客室に留まって、家計簿をつけたり写真の整理をしていたのだが、しばらくすると館内放送が流れ、「お子様がデッキを走り回ると危険です。ご家族はお子様の手をしっかり繋いでお歩きください」といった内容が告げられた。あー、これ、うちの子だな。他にも子どもは乗船しているだろうけど、たぶんタケだわー。

しばらくして母子ともに戻ってきた。やっぱりタケは船という非日常エキサイティング空間に喜び勇み、走ってしまったんだそうだ。

その後客室内で時間を過ごしたのだが、タケはすっかり退屈してしまった。「東京までまだ時間があるんだから、お昼寝しなさい」という親の呼びかけを聞こえないふりでやりすごし、毛布を引きずって室内をウロウロしはじめた。

同じ部屋の人の迷惑になるからやめなさい、と言ってもなかなか言うことを聞かない。困ったものだ。

こういう船の場合、デッキに出る以外で談話室のような場所がない。デッキは1月ということもあって長時間滞在するのが厳しい寒さだ。子どもが飽きずに過ごすのは、なかなかむつかしい。

絵本やひらがなカードなど、タケ用暇つぶしツールは用意してあった。でも、船内で細かい文字をじっと見ていると、船酔いしてしまいそうだ。大人は「あ、そろそろ気分が悪い」と自制がきくけど、子どもの場合はいきなりゲーと吐きだしそうだ。それは大変危険なので、船酔いを誘発する遊びはやめておきたい。

17:48
船は横浜にやってきた。写真は、レインボーブリッジ。その奥に富士山のシルエットが見える。

最近のスマホで撮影すると、ご覧のような嘘くさい絵ができあがる。一見綺麗だけど、もっとナチュラルな絵のほうが僕は好きだ。一眼カメラも持参しているのだけど、これだけの夕暮れ時の撮影ともなると、ブレてしまう。その点スマホは、夜の撮影でも失敗が少ないのはほれぼれする。

「なんだ、横浜に立ち寄るのか」

おもわずぼやいてしまう。どうも、土日のさるびあ丸は往復ともに横浜大さん橋に寄港する運航スケジュールになっていえるらしい。平日は横浜を経由しない。横浜を経由する結果、東京に帰着する時間はその分遅くなる。

僕ら夫婦が帰宅が少々遅くなるのは一向に構わないのだが、2歳児のタケにとっては帰宅と就寝が遅くなるのはまずい。翌朝、「ネンネしたいよぅ」と号泣し、「保育園いかない!」とダダを捏ねていしを困らせるからだ。家が殺伐とする。

だから、暇な船の上でできるだけ昼寝をして欲しいのだけど、彼はたとえうたた寝でも一旦目を覚ますとそれ以降は寝ようとしない。

17:56
東京行きさるびあ丸のレストランが夕食営業を開始するのは18時からだ。船の到着までもうあまり時間を残していないタイミングでの営業開始となる。

せっかくだからディナークルーズとしゃれこもうじゃないか、ということでレストランに向かう。とはいっても、船の上の食事というのは値段が高くて、味は微妙、そして店内は色気が全然ないというのが僕のイメージだ。

いかしいしは「食べておきましょう」と力強く言う。それはディナークルーズという色気ではなく、今のうちにタケに夕食を与えておいて、帰宅後すぐにお風呂に入って眠れるようにしておこう、という母心の賜物だ。

メニューはいろいろあるのだけど、大きなボタン6つに割り当てられた料理だけを紹介すると

孤独のグルメでも話題!!食堂とだかのカレー 1,600円
トマト&アボカドのパスタ スープ付き 1,300円
島海苔塩ラーメン 1,200円
ジャンボエビフライカレー 1,500円
旨辛チキン丼 1,200円
豚の角煮丼 1,500円

だった。

レストランの客席。

椅子が揺れでズレないようにチェーンで床にくくりつけられていたり、テーブルもお皿やお盆がズレないようなザラザラした表面加工になっていたりする。

奥が島海苔塩ラーメン 1,200円、手前が明日葉カレー1,200円。

ボリュームとしては今ひとつだが、「船で食べることができる」という付加価値をかんがえると、この値段でも妥当だ。

「船の上、という独占状態で営業をしているからボッタクリ価格」だなんてこのご時世じゃ言えない陰口だ。なにしろ、労働力不足は深刻。労働力確保のためにも、高い料理の値段はやむを得ない。

18:10
タケはラーメンを食べていた。まだフォークの持ち方が2歳児なりの変なスタイル。

彼に明日葉カレーを薦めてみたが、「いらない」と一蹴された。カレーライスそのものは嫌いじゃないはずだが、この明日葉カレーはちょっと不穏な雰囲気を感じ取ったらしい。

そうこうしているうちに、なにやら船がどやどやと騒がしくなってきた。横浜港から大勢のお客さんが乗ってきたからだ。えっ、横浜って、伊豆諸島から乗ってきたお客さんがもっぱら降りる用の船着き場だと思ったのに、ここから乗るの?竹芝桟橋まで?

僕は全く知らなかったのだが、横浜~竹芝の短距離乗船もできるのだった。ただし期間限定で、いつでもやっているわけではない。

東海汽船株式会社 | 伊豆諸島へ行...
404 Not Found|東海汽船 伊豆諸島への快適な船旅をご提供する東海汽船の公式サイトです。運航状況や時刻表、運賃表、予約方法、空席状況など船のご利用案内から、伊豆大島や新島、式根島、八丈島な...

運賃は大人1,000円。あれっ、安い。横浜大桟橋というのはちょっとアプローチが悪い場所だが、それでも良いなら楽しいクルーズが楽しめる。所要時間1時間35分で、ベイブリッジ、羽田空港、レインボーブリッジを満喫できる。

横浜から乗ってきたお客さんは明らかに客層が違う。若い女性が中心という印象だった。なんだなんだ、とあっけにとられていたら、SPY x FAMILYのポスターや看板の前で記念撮影をしまくっていた。どうやら、そっち系のファンの方が大勢含まれているようだった。

食堂もあっという間に満席。店の外に長蛇の列ができていた。長蛇の列の人たち、竹芝桟橋に着岸するまでに食事に間に合ったのだろうか?

何やら横浜から乗ってきた勢が船の中を闊歩しながらチュロスを食べている。

どこでそんなチュロスを仕入れたのだろう?と思っていたら、デッキのところに売店が出現し、そこでスナックを売っていたのだった。チュロス、プレッツェル、唐揚げ、ポテトフライ、クラムチャウダー、ミネストローネなど。へえ、これはこれでうまそうだ。

19:45、竹芝桟橋着岸。22時間足らずの伊豆諸島ミステリーツアーはこれにて終わった。


伊豆大島の旅、という点では安く行けたとはいえ物足りないものだった。せっかく島に渡るなら、もっと時間を確保したいし、交通手段もちゃんと確保したい。最初、伊豆大島現地滞在時間8時間半と聞いて「長い。三原山登山でもしない限り、なんでもできる」と思っていたが、実際は全然足りなかった。8時間半で、ようやく味見をした程度だ。

もう一度、改めてゆっくり伊豆大島を家族全員で訪れたいものだ。その際は島への移動はもっと時間を短縮したい。限りある時間を有効に活用するために、高速船か飛行機を使いたい。

(この項おわり)

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コメント

コメント一覧 (4件)

  • 利島(以遠)タッチを目論んでたら大島ターンになっちゃったと。
    飛行機でのステータス修行風に言うとこんなとこですね。
    おととし全日空のプラチナ目指してた時は小松ー羽田ー那覇ターンとかやってたので
    交通機関は違いますが何となく懐かしく読んでます。
    那覇だとわりと何でもあるので、乗り継げる最終便まで4時間空いても何とかなるんですが
    大島8時間はちょっとキツそうですね。タケ君の興味と集中力が8時間続くよう、お祈りしときます(笑

    能登の地震当日は飛行機で八丈島タッチやってました。
    機窓からの景色は最高でしたが、足止めは余計でした…

  • ティータさん>
    元旦から修行ですか?お疲れ様です。正月の離島路線の値段はいかがでしたか?帰省が一段落して安いのか、それとも年末年始は高止まりなのか。

    気がついたら、いつのまにかANAの三宅島路線がなくなっていたんですね。知らなかったです。
    ということは、三宅島に飛行機で行くには、調布飛行場からしかないのか。

  • >おかでんさん
    いや、ステータス修行はさすがに卒業しました…羽田那覇一日2往復とかやれる体力もないですし懐が…(笑
    プラチナメッキも3月末で禿げます。
    コロナ明けで需要喚起しててPP大盤振る舞いしてた頃に旅行してたら「…あれ?あと新千歳那覇乗っちゃえばプラチナ(5万PP)行けるんじゃね?」って感じだったのでノリっで取っちゃっただけなので。
    面白かったですけどね。

    島路線の値段はちょっと覚えてませんが、だいたい羽田小松線と同じくらいか福沢さん一枚二枚くらい安かったかなぁ。

    八丈島線、国鉄の急行みたいな雰囲気で良かったです。
    行きの搭乗口も島流し(67番→48番乗継)食らって、whillも無いルートなので車椅子のお世話になりました。

    三宅島、噴火とか色々ありましたもんね。もし今も残ってればDHC-8-Q400(通称ボンちゃん)が飛んでて
    そろそろATR42に世代交代ってなってるんでしょうか。乗ってみたかったなぁ…

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