おもてなし三昧な世界【台湾南部滞在】

福州世祖 胡椒餅

Jennyが、時折道行く人や露天商の人になにやら話しかけている。道を聞いているようだ。

台灣の人は、気軽に見知らぬ人に道を聞くし、聞かれた方も親切に答えてくれる。日本人よりも親切で優しい性格のようだ。これはここ士林に限らず、台灣南部でも同じ光景を見かけたので、台灣全土における傾向のようだ。

日本だったら、もっと見知らぬ人との応対はよそよそしい。人に道を聞くのは最終手段、くらいの認識すら持っている事がある。それだけ「自分でなんとかしよう」という自己完結能力がある事は素晴らしい事だが、台灣のフレンドリーさも素晴らしい。

まあ、一長一短だ。台灣人の互助精神は尊敬に値するが、一人野ざらしにされたら生きていけないんじゃないか、と心配になる。

何を探しているのか、こちらはさっぱり分からない。まさか、地元っ子が道に迷う事はあるまい。蚵仔煎(オアチェン)目当てで、美食広場に移動しようとしているのだろうか?そういえば、さっき「大腸包小腸も食べたい」って追加リクエストしたんだっけ。その屋台を探しているのかな。

・・・と思ったら、ある一軒の屋台の前で立ち止まった。ここだ、という。

看板を見ると、「福州世祖 胡椒餅」と書いてある。おお、胡椒餅(フージャオビン)か!・・・って、名前しか知らないけど。「名前しか知らない料理」だからこそ、食べる価値はある。Jennyのうれしい配慮だ。おかでん単独行だったら、これを食べるところまで想像が行かなかっただろう。

饒河街観光夜市に有名店がある事だけは知っていたので、士林訪問である今回は完全にノーマークの小吃だった。しかし、後になってその有名店の支店がここであることが判明。Jenny、なにげに有名店をしっかりとフォローしてくれている。

胡椒餅作りの真っ最中

店の前は6~7名の行列。街中が人だらけとはいえ、平日なので行列ができているお店は珍しい。よっぽどの繁盛店らしい。

店頭では、おじちゃんおばちゃんが胡椒餅作りの真っ最中。ええと、見ていると、豚挽き肉と長葱を生地でくるんでいるな。餃子の様なものか。「餅」と聞くと、どうしてもお雑煮や砂糖醤油味を連想してしまうのだが、どうやら餃子や肉まんに近い料理らしい。

で、でき上がった餅、というか饅頭がずらっとその白い姿を店頭に並べている。おい、もうでき上がっているじゃないか。調理の手を止めて、早く売ってくれよ。行列ができているじゃないか。

タンドール釜

Jennyに「何でこんなに行列が?」と聞いてみると、彼女は行列に並んでいる自らの身をすっと引き、店頭を見やすくしてくれた。「ほら、ちょうどできるところよ」

見ると、何かタンドール釜のようなものが店頭にあった。そこから、きつね色に焼き上がった胡椒餅が次々と発掘されていく。なるほど!焼いて食べるものなのか!この行列は、焼き上がりを待っている人々だったというわけだな。

このタンドール釜(正式名称不明なので、一応こう呼ぶ)、まさにインド料理店でナンを焼くのと同様の使われ方をされていた。釜の側面に胡椒餅をぺたぺたと貼り付け、その状態で焼き上げる。一度に50個近く焼けるらしいのですごい。このお店、釜が2個あったので、週末のピーク時には同時に100個焼く気だ。やる気満々ではないか。そんなに繁盛しているのか。

胡椒餅の中身

できたてを入手できたのは幸いだった。

触ると熱い、できたての胡椒餅。これがまずいはずがない。

「ほら、熱いうちに食べて」とJennyに急かされる。えっと、ちょっと待った。さっきのQ的なやつも、この胡椒餅40元もまだ僕お金払っていないんですが。

「安いから問題ないって」

いや、そういう問題じゃないんですが・・・そうですか、ご馳走になります。

Jenny用にも手土産を日本から持参しておいて良かった。おもてなし三昧になる可能性はある程度想定できたので、Jennyにもお土産を渡さないとまずい、と思っていたのだが正解。とはいえ、しょせん4胡椒餅分くらいの値段の手土産だったので、安いものだったが。

それより先に、まだ臭豆腐を食べきっていないんですが。見ると、Jennyはとっくの昔に食べ終わっていた。そうか、夜市食べ歩きというのはチンタラ食べていては駄目なんだな。すぐに手が塞がってしまうので、買ったら即食す、というのが暗黙のルールというわけか。まずは慌てて臭豆腐を食べ、片手をフリーにする。

ゴミとなった臭豆腐の紙包みは、Jennyがおかでんの手から持っていった。女性なのに、相手(男性)の食べたゴミの始末まで気配りができる。凄いことだ。ただ、そりゃあんまりだと思ったので慌ててJennyからゴミを取り返そうとしたが、「いいからいいから」と言われておしまい。

Jenny個人が心優しい人とも言えるが、多分それだけじゃないな、あの身のこなしぶりは国民性だと思う。あまりに平然とやるからだ。

その割には台灣っておおざっぱで雑なところもあるんだよなあ。よくわからんよ。

ご厚意に甘えて、早速胡椒餅にかぶりつく。

まず触って分かるのだが、できたて故に皮がぱりっぱりだ。サクッ、カリッとしている。そしてそのまま噛みしめると、生地が厚いので中の方はパンのような白い生地。そしてその先が・・・あちち!肉汁まみれの餡の登場だ。気をつけろ。サクッ、ふわっ、ジューシー、といういろいろな食感がくるので、これは口腔快楽だ。また、この餡がうまいんだわ。「Jenny、これ美味いよ。今まで体験したことがない美味さだよ」と大絶賛。

日本でもありそうだけどない、絶妙にピンポイントな料理だ、と言いたかったが言葉が思いつかなかったので言うのをやめた。

Jennyから「どう?スパイシーでしょ。胡椒の味、するでしょ?」と何度も聞かれたが、ええと、胡椒の味、したっけ。「そうかな?するかなあ?」と言いながら、もう一口、二口。生地の美味さと肉の美味さ(甘み)で、あんまりスパイシーな印象が無いのだった。しばらく食べていて、ようやく、「あ!先生、胡椒発見しました!」と気がついたくらいだ。味覚音痴なんだろうか、と真剣に悩んでしまった。

「胡椒餅」という名前で、「えー、何だかあんまりおいしくなさそう」という印象を持つ人もいるだろう。しかししかし、ぜひ一度お試しを。こりゃ、やみつきになる味だ。生地に胡椒がまぶしてあるかのようなイメージの名前だが、実際は挽き肉に練り込んであるものだ。挽き肉料理に胡椒を入れても何らおかしくないわけで、とてもおいしい。

そういえば、まとめ買いをしている人もいたな。まとめ買いされちゃうから、すぐにストックが無くなってまた行列ができるのだろう。

なお、2時間後にこのお店の前を通ったら、さすがに行列はなく焼き上がってしばらく経ったものが陳列されていた。もちろん冷めても美味いだろうが、焼きたての美味さは格別だ。並んでこそ、食べて欲しい。

三媽臭臭鍋
三媽臭臭鍋のメニュー

話は前後してしまうが、Jennyが胡椒餅の行列に並んでいる間、おかでんは別の事に気を取られていた。

それは、周囲一帯を覆い尽くすあの臭い。そう、台灣で「臭い」といったら、八角の臭いか臭豆腐の臭いのどっちかといっても過言ではない。

ごめんなさい、過言ですが。

で、ここで臭うのは臭豆腐の臭い。しかも尋常じゃない。先ほどの串焼きスタイルの臭豆腐屋の比じゃない。

見ると、胡椒餅屋のほぼ対面に「三媽臭臭鍋」という看板を掲げたイートインのお店がある。おおう、「臭臭鍋(チョウチョウコウ)」か。単に「臭鍋」じゃなくて、「臭」をダブルで書くという気合いの入りよう。クサいから覚悟しとけよ、という決意表明だ。

そういやこの店、饒河街観光夜市でも見かけたぞ。先ほどの胡椒餅といい、人気が出ると別の夜市に支店を出していくんだな。寿司屋が最終的に銀座に店を構えることを目指すように、台灣B級グルメは士林を目指すのだろうか?

後日、おかでんが撮影した写真をFishが見ていたとき、この店頭の写真を見ていきなり興奮。「このお店、好き~」だと。思わず興奮してしまうくらい好吃らしい。

[追記]
この記事を読んだFishから補足と訂正があったので追記しておく。このお店の料理が絶品である、というわけではないそうだ。ただ、学生時代、「ちょっとお金が貯まったので今日は少しだけ自分にご褒美」という時に訪れる店、という意味で「おお、久しぶり」と写真を見て喜んだとのこと。

臭臭鍋は、卓上のカセットコンロでグツグツやるのではなく、店頭にあるガスコンロで調理が行われる。繁忙時にはずらりと店頭コンロに鍋を並べ、同時に調理をしているから壮絶だ。恐らく、「強烈な臭気で客を誘惑」する目的もあるのだろう。しかし、臭豆腐の臭いが苦手な人にとっては、テロ行為に等しい。

このお店の面白いのは、「乾火鍋」だ。意味は不明だが、写真を見るとなんとなく分かる。「ちりとり鍋」と「普通の鍋」の組合せを指しているようだ。「ちりとり鍋」側はスープに具が泳いでいないので、「乾」であるっぽい。

種類は豊富。台灣式、タイ式、インド式、イタリア式など。「義式」と名付けられた鍋がどこの国をイメージしたものなのかさっぱり分からなかったのだが、その後に続く「蕃茄」という文字で意味が分かった。「蕃茄」とはトマトの事だ。ということで、イタリアだと判明。日本でも、僅かだが今でもトマトのことを「蕃茄」と呼ぶ。

まあ、いろいろ種類があるにせよ、どれもが「臭臭鍋」である事には間違いない。いずれの鍋にも、くっさいあの臭豆腐が入っているってこった。日本では絶対に流行らないな。でもおかでん個人的にはぜひ日本に出店して欲しいのだが・・・。まあ、無理だ。これだけ臭っちゃ、どこも嫌がる。

WOW Frog eggs

カエルの看板が目立つお店。「WOW Frog eggs」だって。これ、前回訪台でも見かけて大変気になったのだが、結構あっちこっちにある。同じ看板なので、よく見るとこれもチェーン店らしい。

タピオカをカエルの卵に見立てるセンスは凄すぎる。しかも、看板に「哇!青蛙下蛋」なんて書いてあるもんな。これをデザートと認識するのは無理。日本人おかでん、まだまだ未熟です。

店頭には、レモンが丸ごとどぼんと漬け込まれた愛玉子(オーギョーチー)が目を引く。メニューは「粉圓(タピオカのこと)加愛玉 35元」など。台灣人、よっぽどQ的なものが好きらしい。

士林慈誠宮

雑踏の中、門が閉じられてひっそりとしている一角があった。士林慈誠宮。

何が祀られているかまでは不明。

お宮の建物入り口に、電光掲示板があっていろいろな文字を表示していたのには仰天した。何だ、これは。

日本における宗教というのは、新興宗教を除き「厳かで、清らかで、古典的」であるのが不文律だ。そりゃあお札やおみくじを売る売店にPOSが導入されたり、近代化されているところはあるとは思うが、あんまり露骨に近代化はしない。

それがどうだ。この電光掲示。何が表示されているかまでは読み取れないのだが、何かありがたいお言葉だとかお祭りの告知をしているのだろうか。

しまいにはこの国、「お賽銭は電子マネーで」なんて始めるかもしれん。すごいな。

なお、このお寺の裏手には夜市では数少ない公衆便所があるらしい。催してきたらどうぞ。ただ、一般的日本人だったら、あんまりトイレに行くことはないと思う。暑くて汗を大量にかくからだ。また、これだけの人混みの中で、啤酒がぶ飲みなんてできるわけがない。

啤酒?そうだ、まだ啤酒飲んでなかった。

最初、臭豆腐をJennyに勧められた時、「いや、ちょっと待ってよ。まだ啤酒を手に入れていないんですけど」と思ったが、もうそんなの吹っ飛んだわ。人が多すぎて、啤酒飲みながら移動なんて無理。平日でも無理なんだから、週末はもっと無理。

全家便利店のおにぎり

この慈誠宮の前に、大腸包小腸の屋台があった。

買う前にゴミ捨てなくちゃ、とJennyは言って、近くにあったファミリーマートに入っていった。え?ゴミ捨てるんじゃないの。

見ると、日本のコンビニのように店の外にゴミ箱は無いが、店内にあった。そこに、堂々とゴミを捨てとる。店員の目の前で。それ、有りなんか。

日本じゃ、「家庭のゴミを持ち込まないでください」なんて看板を、駅や商業施設でよく見かけるようになった。しかしこのお店は店員さん黙認。えええ。あっけらかんとしているなあ。

ファミリーマート。台灣ファミマは「全家便利店」、略して「全家」と名付けられている。ただし、レシートなどに印字されるロゴは日本のものと一緒で、「Family Mart」となる。台灣ではセブンイレブンが猛威をふるっているが、全家も馬鹿にはできない。なんと2,300店舗強がある。日本国内で7,400店舗ということを考えれば、土地も人口も少ない台湾にしてはかなり多い出店数と言える。ただ、ファミマが目立たないのは、店舗立地が悪いのか、どうなのか。

台灣のコンビニは、他の店舗がそうであるのと同じで間口が狭い。だから、目立ちにくいのだと思う。日本だと、できるだけ間口は広めにとって、ガラス張りにして、照明を強くして店内の様子をPRするのが王道だが、それとは全く逆だ。

店頭にあったポスターが気になった。

「懐石風の御握り」と書いてある。「の」というひらがなくらいではもう驚かなくなったが、「御握り」という言葉にはちょっとびっくりだ。まあ、これはフランス料理店に行ったら、フランス語でメニューが記載されていて何だかよくわからんがありがたい気分になるのと一緒だろうな。あんまりここで説明する意図はないと思う。

解説を読んでいると、どうやらデカい具が入ってるぜ!というのが売りのおにぎりらしい。確かに、写真を見るとご飯と海苔の間に大きな具が挟まっているのが分かる。

「食べているうちに、中の具にたどり着く」楽しさではなく、「デカいんだから目立つようにPRしました」というあたりがなんともワイルド。

でも、これ、絶対「懐石」を勘違いしていると思う。「風」でもないぞ。懐石の言葉の由来を考えると、絶対違う。

あと、懐石料理には日本人が考える「おもてなしの心」が込められているわけだが、おもてなし国民台灣人とはやはり文化が違うのぅ。

Jennyから「ほら、これさっき写真を撮ってたおにぎり。買う?」とおにぎりコーナーで勧められたが、断った。そりゃそうだ。もっと台灣独自のものを食べたい。

煮玉子

店にはいろいろなものが売られている。

石焼き芋機があるし、ホットドッグがこんがりまんべんなく焼けるようになっているローラー仕掛けのホットドッグ機があるし、その横には・・・なんだ、これ。煮玉子まで売っているのか。8元。

何で煮ているのかは不明。こんなものまで売っているのか、と仰天していると、Jennyが「ほら、玉子だよー」とトングで中のものを取り出してくれた。なるほど、確かに真っ茶色に染まった玉子だ。というか、買う気がないのに商品に手を出しちゃいけません。・・・日本だけかな?そういう発想。

後の調査によると、これは「茶葉蛋(チャーイェーダン)」と言い、お茶の葉をベースに色々混ぜたもので煮た玉子だそうだ。漢方玉子。

ファミマのビール棚
台湾のビール

前回訪台時に立ち寄ったコンビニでは、日本ブランドのものばかりで「日本の飲食メーカー、すげえ」と思ったものだった。雑誌も日本のものが多かった。しかし、このお店はさすがにそのような事はなく、現地ものばかり。やっぱり、いくらなんでも台灣で台灣のモノが売られていないわけがない。

啤酒コーナーがあったので、早速物色してみる。ようやく我が愛しの啤酒にありつける!

ドリンクコーナーの扉一枚分をほぼ啤酒で埋め尽くしていたので、啤酒需要はそれなりにあるようだ。狭いコンビニは、売れ筋商品以外は絶対に置かない。これだけ置いてあるということは売れているのだろう。ちょっとうれしくなった。

いやね、前回の台灣の時もそうだったし、今回今日これまでもそうだけど、ほとんど誰も啤酒飲んでないわけですよ。今日なんてたった一人たりとも見かけない。何なんだこの国は、と思っていたわけですよ。ところが、こうして「売れるものしか置かない」コンビニでちゃんと大量取扱いしているとは。やるじゃん、台灣人。こっそり隠れて飲んでるんだな。

この話を後でFishにしたら、「このお店は日本人もよく来るから特別なんじゃないの?台灣全部がこれだけ啤酒を扱っているとは限らないよ」と一刀両断にされた。そ、そういうことか。

あと、何で夜市にあれだけ魅力的な酒肴があるのに、みんな飲まないの?と聞いたら、多くの人がバイクを日常の足としているからではないか、との見解だった。確かに、飲んでバイク運転したら危ない。だから、啤酒飲むとしても、店で買ってきて家で飲むというのが多いらしい。なるほどー。日本だと、「お酒は好きだけど家では飲まないなあ」って人が結構いるというのに。

さて、気になる商品ラインナップだが、一番手にしやすい特等席の座が与えられていたのはなんとハイネケンだった。横一列占拠。ハイネケン・・・こんなところで市民権を得ていたのか・・・。予想外な展開にびっくりだ。

その一段上には、我らが台灣啤酒。これも横一列を占拠しているのだが、ノーマル版と金牌版の2バージョンが置いてあるので圧倒感に欠ける。

後は日本勢が続くのだが、日本勢といってもキリンとアサヒのみ。サッポロ、サントリーは台灣ではマーケットを拡大できていないようだ。コロナビールでさえ置いてあるというのに。

しかし、そのキリンとアサヒも、それぞれ日本で売られている商品をそのまま売る、というわけにはいかなかったようだ。キリンだと「BAR Beer」、アサヒだと「乾杯」という別商品(恐らく現地提携企業に委託して作らせているものと思われる)が主力製品になっている。日本では猛威をふるっているスーパードライなんか、売り場の隅っこで小さくなっているありさまだ。あの「ドライ」な味は台灣では受けなかったんだろうな。台灣ドメインのビール「台灣啤酒」の味を見る限り、もっと台灣人はまったりした味がお好みのようだ。

アサヒビールのプレスリリースを調べてみると、台灣への取り組みは1998年から始めているらしいのだが、10年経ってもドライはメインストリームになり得なかったようだ。

せっかくの台灣なので、啤酒はもちろん台灣製を。金牌台灣啤酒(48元)と龍泉啤酒(40元)を購入した。

大腸包小腸

士林慈誠宮前に戻る。大腸包小腸(ターチャンパオシャオチャン)の屋台があるので、早速買おうではないか。

買おうではないか、といっても全部てきぱきとJennyがやってくれるので、おかでんは後ろでぼーっと立っているだけなのだが。

Jennyの動きは機敏で無駄がない。台灣の人って、もっとのんびりした人たちなのかと思っていたが、Jennyを見る限り一律そうではないということがわかる。彼女はIT企業に勤務し、海外出張を頻繁に繰り返す人だ。日本企業とも取引関係にある。そういった最先端ビジネスに携わっていると、さすがに台灣的おおらかさという訳にはいかないのかもしれない。

なお話が逸れるが、彼女の勤務先では、福利厚生として「年一回の海外旅行」の権利が与えられているという。過去2回来日したのは、その一環だ。今年は既に権利行使し、フランスに行ってきたそうだ。「コーラ一杯が300円近くもして驚いた!」と目を丸くして語ってくれた。なんという厚遇の企業なんだ。

台灣IT企業は世界の最先端の一翼だ。優秀な人材を囲うために、そのような優遇措置を採っているのかもしれない。

しかし、その話をFishにしたら、地場産業の企業に勤務しているはずのFish妹の勤務先でもそういう制度があるのだという。どうなってるんだ、台灣の企業は。凄すぎるぞ。

話を戻す。Jennyは店員さんにオーダーする際なにやらあれこれ指示を出している。「おっちゃん、これ一個頂戴」では済まないのだろうか。

おかでんは完全に上げ膳据え膳なので、状況がつかめない。そういえば、看板には何種類ものソーセージの名前が列記されている。ええと、小腸に相当するソーセージはいろいろ選択ができるということだろうか?でも30元と表示されていて、不思議。

Fishに話を聞くと、「これは、大腸包小腸を買うと45元、小腸部分だけ単品で買ったら各30元という意味」なんだそうだ。なるほど。

「猪肉香腸」という定番の他にも、「麻辣腸」や「密汁香腸」などがあった。ハチミツにつけ込んだ腸って何だかグロテスク。・・・あ、でも、中国料理店で出てくる腸詰めってあれ、甘みがあるな。ああいうものか。

「米腸」というのは「大腸」に相当する部分のことだな、きっと。

大腸包小腸

やってきました、大腸包小腸。

前回の台灣訪問時に概要を説明したので今回はここまで解説を控えていたが、念のため簡単に。

台灣版ホットドッグと思えば正解。デカい腸詰めの腹を割き、そこに小さい腸詰めを挟む。だから「大腸包小腸」。なんとも明快なネーミングだ。

肉に肉を挟むなんて、くどい料理だな・・・と思うことなかれ。大腸にあたる腸詰めは、中身がもち米だ。パンのかわりに餅になったという事。

もともと、アメリカあたりのホットドッグからインスパイアされた料理なのだろうが、こうもオリジナリティ溢れて、かつアジアンなのはちょっとすごい。想像力豊かだ。普通思いつかないぞ、こんなの。

Jennyが持ってきた大腸包小腸を見て、「あれ、案外小さいな」と思った。美食広場で見かけたやつは、冗談みたいな大きさだったからだ。店によって大きさはまちまちな様子。

Jennyにお願いする。「せっかくだから啤酒飲みたいんスけど」と。

さすがに胡椒餅がまだあるし、珍珠仙草冬奶も残っていて、手がいっぱいだ。どこかに座りたい。夜市散歩は楽しいが、歩き回るので休憩する場所がないと辛い。

ちょうどお宮の脇に机と椅子が並んでいたので、そこに座らせて貰うことにした。Jennyがお宮脇で店を開いていたおばちゃんに「ここに座ってもいい?」と確認を取って、OKを貰っていた。

大腸包小腸の中身

台湾啤酒を開栓したあと、大腸包小腸に挑む。

初めて食べるので、大腸側がどうなっているのか気になる。

大腸と小腸の口径にあまり差がないので、「包」という言葉はあまり当てはまっていない。大腸小腸仲良く同時に食べるためには、ビニール袋をしっかりと握ってかじらないといけない。

かじってみる。あー、なるほど。

確かに、大腸の中にはもち米が米粒のままで入っていた。そうか、こうなっていたか。てっきり、きりたんぽくらいに潰されたものが入っていると思ったのだが、しっかりと米粒が入っている。この断面を見て、若干北海道の名物駅弁「いかめし」を思い出した。

美味いか?と言われると、美味い。でも、日本人の感性からするとあんまり釈然としない組合せだ。軽食感覚で食べるんだけど、もち米のせいで結構重たい食感。それが、微妙なのだった。日本人はホットドッグに馴染みすぎているというのも「釈然としない」理由の一つだろう。

あと、おかでんはこのとき啤酒を飲み始めたので、「啤酒のつまみ」としてどうか、という見方もしていた。そういう観点では、やはりもち米はあわない。むう。

この写真を見たFishから「トッピングがされていたでしょ?」と聞かれて「え?」と思った。Fishによると、大腸と小腸をドッキングさせたあと、辨椒醤(ラージャオジャン)をかけたり、香草を載せる事が多いという。ええと、記憶にないなあ。

その他、数枚この写真があるので確認してみたが、大腸さんと小腸さん以外は発見できなかった。気のせいではなさそうだ。

屋台の看板を見ると、確かに唐辛子や泡菜、香草らしきものが写真に写っている。どうやらJennyが「トッピング抜きで」とオーダーしたようだ。日本人にはこれらトッピングは無理だろう、と配慮してくれたのだろうか。

地面に機材を投げ出しているお店

面白いもので、22時くらいになって出店する屋台が結構あった。

こんな時間からじゃ遅すぎるだろ、と思う。それらの屋台は路上にビニールシートを敷き、そこにデニムやらなんやら、売り物を並べる。初期投資ほぼゼロの超簡易屋台だ。というか、フリーマーケットと同じじゃないか。

そんなわけで、上を向いて歩いていると、うっかり商品を踏みつけてしまうので要注意だ。実際、何度か踏んでしまった。申し訳ない。

なぜこんな時間に出店なのか、Fishの見解を聞いた。「警察が来なくなるからじゃない?」だって。なるほど、警察に取り締まられないように、夜遅くになって店を開くわけか。でも大胆な出店だけどな。道路のど真ん中だもの。

その一方で、片付けを始める店もちらほらと出始めた。夜市といっても、全ての店が夜遅くまでやっているわけではないということだ。

写真に写っている飲食店は、鍋のフタか何かを路上に出し、側溝の上に置いてホースで水洗いしていた。正直いって、あまり衛生的ではない。まあ、こういうのは一部の例だし、実際食中毒を起こしていたら即営業停止だろうから問題ないとは思う。

ただ、「こういうのは不潔」と思う人が居てもおかしくないので、そういう方は鼎泰豊などに行くと良いだろう。おかでんは意識的に庶民的B級グルメのお店を巡っているが、台灣には素敵なA級グルメの店もたくさんある。

台湾の吉野家

「ビッグチキンカツを食べに行こう」とJennyに言われ、美食市場に移動することにした。その前に、大腸包小腸を食べてしまおう。あと、ドリンクも。

えっと、ゴミは・・・

ああ、Jennyはもう一度ファミリーマートに入り、ゴミだけ捨てて出てきた。先ほどは啤酒を買ったから、「ゴミを少し捨ててもいいよね?」という免罪符があった。今回は、単にゴミを捨てるだけ。でも堂々としたもんだ。どうやら、こういうのは台灣では「OK」な行為なのだろう。

道中、Jennyから「ほら、吉野家がある」と指さしがあった。台灣B級グルメの聖地、士林で、24時間営業で頑張っております、日本の吉野家。思わず写真を撮影してしまったが、後で調べてみたら2年前にもここで写真を撮っていた。同じ事を2回もしてどうする。

ただ、同じ店を2回撮影したので、違いが分かって面白かった。各メニュー、5元ずつ値上がりしている。僅かな価格ではあるが、20元30元で料理を提供する屋台がひしめいている場所での5元値上げは相当なものだ。もろもろ事情があるのだろう。

ちなみに、臭豆腐の話の際、「泡菜」はキャベツの台灣風浅漬けである、と述べたが、その認識はどうやらちょっと違うようだ。Fishは「泡菜といえば一般的にはキムチを想像する」と言うし、実際この吉野家には「韓國泡菜」としてキムチらしきものがあり、他にも「四川泡菜」がラインナップされていた。どうも、泡菜というのは漬物の総称のようだ。

なお、台灣吉野家は茶碗蒸しが売られているのが特徴。スーパーで売られているような、プッチンプリン的容器に入ったものだが。1杯20元。

豪大大雞排

目指すお店は「豪大大雞排」。士林夜市で大行列ができるお店として名高い。

水色の看板が目印。

美食広場に移動中、「屋台版」豪大大雞排があった。支店らしい。そこにも結構な行列だ。

そのお店は素通りし、美食広場にある本店?の方に行く。

前回訪台した際、このお店を見つけられずに全く別のお店のチキンカツを食べた。ついつい初心者は美食広場の奥へ奥へと入ってしまいがちだが、このお店は外周にあるので要注意。

カツがフライヤーで踊る

到着したら、こちらにも行列が。週末になると15分以上の待ちになるということなので、相当なものだ。「たかがチキンカツ」と侮る事なかれ、だな。食の選択肢はいやというほどあるこの地において、行列を作ってでも買おうとする人が後を絶たないというのは、圧倒的ブランド力と美味さがあるのだろう。

チキンカツゲット

ほぼ待ち時間無しで一枚購入できた。1個50元(160円)。屋台料理の中では高級な部類に入る。ビニール手提げ袋に入れてくれるのだが、でかいし、重い。まさか一枚のチキンカツしかこの袋には入っていないとは、思うまい。何かを大量購入したとしか思えないサイズだ。

なお話が脱線するが、台灣のスーパーやコンビニでは普通ビニール袋を用意してくれない。法律で有料化が義務づけられているからだ。必要なら、1元~2元程度を追加で払うことになるので注意。

ただし、このお店の場合は、あまりにデカいが故にビニール袋は費用の中に込みとなっている。

あれっ、今気付いたが、2年前はこのお店、45元で提供していたぞ。5元値上がりしたのか。先ほどの吉野家にしろ、ここにしろ、インフレになっているのだな。

とかいっているうちに、またもやJennyがお金を払ってしまった。いかん、ここに来てから自分の財布が開かれたのは啤酒を買った時だけだぞ。たまには自分でも払わないと。

美食広場の中

そのまま、美食広場の中に入る。

相変わらずの活気だ。彼らに定休日という概念はあるのだろうか?春節は当然休むとしても、それ以外は休みなしなんじゃあるまいか。月曜日なのにどこも活況を呈していた。

巨大なソーセージを売る店

巨大なソーセージを売る店。大腸包小腸にも対応している。

「Jenny、あれでかいな。ああいうので大腸包小腸食べたらすごいよな」

と伝えたら、Jennyから

「食べきれないから無理」

と言われた。なるほど、そりゃごもっともだ。インパクト重視で超巨大な大腸包小腸を頼むのは、一時的に気分が高揚する。しかし、それを食べて満腹になってしまったら、その後のお楽しみが台無しだ。

やはり「少量・他種類」を食べ歩いてこそ夜市巡りは楽しい。危ない危ない、Jennyに一つ教わったよ。

蚵仔煎

蚵仔煎(オアチェン。牡蛎入りオムレツ)の屋台を発見。Jennyから「ここにしようか?」と提案があったが、何だか見覚えがある。あ、思い出した、前回ジーニアスとここに訪れたとき、まさに蚵仔煎を食べたお店だ。

さすがに同じ店で同じものを食べるのは残念なので、「過去にここに来たことがあるんで、別の店にしよう」と提案。すると、偶然すぐ横の店も蚵仔煎を売っていたので、そのお店にお邪魔することとなった。

店の前では、大きな丸い鉄板でひっきりなしに玉子が焼かれていた。蚵仔煎は人気商品のようだ。

そういえば、写真を見て気がついたのだが、この建物内の屋台は全て電球型蛍光灯を採用していた。白熱電球だと長時間点灯時にコストがかかるからという理由の他に、発熱量が相当なものになるので蛍光灯を選ぶしかないという事情もあると思う。何しろ、この体育館のような建物の中に、熱源が何百もあり、そして人間が何千人もいる。換気は当然としても、廃熱も重要な問題だ。

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