しばらくして料理ができ上がった。狭い厨房なのによくいろいろな料理ができるものだ。個人商店もそうだが、効率重視のはずのチェーン店でも他種類を提供しているのだから頭が下がる。きっと、台湾の人からすると日本の飲食店はなんてレパードリーが少ないんだろう、と思うだろう。努力が足りん、とさえ思うかもしれない。
さて、Fishが頼んだのは、なにやら小さい春巻みたいなもの。何だ、これ。ゲテモノ系食べ物ではなく、日本人でも安心して召し上がれますといった風情だが、かといって同様のものを見たことがない。聞くと、「タンビン」だという。何、それ。
彼女が頼んだ料理名を正確に書くと、「葱油蛋餅」。台灣の朝食ではメジャーな食べ物らしい。作り方はシンプルで、小麦粉などで生地を作り、そこに葱を入れ、玉子を溶き入れ、成形してでき上がり。テーブルにある醤油膏や辣椒醤でどうぞ。一つわけてもらったが、お好み焼きのようなクレープのような春巻きのような、ありそうでない食べ物だった。これで15元(46円)。アホみたいに安い。とはいえ、ボリュームもあまりないが。
日本人の感覚からいったら、スナックだ。ただ、中華圏の人たちは餃子のような粉物を主食として捉える事ができるので、これも十分な主食になる。
一方おかでんが頼んだのは、「台式鹹粥」。何を注文すれば良いのか、メニューの前で一瞬躊躇したのだが、「台式」という文字が目に飛び込んできたので無条件にこれを選んだ。台灣ならではの料理なのだろう、きっと。
出てきたのは、普通のお粥だった。何か特別な具が入っているわけではない。細かく具は入っているので努力はしているようだが、これで55元は何だか納得がいかない。「?」食べながら、大変に不思議。
Fishに「これのどこが『台式』なんだ?」と聞いたら、「さあ?」と定番の答え。さらに追い打ちをかけるように「あんまりおいしくないでしょ、それ」と言われた。そうなのか。
ちなみに「鹹」はしょっぱい、という意味があるらしい。恐らく、何の味つけもされていない粥と区別するために、「鹹粥」という名前にしてあるようだ。このお粥は、何も味つけしなくても食べられる。
Fishの手元には、もう一品あった。豆漿。おー、台灣人っぽいなあ。日本語ぺらぺらなFishだったが、あらためて「あっ、台灣人だ!」と思った瞬間。昨日からべったり彼女のお世話になっているんだけど。
美而美のラベルが貼られている品。台灣ではプラカップのフタはビニールで密閉してしまうのが一般的のようだ。日本のように、着脱可能なフタは見かけない。横に倒してもこぼれない安心設計。ただし、氷を入れることはできない。氷好きな日本人からするとこの仕組みはあまり受け入れられないだろう。フタ密着マシンを調達するコストもかかるし。
この豆漿、結構な量があるが10元。これまた安いのぅ。これだったら毎日飲もう、という気になる。結構な蛋白質などが摂取できそうだ。味見したが、台灣の豆漿はおかでんの口にあった。
なお、ファストフードチェーン店であるここでも、ドリンクはセルフで冷蔵庫から持ってくるという仕組みになっていた。何で?勝手に違う高額商品を持ち出されたりするリスクは考えないのだろうか?
朝食後、Fish家に戻り車に乗り込む。返却期限の朝11時まで、残り3時間弱。ちゃっちゃと出発しよう。
運転席に乗り込んでみて、「あれ・・・」と一つ気がついた。ルームミラーの下に、台鐵の切符がぶら下がっていたのだった。これ、昨日までは気がつかなかった。
切符は、「永康」站から「保安」站までのもの。おおお、これが有名な「お守りになる切符」だな。噂は聞いていたが、まさか実物を見ることができるとは思わなかった。
日本でも「幸福」駅の切符がお守りにされるように、台灣でもそういう「縁起の良い駅名」の切符はお守りにされる。で、その台灣版代表格が「永康」と「保安」なのだった。幸い、両方の駅間はあまり開いていないので、アホみたいにきっぷ代がかかるわけでないのがありがたい。
さて、いざ出発・・・となったのだが、ハンドルがびくともしない。なんだこれは。Fish弟が、車のホイールが花壇に触れるくらいまで絶妙に幅寄せしていたので、そのせいかと思ったが違う。壊れたか。
FishにTELしてもらい、弟と連絡をとったところハンドルロックがかかっていることが判明。おお、名前だけは車のマニュアルで読んだことがあったが、実際にロックがかかっているのを見たのは初めてだ。無知の恥をさらしてしまった。
恆春から車で15分ほどのところに、「国立海洋生物博物館」という水族館がある。隣に国立の研究施設があり、間違えてそっちに車を入れてしまいそうになった。研究施設と合わせると、アホみたいに広大な敷地を保有している。つくづく台灣は土地、特に平地がたくさんあってうらやましい。日本と同じ島国ということでシンパシーを感じていたのだが、日本は狭い平野部に人や建物が密集している。台灣的おおらかさとは全く異質なものだ。
この海洋生物博物館だが、日本人観光客はほとんど来ることがないと思う。わざわざ外国である台灣、しかもその最南端まではるばるやって来て水族館を見よう、という暇人はそういないだろう。交通の便も悪い。とはいえ、アジアで最大規模、世界でも二番目に大きい水族館なのだというから大したものだ。水族館好きならば遠征しても良いかもしれん。
なんだこの駐車場のデカさは、と呆れながら車を駐車し、草野球くらいは余裕でいくつもできるほどのエントランスを歩く。いちいちスケールが無駄にでかい。
これは早くも予定変更になりそうな予感。午前中にこの水族館を見て、午後は墾丁まで行くつもりだったのだが。
9時から開館ということで、われわれはちょうどジャストタイムでの到着となった。
何時から開館なのかが分からなかったので、前日Fishがホテルのフロントに突撃し、時間を聞いていた。観光ホテルの従業員なら知っているだろう、ということだ。すげえよなあ、宿泊客でもないのに。このフレンドリーさが台灣人ならではだ。
で、その回答は「よくわからんが多分8時半には開いていると思う」というものだった。なにそのアバウトさは。何でも、曜日や時期によって営業時間が違っているらしい。
で、正解は「9時」。ホテルマン、ダメじゃん。でも夏のハイシーズンになると8時開館になるので、平均値を取ったという点では30点(100点満点中)くらいはあげてもいいです。情報提供感謝。
料金は大人450元(1,440円)。現地物価からすると相当に高い金額となる。国立施設にしては頑張っちゃいました。
ただ、小学生は割引あり。この割引制度が面白くて、身長制限がある。110cm以下で親の同伴があればタダ。110cm以上の児童は、大人の約半額。「小学生以下」という区切りをする日本とは違う。ということは、早熟な小学生は不利ということだ。何か理由があってこの不思議なルールを制定したのだろうが、気になる。
券を購入しようと財布を取り出していたら、Fishから「これがあるから大丈夫」と優待券を渡された。Fish母から貰ったんだそうだ。すんません、こんな娯楽にまでお世話になるなんて。現在お仕事中のFish母に心の中でお辞儀。
パンフレットは、何と日本語版があった。この地を訪れる日本人って、現地駐在員を除く観光客はあんまりいないはずだが、何とも丁寧だ。やあどうもどうも、リーベン(日本)からやってきましたよ博物館の皆様。大変長らくお待たせいたしました。
こういうところからも、観光に国が力を注いでいるのが分かる。日本の公共施設の場合、どこまで多国語対応しているだろうか?「今まで外国人観光客、あまり来ていないから。」という理由で多国語対応しないのは間違いで、多国語対応して集客に励むのが段取りとして正しいと思う。パンフレットを作るくらいなら、大してお金はかかるまい。
パンフレットによると、この海洋生物博物館は3つの建物からなっていて、「珊瑚館」「台湾水域館」「世界水域館」がある。珊瑚だけで一つの建物を構成してしまうあたりが、独自性があって目につく。
エントランスから実際の建物までの距離がめっぽうある。これだけでも疲れる。さすがに新しい施設だけあってバリアフリー化がされているけれども、これは「距離の暴力」とも言える。足腰の不自由な方は、来訪の際にはご注意を願いたい。
なにしろ、デカすぎちゃって途中の広場で実物大のクジラ模型がのけぞったり横倒しになって遊んでいる始末だ。入場ゲートをくぐったからといって油断禁物、雨の日は水族館そのものである建物まで数分歩く必要がある。
将来の拡張性は十分だな。今後、さらに規模を拡大しようとしても、場所に困ることはあるまい。最悪、駐車場を立体にすれば、今の敷地の2倍には余裕でできそうだ。そこまでの拡張性の必然性は全くないが。
捕鯨についての記述があったので読んでみた。台灣が捕鯨についてどういうスタンスか知る上で興味深いからだ。すると、「昔は捕鯨をやっていたけど、絶滅の危機になったので捕鯨はやめて、今はホエールウォッチングをするという新しい動きが出ています」という内容だった。捕鯨の是非を暑苦しく語って欲しかったが、あんまり台灣はくじら肉に興味がないみたい。
水族館の入口にあった看板。レストランの御案内のようだ。
えーと、つまり、2階から水槽で泳ぐ魚を眺めながら、魚料理を食べよう、ということらしい。なんかすごいな。ある意味残酷っちゃあ残酷だ。
・・・と思ったが、日本でも中国でも、もちろん台灣でも、いけすで泳ぐ魚を見ながら、さばきたての魚介を食べる事はある。取り立てて珍しい事ではなかった。ではなぜこのレストランに違和感を感じたかというと、学術研究と知的好奇心喚起のための水族館で、展示物であるお魚を食べさせる店があるということなのだろう。
まあ、それを言ったら、観光牧場でさっきまで「わー、羊可愛いー」と言っていたくせに、さあメシだとなったらジンギスカンのバーベキューを始めてしまうのもおかしいと言うことになるのだが。案外人間って何にも考えていない。
Fishが「珊瑚はぜひみるべきだよ」というので、まずは珊瑚王国館を見ることにする。
日本の水族館事情にはとんと疎いのだが、珊瑚がこれだけあるのは日本には無いのではないか。大小様々な珊瑚がむわむわと微妙に動いていて、「ほぉー」と感心することしきりだった。そうか、そうだよな、珊瑚って生き物だもんな。動くんだった。
台灣は、沖縄県よりも南に位置する島だ。しかし、じゃあ全島が珊瑚だらけかというと、そういうわけではない。その理屈がまかり通ると、熱帯地方の海全部が珊瑚だらけになってしまう。珊瑚生息に適した環境、というのがデリケートにあるのだろう。
台灣では、墾丁のあたりが珊瑚がたくさん生息している地域ということになる。
悠也是研究員(Be A Researcher)、というコーナーがあった。
なにやら、手元のパネルのところにジョイスティックとボタンがある。何かのゲームのようだ。
ためしにジョイスティック(上下左右と書かれている)を動かしてみると、頭上にある液晶ディスプレイの画像が動いた。そして、「拡大」「縮小」のボタンを押すと、画像が望遠になったり広角になったり。あとはピント合わせの「焦距(+)」「焦距(-)」で調整。なるほどこれは面白い。水中カメラのコントロールができるのだった。
ういーんとカメラを動かしていくと、菊石珊瑚などの小さな珊瑚の細かいところを見ることができて楽しい。ナイスアイディアだ。ただ、休日にここを訪れたら、操作したい子供達が山盛りになっていて近づくことすらできないと思うが。
長い海底トンネル。立ち止まって渋滞が発生しないように、動く歩道が設置されているのはどこの国も一緒か。そして、海底トンネルの人気者がエイであるのもどこもいっしょ。ユーモラスな顔をしてふわーと泳いでいた。
沈没船があった。沈没船の底にわれわれがいる、というシチュエーションで、船窓から覗くと、そこに棲み着いた珊瑚や魚を見ることができる。
チンアナゴ。犬の「チン」のような顔をしている穴子なのでそういう名前になったらしい。体の半分を砂に潜らせており、上半身だけニーハオしている。この姿勢でプランクトンを食べているというのだから、なんともお気楽な生き物だ。多分蒲焼きにしてもおいしくないと思う。
なおこの穴子、びっくりしたらすすすっと砂の中にもぐる。その際、体をよじりながら砂に入っていくのではなく、何の抵抗もないかのようにすいーっと潜るのがすごい。
ベルーガ(シロイルカ)が優雅に泳いでいた。広いプールだが、巨体のベルーガにはやや物足りないようで、プールを目いっぱい使ってぐるぐる泳いでいた。
「ベルーガと一緒にいるところの写真を撮って!」と大興奮するFish。しかし、暗くてシャッタースピード遅いし、フォーカスがあわないし、高速で泳ぐベルーガと一緒に写すって至難の業なんですが。5分くらい、カメラと格闘。
水槽の中で、お掃除中のスタッフ。
黄色いホースで空気が送り込まれているらしい。青いホースは、汚れを吸引するものだ。
岩やガラスなど、海草や汚れがついたところを丹念に清掃していた。結構大変な作業だ。力を入れると体が浮き上がってしまうので、このおにーさんは常に吸盤を手にしていた。風呂場なんかで大活躍の、あの吸盤だ。吸盤を片手にして体を固定した上で掃除し、掃除が終わったら吸盤をはがして隣に移動していく。なるほどねえ。
珊瑚王国館をひととおり見終わって、いったん建物の外に出る。外は台灣海峡を見下ろす広いテラスになっていた。いちいち、全てのスケールが大きい。
もうそろそろ時間だ、Fish家に戻って車を返却しないといけない。残りの時間でちょこちょこっと駆け足で見て回るのは無理。まだ全体の1/3程度しか見ていない。いや、完全に見くびっていたわ。田舎にある小さな水族館を想定していたのに。
こりゃもう、午後あらためて出直すしかないな。仕方がない。「台灣最南端に来て水族館ってねえ」と最初は思っていたが、ここまで見た以上は時間をかけてでも全部見ないと悔いが残りそうだ。
再入場用のスタンプを手に押してもらい、いったん退却。
Fishは、「ベルーガのショーが午後3時からだね。2時半にはここに戻るよ」と言っている。ベルーガが気になってしょうがないらしい。いきあたりばったりで動く事が多い人だが、ベルーガだけは見逃すわけにはいかなかったようだ。
駐車場を後にする際、駐車料金を徴収された。36元(約115円)。こんなに敷地があるのに、有料でしたか。しかも入場時でなく、退場時に取るのがちょっと不思議なオペレーション。
さて、車をFish宅まで戻すと、そこには一匹の黒犬がひっくり返っていた。あれれ、小黒(シャオヘイ)、お昼寝中ですか。
それにしてもなんというやる気の無い格好か。完全に気が緩みきっている。赤い首輪が燦然と輝いているので飼い犬だと分かるが、そうでなければ単なる野良犬西か見えない。ああ、でも野良の割には毛のつやが良いけど。
「昨晩夜中まで僕らと一緒にウロチョロしていたから、昼寝するんだよ」
犬って、比較的規則正しく夜寝て昼間起きているイメージがあったが、印象が変わりました。でも、こんな犬でも新聞では忠犬と称えられているわけだから、不思議なもんだ。
今日の小黒は、われわれの気配を感じても全然相手にしなかった。ご主人様(の仲間)と認識していないのか、それとも疲労困憊してそれどころじゃないのか。
Fish家に入り、一息つく。
しばらくするとチリチリ・・・と鈴の音がして、二階から萌萌(モンモン)が降りてきた。
「おお、萌萌は元気だな。昼間でも起きているのか」
猫というのは一日中寝ている生き物だと思ったが、この萌萌は元気だ。家の前でひっくり返っている小黒と大違いだ。
萌萌は、こちらの手が届くか届かないかの間合いを取って机の上に登る。そして、なにやらこっちを見ているような見ていないような、微妙な視線。ええと、お前は何だ、構って欲しいのかそれとも放っておいて欲しいのか、どっちだ。
この「猫的微妙さ」が人を猫の虜にさせる理由なのだろう。くっそう、こっちもまんまとその作戦にはまってしまっている。構って欲しいのはこっちの方だ。
ふと気付くと、萌萌がいる机の上にはガンプラが置いてあった。クロスボーンガンダムだ。おおお、マニアックだな。Fish弟が製作途中なのだろう。台灣でもガンプラがあるとは。しかも、ファーストやZといった主軸となるものではなく、クロスボーンとは。さらに言うと、Ver.Katokiだし。まさかカトキ立ちのガンダムを台灣でお見受けする思わなかった。
「おい萌萌、お前ガンダム好きか?」
と聞いてみたが、全然反応しなかった。悔しいのでドコモダケをちらつかせたら、これには即座に反応していた。こいつめ。
萌萌の相手をしていたら、Fishが台所から蓮霧をたくさん持ってきた。「これを食べてから出かけよう」という。昨日もそうだったが、フルーツ三昧だな、台灣って。
蓮霧(リエンムー)は、かじるとリンゴのような梨のような味と食感がある。しかし、特徴的なのは、甘いのは実の外側であり、中の方に行くとスカスカになっているということだ。リンゴなどが種の近く、つまり実の中心近くに蜜を蓄えているのとは逆だ。だから、欲張って実を余さず食べようとすると、残念な味と食感の部分まで食べることになる。適当なところで食べるのを切り上げるのが吉だ。
美味いとは思うが、非常にあっさりした味わい。多分日本人の手にかかれば、これでもかというくらい品種改良しまくり、すごく甘くて果実がしっかりとついたものにしてしまうと思う。そうならないところが、台灣のフルーツならではだ。ただ、日本のフルーツに慣れ親しんでいると、この素朴な味は若干物足りなく感じるかもしれない。実際おかでんは物足りなく感じた。
「スクーター取りに行くよ」とFishが言う。取りにいくってどこに。この自宅にあるやつじゃないのか。Fishに着いていくと、おかでんが泊まっている陳さんのマンションにたどり着いた。そこの駐輪場にあるバイクをゴソゴソ動かしている。
「これ、誰の?」と聞いたら、「陳さんの。使っていいって言われているから」だって。知り合いであれば、スクーターの貸し借りも全然問題ないんだな。そういえば今思い出したが、スクーター使ったあとに給油せずに返却しちゃったけど大丈夫かおい。
Fishの後ろに乗り、出発。これからの時間は、恆春古城を中心に見て回る予定だ。
恆春の中心に向かって走る。まず目指したのは、西門。恆春は城壁で囲まれた要塞都市(?)であり、東西南北に4つの門がある。そのうちの一つ。西門は一番有名な門らしい。
到着してみると、確かに門がある。レンガ造りの重厚な作り。幅が全然ないが、それは両脇に商店が建ち並んでいるからだ。
城壁の奥行きは結構ある。これだけ分厚いと、外敵がやってきて壁に穴あけて突破しようとしても無理だ。・・・まあ、そんな労力を使わなくても、壁をよじ登って乗り越えてしまえばよいのだが。
門の幅は狭く、車一台が通れる幅しかない。この道は一方通行ではないので、前方の様子を見計らいながら素早く通過する度胸と技術が求められる。
ただ、車幅ばかり気にして、車高をうっかり忘れると車の屋根をトンネルにぶつけてしまう。乗用車だと問題はないが、軽トラックなどは危険だ。実際、トンネルの脇や上のあちこちにこすった跡があった。
こんな門と壁に囲まれていたら、恆春古城内の物資輸送はどうするんだと心配になる。大きなトラックは入れないから、いったん小さなトラックに荷物を積み替えて、中に入っていくのだろうか。
恆春古城の解説。
今でこそ石垣しか残っていないが、当時はこの門の上に楼閣があったことが分かる。しかし、その復旧まではしていない。たとえ復旧したとしても、門のすぐ脇にある「貞好冬粉鴨」の看板が邪魔だ。時代は流れ、楼閣が冬粉(春雨のこと)に取って変わられるとは。
解説にはこの城ができた成り行きが書いてあるが、牡丹社事件について記述されている。1871年に琉球の島民が台灣に漂流し、原住民によって54名が殺された。それを踏まえて、1874年に西郷従道が台灣に派兵して小競り合いがあったのが牡丹社事件。
これ以降、「日本が本格的に攻めてくるかもしれん」と慌てた清朝は、1875年にこの恆春を城壁で取り囲んだ。それが今ある、このレンガ塀というわけだ。
城門に登り、周囲を見渡すと城壁がまだ残存していた。随分崩壊しており、緑の侵入を許してしまっているが、一応これでもお城の壁。車やチャリンコ、スクーターといった交通手段をブロックするには十分すぎる障害物として現在も機能しております。
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