おもてなし三昧な世界【台湾南部滞在】

お酒を飲んでいる人

六合夜市の通りは、両脇の建物に通常店舗があり、そしてある程度幅をとってから道路の内側に向いて両サイドに屋台が並んでいる構成になっている。台北あたりの夜市だったら、さらに道路の真ん中のスペースに屋台コロニーを作っていくのだろうが、それは認められていない。その代わりところどころにゴミ箱なんぞがおいてあって、大変に快適だ。先ほど食べたからすみの爪楊枝も、ゴミ箱にポイ。捨て場所に困る事が無いということは、域内の清潔感が段違いに違ってくる。

そんなゆったりとしたスペースであるが故に、建物と屋台の間にテーブルが並べられているところが結構あった。どうぞ買った食べ物はこちらでお召し上がりください、というわけだ。買い食い・食べ歩きが台灣屋台の基本かと思っていたが、そうではないのだな。なるほど、だから麺やスープといった立ち食いにはやや向かない料理も屋台で取り扱っているわけだ。

で、そのテーブルを見ると、なにやらオッチャンたちが楽しそうに談笑している。随分とご機嫌だ。そのテーブルの上には・・・あっ、生ビールのジョッキが置いてあるぞ。台灣で生ビール、初めて見た。まさかこんなところで発見するとは。

今までさんざん台灣啤酒にはお世話になってきたが、全て缶または瓶だった。日本人ほど生麦酒を愛していないらしいのだが、単に生ビールサーバーの清掃が面倒という事なのかもしれない。しかし、ここではまさにオッチャンらが生ビールを美味そうに飲んでいるのだった。あぅ、しかも目の前で小姐にお代わり要求してるし。

生ビールサーバー

ジョッキを受け取った小姐は、脇にあるテーブルのところへ行ってビールを注ぎ始めた。おっと、生ビールサーバーもあるのか!すげえな。それにしても何だか無骨な生ビールサーバーだ。ステンレスの箱に、メーカーのロゴも何もなく、ただ単に「生啤酒」と書かれている代物。一体中身は何だ。「のどごし生」が入っていたら相当びっくりだ。

些細な日常光景ではあったが、この「生ビールを飲み屋台街で談笑する人」を見ておかでんは深く感動したのだった。やっぱりビールは美味いよな。万国共通だよな、と思ったからだ。昨日の原発の人たちもビールを愛していたが、今日あらためて「屋台の料理をつまみにビールを飲む」人が居て「同士よ!」と思った。

やっぱね、台北が不思議なんだよ、あそこって禁酒令でも敷かれているんじゃないかってくらい屋台に酒が乏しいんだから。コンビニに行けば売ってるが、ビール飲みながら胡椒餅やら蚵仔煎食べている人を見たことがない。あの美食を酒なしで食べるだなんて、なんなんだあの人たち。

ステーキハウスらしい

屋台だけではない。ふと見上げた建物、そこはステーキハウス?なのだが、「牛排(ステーキの事)・火鍋・串焼・珈琲・生啤酒」と書かれていた。素晴らしい。ここでもビールを大絶賛提供中ではないか。コーヒーより後回しにされているのはイマイチ納得できんが、それでも「どうです、当店では生ビールやってますよ」という売り文句にしてくれているのは、ビール党なワタクシにとってこれ以上の喜びはない。

それにしてもこれ、何屋だ。ステーキと串焼きはまだ関連性があるが、火鍋も扱っているなんて。不思議なレストランだ。

それにしても台灣って、店名を表記するよりも取扱商品をデカく表記する方を優先させるのかね。あちこちで、「このお店の名前は何?」という店舗を見かけた。良く見ると、スゲー小さい字で書いてある。ウォーリーを探せ状態だ。

ぱっと見、何を扱っているお店かすぐに分かるので結構だが、人との待ち合わせには使えないな。「今○○っていうお店に居るんだけど」って遅れてくる相手に電話しても、その店名が店の外観からは分かりにくい。

iCE MONSTER 冰館

「あれ?」

ふと立ち止まったところは、屋台が並ぶ裏手の実店舗。「iCE MONSTER 冰館」と書いてある。冰館といえば、台北の永康街にあるかき氷店の名店。特にマンゴーかき氷は定番中の定番となっている。それがここ高雄にもあるようだ。

「冰館(ピングァン)がここにもあるね、せっかくだから食べてみようか」

2年前台北に行った際、冰館というお店の存在を知らずにスルーしてしまった事がある。店頭の写真すら撮っていたのに。後でFishに「なぜ食べなかったのか」とおかでんのダメっぷりを批判された。そんな台北観光では外せないお店。だから、今回あらためて台北の敵を高雄で討とう、というわけだ。

しかしFishは首をかしげている。

「本物かな?高雄にあるって聞いたことないけど」

どうやら、有名店であるが故に、漢字が微妙に違う店名などのインチキ店が結構存在するらしい。これもそれではないか、というわけだ。言われてみれば、台北の冰館は青い看板だったような気がするが、ここは黄色だ。一応、看板には「台北永康街芒果冰(マンゴーかき氷のこと)」と書かれているが・・・。

しばらくFishと相談した結果、止めておくことにした。外れくじを引くと嫌だし、そもそもマンゴーは今は旬ではないので食べられないよ、という話だったからだ。まあ、君子危うきに近寄らず、だ。やめておこう。それほどかき氷を食べたいわけでもないし。

年中常夏のイメージがある台灣だが、フルーツにはちゃんとシーズンがあるのだから驚く。現に今、2月の厳寒期?であっても、気温が夜でも25度を超えている。こんな国でも植物は敏感に「旬」を感じ取って成長するのだから不思議。一体どうなってるんだ。ちなみにマンゴーは5月に入ってからがシーズンなんだそうで。真夏の、ぶっ倒れそうになるくらいの日光を浴びながらマンゴーかき氷をぜひどうぞ。

さて、帰国してからこのお店の事が気になって調べてみたところ、なんと本物の冰館の支店だった。偽物扱いしてご免よぅ。「アイスモンスター、なんてキャッチフレーズ使ってなかったと思う。偽物じゃないか」なんて適当な事言ってすまんかった。

かき氷屋台

こちらの屋台でもかき氷は売られていた。フルーツジュース屋か果物屋とみまごうばかりに、果物がずらりと並んでいるのが壮観。豊かだなあ。それくらべて日本のかき氷のなんと貧弱な事よ。人工着色料どっさりの毒々しいシロップをかけて完成だからな。あれでいちごとかメロンとか言っているのは、21世紀の今となっては相当時代遅れだと思う。さっさとフレッシュフルーツを使ったかき氷屋がそれらの店を淘汰するようになってくれないものだろうか。

・・・あ、分かった。果物を切り刻んでトッピングする段階で、保健所からの縛りがきつくなるんだな。だからおいそれとできない、ということなんだろう。でも、「禁止」に鳴っている訳じゃないはずだから、ちゃんとやればちゃんと儲かると思うんだがなあ・・・。

水果果肉冰沙

いちごやらキウイやらパパイヤやら、いろいろなフルーツをどっさりと載せたかき氷がいろいろ。台灣のかき氷の特徴は、ブロックアイスが結構入っているということがある。熱すぎて、粉雪状に細かく削るとすぐに溶けるから、なんだと思う。よって、歯がある程度しっかりしていないと食べられないのが台灣風かき氷。ブロックアイスをかみ砕く歯の丈夫さが必要。

さて、どのメニューも「大好評」と書かれており、このお店は不評なものが何一つ無いじゃないかどうなっているんだ、と思う。そんな中でも、日本語で「お奨め」の意味である「招牌」を冠するメニューが「水果果肉冰沙」だそうで。「強力推薦・大力放送」と書いてあって、なにやら大変に勇ましい。ご丁寧に日本語訳が添えてあるので、中国語が分からない日本人でも安心。曰く、「新鮮な果物の氷の砂」なんだそうだ。何だか分かったような分からないような訳になっているが、まあ許してあげてください。要するに、その時旬のフルーツをトッピングしたかき氷ですよ、という事だ。中華料理店で、「季節の青菜炒め」っていうメニューがあるのと一緒。

黄金芒果牛奶冰

しかし、季節を無視してマンゴーかき氷もデデンとメニューに記載されている。あ、違うな、「季節限定」と書いてあるから、今は取り扱っていないようだ。その名前は「黄金芒果牛奶冰」だって。写真にはキューブ状のマンゴーが山盛り。ええと、日本語訳は・・・

「金のマンコミルクの氷」

おい、ただちに看板下ろして書き直せ。そうだ、今すぐだ。マンコの季節・・・じゃなかった、マンゴーの季節が来る前に直しておけよ。さすがにこれはまずいだろう。

滷味屋台

不審人物のようにきょろきょろしながら少しずつ歩く。360度どこを見ても面白い。夕食をここで食べても良かったなあ、とも思うが、さすがにFish家一家勢そろいという貴重な時間を「屋台で食べ歩き」はあんまりだろう。あれはあれで、自助餐を体験できたことだし大満足だ。ああ、満足度が高くて時間がいくらあっても足りない旅行だ。

さて前方になにやら茶色い屋台発見。とにかく、売られているものが茶色い。また櫛やブラシのお店かとも思ったが、近づくと滷味(ルーウェイ)のお店だということがわかった。即ち、いろんな食材を煮込んだ料理。滷味を売っているお店を実際に目にしたのはこれが初めて。台北では見かけなかったな。台北では内臓肉を売っている屋台も無かったし、この手の内臓系の料理ってあまり食べないのかもしれない。

滷味

いろいろ見慣れない食材がずらりとうずたかく積み上げられており、一つ一つ見ていくだけでも相当楽しそうだ。しかし、おかでんはというと周囲のあまりの情報量に完全に浮き足立っており、せっかくの興味深い素材にも関わらずあんまり脳の中に情報が入ってこなかった。パンク状態だ。

日本のおでんと同様、肉、野菜、練り物など各種そろっている。豆腐や海草といったものもある。ただ、おでんと根本的に違うのが、煮込む醤油スープに八角が大量に入っているということ。八角がダメな人が多い日本人にとっては、口にあわないかもしれない。おかでんはむしろ八角が好きなほうなので、これらの茶色い山をみるにつけ「ああ、酒のつまみになりそうなものばっかりだ」と垂涎の的なのだった。

脳がこれ以上の情報インプットを拒絶している状態なので、ざっとパレットを眺めていると、目に付いたのが黒っぽい小さな羊羹風の滷味。これ、鴨の血をもち米で固めたものだ。以前から食べてみたかったんだよね。では早速購入してみよう。

袋どっさりの滷味
滷味めしあがれ

先ほどFishがすいっとからすみ屋に立ち寄り、からすみの串を買っていたのが「カッチョエエ」と思ったからだろうか。Fishに仲介してもらって買えば良かったのに、一人でこの鴨の血を固めた滷味を店員さんにオーダーしたのだった。すると、横にいて不意を突かれたFishが「あっ・・・」と息を呑む。「どうした?」と聞いたら「いや・・・いいけど。でも量が多いよ」と返してきた。量が多い?いや、僕は先ほどのからすみみたいに串1本で十分なのだが。

でも、実際に店員さんに渡されたものは、ビニール袋にどっさりと入った代物だった。うわ、これ何個入っているんだ。確かに食べ歩き用に串も入れてくれているが、それにしても一人分のノルマって一体どれだけだよ。しまった、完全に目測を誤った。そういや、先ほど50元を支払ったんだよなあ。今考えると高いな、とそこで気がつくべきだった。

「わたし食べないからね?一人で食べてよ?」

とFishが先制攻撃で食べるのを拒絶。もうおなかがいっぱいだという。

右に同じ。ワタクシもおなかいっぱいなんですが。ええと。でも残すのはもったいないし、とりあえず食べよう。

食べてみると、血生臭い、ということはなかった。特に変な味ではない。違和感無いなあ。ただ、もち米故ににちゃにちゃ歯抜かりする。この食感、おなかがいっぱいかつ歩きながらかつ暑い時に体感するとちょっとうっとおしい。でもこれ、女性で貧血気味の方なんぞには良いかも知れないです。お奨め。辣椒醤かけてピリ辛にすればとてもおいしいと思った。

台南担仔麺の店

丸い赤ちょうちんがちょっと目立つ屋台は、台南担仔麺の店。おー、担仔麺(北京語:ダンツーミェン、台灣語:ターミー)の屋台もあるのかー。いいなあー。おなかが空いていればぜひ食べたかったのだが、今回は黙って見るしかない。このお店、ご丁寧にひらがなで「たいなんのたんたんめん」と日本人向け?に書いてあるが、多分それを見たら日本人はますます混乱すると思う。決して、いわゆる四川料理でごまだれの担々麺とは違う料理だ。

このお店、「麺」と銘打っているので、担仔麺の事を知らない日本人であっても「ああ、何かラーメンのようなものを出すんだな」ということがわかる。しかし、漢字が読めない国の人からすると、何のこっちゃわからないお店だろう。何しろ、屋台の上には処狭しとゆで蛸丸ごと一匹とか、滷味とか内臓肉とか野菜とか豆腐とか茶卵が並んでいる。麺の屋台とは思えない外観だ。ゆで釜がお客側に見えないというのも、ますます謎を深めている一因。

日本料理店?

写真は、「日本料理」を銘打つ屋台。「寿司」「軍艦」などを扱っていますよ、と書いてある。「軍艦巻き」は「寿司」の中に入るんだが、どうも違うものと認識されているっぽいな。あと、「定食」というのもやっているようだが、一体何が出てくるんだろう。いわゆる日本の定食、つまり「おかず+味噌汁とご飯」というコンビって、台湾人にはいまいち理解できないだろうし、屋台でそのような料理を本当に出すのかも怪しい。興味津々だが、注文してみるほどの勇気と胃袋は持ち合わせていなかったのでパス。

ガラスケースをのぞいてみると、確かに軍艦巻きやにぎり寿司、そして巻き寿司が並んでいた。にぎり寿司は既に握られた状態で陳列するのね。ネタが乾燥するんじゃないかと心配するが、大丈夫か。

あと、一風変わった太巻きを発見。20年くらい前だったか、日本人は「カリフォルニアロール」なる白人さん考案の巻き寿司に仰天したものだったが、お隣の台灣でもなにげにちょっと見慣れない巻き寿司発見。外側が海苔の黒じゃなくて、黄色いのだった。名前は、「蛋包飯」だって。なるほどねえ、薄焼き卵で巻いたのか。

店頭に少しだけ掲げられているお品書きを見ると、鍋焼きうどんなどもやっているようだ。他にも、鮭チャーハンとか。・・・鮭炒飯?日本料理じゃないぞ。でも、きっと台灣の人からすると、「鮭=日本」なんだろう。なにせ、台灣では鮭はやってこない。

超巨大なイカの天ぷら

周囲の店舗よりもひときわ照明が明るく、人目を引くディスプレイをしているお店がこちら。ええと、何屋といえばいいのか。よくわからんが、とにかく食べ物屋、だ。

特に目立つのが、超巨大なイカの天ぷら。足一本でこんなにデカいなら、イカ全体はどんなにデカいのかと嘆息するくらい、足が太くて長い。タコ釣りでタコと漁師が格闘するのはTVで見たことがあるが、この規模のイカならば相当船の上で暴れそうな気がする。「深海巨無覇花枝」だそうで。台灣近海の深海にはこんな凶悪なイカがいるのか。

なお、「巨無覇」というのは「でかい」という意味。もしくは、「ビックマック」という意味になる。かといって、この目の前の天ぷらがビックマックというわけではない。

いずれにせよ、こんなデカいイカの足を買ったまではうれしいが、その後どうやって食べるというのか。恋人同士でポッキーゲームでもやってアチャー恥ずかしいのぅ、とやるか。うひゃー。

蟹の足もデカい

今度は蟹だ。「蟹脚」と名乗っているが、目の前には巨大な爪がふんぞり返っている。今なら、確実にジャンケンに勝てる気がする。ねえ店員さん、この蟹とジャンケンして勝ったら1本タダで貰えるってやってくれませんかね。

1本150元だというから、500円近い代物。鼻血が出るくらい高いが、それでもこんなに山積みになっているということはそこそこ売れるのだろう。でもねえ、相当殻が分厚そうなんですが。殻を外す段階で日本人ならギブアップしそう。

杏鮑菇

あれ?エリンギみたいなキノコがあるぞ。お行儀良く立てかけられている。

どれか一つを引っこ抜くとばたばたと倒れそうなので、将棋崩しゲームにも使える優れもの。エリンギって、「杏鮑菇」って書くのね・・・知らなかった。あんずの、あわびの、きのこ、だもんな。なんでも、鮑と似た食感だからそう名前がついたそうで。・・・そうだったっけ?ええと、あんまり記憶がないのですが。よくわからないのでタダで鮑食べさせてください。

ところでこのエリンギ、どうみても生なんだが、これをそのままかじって食べる・・・わけないよな?家に持ち帰って炒め物にでもしてください、ということだろうか。でも、他のイカや蟹が調理済みなのに、これは何だか変だ。

しかもこのエリンギ、1個で50元だって。150円を超えておりますが、何なんだこの価格設定は。ホクトをはじめとする日本のエリンギ農家の皆さん、台灣にエリンギを輸出すれば商機はまだありそうですぜ。

東山鴨頭

こちらにも滷味の屋台があった。どうやら店名は「東山鴨頭」というらしい。・・・これは店名、でいいよな?さすがに商品名ではあるまい。他店がどかんと商品名を看板に掲げているので、店名なのか商品名なのか非常に分かりにくい。

鴨頭、とはこれまたすごいネーミングだ。とりあたま、というと「三歩歩けば全て忘れる」とまで言われる、お馬鹿の意味。鴨頭もそれと大差あるまい。でも、どうやら滷味店でこの名前を掲げると言うことは、鴨(日本でいう鴨の意味の他に、アヒルの意味も含まれるらしい)の頭を醤油でこってり煮込んだぜ、ということか。うわあ、それはちょとグロテスクなんですが。

滷味

店頭を見ると、幸い鴨が「ぐわっ」と叫んでいるような物体は存在しなかったが、それにしても茶色いですな。彩りが全くない。ひたすら茶色く、黒光りしている。味が濃くてくどそう・・・と思ってしまうのは日本人だから。実際は見た目ほど味は濃くない。そりゃそうだ、台灣の料理だもの。

それにしても、見慣れない料理故にどれも美味そうに見えないのは困ったものだ。日本人の場合、美味いと判断する基準は「ご飯のお供になりうるか」という要素が多分にある。その点、この滷味はほとんど失格だ。醤油ベースという点では日本食に通じるものがあるが、何しろ汁気がない。汁気がないとご飯とはあわせにくいのだった。

滷味のメニューは意味がわからない

お品書きを見ても、意味が分かるような分からないような、微妙な世界観を構築しております。でもどうやら、日本人が食べつけない部位を煮込んでやがるというのは何となく分かる。

このお品書き、真っ先に出てくる「海帯」からして何のこっちゃわからない。しかし実はこれ、昆布の事。安心して食べてください。

滷味

次に出てくる「甜不辣」だが、これはテンプラーと読む。日本語の天ぷらが現地語になったものだ。もっとも、海老フリャーなんぞが醤油だれで煮込まれました、という野蛮なものではない。写真右のように、薩摩揚げの事を指す。なぜ薩摩揚げが天ぷらなのかというのは理由はしらんが、鹿児島県でも薩摩揚げの事を天ぷらと言うので、その影響なのだろう。台灣には旧薩摩藩が遠征したこともあるので、鹿児島と台灣では言葉の繋がりが少しあるかもしれない。

鴨舌

またなにやらFishが店員さんとかけあっているな、と思ったら、わっ、何だか変なものを串に刺して貰っているぞ。なんですかそれは。

最初、よっちゃんイカかと思ったがそうではない。何かの肉のようだが、見たことがない部位だ。聞くと、「鴨舌(ヤーシャー)」だという。へええ。噂には聞いていたが、これが鴨の舌か。鴨ってそんなに大きな生き物ではないが、意外とデカい舌をしているんだな。何に使うんだ、こんな舌を。

せっかくなのでご相伴にあずかる。牛タンや豚タンがそうであるように、コリコリした食感で結構な歯ごたえがある。不安定な串でのかじりつきなので、噛みちぎるのに苦労した。そのせいで、味はあんまり覚えていない。ちなみにお値段は一串10元。旅の想い出にぜひどうぞ。

なおこの鴨の舌だが、骨、というか軟骨というか、とにかく固い部分があるので注意。丸かじりするとひっかかります。またこの鴨舌、結婚式の料理には良く出てくる縁起物なんだそうだ。なぜだ?

檳榔の屋台

檳榔の屋台発見。「おー」と感心してしまった。台北では全く見かけなかったので、さすが台灣南部、と勝手に納得。単に台北でうろうろしたところに檳榔屋が無かっただけなのかもしれないが。

なお、店番さんは、単なるオッチャンだった。ちぇっ。檳榔辣妹ではなかったか。

檳榔屋台も特徴的だが、やはりなんといっても海鮮の屋台が多いのがこの夜市の特徴。日本の「海鮮屋台」といえばぴかぴかした魚が氷の上に並んで売られているような印象を受けるが、こちらの国はあまりそういうのはしないようだ。魚が尾頭付きで並んでいるのはあまり見かけなかったと記憶している。多分、魚を塩焼きにするなどの文化があまり無いからだろう。切り身を炒めたり煮る調理法が一般的だからと思うがどうか。

蟹がずらり

蟹がずらり。オレンジ色に見えるのは全て蟹と海老。そしてあさりとはまぐりが並べられている。蟹は全てワタリガニ系の形をしており、さすがに日本でおなじみのズワイやタラバといった、腕が太い奴らは見かけなかった。台灣の皆さん、ぜひ北海道に行ってズワイや毛ガニを食ってください。

で、このお店は蟹屋なのか?お持ち帰り用に蟹を売っているのか?というとそうではない。どうやらお目当ての蟹を選んだら、店員さんにそれを渡して調理してもらうスタイルのようだ。そりゃそうだよな、自炊をあまりしない台灣の人のことだ、蟹一杯を持ち帰っても途方に暮れる。

花枝を売りにするお店

「花枝」(イカの事)を看板に掲げる店が多い。台北も同じ傾向だったことから、どうも台灣の人はイカを愛してやまないらしい。恐らく、あの食感がいわゆる「Q的」であり、台灣人の味覚に合うのだろう。

日本の魚屋風

魚などがごちゃーっと並んでいるお店。ぱっと見、日本の魚屋風ではある。しかし近づいてみると、まず青魚がほとんどいなくて赤い奴らが中心にニーハオしているので違和感を感じる。そして、魚と同じくらい、なぜか葱などの野菜が偉そうに陳列されているのがこれまた違和感がある。そして、尾頭付きの魚の横に内臓部分がにょろーっと置いてあったりして、もう一体ここは何屋なんだか、さっぱりわからない。

魚屋?いや違います、これはあくまでも麺線や粥に入れるための「食材」であって、あくまでもお店としては麺線・粥屋でございます。

深海魚を売る店

こちらは、なにやら怪しい深海魚を売る店。看板にはシーラカンスのようなナポレオンフィッシュのようないかつい魚が描かれている。「野生深海大石斑」だって。正体不明。後日調べてみたら、「大石斑」は「大ハタ」という意味になるらしい。ハタ食べたことないからわからん。いずれにせよ、台灣近くの深海にはこのハタやら巨大イカやら、いろいろなものがいるなあ。

さてこの大石斑だが、お品書きを見ると台灣的調理法のたくましさがよくわかる。この魚の料理だけとっても、「粥」「麺線」「米粉」「頭のスープ」「身のスープ」「刺身」と6種類もの用意がある。こんな調子で台灣の飲食店はアホみたいにメニューが増えていくのだった。なるほど簡単かつ分かりやすい論理だ。

台灣でも刺身食べるのかー、と感心させられるが、Fishによるとまだまだ生ものを食べるのは一般的ではないようだ。ちなみに刺身は中国語で「生魚片」となる。そりゃそうだけどさぁ、という身も蓋もないネーミングなのだった。

果物屋台

果物屋台もあるよー。

こちらはフルーツジュースにしてくれる店ではなく、純粋に果物屋さん。

一番たくさん取り扱っているのは、何がなんでも蓮霧。いやもう、台灣南部に来てからこの方、この果物にはいい加減食傷気味なんですが、ってくらい多頻度高密度に登場してくる。

このお店ではパック詰めにして売られており、既に芯の部分はくりぬいてあった。食べやすいように、という配慮だろう。ご丁寧に「蓮霧」という名札のところに「れんぶ」とひらがなで書いてあった。日本人観光客が買うのだろうか。でも、間違っても日本に持ち込んだらダメ。検疫にひっかかります。

その他にも、釈迦(シージャー)や紅龍果(ドラゴンフルーツ)などが目を引き、他にもパパイア、キウイ、スイカ、ミニトマトなどが彩りを添えていた。ミニトマトは果物という範疇で台灣では売るものらしい。確かにその解釈で正しいのだが。「野菜」と一緒に売っている日本の方が厳密には違っている。

香草

香草!

刻まれた香草が新聞紙の上に広げられていた。美味そう!
この料理を出してくれる屋台はどこ?と探したが、よく分からなかった。

いいなあ、パクチーがしこたま食べられる国は。日本だとパクチー好きといったら異端児扱いされかねないからな。黙って席に座るだけでパクチーが山盛りテーブルに運ばれてくるような、そんな日本に今後改造していきたい。次期衆院選ではそれをスローガンに立候補するか。

子豚も売られています

ペットショップ発見。豚が売られていた。

ペット用の豚だとは思うが、まさか将来食べてしまおうという魂胆で飼う人は・・・いないよな?

それにしても夜市でペットが売られているのはちょっと可哀想だ。一晩中明るいところで、人目にさらされていると夜も眠れない。動物虐待の一種だと思うのだが。

素食

素食(肉類を食べない人用の料理)屋台を発見。卍のマークが目印。

日本以上に、中華料理圏の台灣では肉断ちした食生活は難しいと思う。しかし彼らは「もどき料理」をたくさん考案し、苦行でもなんでもなく楽しく肉断ち料理を満喫しているらしい。蛋白質などで作った「鰻」なんてのは特に精巧だと聞くが、どんな味なんだろう。・・・あ、そうか、鰻の味か。

屋台のメニューを見ると、肉団子スープだとか鴨肉の何とか、といった料理がちらほら見受けられる。おいおい肉が入っているじゃないか、と思うが、ちゃんと「それ風に作ってみました」という料理なので安心だ。ただし、若干普通の料理と比べると素食の方がお値段高めに感じる。

メニューの中に「寿司」というのもあった。確かに、魚を使わなければ、寿司は素食に向く。実際、店頭のカウンターの上にはパック詰めされた太巻きが売られていた。

いつかは素食を食べてみたいと思うが、限られた台灣滞在中、限られた胃袋の事を考えるとなかなか選択肢に上りにくいお店ではある。

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