伊豆大島討伐

三原山てっぺん

茶屋の近くには、三原山山頂のビュースポットがあった。

あー、そうか。ここから「山に登るよー」って高度を稼いで山頂、ってわけじゃないんだな。

この山はカルデラ。遠くに見える山頂部にとりつくためには、いったん今いるところからカルデラの外縁を下り、しばらく歩かないといけないのだった。

正面の山は、安永の大噴火(1777~1779)で誕生した盛り上がりだそうな。その山の斜面に、いくつもの黒い筋がでろーっと垂れているが、これは直近の噴火(1986)でおぎゃあと産まれた溶岩で、平野部になっているところは1951年の溶岩で・・・と、この箱庭的空間の中でトッピングされまくり。一体どうしたいんだ。目指せ富士山越え、日本一の山!という気じゃあるまいな。

三原山解説

解説プレートの写真は夏に撮影したものらしく、比較的溶岩の上に緑が生い茂っている。しかし今はまだ初春なので、溶岩が剥き出し。より殺伐とした感じが出ている。多分、観光に訪れて楽しいのは殺伐とした秋から春にかけてだと思う。

記念撮影ポイント

足腰が弱い人や体力がない人、時間がない人はここで記念撮影しておしまい。Uターンして車に戻るとよろし。われわれも正直時間はないのだが、山頂まで行くぞ。

なおこの記念撮影スポットだが、なかなか写真がきれいに撮れずに難儀した。東側を向いているので、午前中は逆行になるからだ。しかも、山は溶岩で黒々としており、空の明るさとコントラストがありすぎて露出がうまく合わない。もしここで写真を撮るなら午後の方が良いのかもしれない。

理想を言えば、夜明けや夕暮れ時の、太陽が低い位置にあるときだろう。岩の陰影がくっきりと出て、幻想的な画になると思う。

建物が見える
売店?

カルデラの底まで下っていく。「位置エネルギーが無駄だ・・・」と愚痴らなければいけないほどカルデラは深くないのが幸い。

カルデラの中に入ると、さっきまでずっと吹いていた風がふっと消える。ちょっと一息ついた感じ。しかし夏はこれ、灼熱地獄だな。太陽を遮るものはないし、地面は溶岩で黒いし、風は吹き抜けないし。夏場は要注意。

途中の斜面には、歩道に沿って売店が並んでいた。長屋のようになっている。ただ、まだシーズンではないからか、営業している売店はほんのわずかだった。

サービス溶岩

開いていた売店の店頭に、「サービス溶岩」なる看板があった。

どうやら、握りこぶし大の溶岩、ご自由にお持ち帰りくださいという事らしい。旅の思い出にどうぞ。

いやいやいや、いらんよこんなの。「峠の釜飯のお釜」以上にいらん。何に使うんだ。熱帯魚飼っている人は、水槽に沈めるのか?

噴火口まで相当歩く

おい。噴火口まで相当歩くんじゃないか?

どう見てもはるか彼方に、目指す場所が見える。荒涼とした土地なので遠近感がいまいちわからないが、目の錯覚ということはあるまい。大丈夫か?途中で行き倒れないだろうな?意を決して歩き始める。今更戻るわけにもいかんだろ。

歩道は舗装されていて歩きやすい。なんならハイヒールでも歩けるくらいだ。

境界線がある

カルデラの底に降りきったところで車止めがあり、ここから先は舗装されていても車では入っちゃだめよ、となっていた。

「サービス溶岩」がゴロゴロ

道を外れると、先ほどの「サービス溶岩」がゴロゴロしている。取りたい放題。

あのお店、なんでわざわざこんな珍しくもないものを店頭に並べているのかと思ったが、わざわざここまで歩いてくる気力まではない、という人向けというわけか。

どこでもこのゴロゴロ溶岩があるというわけではなく、場所によって草が茂っていたり、ざらざらした砂状だったりと差がある。溶岩が流れ出た時期によって、質が違うのだろう。

最初のうちは、遊歩道を歩いている人たち全員が「うわー、すごい!溶岩が間近に!」といって溶岩に駆け寄ったり、記念撮影を撮ったり(われわれもそうだ)していたが、すぐに飽きた。なにせ、四方八方ずっと溶岩だらけ。

そしてなによりも、やっぱり溶岩の黒と空の明るさの明暗がくっきりしすぎて、うまく撮影できないのだった。

ひいひい言いながら登る

カルデラ内の平地をだらだらと歩ききったら、今度は上り坂。つづら折れの道になっている。ここで面倒になって引き返す人もいたくらいだ。

膝の調子が悪いしぶちょおはひいひい言いながら登る。なにせ彼はジャケット+デニムだ。山に登るにはしんどい格好。

見渡す限りすべて荒野

見渡す限りすべて荒野、という光景はすごい。

わずかに、先ほどの売店と展望台が見えるくらいで、その他はほとんど荒れ地。ここだったら仮面ライダーとショッカーが派手に戦ったり爆破しても問題は起きないとおもう。

売店とは違うカルデラの外周部に、ぽつんと何か建物が見える。確認してみると、大島温泉ホテルだった。三原山を見ながらの露天風呂はさぞや快適だろう。ただ、場所が場所だけに集落からは遠いのがネックではある。

このホテル、夕食は椿油を使った「椿フォンデュ」が出てくるとか。どんな味なんだろう。美味そうだな。

火山灰が地層

火山灰が地層になっている。

降り積もっては固まり、固まったらまた降ってきて、の繰り返しでこうなったのだろう。

自分の財産も、このように積み上がっていきたいものだとつくづく思う。大爆発して、どんどん降り積もって欲しい。ああ、宝くじあたらないかなあ。

・・・と、大自然の神秘を前に、非常に下世話な妄想をしてしまう自分が悔しいです。

登り切ったところに、鳥居があった。三原神社がここにあるという。

鳥居
三原神社

面白いのは、鳥居がカルデラ側、すなわちこの噴火口の外に向かって建てられているということだ。火山の神様だから、普通は噴火口側に鳥居が向いていて、社殿があるべきだろうが、ここは違う。では、一体どこにほこらがあるんだ?鳥居から先には、荒涼としたカルデラしか見えない。

三原神社本殿
三原神社解説

足をひきずっているしぶちょおが気になりながらも、鳥居をくぐる。若干ここから階段を下りるというドSプレイ。ようやく登り切ったぞ-、と喜ばせておいて、「いや、少し下ります」だもんなー。これで、本殿がはるか下方に見えたら、そりゃあもう僕たちの怒りは御神火のごとく、アンコ椿の恋のごとく燃え上がるわけですよ。

ただ、幸いそこまで標高を下げることもなく、ほこらがあった。なぜか90度に参道が折れ曲がっていて、さらにほこらは90度横を向いているという不思議な作り。

解説を読むと、過去何度もの噴火があったが、その都度溶岩はこの三原神社の直前で避けるように流れていった、という。なるほど、変なところに何で神社があるんだ?と思ったが、「変なところ」というのは結果的にそうなっただけの話だ。度重なる噴火で、周りの形がどんどん変わっていったわけだな。で、この神社だけ取り残され、今じゃ中途半端な場所にほこらがあるというありさまに。

それにしても、「溶岩流が避ける神社」とはすごいな。ホントかよ。

ギリギリの溶岩

あーあーあー。

ほこらのすぐ裏手、屋根と溶岩が接触しそうになっとります。ほんと、ギリギリ間一髪避けきりました状態。まさに「神業」。

三原山からしたら、自分が祀られている神社をわざわざ溶岩で押し流すのもおかしかろう、ということでその点は配慮したのだろう。「馬鹿な人間どもめ。神社など作って祀っても、ちっともこっちは楽しくもなんともないわ!ぶちこわしてやるぜ。ざまぁ」なんていう発想はなかったらしい。ちゃんと島民の祈りは御神火に伝わっているっていうことだ。

それにしてもあまりに見事に間一髪なので、「実はおみこしのように移動可能になっていて、噴火があったら一時待避」とかしてるんじゃあるまいかと疑ってしまうくらいだ。

ところでこの神社、お祈りしたらなんの御利益があるのだろう。「誰も近づかなくなる」とか?

火口一周コース
火口一周コース地図

さてここから先、お鉢巡りができるのだが、さすがにそこまで舗装道路にはなっていない。ザレまくりの砂利道でございまする。茶屋がある三原山山頂口まで行って記念撮影するのがレベル1だとすると、三原神社まで舗装道路を歩いてくるのがレベル2。そしてここから先のお鉢巡りはレベル4。なぜ2から4に一気に跳ね上がるかというと、「お鉢巡り一周3.5キロも歩く自信はない」人用に、大きな噴火口の間近まで接近できる「火口見学道」があるからだ。こちらは片道0.4km、5分でいけますので機会があればぜひどうぞ。

お鉢巡りをしようと勢い込んで火口一周コースに飛び込む人たちが何組もいたが、そのほとんどが途中で引き返していた。火山特有のじゃりじゃりした歩きにくい道なので、それなりの体力が必要。登山靴までは必要ないけど。ただ、コース入口には「ハイヒールの人は入るな」っていう注意書きはあった。

噴煙
火口のふちを歩く

やあ、まだ噴煙上げているところがあちこちにあるぞ。

完全に沈静化しているのかと思ったが、なんのなんの、まだまだ三原山さんやる気満々でございます。おい、あの煙が立ち上がっている上の方をこの後われわれは歩かないといけないんだが、歩いているうちに小籠包みたいにふんわり蒸されるって事はないだろうな?

これだけガスが出ているけど、「風向きによっては待避してね」とか「立ち止まるな」といった注意書きはない。おそらくあれは水蒸気なのだろう。同じ伊豆諸島の三原山が、人体に害があるガスを噴出しまくってえらい目に遭っているのに、御神火さんはずいぶんとおとなしい。

怪しい機械

あちらこちらに怪しい機械が設置されている。

高校から大学時代にかけて、矢追純一のUFO特番を信奉していたおかでん。だから、こういうのを見るにつけ「地下秘密基地」とか「宇宙人との密約」といったキーワードが浮かんでやまない。さしづめ、三原山噴火は地底人の仕業、とでもしておこうか。

そういえば、UFO特番では「最近メキシコでUFO目撃例が増えている」からはじまって、メキシコシティ近くにある火山が近々大爆発する予兆でやばいマジやばい、っていう話をしていたなー。あれからもう10年以上経つのだが、いまだに爆発してないぞ。今だったら、多分「風説の流布」とかで訴えられるか、BPOから厳重注意されているだろう。まあ、そんなこんなで最近はすっかりああいう「インチキくせぇけどわくわくさせられるトンデモ番組」ってすっかり陰を潜めてしまったわけだが。

多分この謎の機械は、火山の噴火予知をするための計測器なのだろう。だから、間違ってもこの機械のそばで体重が重いわれわれなんぞがドシンドシンと四股を踏んだり、センサーに向かって放屁してはいかんのだ。

火口のせり出し
荒涼とした土地

「お鉢巡り」といっても、どっかん、と爆発した噴火口があって、そのまわりをきれいにぐるり一周回るというものではない。なにせ爆発に爆発を重ねまくった山だ、噴火口があっっちこっちにある。だから、道は「お鉢のへり」ではないようなところについている事が多い。

振り返ると、左手にあった山の斜面が雪庇のようになっている。なんでこっち側だけなめらかで、反対側はすっぱり切れ落ちているのか?

崖をのぞき込んでみたら、そこにも噴火口があった。なるほど、そういうことか。これを見ると、富士山というのはなんてお行儀が良い噴火をしていたのだ、と感心させられる。三原山さん、グレすぎ。

見渡す限りの砂漠

うわあ・・・

徐々に三原山の北側から東側にかけて見えてきたが、見渡す限りの砂漠だ・・・。

これはすごい。

鳥取砂丘に申し訳ないが、あっちよりこの三原山の方が大スペクタルなんじゃあるまいか。

砂漠の向こうに、太平洋が見える。これもまた、スペクタクル。

すべての風景に、民家、電柱、道路その他人工物が一切見えない。

櫛形山

多分「櫛形山」と呼ばれているであろう山。

登山道はないらしく、行きたい人はガイドを雇え、と観光ガイド本には注意書きがあった。「こんな見晴らしの良いところなんだから、道に迷うことはないだろう」とたかをくくってはいかんということだな。でも、こんな山に登る人、いるんか?

なにしろ、この山の向こう側も、さらにずっと、ひたすら砂漠が続く。

大砂漠

大砂漠。

日本にこんなところがあるということを、たった今まで知らなかった。これは得難い経験。東京都だぜ、ここ。ありえん。

三原山火口を中心に、火山灰やら溶岩が積もって砂漠状になっている場所を「大砂漠」と呼称する。そして、茶屋などがある火口の西側の部分が「表砂漠」、火口から東側が「裏砂漠」と名付けられている。

表砂漠を見て、わーすごいねーと感心している貴方。そうそこのあんただ。裏砂漠は規模が違いすぎるぞ。この荒涼感は、アメリカのネバダ州だとか中国のタクラマカン砂漠にでもいかないとないのかと思ったが、いやいや、日本にもありましたよと。

注意しておくと、お鉢巡りをした人のみのご褒美がこの光景。山頂の三原神社を参詣してそのまま下山しただけじゃ、裏砂漠は見られない。

なんでも、昔は観光用にラクダをこの大砂漠に連れてきていたらしい。お客さんからお金を取って、ラクダに乗せる。しかし、そのあまりの過酷な環境からか、ラクダがご立腹しちゃって脱走したとかしないとか。そんな場所。

・・・なんだが、そんな場所を歩いている人が何人かいる。米粒のようにしかみえないが、まさか本当に米粒ではあるまい。人だ。

地図で確認してみたら、なるほど、昨日スルーした「月と砂漠ライン」でこの裏砂漠のきわまで車で来ることができるらしい。時間があれば裏砂漠を実際歩いて見たかったが、もうどう考えてもそんな時間は残されていないので、諦めてください。

メカ

「お鉢巡りの中では一応ここが山頂かな?」という高台に、なにやら白いブツが設置されていた。遠くからみると、標識のようだったのだが、近づくと違う。メカだぞ、これ。

双眼鏡のように見えるので、100円玉入れたら5分間、大迫力の映像が楽しめます・・・という奴かしらん。すぐ近くに「かえせ北方領土」なんて書いてあったりして。ああ、でも納沙布岬の双眼鏡は無料だったっけ。

おや、メカに何か書いてある。

地殻変動観測施設

火山の動きを精密に測定する装置です。手を触れないでください。気象庁

ほー、気象庁のメカだったのか。これ、採取したデータはどうやってるんだろ。FOMAか何かで送信しているのか?ケーブルがどこぞに伸びている気配もないので、有線通信ではなさそうだ。多分、無線通信も面倒なので、実際は職員が定期的にデータを回収しに来るのだろう。

「手を触れるな、ということは足で蹴飛ばしても良いってことだな?」

とんちをきかせてみるが、そこまでして触りたいものでもないので余計なことはよせ。

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