アワレみ隊奥のマゾ道

2004年05月07日(金曜日) 6日目

【再掲】東北道の駅全マップはこちら
//www.thr.mlit.go.jp/road/koutsu/Michi-no-Eki/touhoku.html
事前に地図を確認して、どのルートで行くのが最短になり得るのか、考えてみよう。

ちなみに、随時新しい道の駅ができているため、2004年5月時点よりも増えています。現在の道の駅MAPと見比べながらこの連載を読破していくと、「ヘンなルートを通ってるな」「あれ?道の駅を一カ所飛ばしてるぞ」というところが随所にでてきますが、時代の流れということでご了承を。

厳美渓

道の駅厳美渓駐車場にて夜が明けた。

相変わらず、朝テントから出てみて「あら、こういうところだったのね」ということに気がつく。

厳美渓、という名前からして、もっと山間部かと思っていたが、周りは非常にのどかな田園風景だった。

われわれの車は、必要以上に広大な駐車場の一番隅に置いて、そのさらに外側にテントを張っていた。

企画は6日目。幸い、二人とも体調は問題がない。体が弱い人だと、おそらくこの企画は乗り越えられないだろう。朝から晩までひたすら車で移動して、その後テント泊。普通、我慢できない。

広い駐車場はがらん

まだ朝7時前。平日ということもあって広い駐車場はがらんとしていた。

駐車場をてくてくと歩き、道の駅のお手洗いで身繕いをする。随分とこういう生活が馴染んできたなあ・・・とつくづくと思う。当たり前のように毎日を過ごしているわれわれ。

ういえば似たような事が以前あったな、と思い出したのが「四国八十八カ所巡り」企画のとき。あれも6泊7日でお遍路さんをしたわけだが、一日に何十回も般若心経を唱え続けている生活が「当たり前」になっていった。お遍路を完遂して、企画が終了した時は「般若心経唱えない生活ってどんなになるんだろう?」って想像ができなくなってしまったくらいだ。

今回も、それに似ている。

テントを乾かす

朝起きてまずやることは、寝袋干しとテント干しだ。

アスファルトの上にテントを設置しているので、地面から湿気があがってくるということはほとんどないのだが、念のために上下逆さまにして干す。そして、折り畳む際には誰かがテントをマントのように両手いっぱいに広げ、「わーっ」とそこら辺を走り回る。少しでも乾燥するように、という配慮だ。これをしておかないと、次回使うときにカビくさくなってしまう。カビくさいテントで寝るのは精神的にも、体的にも良くない。

調理機材を展開するような大かがりなテント泊ではないので、寝袋、テントマット、テント本体を手際よく畳めばもう撤収準備完了。

[05/07 AM07:13 No.084 道の駅 厳美渓(もちと湯の里) 累積走行距離2866.6km]

6日目スタート。7時行動開始の予定がちょっと遅れてしまったが、まあ鳴子温泉で雪隠詰めに遭うよりはましだ。

道の駅 厳美渓

さあ、明日の18時までにゴールしないといけない。残り22カ所。達成できるかな、どうかな?

本日の行程は、昨日びっくりドンキーで料理を待ちながら議論済みだ。今日は、岩手県の落ち穂拾いということで、岩手の背骨部分を北上していく。

「24.厳美渓」>「26.かわさき」>「10.みずさわ」>「5.種山ヶ原」>「17.遠野風の丘」>「13.みやもり」>「23.とうわ」>(花巻市街でわんこそばチャレンジ)>「19.錦秋湖」>「1.石鳥谷」>「14.紫波」>「15.はやちね」>「3.区界高原」>「22.雫石あねっこ」>「11.にしね」>「21.石神の丘」>「20.くずまき高原」>(岩手市街で冷麺などに舌鼓、泊)

といったルートを想定。本日はジグザグに、しかも山の中を移動するためにどこまで進めるかは不明。とりあえず行けるところまで行く。「くずまき高原」まで到着できれば、これにて岩手県は完了となる。そうすれば、あとは宮城県と福島県の7つのみ、ということになる。最終日、十分に時間の余裕をもってゴールインできる数だ。よし、終わりが見えてきたぞ。

今回のトピックとしては、お昼に花巻市街でわんこそばを食べる、という企画を挿入している。以前花巻に行ったとき、「わんこそばは2名様以上じゃなくちゃ駄目よん」と言われて悔しい思いをしたのだが、今回は2名きっちりいるので問題ない。イベントを移動の途中に入れてもいいや、というくらいの時間とココロの余裕ができてきたというわけだ。これは楽しみ。

[05/07 AM07:43 No.085 道の駅 かわさき(川の灯(あかり)) 累積走行距離2890.8km]

一関を越えて、かわさきを目指す。一関といえば平泉の中尊寺金色堂だが、当然のようにスルーする。もう、この生活に慣れきってしまっているので、今更観光名所をスルーパスすることくらい何とも思わなくなってきた。

道の駅 かわさき

普通、道の駅は国道沿いに位置しており、非常に立地条件としてわかりやすい。しかし、時々なぜか幹線道から外れた、脇道を1本2本入ったところにあったりするから混乱を招く。

この道の駅かわさきもその一例で、平成15年にできた新設道の駅ということもありカーナビにすらひっかからない。そのため、「大体この辺りだと思うんだけどなあ」という地点をカーナビに登録し、適当に現地で探索するという手法をとった。もちろん、探しても見つからない・・・という秘境道の駅なんて存在するはずもなく、現地に近づけば看板などですぐにその所在地は判明するので、特に脇道道の駅といっても困ることはなかった。

サンダル洗浄中

しぶちょおのサンダルが、今日はやけに香る。

「おい、この密閉した空間のなかで、その臭いは強烈すぎるぞ。ぜひ次の駅で洗浄殺菌すべし」

と厳命。

「このサンダル、『四国八十八カ所』の時(2001年GW)に買ったものなんだよな。そのとき染みついた臭いがまだ、いまだにとれないみたいだ」

四国八十八カ所の時は、連日連夜雨が降りまくり、参加者全員の靴はびしょぬれ、乾く暇もない状態だったために全員等しく靴が激しく臭くなってしまった。そのため、途中で靴を破棄し、サンダルを購入する人が続出だった。そのとき購入した「過去の遺品」が今回のサンダルのようだ。

「3年経ってもまだこの威力ってのはたちが悪いぞ、念入りに洗うように」

かわさきの洗面所で、時間をかけてサンダルを洗うしぶちょお。

この旅の前半戦だったら、こんなサンダルを洗う10分そこいらの時間さえ惜しいと感じていたが、さすがに6日目にもなるとココロにゆとりができてきている。どうぞ心ゆくまで洗ってください、という気持ちだ。まあ、それだけ香りがきつかったわけだが。

かわさき、クリア

洗浄済みサンダルで颯爽と。

かわさき、クリア。

その後の車中

「どうだ、もう臭わないだろう?」

「・・・なんか、臭いはそのままで、石けんの臭いが追加になっただけのような気がしなくもないのだが」

[05/07 AM08:30 No.086 道の駅 みずさわ(川と緑の花街道) 累積走行距離2920.7km]

北上川の橋のたもとにある、こじんまりとした道の駅。幹線道を使わず、ショートカットルートを使いまくって到着。こういうとき、ショートカットした方が近いか・結果的に大回りになってしまうかの判断はカーナビでは無理なので、道路状況を瞬時に判断して助手席の人間が指示を出さないといけない。

道の駅 みずさわ

朝9時からの開館ということで、開店準備中だった。

スタンプ台

入口脇に、目立つ形でスタンプ台が置いてあったので、迷わずスタンプゲット。完全制覇まで残り20駅。

それにしても天気が良い。北上川が見えるし、道は広めで交通量少ないし、空は広いし、非常に気持ちがいい朝だ。しばらくのんびりしてみたいものだ。

木の子10万円

ちょっとだけ中に入らせてもらう。

中にはこんなものが売られていた。うーん、一気にすがすがしくなくなった。それにしても誰が買うんだ、こんな木の飾り物。

木の子10万円、立型10万円だそうで。やっぱりこれ、性器をかたどったものだよな?

[05/07 AM09:11 No.087 道の駅 種山ヶ原高原(星と賢治の種山ヶ原) 累積走行距離2952.4km]

今日は「ジグザグ移動」がテーマ、といっても過言ではない。つづら折れ状態で北上を繰り返していく。せっかく「みずさわ」で北上川そばまでやってきたのだが、すぐにまた反転して山の中へ。

道の駅 種山ヶ原高原

種山高原というところにある道の駅、種山ヶ原高原。宮沢賢治がこよなく愛したということで、ここの気象風土を題材にしたのが銀河鉄道の夜であり、風の又三郎だという。確かに、この開放的な感じはひどく気に入った。キャンプで何日間か滞在してみたいものだ。

おかでんがこの地をこよなく愛したら、アワレみ隊OnTheWebの芸風も変わるかもしれない。・・・変わるだろうな、実際。毒が抜けてしまい、非常につまらない「四季だより」になってしまいそうだ。

絶好のハイキング日和

絶好のハイキング日和なんだけど、平日ということもあってがらんとした道の駅を後にする。

[05/07 AM10:03 No.088 道の駅 遠野風の丘(民話のふるさと) 累積走行距離2995.1km]

道の駅 遠野風の丘

種山ヶ原からさらに東にすすみ、そこから北上。民話のふるさと、遠野に到着した。さすが観光名所遠野を控えているだけあって、施設は相当広い。

案内看板前で撮影

さあどんどん先にいくぞ。

今日のお昼は花巻でわんこそばだ。ちょうどいい時間ではないか。

わんこそばシフトをわれわれは組んでいるので、朝食をいまのところ食べていない。全てのパワーは昼食、すなわちわんこそばに注ぐ。1杯でも多く食べてナンボだ。

[05/07 AM10:29 No.089 道の駅 みやもり(清流とわさびの里) 累積走行距離3012.0km]

89番札所、道の駅みやもり。四国88カ所巡りだったら、ぐるりと回ってしまい「お礼参り」に一番札所に戻ってきたようなもんだ。でも、東北道の駅はまだ先がある。

道の駅 みやもり

この宮守町は東北一のわさびの産地だという。わさび製品が多数売られていたようだが、われわれはスタンプだけ押して施設内に入らなかったため、詳細は不明。

わさびビールなんてのもあるらしい。興味深いが、今ここで飲むわけにもいかぬ。お土産で買って帰ろうとしたって、ゴトゴト揺れる車中だと品質が落ちるだろうし、まあいいやと。

めがね橋

JR釜石線の橋が見える。その形から「めがね橋」と呼ばれている。夜になったらライトアップして幻想的で、「銀河鉄道の夜」のようだ、という話。とはいっても、銀河鉄道は宇宙空間を走るはずなので、こういう橋は存在しないと思うが。

車中、今晩の宿泊ポイントについてずっと議論をしていたのだが、「盛岡で冷麺も良いが、市街地で一泊というのはいまいちだ。せっかくだから、温泉地を狙ってみてはどうか」という緊急動議がしぶちょおから発案された。ンなこと言ったって、今日は平日とはいえGWの真っ最中、しかも金曜日だ。まあ、常識的に考えて難しいとは思う。とりあえず、行きたい温泉地をピックアップして、駄目もとで電話をかけてみっか、ということになった。

「旅の窓口」をチェックすると、この先にある鉛温泉藤三旅館はまだ空きがあるようだ。以前「へべれけ紀行」で紹介したことがある温泉だが、その大いなるリラクゼーション効果にはおかでんとしてももう一度お邪魔したいし、しぶちょおだって体験したいということで二人のニーズは合致していた。しかし、立地条件が悪い。「温泉を楽しむための条件」として酸ヶ湯温泉泊の時にも制定したルール「夕方5時までにはチェックインしたい!」を鉛温泉にも当てはめると、盛岡界隈まで北上できないままに鉛温泉に南下しなければならない。行程上ちょっと無駄が多すぎだ。そもそも、翌日の行動が相当厳しくなる。これは次善の策としてお取り置き。

では、優先対象をどうするかということだが、望みは高く、有名すぎて予約が困難な宿「乳頭温泉郷・鶴の湯温泉」を第一候補とし、第二候補をこれまた予約困難、「玉川温泉」に据えた。どちらとも無謀とも言える選択だ。通常、何カ月も前から予約を入れておかないと確保はできない超人気宿だ。ま、駄目なら駄目ですっぱりあきらめがつくから、それはそれで良し。

まずは鶴の湯温泉に電話をかけてみる。

・・・

「今晩、大丈夫だって」

うれしさ90%にやや困惑10%を織り交ぜつつ、しぶちょおが報告。

「うそだろ?こんなどピークな時期に、あっけなく当日予約ができるなんて信じられんぞ。あの鶴の湯温泉が、だぞ?」

「いや、大丈夫だって言ってるよ。じゃ、予約入れちゃうからね」

しばらく、予約のためのやりとりを電話口で行う。

「とっちゃいました」

「へぇーーー。電話、かけてみるもんだねえ。僕、以前この宿に泊まろうと思って何度か電話したことあるんだけど、ことごとく駄目だったぞ」

「だろうなあ。有名だもんな、この宿。僕ね、もう今回の旅で酸ヶ湯温泉と乳頭温泉に泊まることができればもう何も問題ない。大満足。最悪スタンプがそろわなくてもいいくらい」

「こら、何を言うか」

「いやだってよ、埼玉に住んでるおかでんと違って、愛知の僕は東北って凄く遠いんよ。滅多にこれないところだから、行けるときに行っとかにゃあ、ってのがあるわけで」

「そうか、良かったなそりゃ。それにしても意外だ。さっきから何度も意外だ、意外だって繰り返してるけど、ホントそう思う。JR東日本がこの温泉のポスター、大々的に駅に貼りだしてるからますますお客が増えているはずなんだよな。休日のお昼時なんて、日帰り入浴客で湯船が芋の子を洗う状態になってるらしいし」

「そんなにか」

「でも、夜になると日帰り客はすーっと消えていくので、あとは限られた宿泊客のみが、ゆったりと名湯・秘湯に浸かるというわけだ。で、その権利を手にしたのが、僕らってわけだ」

「うひひひひ」

「でもよ、乳頭温泉って秋田県なんだよな・・・。また秋田県に逆戻りか」

「まさか秋田にもう一度足を踏み入れるとはな」

「さあて、17時までに乳頭温泉着かぁ。どうかな、どこで本日は切り上げるのが妥当かな?」

本日の目標地点が再検討された。夜遅くまで猪突猛進できるならば、今日中に岩手県の道の駅をすべて終了させることもできたが、「17時に乳頭温泉」ということは16時には本日の行動終了、そして現地に移動開始していないといけない。とはいっても、いくら宿で温泉を楽しみたいからといっても、残されたのはあと1日。おもっきり志半ばなところで温泉に向かうわけにはいかない。とりあえず、「3.区界高原」から「22.雫石あねっこ」へ進み、その足で乳頭温泉に向かうことを決めた。

まだ、岩手県北部に3つの道の駅(「21.石神の丘」「20.くずまき高原」「11.にしね」)が残されているが、これはどうやっても今日中に回るのは無理なので、明日:最終日の対象に回された。・・・大丈夫かなあ。結構ギリギリなスケジュールだ。でも、鶴の湯を前にしてしまうと、「何とかなるだろう」という都合の良い解釈をせざるを得ない。「アワレみ隊はやればできる子、だから」と呪文のように唱えながら。

[05/07 AM10:51 No.090 道の駅 とうわ(毘沙門天と萬鉄五郎の里) 累積走行距離3026.4km]

道の駅 とうわ

この道の駅とうわも、国道から離れた脇道にある変な道の駅だ。こじんまりとしている建物だが、東和温泉という日帰り入浴施設が隣接しているので、敷地自体はまあまあ大きい。

道の駅90カ所制覇

これにて道の駅90カ所制覇。残り、16カ所。

いよいよカウントダウンが始まりだした。

さあ、カウントダウンもいいけど、カウントアップもしていきたいところだ。何かというと、わんこそば。ちょうど時刻は11時過ぎ。そろそろわんこそばをチャレンジする予定の「やぶ屋」も開店時刻を迎えようとしている。ジャストタイミングだ。まるで、わんこそば挑戦をしろ、と言わんばかりの時間だ。

鶴の湯も予約できたし、道の駅はあと僅かだし、わんこそば楽しみだし、空は快適な青空だし。うれしくなって、鼻歌なんか出ちゃったりなんかして、花巻へのドライブを楽しんだ。

すると、後ろから赤色灯をつけたクラウンが接近してきた。覆面パトカーだ。

「あれ、覆面パトが来たぞ。まさかうちらじゃないだろうな」

「まさか」

覆面パトをやり過ごさせようと減速してみたが、なぜか覆面パトまで減速する。

「おい、どうやらこの車に用があるらしい。えー?スピード違反で捕まるような事はしていないぞ?さっき、トラックを追い抜く時に瞬間的に出したかもしれないけど」

「そこの車、左に寄りなさーい」

「あ、やっぱりこの車だ。うわぁ」

山形県警に続いて、岩手県警にも御用。一体どうなってるんだ。警察国家だな、東北地方は。

またもや頭が真っ白になっている状態で、警察官が覆面パトから出てきた。

「運転手さん、何で呼び止められたか判ります?」

もったいぶって、質問をしてくる。いや、全然わかりません。

「わかりません。スピード違反ですか?」

「いや、そうじゃなくて。さっきトラック追い抜いた時に黄色車線越えて行ったでしょ」

「!!」

「ちょっとパトカーまで来てもらえますか」

なるほど、これは単純明快だ。山形県警の時と違って、確かに身に覚えがある。トラックを抜いた場所は、はみ出し禁止の黄色線のところだった。たはー、よく見てたなあ岩手県警。呆れるやら感心するやらで、大笑いをしながら覆面パトに乗り込んだ。「いやお巡りさん、参りました。もう何も申し開きすることはございません。煮るなり焼くなりしてください。あんな一瞬のところを捉えられちゃ、返す言葉無いです」と、頼まれもしないのに免許証を提示。本人も納得できる取り締まりだったら、非常に協力的だ、おかでんは。山形県警の時のような押し問答をいつもやっているわけではない。

青切符を切られている間、お巡りさんに逆取材を試みる。

「どうして、違反に気づいたんですか?どこかに隠れて取り締まってたんですか?あまりに見事だったもんで」

「いや、別件で移動中だったんだけど、たまたまやってきた対向車が黄色線はみ出してトラックを追い越しかけていたので、ちょっと見逃せないなと思って急きょUターンして追いかけたの」

なんと、滅多にやらない黄色線での追い越しをたまたまやった時に、偶然にも正面に覆面パトが通り過ぎようとしていたというわけだ。いやぁ、悪いことはするもんじゃない。あまりの偶然に、あらためて大爆笑。「お巡りさん!よくわかりましたよ。悪いことはするもんじゃないですね、どこかで誰かが見てる」

一週間足らずのうちに2回も警察にお呼ばれされてしまったわけだが(そのうち一回はえん罪)、それにしても警察の数が多い。一体東北の警察はどうなってるんだ。

「いや、ゴールデンウィーク中はいたるところで取り締まってますよ。ですから、特に注意してくださいね」

とお巡りさん。いやもう、言われなくても注意します。

驚異的なペースで反則点を頂戴してしまった(えん罪分の山形県警で3点、今回の岩手県警で2点)わけで、わずか数日間で免停寸前。危ない!山形県警とは今後裁判で争うとしても、どうせ負けるんだろうから現在崖っぷちだ。ますます気をつけないと。

[05/07 PM12:55 No.091 道の駅 錦秋湖(オアシスR107) 累積走行距離3065.7km]

わんこそばチャレンジを終わらせ、観光モードからまた戦闘モードにシフトチェンジ。まだまだ先は長い、ゆっくりとしてはいられない。とはいっても、今日はこの後鶴の湯温泉に行く、というお楽しみも控えているわけで、いやぁ何だか今までのストイックな旅が信じられないくらい、ワクワクドキドキした行程となっている。これが、旅ってやつなんだな。・・・今更気づくのが遅い。

道の駅 錦秋湖

というワクワク感とは裏腹に、車中は何やら雲行きが怪しくなってきた。車が加速すると、「うっ」といううめき声がする。カーブを曲がると「くぅぅぅぅ」と何かを耐えるような声がするし、段差をゴトンと乗り越えたら、それはそれで「おわっ」という声が。

二人とも、只今急激に胃袋の蕎麦にお見舞いされている状態。わんこそばを食べ終わった直後は、「いやー、もうおなかいっぱいだよぅ、苦しいねぇハハハ」と笑っていられたし、隣で頑張っている女の子グループにちょっかいを出すくらいのゆとりもあった。しかし、今こうして錦秋湖に向かっている車中では、そのときとは比べモノにならないほどの苦痛が溢れていた。

蕎麦は、胃袋の中で水分を吸って膨らむ食べ物だった。このことを、全く無視していた。

「苦しいよぅ」

あまりの苦しさに、思わずしぶちょおが呻く。おかでんとて、その状況には変わりがない。

「頼む、もう少しスピードを落として・・・というわけにもいかないんだよな、この状況だと」

「スピードは標識通りだし、これ以上落としたらどんどんスケジュールがずれるぞ」

ハンドルを握るしぶちょおが言う。確かにそのとおりだ。でも、

「いかん、もう駄目だ」

なんて当のしぶちょおが言い出す始末で、「もう少しだ!頑張れ!僕も頑張る!」なんて変な励ましをしながら目指す道の駅へ。兎に角、加速減速、右左の移動、上下振動その全てがわれわれにとっては苦行となっていた。ああ、こうなることが判っていたらもう少しわんこそばの量を減らしておくべきだった!

二人ともほうほうの体で錦秋湖に到着。しぶちょおはふらふらしながら、お手洗いに向かっていった。

おかでんは「土下座バイキング」をやってきたプライドからぐっとお手洗いにいくのはこらえたが、それにしても気分が悪い。建物の中に入るとますます吐き気がしそうだったので、駐車場の中を散歩しながら、なんとか胃の中のものを落ち着かせようと必死だった。

風に煽られつつ記念撮影

錦秋湖は非常に風が強いところだった。体重が相当あるわれわれだが、足下がおぼつかなくなっているため、風に煽られつつ記念撮影。

しぶちょおはお手洗いから復活してきたが、あまり状況は好転していないようだった。これはおかでんも同じ。

[05/07 PM13.49 No.092 道の駅 石鳥谷(南部杜氏の里) 累積走行距離3113.9km]

兎に角行程を短縮できるならば金に糸目はつけねぇ、ということでここでも高速道路をミニ活用。北上西ICから入り、花巻ICまで進んで、そこから次の道の駅、石鳥谷へ。

道の駅 石鳥谷

「高速道路だと少しは胃袋に負担がかからなくなるだろう」

と期待しながらインターに入ったが、本線への合流路がぐるーんとループしていたため、そこで強烈な横Gが。

「うっぷ」

また二人の顔が青ざめる。

確かに高速道路は、下道ほど上下左右前後のチカラがかからないため楽ではあったが、まだ胃袋の中はパンパンだ。今、胃袋を取り出したら、森駅の名物駅弁「いかめし」か、大阪名物「オムソバ」みたいな感じでギッシリと中身が詰まっていることだろう。そういう光景を頭の中で想像してしまい、またもや気持ち悪くなってしまうという悪循環。

記念撮影ポイント

まだ体調が本調子ではない。車から転がり落ちるように外に出て、スタンプを押して、さっさと退却。時間が無いからというわけではなく、もう自分自身の正気を維持するのに精いっぱいで、施設内を見学するなんて発想はアリンコの脳みそほどにも湧かなかった。

記念撮影、どこでやるかね・・・と、そのルーティンワークだけはきっちりとこなそうと辺りをきょろきょろしていたら、あったあった、これ以上無い記念撮影ポイントが。

でっかい看板だ。これを見れば、100人中100人が全て「ああ、石鳥谷に行ったのね」と判ってくれる、そんな看板。これって、道路の上に掲げられているモノホンをそのまま使ってるんじゃなかろうか?

この地名、読み方がよくわからなかったのだけど、「いしどりや」と言うのだな。今頃になって気がついた。

[05/07 PM14:10 No.093 道の駅 紫波(フルーツの里しわ) 累積走行距離3127.1km]

道の駅紫波

ほんのちょっと石鳥谷から北上したところに道の駅紫波がある。フルーツの里、と名乗るだけあって、建物がどうだ!とばかりにフルーツの絵で埋め尽くされている。

記念撮影

記念撮影をするときのポーズが、随分と柔軟になってきた。ようやくおなかのものがこなれてきたということだ。本当に苦しいときは、胃を圧迫しないように直立不動の恰好しかできない。

そういえば、錦秋湖と石鳥谷では直立不動で写真に写っていたな。

[05/07 PM14:38 No.094 道の駅 はやちね(神楽とワインの里) 累積走行距離3145.9km]

紫波から、東に峠越えをした先にあるのが「はやちね」だ。霊峰である早池峰山の手前にある。ようやく胃袋が落ち着いてきたので、峠越えで体に加重があっても随分と楽になってきた。「ようやく生き返ったって感じだよな」といいながら、ハンドルをさばく。天気がいいこともあり、快適なドライブだ。

道の駅 はやちね

前方に路肩をひょこひょこと歩くおばあちゃんの姿が見えた。峠道だというのに、このおばあちゃんはどこから来てどこに行こうというのだろう。

「不思議だな、近くにバス停はないし、この先に民家も無さそうだけどな?」

「いや、この先に家があるんだろ?それか山菜取りか」

「そういや、何か荷物を抱えていたしな。でも不思議だなあ・・・軽トラが止まってるわけでもないし。この先に民家があるとしても、どこから来たんだ?」

「紫波から歩いてきた?」

「うわ、ありえねぇ。もしそうだとすれば、あのおばあちゃん化け物だぞ。相当強靱な体でないと無理だ」

などと言いながら、到着したのは早池峰湖の湖畔にある道の駅、はやちね。平日ということもあって、ガラガラだった。登山シーズンになれば、早池峰山にやってきた車利用の登山客でにぎわうのかもしれないが、それ以外には特に利用シーンが見あたらない立地条件だ。幹線道でもないし。

そのためか、完全に趣味に走っとるというか、唐突ながらもワインを大量に扱っていた。何でも、姉妹都市のオーストリアのワインをたくさん並べたんだとか。確かに、100種類以上ものワインがずらりとワインセラーに並んでいるのは壮観だ。それに飽きたらず、自前でワイン工場まで作ってあるんだからやる気満々だ。

「どうぞ試飲してくれい」と待ちかまえているワインだったが、さすがにこんなところに車以外でやってくる人はいないわけで、結局はほとんど試飲されていないのではなかろうか。おかでんも、ぜひお呼ばれされたかったのだが、飲酒運転はよろしくないので謹んで辞退した。

スタンプを押してさっさと退却だ

結局、ワインは眺めるだけにとどまって、スタンプを押してさっさと退却だ。今日はワインじゃないんだよ悪いけど。温泉に浸かって、名物のだんご汁を頂きながら、清酒って決まってるんだよ。またの機会だな。

区界高原に向かう道

さあ、このはやちねから、狭い山道を北上した先にある区界高原に向かおう。

さっき通った道とは違うルートで、北側に突撃・・・

!!!

あれっ、ゲートが閉まってるじゃないか!「全面通行止」だとぅ?

「やられた!冬季通行止だ!」

看板を見ると、11月末から5月末は通行できない、と書いてある。しまった、こんな細い道の通行止まではカーナビのVICS情報で網羅できていなかったか。

「だー。えらいことになったぞ。ここが通れないってことは、いったんさっき通った道で紫波まで戻って、盛岡に行って、そこからまた山に入っていかないといけない。とんでもない大回りだ」

「まじか!どれくらいのタイムロスになるんだ?」

「うーん、1時間ってのは言い過ぎかもしれないけど、少なくとも30分はロスするなあ」

「参ったなあ」

「これは大問題だぞ」

何をわれわれが焦っているかというと、一にも十にも「鶴の湯温泉」に到着する時間のことが気になるからだ。まだ15時前だが、17時に秋田県の鶴の湯温泉にチェックインしようとすると、もうそろそろ「本日の部、打ち止め」にしないと間に合わない。予約困難な宿だし、有名なのは露天風呂なわけだし、日没になって何が何だかわからん状態でお風呂に入るのはイヤだ。まだ明るいうちに、どっぷりと温泉を満喫したい。

ナビを操作して、大回りルートで「区界高原」、その後に「雫石あねっこ」経由で鶴の湯温泉に到着するルートを引っ張ってみた。・・・到着予定時刻、18時30分。

「おい、到着したらすぐに夕食じゃないか、これだと」

「まあ、予定時刻だから。平均時速30キロ換算での予測だからな。実際はもう少し短縮できるよ。30分くらいは大丈夫」

「それでも到着18時じゃん!却下!激しく却下!区界高原は明日に回そうや、このまま鶴の湯温泉に行けば、17時に到着できるだろう。風呂入ろうぜ?どっぷり、浸かろうぜ?」

おかでんによる猛烈なアピール。しかし、ハンドルを握るしぶちょおは

「うーん、でも明日が危ないんだよなぁ。結構ギリギリだぞ?明日10カ所残ってる状態なわけでしょう、それで区界高原なんていう辺鄙なところを残しちゃうと、タイムロスが大きいはずなんだよな。やっぱり今日行っておくべきでしょう」

至って冷静に判断をする。

「えー。ヤダヤダヤダ。アワレみ隊はやればできる子、なんだから、これも何とかなるんじゃないのか?明日、ちょちょちょいと立ち寄ってさ、区界高原」

「いや・・・確かにアワレみ隊はやればできる子だけど、これはちょっと厳しいぞ。何しろ、明日は18時までにゴールしなくちゃ、余計な一泊を強要されるんだからな」

「そうだけどさぁ」

議論は続く。その間に、車は紫波に向かう峠越えルートに差し掛かっていた。

「あ!」

目の前には、先ほど数十分ほど前に追い抜いた、あの一人のおばちゃんの姿が。まだ歩いていたのか!相変わらず、周囲には家らしきものは何もないといのに。

「うわ、あのおばあちゃん何者?歩け歩け会か何かの人か?」

「この先も家は無かったよな?」

「ああ、無かった」

「地縛霊?」

「こら、縁起でもない。それにしてもありゃ一体なんだ」

しばらく、会話はそっちの話題にもっていかれてしまった。

[05/07 PM15:51 No.095 道の駅 区界高原(ビーフビレッヂ区界) 累積走行距離3204.5km]

区界高原に行くか・行かないか議論はおばあちゃんの出現により一時中断となっていたのだが、盛岡市に到達した時点でしぶちょおが

道の駅 区界高原

「今日は区界高原行くから。もう決まり」

といってぐいっとハンドルを右に切ってしまった。

「あ、コラ!何をするか!」

こういう並行線を辿る議論の場合、最終的にはハンドルを持っている人間の方が強い。

まあ、抵抗したとはいえ、おかでんとしてもできるだけ今日中に数を重ねておかなければ明日ヤバいということはよくわかっていた。「しゃーねーなあ」といいながら、この決定には従った。

その代わりといっては何だが、この次の「雫石あねっこ」は明日に持ち越し、という妥協案が採用された。鶴の湯温泉に行く道すがらにある道の駅であり、明日朝立ち寄っても時間ロスは最小限だろう、というわけだ。これで、今日は5分から10分程度の時間短縮が図れる。・・・たったそれだけだけど。でも、これで随分と気が休まった。

高原情緒溢れる場所

区界高原への道は、周りが牧場に囲まれていてとても気持ちの良いドライブルートになっていた。青い空、広がる牧草、そして白樺。高原情緒溢れる場所だ。

区界高原、という名前は非常に特徴的な名前だが、恐らく霊峰である早池峰山の「神聖なる領域」との境界線がここだったのだろう。

この道の駅では、地元名産の赤べこを使った料理の数々を出すレストランがあるらしい。非常にそそられるが、それよりも僕らからすると、岩魚の塩焼きやだんご汁、そして清酒で一献・・・という夕食が頭をよぎっている状況。さあ、今日はちょっと早いけど打ち止めだ、鶴の湯温泉にレッツゴー。

記念撮影が、非常に躍動感溢れるポーズになっているのは「さあ温泉だ温泉だ」というはやる気持ちを抑えきれないからだ。

第6日目を95カ所目制覇で終了。ということは、最終日7日目は残り11カ所となる。途中、東北自動車道を使った岩手→宮城→福島という大移動が発生するし、福島県下の道の駅残党は内陸と海に散らばっており、移動に時間がかかる事が予想される。さらに、ゴール地点となる「はなわ」は他に類を見ない凶悪な位置にある。ここだけぽつんと独立して道の駅があるわけで、移動する気力が萎える。「こんなの、限りなく関東じゃん!」という場所だ。ここに、18時までに到着しなければならない。・・・あれ?単純計算すると、どう考えても駄目っぽいんだけど。

まあいいか。とりあえず、温泉を今日は満喫することが先決だ。もし、明日中に解決できなかったら、エクストラトラックということでもう一日、予備日を使って延期だ。もうこうなったら、何が何でもきっちり完全制覇はするぞ。予定より1日増えてもいいや。・・・鶴の湯温泉のためなら。

盛岡市を素通りして、秋田県方面に向かう。もういい加減懲りているので、急ぎたい気持ちがあっても交通法規遵守だ。

・・・

ドライブインの出口で生け垣のせいで死角になっているところに、パトカーがいつでも出動できるように待機しているのを発見した。どうやらネズミとりをしているらしい。

「うわあ、こんなところにもいるぞ?岩手県警もやるなあ」

本当に東北全県、朝から晩までいたるところで無駄に頑張りまくりなんである。いや、無駄といっちゃ失礼だが、こんなに頻繁にお目にかかってしまうとあまり気分のいいものじゃない。でも、それだけわれわれが長距離動き回っている証拠でもある。

雫石あねっこも、スルー。また明日お邪魔するぜ、それまで待ていと言いつつ。さあ、もうすぐ秋田県だ。

秋田県は田沢湖から、一気に高度を稼いでいく道に入る。烏帽子岳、通称乳頭山の山麓に沸いているのが乳頭温泉郷で、その最奥にあるのが鶴の湯温泉ということになる。一軒宿だ。矢印に従って、舗装が悪い道を進んでいく。対向車が来たらちょっとだけ気をつかわなければならないくらいの道幅だ。周りは単なる山、また山。こんな奥に温泉なんてあるのか?とやや疑問に感じてしまう。こんなところに温泉が沸いていたとよく気づいたな、とも思う。

乳頭温泉郷の鶴の湯温泉

「真っ暗になってからこの道を走るのはヤだよな、しかも冬で雪に埋もれていたら怖い」

なんて言いながらハンドルを右左に切っていたら、開けたところに出てきた。そして、その奥には、古めかしい建物が。

これが、多くの人が憧れるという乳頭温泉郷の鶴の湯温泉だ。

17時39分到着。累積移動距離、3290.9km。

「おおおー」

思わず、二人とも声が漏れる。まさか、GW中だというのに当日予約ができたとは。酸ヶ湯温泉といい、この乳頭温泉といい、これは運が味方しているとしか思えない。ありがたい!

真っ正面には、何の変哲もない裏山があった。温泉って、もっと険峻なところから沸いているイメージがあるが、何だこののどかな光景は。この山肌から温泉が湧いているというのだろうか?何やら拍子抜けしてしまう。もっとも、この地そのものが相当山奥であり、既に相当秘境な状態なわけだが。

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