ホームの柱に、「二鐵共乘 人車同行」という表示があった。
どうやら、チャリンコを電車で輸送できるようだ。よく見ると、先頭車両の次に電源車だか荷物車だかわからん車両が客車との間にくっついている。どうやら、台灣で言うところの「電源行李車」らしい。
おー。荷物用の車両があるのかー。懐かしいなあ。おかでんが子供の頃乗っていた国鉄伯備線(倉敷~米子)には荷物車が一両連結されていて、その中では大人達ががたごと揺れて不自由そうにしながらも荷物の仕分けをしていたもんだ。
それにしても、チャリンコなんてこの国の人は乗るのか?バイクじゃないのか?チャリだと暑くて死ぬだろ。
あ、でもFishのお母さんはサイクリングが趣味だという事を聞いている。今回Fishが帰省する際、母へのお土産に選んだのはサイクルコンピュータだった。やる人はやるんだな。
聞くところによると、台鐵は京都議定書の遂行のため、特急「自強號」にまでチャリンコ搭載貨車を連結するようにしはじめたらしい。良い心がけだと思う。さすが国営だと、国策がストレートに反映される。
われわれがホームに出たちょうどその直後、出発時刻となり高雄行きの普通列車は出発していった。先頭についているディーゼル機関車に引っ張られ、非常に重たそうに、ゆっくりと加速していった。
・・・おい、えらい長尺だな。ローカル路線のはずなのに、長い。日本だったら、二両編成くらいのコンパクトなものにするのだが。何両あったかな?
ふと傍らを見ると、ディーゼル機関車用だと思われるターンテーブルが見えた。現役で稼働しているのかな?
さて一方、台灣環状線の中では一番ローカル路線となる「南廻線」。そちらのホームにも出発スタンバイの台東行きが停車していた。ブルートレインのようなデザインとカラーだ。先ほどの列車にしろ、こちらにせよ、非常に重たそうだ。鉄の塊、といった風情。普段東京に住んでいると、アルミボディの車体しか見ないので特にそう思う。
台東行きも、高雄行きが出てしばらくしたら静かに出発していった。
こちらもローカル路線の割には編成が長いんだよなあ。それだったら、もう少し小編成多頻度運行をした方が良いのではないか?と思うが、鉄道の収支ってどうすれば利益が最大化するのかわからないので、スジを引くプロから言わせれば今の運行が最適なのだろう。
地下通路を通って、改札まで戻る。その途中、地下通路の壁には「枋寮的漁業」というポスターが貼ってあった。さすが漁業の町。地下通路でPRしますか。
「ほら!あった!あったぞ、しらす!」
おかでんが勝ち誇って叫びつつ指さした先には、「魩仔魚」という袋にパッケージされたしらすの姿が。しかもよく見ると、このポスターの左上にはロゴマークで「魩之郷」なんて書いてある。やっぱり枋寮はしらすが名産だったというのは本当だったのだ。
いや、何で興奮しているかというと、最初「枋寮でしらす・・・」とおかでんが口火を切った時、地元民であるFishはしらすが名物であるということを知らなかったからだ。こっちとしては不安になる。大丈夫かと。こっちだって、確たる証拠があるわけではない。観光ガイドになんて到底載らない田舎町なので、たまたまヒットした旅サイトの記述を信じたにすぎないからだ。そんなわけで、ほっと一安心した。しらすが無いとなれば、何しにこの枋寮に立ち寄ったのか分からない。いやまあ、駅を見て、漁港を見るだけでも十分に楽しいんだが。
ちなみに、枋寮界隈ではうなぎの養殖も盛んで、日本に出荷されている。
隣には、「枋寮-黒珍珠的故郷」というポスターがあった。Fish兄弟が先に進むので、あわてて写真撮影だけして後を追いかけた。この写真に写っているフルーツが、先ほど萬巒で見かけた「蓮霧(リエンムー)」だということに気がついたのは帰国してから。どうやら屏東界隈は蓮霧の産地らしい。
しらすが名産であることをポスターで知り、意気揚々と漁港に向かってみる。
途中で道をロストし、町の人に道を聞いたりしながら到着。
さすがに平日火曜日、しかも昼下がりということもあって漁港は人気があまりない。でも、屋台や露店はある程度出ているのが不思議だ。誰が相手だ。
海岸線に沿って広い駐車場が完備されており、週末になるとにぎわうのだろう。
水揚げも競りも終わり、がらんとしている漁港の敷地内に入ると魚を売っているお店が何軒か並んでいた。
魚を物色する。買わないけど。これからFishの家に行く際の手土産に、なんていってこんな生魚を持ち込まれても困るだろう。並んでいる魚を見ると、日本でもおなじみの太刀魚と、それからシイラは認識できた。あとの魚は不明。鰆みたいなやつ、メゴチみたいなやつもいる。もっと極彩色で、色気はあるけど食欲が湧かないというお魚見本市になっているかと思ったが、案外質実剛健な取りそろえだ。基本、シルバーアローな色をした魚を食すようだ。南の人は熱帯魚を食ってる、と思ったが、さにあらず。なお、ここは既に熱帯圏。それでも見た目は日本のものとあまりかわらないのだな。味は・・・まあ、北の魚と比べりゃ、大味だと思うけど。
わーい、屋台に「魩仔魚煎」と書かれているよー。これが枋寮名物、「しらすのお好み焼き」だ。店頭には、しらす各種がざるに山盛りにされていた。大きさによって選別されているし、ブロック状のもの、バラのものにも分かれていた。
「おお、台灣だなあ」とつくづく実感したのは、並べられたザルの上に、電気仕掛けの虫除けパタパタがくるくると回っていたこと。これで、ハエが近づかないようにするわけだが、日本にはありそうでない便利グッズだ。
ハエはこれで撃退できるだろうが、それ以外にもそこら中にお犬様や猫様がうろうろしている。そいつらに盗まれるんじゃないか、ひっくり返されるんじゃないかとちょっと心配になる。
それにしても、猫は兎も角、犬がこんなに偉そうに道路を好き勝手に歩いているのは日本では見かけない光景だ。野良犬天国だ。
で、お目当ての「魩仔魚煎」だが、一枚35元。Fishに「食べる?」と聞かれたが、どう考えてもおなかいっぱいで食べる気がしない。「三人でシェアするなら・・・」と弱気の発言をしたが、さすがにおかでんよりは食が細い二人、既に猪脚でギブ状態。兄弟顔を見合わせて、「無理だなあ」との回答。気にはなったが、無理するほどの気力は湧かず、惜しいがスルーさせてもらった。
魩仔魚煎の作り方は至ってシンプルだ。小麦粉を溶いた生地を鉄板に敷き、その上にしらすをどばっと大量に載せる。ここでけちっては枋寮の名が廃る。その後、上から溶き卵をかけ、片面が焼けた時点でひっくり返して焼き上げて完成。具に葱が入っていたかもしれんが、食べていないのでよくわからない。油多めで、かりっと焼き上げるのがコツのようだ。なお、多分蚵仔煎(オアチェン)のように片栗粉を入れてQ的にはしていないはずだ。味つけは醤油。
なお、しらすは夏の間禁漁期間となるため、夏休みを利用して台灣南部を・・・と思っている人は要注意。この記事を読んで、枋寮で魩仔魚煎を!と計画を立てると、とんだしっぺ返しを食らいます。
屋台の脇に、「歓迎 使用消費券」という看板が掲げられていた。おお、消費券か。
これを書いている2009年4月は、日本でも「定額給付金」の配布が始まっているが、台灣は一足先に「消費券」を配布したのだった。それが2009年の春節前、1月に配布となったはずなので、配布から一カ月ということでまさに台湾全土で商店による消費券争奪合戦が繰り広げられている模様。
配布金額は国民一人頭一律3,600元。非常に中途半端な数字だが、まず予算総額ありきで頭割りしたらこの金額になったということだろう。日本円にすると(1元=3.2円と仮定)、11,520円。日本の「定額給付金」と似た金額だ。
Fishに、「消費券貰った?」と聞いたら、その消費券を見せてくれた。彼女は台湾籍なので、日本在住であっても当然受け取る権利がある。なお、日本の定額給付金も受給資格があるので、2カ国でお金が貰える幸運。
「消費券」という名前の通り、金券での配布となる。日本の「定額給付金」が現金を銀行口座に振り込みするのとは訳が違う。
見せて貰った200元券は、台灣で最も高い山、玉山が描かれていた。発案から3カ月足らずで実施したドタバタ消費券だが、どうしてどうして、ちゃんとしっかりした作りだ。さすがに偽造されたらたまらんので、普通の紙幣同様しっかりとした作り。
この台灣滞在中、ことあるたびにFishに「消費券、使わないの?日本に戻る前に使わないと、無駄じゃないか」と聞いたが、そのたびに「まだまだ!」という答えが返ってきた。何を待っているのだろう。
聞くと、消費券争奪戦は過熱しており、「消費券を使えば、割引するぜ」という店がたくさんあるらしい。桃園國際機場の免税品店では、消費券使用で5%引きだったし、高雄では「3600元の消費券で4000元分の買物ができます」という看板を見かけた。さらに、大手流通に至っては3割引などの破格の対応を打ち出すところもあるそうだ。なるほど、そういう実情を知ってしまうと、定価でしか使えないお店や駐車場の支払いに消費券を使うのは馬鹿馬鹿しい。
あとでこの写真をよく見ると、この消費券には有効期限があり、今年の9月30日までと設定されていた。短期決戦だ。
「おいFish、結局台灣ではあんまり使っていなかったようだけどどうするのよ、これ。夏に帰国できるかどうかわかんないんでしょ?」
と後日聞いてみたら、
「使い切れなかったから妹にあげちゃった」んだそうだ。なんと太っ腹。ケチなおかでんだったら、現金で等価交換してたな。
日本の定額給付金よりもはるかに景気浮揚効果はあると思う。期限を切られているし、金券なので貯金には使えない。それを考えると、日本の政策って単なるバラマキじゃねぇか。銀行口座にお金が振り込まれたら、その12,000円分を引き出してきっちり従来より余計に消費するなんて奴がどれだけいることやら。大きな利子がついた、くらいの考えで貯蓄するか、生活のたしにされておしまいだ。「生活のたしにする」ということは、即ち従来確保してあったお金が余るわけで、結局貯蓄に回る。
枋寮を後にし、また省道1号線で南下する。
途中、トンネルが見えた。「あ!あれは!」あわてて車がストップ。
恆春について調べていた時、このトンネルについては情報が入っていた。これ、台鐵の南廻線用のトンネルなのだが、本当はトンネルが不要な場所にもかかわらず、わざわざ盛り土をして、トンネルを造ったという意味不明な事をやっている場所として名高い(?)。
なぜかというと、この先、山のほうに陸軍の演習場があり、砲弾が飛んでくる可能性があるそうだ。鉄道や架線に直撃したらたまらないので、わざわざトンネルを作ったというわけ。なんとも大げさな話だ。
それにしても、こんなところに演習場を作らなくても・・・と思う。しかし、台灣東部は山だらけだし、西部は町と畑と田んぼだらけだし、周辺住民があまり多くなく、心おきなく演習できる場所はこういったところになるのだろう。
しばらく走ると、道は海岸線沿いを走るようになった。
道路と海岸の崖との間には路肩と呼ぶには広すぎる平らなスペースがある。本当なら素通りして相手にされないような場所だが、街路樹がまばらということもあって、あちこちに「屋台カフェ」が開設されていた。
大抵は軽トラが1台停まっていて、そこにドリップマシンが据え付けてあったり、食器類がスタンバイされている。
そして、その傍らにはキャンプ場のようにアウトドア用のディレクターチェア、日差しと雨よけのタープ、机。大海原を眺めながらコーヒーを楽しむことができる、というものだ。なるほどよく考えたものだ。台灣人、商魂たくましいな。ただ、これ、どう考えても国有地の不法占拠だろ。大丈夫なんか?
でも、おかでんが見たTV番組「台湾新発見!」でもこのシーサイドカフェは紹介されていたので、ある意味政府お墨付きなのだろう。
こんなお店が、海岸線沿いに100mおきくらいに何軒も並んでいる。どれもコーヒーショップであり、「臭豆腐の店」だとか「猪脚の店」などとガッツリ食うぜ系の店は無かった。せっかく台灣最南端近くの海沿いなんだからおしゃれにいきたいよね、という感覚は台灣人も日本人も一緒か。
カフェから見た景色。
すごい。絶景だ。水平線が見えるぞ。ええと、この海は何?と聞いたら、台灣海峡だそうだ。台灣と中国を隔てる海。てっきり、既にわれわれは南を向いていると思ったのだが、西の中国との海峡とはちょっと意外。しかし地図で確認すると、西だろうが南だろうが、中国はデカいんだわ。だから、少々南側の海でも、台灣海峡になる。
見下ろしたところに、岩が二つあった。日本だったら、恐らく「夫婦岩」なんて名前がつけられているに違いない。そして、二つの岩の間にしめ縄なんかぶら下げて。
これだけでも結構な観光名所になるだろうに、と聞いたら。「いやまだまだ墾丁まで行けばこんなものじゃない」とFishは言う。記念撮影をしようとしたのだが、この程度の場所ではするまでもない、という雰囲気。えええ、これはまだ序の口ですか。この先どうなるんだ。
なお、このカフェは当然トイレを備えていない。「こんな光景を眺めながら、半日くらい読書したり、昼寝したりしたい」と思っても後が大変なのでやめておいた方がよろしいかと。
じゃあ、店員さんは一体どこで用を足しているのだろうか。謎だ。
カフェの敷地、というか道路の路肩、というか、駐車場、というか、そんな曖昧なところをお犬様がうろうろと歩いていた。もちろん野良犬だ。どうなっているんだ、この国は。町中だったら、残飯を漁ったりしてなんとかその日暮らしをすることもできるだろう。しかし、こんな何もないところに住むなんて、一体何を食べて生きているんだ?仙人みたいに、霞でも食っているんだろうか。不思議で仕方がない。
さすがに痩せてはいるが、「もう駄目」とへたっているわけではない。温暖な気候なので、冬の寒さがこらえきれずに凍死、ということがない国だ。その点生き物は生息しやすい。ただ、夏になるととんでもない猛暑になるわけだが・・・。まあ、その時は日陰に待避か。
野良だけあって、人になつくでもなく、かといって警戒しているわけでもない。我関せず、という感じで二匹はあてもなくうろうろしていた。
きっと、カフェの残り物を店員さんから恵んでもらって食いつないでいるんだろう。そうでないとこのシチュエーションではサバイバルは難しい。
「見えてきた!ほら、あれが尖り山だよ」
とFishが指さす。
前方には、確かにぴょこんと尖った山が見えた。何でも、恆春界隈にはランドマークになる尖った山が二つあり、そのうち小さい方がこちらだという。小尖石山という。
「あの山を見たら、恆春に帰ってきたな、という気になるよ」
という。ということは、そろそろということか。
車は、幹線道路を外れて脇道に逸れた。明らかにまだ恆春ではない場所だ。一体どこに行こうとしているんだ。
この辺りは、「地球の歩き方」ではほとんどサポートしていない場所だ。拡大地図が掲載されているのは、恆春半島の先端、墾丁と恆春鎮の周辺だけ。だから、日本人観光客の多くがスルーしてしまう場所になる。というか、ここ、どこ?地理感がないので、今どの辺りで道を逸れたのかがわからない。そもそも、なんで逸れたのかさえわからない。
「え?え?」
と動揺しているおかでんそっちのけで、車は前へと進む。
道は二車線分くらいの幅があるのだが、路駐だとかなんだでもうぐだぐだ。写真の通り、なぜか日本と同じ「左側通行」で前方から来ている車とすれ違っている。
拉致されまくり感満点。
「これから○○に向かいます。そこは、かくかくしかじかの由来があって、見どころは△△で・・・」という事前の煽りなんて一切無しだ。なぜ言おうとしないのか、全く不思議でならん。計画を事前に伝え、解説しておけば客は「おお、それは楽しみだ。気の利いた配慮ありがとう」と盛り上がるのにね。ミステリーツアーだよ、これは。台灣人気質・・・なのか、どうなのか不明。
道路の行き止まりは広場になっていて、駐車スペースがあった。そこに車が停まり、「降りるよ」と言われた。降りるよって言われても、ここはどこだ。
訳が分からん、と首を振りながら車から出てみたら、真正面には荘厳なお宮があった。車城福安宮、というらしい。
「おお?これはすごい立派なお宮だな」
感心する。感心するが、いきなり目の前に現れたので、どう反応して良いかわからない。さらに、Fish兄弟はそのままてくてくとお宮の方に向かっていく。待てい、そろそろ種明かししてくれても良いだろう。
「お詣りするよ」
ああそうですか。あまりにも想像の範疇な回答だったので、脱力。まあ、地元の守護神か何かが祀ってあるんだろう。よそ者の日本人がやってきたのだから、ちょっくらあいさつくらいしていかないと神様に失礼ってもんだ。そりゃもう、ぜひともお詣りさせていただきますよ。良い機会だ、現地人による「正しいお詣りの仕方」も教わろう。前回台灣に来た時は、龍山寺でやり方が分からず途方に暮れたからな。
・・・と、自分の頭の中でなんとか「ここに居る意義」を導き出し、モチベーションを高める。本当は連れてきてくれた人にして欲しいんだけどなあ。
お宮の手前で空を見上げると、真っ青で心地よい空間がどこまでも広がっていた。茶色の屋根ととても色が似合い、青空がより一層映える。
「奇麗な空だねえ」
と感心していたら、Fishが「屏東の方はまだ空が汚かったでしょ」という。ん?空が汚い?そういえば、高雄、屏東あたりに居たときは青空は見えなかったが、単に水蒸気が地面から大量に発生して、曇っただけだと思っていた。
聞くと、高雄、屏東などは都会なのでバイクが多い。バイクが多いと排ガスが大量に出る。その結果、空が霞むのだという。えええ、あの曇天、そういう事だったのか。空気が汚かったんだ。
で、恆春半島までやってくると排ガスの影響があまりないし、季節風が吹くので空はいつも奇麗なんだと。なるほどねえ。
そういう解説は大変にありがたい。観光ガイドに載っていない情報だからだ。
・・・で、今いるここなんですけど、もう少し情報が欲しいんですが。
とりあえず中に入ってみる。入口上には大きな電光掲示板がついていて、歓迎だとかなんだとか、いろいろな言葉をスクロールさせていた。
今回の台灣滞在中、電光掲示板を見たのは鐵路の站と、電車の車両内と、お宮だけだった。高雄の華やかな飲食店ではみかけなかったので、別に台灣の人が電光掲示スキーという単純な話ではないようだ。お宮が、なぜか電光掲示スキーなようだ。
たくさんスクロールさせたって、表示する情報なんて限りがあるだろうに・・・看板で済むだろうに・・・と思うが、どうなんだろう。
しかもこの電光掲示、結構読みにくい。難しい漢字を使っているため、等幅フォントではないからだ。だから、どこまでが一文字なのかの判読にちょっと手間取る。
まあ、判読したからといって、結局何が書いてあるかはさっぱりわからないのだが。
お堂の中に入ると、そこは外観に比例して広く、立派な空間が広がっていた。とにかくキンキラキンでゴージャスだ。まばゆい、というのはこういう事だな。この国(地元)の人がいかに信仰深く、そして積極的にお宮に寄進しているかがよくわかる。台灣のお宮は大抵どこも立派だが、その中でもここは群を抜いて立派だ。「いや、実はハリボテでボロいんです」ということはあるまい。どう見ても金かけまくってる。
で、ご本尊は誰なのかね。いい加減、Fishに聞いてみる。すると、「土地の神様だよ」という。まあ、想像の範囲内だが、先ほど萬巒の小さなほこらでも同じ話を聞いたぞ。あっちこっちに「土地の神様」なるものがいるんだな。日本で言う氏神様、とか道祖神、みたいなものだろうか。いや違うな、ちゃんとご本尊が祀られているので、この土地にゆかりのある偉い人なんだろうか?
正面におわす方のところには「福徳正神」というプレートが貼ってあった。誰、それ。
後に横浜中華街の「関帝廟」で、その正体を知ることができた。土地公、と俗称される、中国古代の原始的な農耕社会から生まれた自然の神様。五穀豊穣を司るとされ、この御方に祈念すると金運UPするんだそうだ。
なるほど、それでか。台湾人は、中華系文化を引き継いでいるのでお金が大好き。だから、金運の神様である福徳正神を大切に扱うというわけだな。
この神様は道教に由来するのだろうか?道教という言葉は知っているが、その概念を全く知らないので、さっぱりわからない。
あ、いや待て、この仏壇、二階建てになっていて、二階にも神様が鎮座しているぞ。その二階には・・・あれれ、観世音菩薩がおわすではないか。
その傍らには、文殊菩薩と薬師如来(現地では薬師佛菩薩と呼ぶらしい)が脇を固めている。うーん、多神教、というか宗教関係無しだな、これは。御利益があれば何でも良いということらしい。
Fishが「日本語で”Oh,MyGod!”に相当する言葉って何?」と聞いてくる。しばらく悩んだが、そのような言葉は日本にはなさそうだ、という結論に達した。一神教でないと、ああいった言葉は出てこないだろう。すると、Fishは「台灣だと、”ああ、わたしの空!”といった意味の言葉を言うよ」という。何じゃそりゃ。
聞くと、神様も、良いことも、全ては空から降ってくるんだそうだ。だから、物事の根源である空を引き合いに出すんだと。なるほど、「天命」という言葉が日本にもあるが、そういうことか。
何か不思議なものがあったので、近づいてみたらおみくじだった。
日本のものと違って、非常に大げさな作りだ。
円柱の真ん中にある、卒塔婆のような板を引っ張り、そこに書かれている番号を円柱側面の引き出しから引っ張り出し、ご神託を受け取る。お金は・・・あれ、お金を入れるところがないぞ。神様へのお賽銭などでその分は払ってね、ということなのだろう。
台北の龍山寺でも見かけた、電球付きネームプレートでびっしりと覆われた円柱。ゆっくりと回転している。回ることに意味があるのだろう。マニ車と一緒だ。しかしそれにしても派手だな。電球が光っているし。
電光掲示板といいこの回転ネームプレートといい、台湾のお宮は電化が進んでいる。
せっかくなので、土地公にごあいさつとお賽銭でも、と思ったが、日本の寺社のようなお賽銭入れが無い。あるのは、大きなテーブルと、その上にみっちりと並べられた多種多様なお供え物。さてどうしたものか。
すると、しばらく姿を消していたFish弟が戻ってきた。手には、なにやらでかい物がある。ええと?何ですか、これは。
聞くと、「お供えものだ」という。ほぅ、お供えしちゃいますか。
日本の寺社だと、あんまり物納というのは無いので、ちょっと興味がある。で、そのFish弟が持っているお供えものを見ると・・・んー、下の黄色い包みに入っているのは、単なる紙の束だ。何これ。そして、その上にはどこでも売っているようなスナック菓子。葉巻型をしたクッキーだった。伝統的なものでもなんでもない。これを供えるの?
Fish弟は、お供えものを台の上に無造作に置く。あれ、そんなもので良いのか。何かお辞儀したり土下座したりという儀式はないのか。
神様の像の前は、お供えものでいっぱい。平日昼下がりでこれだから、週末になるともっと増えるのだろう。周辺住民の数は決して多くないはずなので、いかにここが信仰を集めているかが伺える。
お供えものは、われわれが・・・というかFish弟が供えた「クッキー+紙」というベーシックスタイルの他にも、いろいろなものがあった。フルーツ盛り合わせや、缶ジュースやペットボトルなど。中でも驚いたのが、ガチョウだかアヒルだかの鳥が丸ごと一匹献上されていたことだ。何という大胆なお供え物だと感心。
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