[05/06 PM15:47 No.076 道の駅 大谷海岸(はまなすステーション) 累積走行距離2637.2km]
「あれ?」
気がついたら宮城県に入っていた。うっかり標識を見落としてしまった。県をまたぐ瞬間というのは、こういう旅をしているわれわれにとっては非常に誇らしい気持ちになる、数少ないひとときなのだが・・・。
宮城県上陸。これにて、東北全ての県には足を踏み入れた事になる。5日目午後にして、ようやくこの旅は終わりに近づいて・・・ないなあ。まだ。
岩手県を通過したけど、いまのところ県内26カ所の道の駅のうち、10カ所しか制圧できていない。明日、また岩手県に再上陸して落ち穂拾いしていかないと。
道の駅大谷海岸は、駐車場にほとんど車が停まっておらず閑散としていた。不人気な道の駅なのだろうか。
やや!道の駅、営業していないではないか。
建物の前で呆然と立ちつくす二人。慌てて、手元のスタンプ台帳を確認してみる。「定休日は第一・第三月曜日(祝祭日の場合は翌日)」と記載されているので、今日は定休日ではないはずだが・・・ああそうか、ゴールデンウィークのせいで定休日が後ろにずれてしまい、平日の今日にお休みをとったということか。
「平日といってもまだGWの間じゃんか!営業すりゃいいのに!」
としぶちょおご立腹。彼は、この道の駅で飼育されているマンボウを見るのを楽しみにしていたため、落胆もひとしおだった。
まだ太陽が高い位置にあるのに、スタンプ紙を受け取る。
おっと、ここで76番目の道の駅。完全制覇まで残り30になったぞ。
この道の駅大谷海岸は、JR気仙沼線の大谷海岸駅と繋がっている。そして、その大谷海岸駅は「日本一海水浴場に近い駅」なんだと。
「海に近い駅」と言わないで、「海水浴場に近い駅」というのが味噌だな。何だか、凄いんだか凄くないんだかよくわからないキャッチコピーだ。
どれどれ、確認してみよう。
ひょいと覗いてみると、確かに道の駅の裏手にはホームがあった。
で、そのホームと線路をまたぐかたちで陸橋があって、陸橋を渡りきったところが松原、そして
海。
まあ、近いといえば近いな。車は持っていないけど、海水浴に行きたい!という人にとっては非常に都合が良い立地条件とは言える。
海沿いドライブはここで終了。これから内陸に向かっていく。
次の目的地、「林林館」に向かっている最中、県境を示す標識を発見した。
「あれ?こんなところで県境?」
地図を確認すると、国道346号線は僅かながら岩手県を通過するルートになっていた。
「なるほど、そりゃいいや。せっかくだからさっき撮り損なった宮城県突入!の写真を撮っておこう」
やらせ写真大好き。
本当は、岩手県に再突入!のシーンなのだが、岩手県側に回り込んで、宮城県にたった今突入しましたよ!という写真を撮影。
「良かった、これで心おきなく宮城県を走り回る事ができる」
と満足して道を進むと、今度は立派な宮城県標識が出てきた。
「これも撮っておかないと!」
あわてて車を停めて、ここでも撮影。
宮城県は道の駅が非常に少なく、全部で9カ所しか存在しない。しかも、「1.七ヶ宿」を除けば比較的密集して存在しているのがありがたい。ここはボーナストラックとして、一気に攻めておきたいところだ。
「七ヶ宿」は最終日に残しておいて、それ以外の8カ所を攻略してから、再度岩手県に入るという段取りだ。そろそろ日没、今日はどの辺りまで行けるだろうか?
[05/06 PM16:29 No.077 道の駅 林林館(森の茶屋) 累積走行距離2665.2km]
国道346号線沿いにある道の駅。
記念撮影して次へ。
宮城県2番目の道の駅制覇。
「9カ所しかないから、非常に気が楽だよな。もうカウントダウンできちゃうもの。宮城県制覇まであと残り7カ所!」
「でも、1カ所だけは最終日になるわけだけど」
「それが悔やまれるんだよなあ」
[05/06 PM17:01 No.078 道の駅 津山(もくもくランド) 累積走行距離2684.9km]
夕方になると、だんだんわれわれはせわしなくなってくる。傾く夕陽がそうさせるのかもしれない。黙々とスタンプを押して、またすぐに旅立っていく。
というわけでもくもくランド道の駅津山。
ここは敷地が広く、いろいろ建物があって立派な道の駅だった。庭がよく整備されていたし、敷地内には工芸が楽しめる施設があるし、ピクニックにやってきてもいいんじゃないか。半日は遊べるだろう。
手前の手打ち蕎麦屋にやや惹かれたが、この時間だとおやつにも夕食にもならないのでしみじみと却下。
建物正面。
なんだか、ウィスキー醸造工場みたいな重厚長大な建物の印象。
もくもくハウスという字が何となくびっくりドンキーのロゴで使われているフォントと似ているのがちょっとだけ楽しい。
道は平野部を走るようになり、快適に進めるようになった。
走行中、道路脇の建物に書かれていた標語。
「若人よ緑の大地で生きぬこう」
そして、どうみても70年代か60年代のファッションをした笑顔の若い男女が。
うーん、この時代の若人は既に中高年になっとるぞ。
突拍子もないこの表示に度肝を抜かれたが、「米山町後継者結婚推進協議会」という組織が作ったものらしい。PR効果があるかどうかは疑問。
[05/06 PM17:32 No.079 道の駅 米山(あぐりパーク) 累積走行距離2703.0km]
そんな後継者不足に悩む米山町なわけだが、道の駅の名前が「あぐりパーク」といって、農業を前面に押し出している。緑の大地で生き抜いているなあ。
特に記憶が残っていないので、説明省略。
[05/06 PM18:25 No.080 道の駅 おおさと(大郷ふるさとプラザ) 累積走行距離2737.9km]
本日の最南端道の駅、おおさとに到着した。
まだ宮城県には「1.七ヶ宿」という道の駅があるが、一つだけぽつんと離れているうえに福島県境近くなために、後回しにする。ここから大反転し、今晩これからと明日一日をかけて、青森県境近くまで攻めあがっていく。せっかく今日南下した分を、全て徒労とさせるほどの大移動だ。
今朝の時点では、ここ「おおさと」まで今日中に進軍できればいいかな、と思っていたのだが、まだ時刻は18時半。ちょうど脂が乗ってきたところだ。予定を繰り上げて、もう少し先まで進むことができそうだ。
車中で地図を見ながら議論した結果、今日中に岩手県内に侵入しておこう、という事に決めた。すなわち、「6.おおさと」の次に「3.三本木」>「8.あ・ら・伊達な道の駅」>「4.路田里はなやま」と進み、岩手県の「24.厳美渓」で泊、というスケジュールだ。時間的にも問題はないだろう。
しかも!今回はグレードが高いぞ、時間が余りそうなので「8.あ・ら・伊達な道の駅」の後、近くにある鳴子温泉でお風呂だ。東北三大名湯の一つ、鳴子温泉に浸かろうってぇんだからぜいたくだ。そういえば、最後にお風呂に入ったのは1日前の朝、酸ヶ湯温泉だったっけ。つくづくよくやるよな、僕ら。風呂に入る時間すら惜しんでいる状況かよ。
で、食事は「24.厳美渓」に向かう途中、一関でとればいい。一関は東北新幹線も停まる駅だ、夜遅くても飲食店くらいはあるだろう。素晴らしい、ばっちりな計画だ。今晩は楽しくなりそうだ。ええと、一関の名物って何だろう。
※後で調べたら、一関名物は「餅」だそうです。
「おおさと」と書かれたのぼりがあったので、記念撮影。
しかし、奥に「仙台銀行」のATMがあって鈍く光っていたため、何の記念撮影だかわからなくなってしまった。
館内にはいろいろな物産品が売られていた。「ほー」と感心しながら、とはいっても比較的早足で通過していたのだが、店員さんにお誘いされて、あれこれとお話を聞かせて貰った。まるでデパートの地下食料品売場みたいに、あれこれと話をしながら「これがお勧めです」なんてセールストークを受けた。
結局、どうやらこの地が名物らしいモロヘイヤの粉末を購入。青のりみたいになっている。他にもモロヘイヤラーメンやら何やら、モロヘイヤ商品が目白押しだったのだが、あえて当たり障りのないところで。
ほうれん草と比べてはるかに栄養価が高いということで、最近人気が高い野菜だという。知らなかった。お通じが良くなるから便秘気味の女性にお勧め、という認識しか持っていなかった。
[05/06 PM19:00 No.081 道の駅 三本木(やまなみ) 累積走行距離2755.9km]
日が暮れた。本日も夜間合宿の幕開けだ。道の駅もどんどん締まり始める時刻。
ここ「三本木」は、「やまなみ」という別名がついているにもかかわらず何だか車がびゅんびゅん走っているところにあった。主要幹線道である国道4号線沿いにあるので、道の駅=田舎にある、というイメージとはちょっと違う。まあ、そうはいっても周囲は民家がそれほど多くない田舎なのだけど。
しかもこの道の駅、国道4号線からの入り方や作りがサービスエリアっぽくなっていて、なんかちょっと他の道の駅とイメージが違う。
さあて、周りが暗くなってきたら記念撮影するのに時間がかかるようになってきたぞと。道の駅を示すもので、暗いところでも写真に収まるような被写体が減ってくるし、できるだけフラッシュは焚きたくないので「できるだけ明るいところ」で撮影しなくちゃいけないし。
[05/06 PM19:38 No.082 あ・ら・伊達な道の駅 累積走行距離2781.0km]
東北道の駅の中でもっとも変な名前なのが、ここだ。というか、ふざけとるとしか言いようがない。仙台が産んだ英雄「伊達政宗」とかけているんだろう。そして、「伊達男」にもかけているんだろう。そして、「あ・ら」ときたもんだ。ここのオーナー、すげぇセンスだ。
※ちなみに、「伊達男」の由来は伊達政宗が派手なモノを着用していたから、という説がありますが、これは間違い。
タイトルに「○○ DE △△」というネーミングを施すのは、21世紀のご時世においては相当お寒いわけだが、この道の駅のように「あ・ら・伊達な道の駅」というビーンボールを投げられたら、驚愕のあまり感心するしかない。
車中、われわれは呼びやすいようにこの道の駅を「アラダテ」と呼んでいた。
「さあ、どこが伊達なのか見てやるぞ」
「おお、あの石垣っぽくなっているあたり、伊達じゃないか」
「どこが?」
建物の入り口に、ででーんと伊達政宗公がお出迎え。こっちをぎゅっと睨み付けている。伊達男だねぇ。
ここは、コンビニが併設されておりまだ建物は営業中だった。コンビニと言っても21時30分で閉店するのだが、まだ時間に余裕はある。夜であっても、こうして施設の中に入れるとほっとする。
建物の真ん中は、円柱状の建物になっていて、中は吹き抜けになっていた。吹き抜けの中には、既に昨日をもって今シーズンの活動を終えたはずの鯉のぼりがつり下げられていた。外の風にあたっていない鯉だから、さしづめ養殖といったところか。
吹き抜けの真下は椅子と机が並べられており、休憩ができるようになっていた。われわれは、頭上の鯉を見上げながら、しばし時間を過ごした。
さあ、アラダテも終了。今日は大絶好調だ。ここで本日18番目の道の駅クリアということになる。にもかかわらず、時刻はまだ20時前。
これは、予定通り鳴子温泉に行くしかあるまい。
鳴子温泉には二つの共同浴場があり、そのうち風情があって圧倒的な人気を誇るのが「滝の湯」だ。営業時間は22時までなので、当初「アラダテに21時までに到着できなかったら鳴子温泉は諦めよう」という話をしていたのだが、十分に余裕がある時間に到着できそうな予感。アラダテから鳴子温泉まではほど近い。20時過ぎには湯船に漬かれるんじゃないか。
「いいねえ。名湯に浸かる旅。酸ヶ湯温泉に続いて、この旅二番目になるな」
二人とも、そわそわしながら鳴子温泉を目指した。
夜の鳴子温泉に到着。ゴールデンウィーク中とはいえ、平日なためにそれほど人は多くないようだ。いや、お客さんが居たとしても、この時間は宿の宴会料理に舌鼓を打っている最中で、外を出歩かないか。
滝の湯の真正面に路駐するのは気がひけたので、やや離れたところにある無料の駐車場に車を停めた。温泉街の中に無料駐車場があるというのは非常にありがたいことだ。
タオルをひっさげて、滝の湯へ。
滝の湯の効能。
酸性-含硫黄-ナトリウム-アルミニウム-カルシウム-鉄-硫酸塩泉
なげぇ。含まれている成分を全部列記したんじゃないの、という長い名前だ。カッコつけた料理屋のメニューみたいだ。
中にはいると、浴室には誰も居なかった。前回来たときは芋洗い状態だったわけだが、時期と時間を外すと全然様子が違うもんだ。こんなぜいたくな空間を独り占め・・・ああ、しぶちょおが居るから二人占め・・・できると思うと、すごく得した気分になる。
まずは、風呂に入る前に湯船の写真を。誰か来たら困るので。脱衣所の隅から、できるだけ遠距離で撮影を試みる。何回かブレながらも、なんとか撮影成功。
撮影という儀式を済ませたのち、今度はわれわれが湯船に浸かって撮影。とにかく、まずは「記念撮影」という行事が済まないことには、食べるのも、飲むのも、進むのも、風呂に入るのもおあずけされるというのがアワレみ隊流の旅だ。
結局、最後まで他のお客さんはやってこず、二人っきりの「奥州三大名湯」を満喫することができた。ああ、いいなあ。幸せだなあ。
まだ時刻は20時を過ぎたばかり。今日のノルマはあともう一カ所を訪れるだけだ。楽勝、楽勝。じゃあ、手抜きをしたかというと、結局ノルマ通りいけば本日は19カ所制圧ということになるわけで、過去最高に数を稼いだ事になる。エンディングに向け、さらにここで加速したといえる。
・・・にもかかわらず、こうして早い時間にお風呂、だ。わはは。この勝負、貰った。
すっかりご機嫌になったところで、お風呂から出た。早くもおかでんの頭の中には、今晩のビールをどの料理で食べるのがベストか?という事が頭をちらつきだした。もう一つ道の駅があるし、夕食ポイントの一関はまだ当分先だ。気が早いっての。
しぶちょおは「まだ時間があるし、今日の就寝場所である厳美渓はクリアしちゃって、もう一つ先のかわさきまで進んではどうか?」と提案してきたが、強固に「駄目!もう僕はビール気分なの。今日はあともう一つでお仕舞い!湯冷めしないうちにビール飲まなくちゃ!」と主張、強引に本日の終着点を「厳美渓」に決めてしまった。時間が早けりゃ早いなりに、さっさと寝たい。眠りに落ちる直前に、「ああ、今日はこんなに早く眠れるんだウフフ」とほくそ笑みたい。
先ほどの風呂の気持ちよさについて、上気した体をゆすりながらコメントしながら駐車場へ戻る。さあ、あともう一踏ん張り、本日のノルマをやっつけましょうかね。
・・・
!!!!!!
なんだ、これは。
駐車場入口が、チェーンでふさがれている!
あわてて二人ともチェーンに飛びついてがちゃがちゃやってみたが、南京錠でがっちりととめられているため、外すことができない。
「駄目だ、入り口をふさがれた!」
絶望感いっぱいの声が、鳴子の町に響き渡った。
あわてて別の出口を探すが、そんなものはどこにもない。なんてことだ、せっかくいい調子できたのに、ここで足止めか?
まだ、焦りというよりも驚きの方が際だっている時、おかでんが「あ!」と素っ頓狂な声をあげた。
チェーンにて仕切られてしまった駐車場入口の脇に、看板がでていた。
「鳴子温泉 湯めぐり 臨時駐車場」
と書かれている。
この臨時駐車場は、鳴子町役場、早稲田桟敷湯及び鳴子温泉街をご利用のお客さまのためのものです。それ以外の方々のご利用や長期間の駐車はご遠慮願います。
なんてまあ当たり障りのない事が書かれているすぐ下に、
利用時間は午前8時30分より午後8時までとします。
上気時間以外は入口を施錠しますのでご利用できません。
なんて書いてある。しかも、注意を喚起するために赤字で。うわぁ、全然気づかなかった。そんな馬鹿な・・・。大げさでも何でもなく、二人ともその場に膝から崩れ落ちてしまった。ひどい。酷すぎる。
この駐車場に車を入れたのが20時ちょうどくらい。ということは、われわれが呑気にタオル片手に温泉に向かって歩いている頃には、もうゲートが閉じられていたということか。タッチの差だ。
「まさか、今晩はこの駐車場で一泊・・・。」
考えただけでがっくりだ。今日の最終目的地だった厳美渓まで、ここから80キロ近くある。これを今日、無駄にしてしまうというのはスケジュールに与える影響は甚大だ。いや、それだけじゃない、今までは朝7時には移動開始だったのだが、ここに閉じこめられている以上、朝の8時半までは待機していないといけない事になる。にわかには信じられない、信じたくない現実を目の前に急に突きつけられた状態だ。
「夕食だって、一体どこで食べればいいのやら・・・」
まあ、夕食は温泉街なので赤ちょうちんにでも行けばいい。なんとかなるだろうけど、風呂に入りながらあれこれ考えていた夕食プランはこの地じゃ無理だ。あーあ、全てが怪しい雲行きになってきたぞ、と。
今日と明日のロス分を考慮すると、ざっと3時間以上。いくら今日は絶好調で前進できたとはいえ、残り2日の段階で3時間時間を無駄にしたとなれば、ちょっとゴールがおぼつかなくなってきた。今日ここでフィニッシュとした場合、残り2日で24カ所。1日あたり12カ所の移動ということになる。・・・一見簡単そうに見えるが、実際は非常に厳しい。というのは、一度岩手県の最北近くまでぐねぐねと道の駅を制圧してから、東北自動車道で一気に南下して宮城、福島の残りの道の駅を制圧するという段取りとなっているわけだが、ものすごく距離が長い。今までとは比較にならないくらい、長距離移動になる。加えて、最終日、ゴール地点として予定されている「はなわ」には営業時間内に到着できないといけない。なぜなら、スタンプ台帳の提出を道の駅職員にしなければならないからだ。営業時間外の到着だったら、「はなわ」駐車場にて一泊しなければならなくなる。
ということは、残された時間は実はものすごく少ない。明日朝8時30分に身柄解放されたとして、残り時間は35時間30分(はなわの営業時間は18時まで)。35時間30分で24カ所?1時間1カ所ペースで進んで、食事と睡眠時間を確保したらもういっぱいいっぱいだ。・・・どう考えてもクリアできないじゃん、これだと。うわぁ。
鳴子温泉にとんでもないトラップが潜んでいた!旅そのものがアウトになりそうな、とんでもないトラップだ。双六の「一回休む」なんてのと訳が違う。12時間も足止めって・・・そりゃ、ゴールできませんよ、このままじゃ。
とりあえず、二人がかりでチェーンを持ち上げてみる。たるみを目いっぱい上に掲げてみたが、微妙に高さが足りない。このまま車で突撃すると、チェーン、車ともに甚大なダメージを与えそうだ。自分の車が傷つくだけならともかく、器物破損となると犯罪だ、それはできない。
「いかん、こうなったら駐車場の管理者にかけあって鍵を解放してもらわないと」
管理を行っている早稲田桟敷湯にかけあって鍵を開けて貰おう、ということになった。さすがにここで一泊は考えたくない選択肢だ。
「いや待て、ちょっと待てよ」
しぶちょおが何かに気がついたようだ。この凶悪なチェーンだが、南京錠の取り付け位置がちょっと変わったところにある。よく見ると、2本のチェーンを南京錠で繋いでいる作りになっていた。それだけなら解決のしようがないのだが、チェーン同士の繋ぎ方が、輪っかと輪っかを南京錠で繋いでしまう形態ではなかったため、しぶちょおがしばらく南京錠をがちゃがちゃといじっていたら・・・あら。まるで手品のように、チェーンがゆるんでいくではないか。
「!!」
「おお!」
地獄で神を見た、とはまさにこのことだ。ほどなくして、さっきまでのチェーンとはうってかわってだらりと垂れ下がった状態にまでゆるませることができた。
「これくらい弛めれば、脱出できるんじゃないか?」
試してみた。
行ける!行けるぞ!
絶対無理と思われたチェーンくぐりが、今まさに達成されようとしている。素晴らしい!
まだ道の駅の神様は、われわれを見捨ててはいなかった。ここで脱出ができるということは、まだ全駅制覇の夢を諦めなくて良い、という事だ。
脱出完了。
「ふぃー」
「助かったぁ」
二人とも、深い溜息をつく。今度こそもう駄目だと思っていただけに、チェーンの外側に車が停まっているという事実はものすごく感慨深いものだった。
「じゃ、チェーンはもとに戻すよ」
としぶちょおは言い、先ほどと逆の手順でがちゃがちゃと操作をしていたら、不思議なことに、チェーンはどんどん締まっていった。
最後、何事も無かったかのように復旧させて、鳴子の町を後にした。
「いやぁ。ボーナストラックって感じだな今」
二人とも、まさかの脱出劇でテンションが高い。
「もう駄目かと思っていたからな。こうやって先に進めることが奇跡のようだ」
[05/06 PM21:28 No.083 道の駅 路多里はなやま(自然薯の館) 累積走行距離2819.0km]
本日最後の道の駅、路多里はなやまに到着。最後といっても、まだ夜の9時過ぎだ。いつもよりちょっとだけ終了宣言をするのが早い。
・・・夜の9時で「終わるのが早い」と思うというのは、ちょっと異常ではあるのだが。今日は朝の7時から行動開始しているので、ざっと14時間。よくやるよ、まったく。
この道の駅は、山あいにあるために夜にもなると人気が全くなかった。街灯があるものの、全般的に真っ暗な道の駅だった。
暗闇の中、スタンプを探す。「大体ここら辺にあるだろう」と目星をつけて探すのだが、なかなか見つからない。やや焦り始めた頃になって、ようやく見つけることができた。
・・・木の台の上に、ちょこんと乗せられていた。暗くてなかなか気づかなかった。それにしても道の駅ごとでスタンプの置き方って全然違うんだな。
本日19カ所制覇完了。お疲れさまでした。
この道の駅、お昼時にくれば自然薯料理が食べられるんだろうが、さすがにこの時間には営業をやっていない。思い返してみれば、道の駅で夕食を食べた事ってないな。夕食時は、自然と「もっと先に行かなくちゃ」と気が急いている時だからだろう。あと、道の駅は総じて閉店時間が早い、というのも一因か。
自然薯は食べられなかったが、一関あたりに行けば何か良さげなものが食べられるだろう、ってことで車は一関に向かった。一関、そこはもう岩手県。またここから、岩手県逆戻りで道の駅制覇に賭けることになる。
しかし、相変わらずの事だが、郊外型店舗でこちらが期待する旅情の食堂なんてなかなかあるもんじゃない。しかも、国道4号線という東北地区の最重要幹線道路沿いに。あるといえば、牛丼屋やラーメン屋、せいぜいファミリーレストランだ。
「ああ、やっぱりなかなか無いモンだねえ」
と、当たり前の現実にがっかりしていたら、左前方にびっくりドンキーを発見。
「た、大変です、前方にびっくりドンキーを発見いたしました!」
「あ。・・・しゃーないなあ、見つけちゃったもんは仕方あるまい。入るしかないだろう」
なぜか、アワレみ隊は「食事時にびっくりドンキーを発見してしまったら、有無を言わさずに入店してしまう」という変な習性がある。今回も、その習性に従って、問答無用でびっくりドンキー入り決定。
「理不尽な気もするけどな」
「でも、お店があるんだからしょうがない。素通りはできないだろう」
「できないねえ」
訳のわからない論理だ。
風呂上がり&奇跡の脱出劇&本日19駅制覇というおめでたい事づくしなので、大ジョッキを注文してみた。そして、ぐいーっと飲んでみた。
ああ、やっぱ美味いわ。たまらんですな。
うれしくなっちゃって、ついつい400gのハンバーグを注文してしまった。でかいなあ。でも、これくらいがっつりと食べたくなるような、そんな達成感と満足感に包まれているのが今。
同じ心境で、ハンバーグをがっついているしぶちょお。
ひととおり飲み食いして、満足したところで退却。この日は、道の駅厳美渓まで車を進め、駐車場の片隅でテントを張った。野宿二連ちゃん。
さて、残りあと2日。果たしてクリアできるだろうか。何となく大丈夫そうな気がするのだが・・・。
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