アワレみ隊奥のマゾ道

鶴の湯紹介

鶴の湯御案内
乳頭温泉郷最古の名湯鶴の湯は、千年の昔、坂上田村麻呂将軍によってその薬効が認められ、後猟師の勘助が傷が癒えて飛び立つ鶴を見て、湯小屋を開いたのが発祥だと伝えています。秋田佐竹の殿様が、はるばる山坂路を越えて湯治に来られたことが、鶴の湯由来記にしるされています。

だ、そうで。坂上田村麻呂と来たか。あまりにもスケールがでかすぎなんですが。秩父界隈にはあちこちにヤマトタケルノミコトに関する伝説があるが、こっちの方は坂上田村麻呂がその位置に収まっているということだな。さすがに田村麻呂将軍はここまでは来てないと思うのだが、どうか。

鶴の湯正面

もう日没も近い。谷間の宿なので、既に建物まわりは太陽が差し込まなくなっている。早くチェックインすべきなんだけど、いや待て、ここはしばらく外観を愛でたいところだ。

こうやって、自分自身におあずけを食らわすのがとても楽しい。

何も考えずに中に入ってしまうと、この高揚感は味わえない。ほら、見よ、このアングル。観光ガイドに載っているのと一緒だ。

鶴の湯と私たち

で、その「観光ガイド」で見たアングルの中に、二人が収まってみる。

ありがたいねぇ。

建物は敷地内にいろいろ点在しているが、宿泊施設となっているのはこの門をくぐったところにある左右の建物だ。

離れ

こちらの離れは、宿の人の宿泊施設なのか、VIP用の離れなのかは不明。

本陣

門をくぐってみる。

門の左側にある建物は「本陣」と呼ばれていて、囲炉裏が切ってある個室になっているらしい。食事も、その囲炉裏端で提供される部屋食スタイルだ。廊下があるわけではないので、仲居さんが部屋に料理を運ぶときはいったん外を歩かなければならない。雨の日や雪の日は大変だろう。

この本陣は人気が高く、ただでさえ泊まりにくい鶴の湯温泉の中でもさらに難易度が高いと聞く。

建物のレイアウトは、鶴の湯温泉のオフィシャルサイトに掲載されているのでそちらを確認するとよろし。温泉の配置もよくわかる。

鶴之湯事務所

建物の奥まで進んだところに、「鶴之湯事務所」と書かれた木の看板が掲げられていた。ここがフロントに相当する場所のようだ。なんとなく、山小屋を思い出させる。

湯屋

事務所からさらに奥に行こうとすると、小川に橋がかけられていて、その向こう側に湯屋が見える。この橋を渡った先が温泉地帯になっているわけだ。橋のたもとには、「御入浴の方は事務所へ先に料金をお願いします」と注意書きが掲げられていた。

飲み物が冷やされていた

チェックインをしようと事務所棟に一歩足を踏み入れたら、土間のところで飲み物が冷やされていた。冷蔵庫を使わないで、冷水による冷却。まさか冷蔵庫がこの施設に無いわけではないだろうが、珍しい光景だ。これまた、山小屋チックではある。

この宿、「ひなびた宿」を狙ってこういう演出をやっているのか、素でこういう事をやっているのかよくわからない。ただ、いずれにせよ「あんまり近代化して風情を台無しにすることはしませんよ」という宿側の意思が見え隠れして心地よい。

「湯の鶴」と書かれた看板

事務所内部。

「湯の鶴」と書かれた看板がお出迎えしてくれる。

おみやげ物がびっしり

狭いスペースに、おみやげ物がびっしり。ドン・キホーテもびっくりだ。

チェックイン

チェックイン。

二号館廊下

われわれが案内されたのは、事務所棟の対面にある二号館という建物だった。1泊2食付き8,550円。建物の一階には土間があって、喫煙したり談話するスペースが用意されていた。こんなところも山小屋的だ。階段を登り、二階へ。

二号館の角部屋

われわれが通された部屋は、二号館の角部屋だった。一番露天風呂よりのポジション。広さは六畳一間で、バストイレ無し。灯りは裸電球一つ、ということで質素ではあるがこんなところに来てまでぜいたくしようとは思わない。これで十分過ぎるくらいだ。テレビすらない部屋。

外を眺めてみる

窓の外が気になったので、日没で真っ暗になる前に外を眺めてみる。

黒湯と白湯の湯屋が見える

こちらが、先ほど見た温泉ゾーンと宿泊ゾーンを分ける橋。奥に、黒湯と白湯の湯屋が見える。

露天風呂

そして、右に視線をずらすと、僅かながら露天風呂の青い湯面を伺う事ができる。あの露天風呂が、鶴の湯温泉を一躍有名にさせた名物だ。混浴露天風呂となっている。もっとも、これとは別に女性専用の露天風呂は用意されているので、名物とはいえ若い女性がここに浸かるということはあまり無いかもしれない。

離れの方

離れの方を見てみる。

黒湯の湯屋

ひととおり建物の概要は把握できたので、早速お風呂に入ることにする。夕食開始時間をやや遅めに設定しておいて、とりあえず1時間くらいはお風呂に入らせてもらうことにした。

橋を渡って、温泉ゾーンに足を踏み入れる。

まずはやはり、あの露天風呂を攻めなければいかんだろう。とはいっても、明るいうちに内湯である黒湯の湯屋の写真を撮影しておく。

白湯

こちらはお隣の白湯。

鶴の湯温泉は4種類の源泉が湧くというが、そのうちもっとも湧出量が多いのがこの白湯だ。露天風呂に使われているお湯も白湯だという。

露天風呂

露天風呂に入ってみる。バスクリンでも入れたんか、というくらいの人工的な色で、一般的に「おお、これぞ温泉!」と旅情を感じさせる。そんなところで温泉の善し悪しを測っちゃいけないと判っちゃいるけど、色つきの温泉はやっぱり得した気分になる。勿論、泉質がいいに越したことはないが、大抵温泉に泊まるときは1泊程度しかしないわけで、それだったら泉質よりも転地効果が高い方がいい。

露天風呂としては相当広い。ただ、観光PR用の写真だと広角レンズを使って撮影しているからか、思いっきり広く見えるように撮影されている。その印象からすると、「あれっ、この程度だったんだ」という印象を受ける。

露天風呂

透明度はせいぜい5センチくらい。それより先は濁っていて、手のひらすら見えない。だから、お風呂に入る時、出るときは段差に気をつけなければならない。

この露天風呂の全景を撮ろうとあれこれ工夫してみるが、標準レンズのデジカメだとさすがに限界がある。あと、迂闊なアングルで撮影すると、猥褻物陳列罪に問われるものが写ってしまうので要注意だ。

正面に見えるのが、白湯の湯屋だ。カメラは、中の湯方面から撮影している。

この鶴の湯温泉は、湯船が結構狭い空間にひしめきあっている構図になっている。だから、この写真のすぐ左手が本陣から中の湯に向かう通路になっているし、その向こうには本陣と二号館が見える。

箱庭チックな作りになっているため、この露天風呂に浸かっている最中ばんばん人が通路を通過していった。さすがに明るいうちに若い女性が入るのは抵抗があるかもしれない。ただ、一度湯船に浸かってしまえば白濁しているので、見られる心配はなくなるが。

これだけ広いので、お好みの湯温は自由自在。湧出口に近づけば温度は上がるし、遠ざかれば下がる。きっと自分好みの湯温の場所を発見できるはずだ。

中の湯の解説

さて、露天風呂の他にも行ってみようか。露天風呂の奥にある、中の湯。これは、露天風呂と泉質が異なっている。眼病に効く、ということで通称「眼っこの湯」というらしい。

中の湯に浸かる

湯船は、二人入ればもういっぱい、無理して三人入れるかどうか、というサイズ。日帰り入浴で大混雑しているときは、多分浸かりたくても難しいのではないか。

広い露天風呂を独占

辺りが薄暗くなってきた。

宿泊客は夕食のため風呂から上がっていったので、残されたのはわれわれだけになった。あらためて、広い露天風呂を独占。

とても気持ちがいい。特に見晴らしがいい、というわけでも何でもないのだが(何しろ目の前が通路だ)、こんな山奥で、こんな広い温泉に浸かっているというスペシャル感は何物にも代え難い。

夕食時間を遅めに設定して正解だった。

さすがに、子供のように温泉をプール代わりにして泳ぐ事はしなかったが、露天風呂のあちこちに移動して、満喫した。

一号館

お風呂上がり。

日没とともに、明るく輝く鶴の湯温泉の建物たち。

一号館。

橋から宿泊棟を見た図

橋から宿泊棟を見た図。

右が事務所、左が二号館。

二号館入口

二号館入口。

一階の入口部分の土間に、談話室として椅子と机が並べてある。そして、公衆電話機と貴重品入れ用のロッカー。

囲炉裏端

お風呂も良かったのだが、夕食も楽しみだ。そわそわしながら、本陣に向かう。

本陣は宿泊棟なのだが、そのうち6番目と7番目の部屋がお食事処として扱われていた。すなわち、囲炉裏端のある本陣に宿泊できるのは一晩で5組までということになる。

中に入ると、囲炉裏が切ってあって、岩魚が炭火であぶられていた。そして、自在鍵で鍋がぶら下げられて、中には団子汁が暖められていた。

囲炉裏端で食事をしているカップルがその岩魚と団子汁を独占するのかと思ったが、さすがにそうではなく、同室で食事している人全員分のものだった。

本陣の6番と7番

本陣の6番と7番はこのように中で繋がっていた。仲居さんが行ったり来たりしながら、おひつを運んだりお酒を運んでいた。

おひつは、今時珍しいさわらのおひつだった。プラスチック製が圧倒的多数を占めている中、こういうところの配慮も憎い。「田舎の宿です」というのを、大なり小なりピーアールしている。

鶴の湯温泉の夕食

さて、これが鶴の湯温泉の夕食。豪華な食材は使われていないが、それでも豪華だ。ツボをよく心得ている、という印象を受ける。宿の厨房を預かる人としては、ついついここでまぐろのお刺身を並べてみたくなったりするんだろうが、それをやると一気に風情がなくなる。やはり、ストイックに山のもので食材を統一しないと。

まあ、ここに並んでいる食材だって、この周辺で採れたモノ以外に流通ルートであちこちから取り寄せているんだろうけど、ね。それで風情だの何だの言うのも変な話なんだけど、それはそれ。気持ちよく旅行者を「おお、山の宿に泊まってるぞ!」と楽しませてくれればそれで良し。

これだけいろいろ料理が並ぶと、おかでんの耳元では「カーン」とゴングが鳴ったような幻覚を感じてしまう。早速ビールをぐいぐいと。コの字型に並べられた食卓では、初対面の人たちが和気藹々と四方山話をしていた。さすがにこの山奥の温泉に来るだけあって、いろいろな温泉談義に花が咲いていた。「○○の温泉には行きましたか?あそこはいいですよぅ」「ほー、それはいいですねえ、今度ぜひ」なんてやりとり。そんな中、「なぜわれわれはこうしてこの一晩を過ごすことができているのか」という話題が出て、興味深かった。

「えっ、今朝予約入れたらとれた?ホントですか?私なんて、何カ月も前から予約入れておいたんですけど・・・そうかぁ、案外今日は穴場だったんですねえ」

と悔しがる人。

「いや、さっき事務所の人に話を聞いたら、何でも明日もまだ空きがあるらしいですよ?」

「えっ、明日も!明日は土曜日なのに、不思議ですねえ」

「ゴールデンウィークって、休みが分散しているからお客さんも分散するんじゃないですかね」

「どうしようかなあ、明日もここでもう一泊してもいいなあ。考えるなあ」

なんてやりとりが繰り広げられた。意外だった。案外、空いている時もあるのだな。「あともう一泊可能」という言葉に相当グラグラ来たのだが、熟慮の末却下。やはり旅の本来の目的をクリアするのが最優先だ。

グラグラしたのは、ココロだけではない。食事処での会話が多いに盛り上がったので、ビールを飲んだあとにお酒も注文しちまった。うぃー。

黒湯

酔っぱらったので、食後もう一度露天風呂へ。風呂に浸かっているとてきめんにのぼせるので、ほとんど湯船に浸からずに、へりのところでぼんやりと時間を過ごす。

星がきれいだ。

ランプ一つしかないため、非常にあたりは薄暗い。それがまた、幻想的だ。

このあと、まだ浸かっていない黒湯に向かった。

黒湯で、湯船に浸かった状態で記念撮影をしようとしたのだが、あまりの熱さに湯船に入ることができず。「ギャー」と叫んでいるところでセルフタイマーが作動して、一枚。

黒湯と白湯が脱衣所を挟んで繋がっていた

男湯の場合、黒湯と白湯が脱衣所を挟んで繋がっていた。

黒湯で悲鳴をあげたあと、白湯に向かう。

白湯

露天風呂と同じ成分なので目新しさは無いが、光の加減だろうか、こちらはとても白い。露天風呂は青く見えるので、別物のような印象だ。

鶴の湯の夜1
鶴の湯の夜2
鶴の湯の夜3

鶴の湯の夜。

漆黒の闇に、ぼんやりと浮かび上がる建物。周りは、360度、山。

こういう一夜は、テレビなどはふさわしくない。

静かに、このひとときを満喫しよう。

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