おもてなし三昧な世界【台湾南部滞在】

清潔蝦
清潔蝦がちょこちょこ動く

台灣海生館の見学続行。

清潔蝦、と名前がつけられているエビが可愛い。多分和名は「アカシマシラヒゲエビ」だと思う。ウツボなどの魚の食べかすや体表の寄生虫を食べて生きているエビだ。

・・・見た目は可愛いが、多分食べてもあまりおいしくないと思う。雑食すぎる。

そのクリーナーシュリンプだが、共生すべきパートナーがいないために何だか所在なさげ。多分、現在は人工的に給餌されているはずだが、これではクリーナーの名が廃る。なんとも不本意ながら水槽の中で生きております、状態だった。

ジンベイザメ
エイ

大きな水槽では、ジンベエザメとエイがふわーふわーと優雅に泳いでいた。動きが緩慢な魚は、見ていて楽しい。

世界水域館

次に、最後の施設である「世界水域館」に向かう。いったん建物を出て、広いテラスをてくてくと歩いて行った先にある。徒歩数分を要する。施設がでかいので、建物間の移動にも時間がかかる。

途中、「ナントカカントカ!アッー!」というおっさんの叫び声が聞こえてくるので何かと思ったら、トルコアイス屋だった。こんなところでトルコ人に出逢うとは思わなかった。

世界水域館だけ別の場所にある建物なので、ひょっとしたら後から新設したのかもしれない。そのせいか、いろいろ趣向をこらした展示がされていた。

が、最後に施設を見終わってFishが言った言葉は

「なんだかお金たくさん使って作ったって感じだね」

だった。おかでんも

「広告代理店にうまいこと乗せられて、無駄にあれこれ作ったって感じ」

と余り評判がよいものではなかった。

3Dサングラスをはめて施設内を歩くと、前方から立体に見えるシロクマが現れて襲ってくるとか、空中に巨大深海タコのホログラムがふわふわ浮いているとか。だからどうした、という内容ではあった。

魚が展示されている巨大な水槽もあったが、建物の造りが悪く、圧倒感に欠けなんだか拍子抜けだったり。

世界水域館内部7
ペンギン

ペンギンが泳いでいた。

ガラス越しに眺めるようになっているので、水中での動きもよく見えて面白い。しかし、ペンギンがばちゃばちゃやったりドボンと飛び込むので、ガラスに水しぶきがいっぱいついている。そのせいで視認性があまりよくないのが残念。

日本の水族館だと、大抵ペンギンってのは屋外飼育だと思うが・・・ああそうか、台灣でペンちゃんを屋外に出すと、暑さで参ってしまうんだろうな。これはやむを得ない措置。

ウミドリ

ウミドリ。

ちょうど餌の時間で、プールに投げ込まれた魚めがけて、高速で素潜りしていた。

その直線的な、高速動作は一見の価値有り。

マグロの紹介コーナー

マグロの紹介コーナーがあった。

この国立海洋生物博物館がある屏東縣は、東港というマグロの水揚げが多い漁港を有している。その関係だろうか。最近でこそ寿司ブームもあってマグロが注目を集めているが、つい10年そこいら前まではマグロなんて台灣人は食していなかった。水揚げのほとんどが日本向けの輸出。それを考えると、ますます全世界でマグロ不足が深刻になってきたということだ。

写真に写っている紹介パネルは、いかにマグロが弾丸野郎でブッチ切りな早さを誇るか、というものだった。マグロが時速160km/h(100mを2.5秒)、チーターは98km/h(100mを3.75秒)、そして人間は36.,8km/h(100mを9.77秒)とされていた。くっそう、人間はめっさ遅いぞ。でも水の中を泳ぐマグロと比較するのはアンフェアだぞ。マグロよ、地上に出てこい、歩いて勝負だ。人間様の圧勝だろうが。

なお、100mを9.77秒というのは前年の北京五輪でボルトが叩き出した記録を踏まえていない。さすがに頻繁に最新情報をパネルに反映するのは無理か。

「推↑」「拉↓」

マグロの人形の下に、「推↑」「拉↓」という表示があった。どうやら、「押す」が「推」で、「引っ張る」が「拉」という意味らしい。お言葉に甘えて、「拉」してみる。・・・おや、マグロの旨そうな赤身が出てきた。こっちは・・・トロかな。

鮪魚三寶

隣のパネルには、「鮪魚三寶」というパネルがあり、今引っ張った部位の紹介をしていた。見ると、「赤身(AKAMI)」「大腹(OTORO)」「中腹(CHUTORO)」なんて書いてある。驚いた、大トロだの中トロってのは国際的に通用する言葉になっていたのか。そりゃあマグロ不足になるわけだ。

ツナTシャツ

閉館時間が迫っているということで、背後からずっとひたひたと警備員さんに追いかけられながら、駆け足で館内を見て回る。閉館時間は17時。そうかぁ、結局今日はほぼ一日水族館で過ごしてしまったな。

最後、お土産物コーナーに立ち寄る。施設がデカいだけあって、お土産物の取扱いも多い。結構充実していた。

海に関するグッズが多いのは当然として、南にあるということで花をあしらったグッズも多かった。カラフルで見ていて楽しい。

そんな中、おいおい、というグッズも発見。

黒いTシャツだが、その柄が「TUNA」。のけぞるマグロの絵柄。・・・おい、これ、明らかにPUMAを意識しているだろ。

「いや、全然違う物です」とか「パロディであって、著作権侵害には当たらない」と主張されたら「まあ、そうかもしれん」と唸ってしまうが、これはちょっと・・・国立の教育施設でこのようなものを売るのはまずいとおもう。

TEAMWORKでフルボッコ

もう一つ、「おいおい・・・」というものを発見。

「TEAMWORK」と記されたTシャツだが、絵柄は3人の男が地面に倒れ込んだ一人をフルボッコにしているもの。ひでぇ。一人はパンチ、一人は蹴り、一人はバット(!)という完璧なTEAMWORKだ。

繰り返すが、ここは国立の施設だぞ。こんなの売っていいとは思えないのだが。

これ、修学旅行なんぞで訪れた生徒がお土産に買っていくのだろうか。で、学校に戻ってからTEAMWORKを発揮。いかん、いかんぞそれは。

日本では、一時「BITCH」と書かれたTシャツを着ている人をよく見かけたが、それよりはまだマシだとは思うが・・・。

小鳥

閉館時間ということで、売店での買い物もそこそこに施設を後にする。

駐車場には小鳥(名前はしらん)がちょこちょこと歩いていた。

「毎朝、あの鳥の鳴き声がすごいので目が覚めるんだよ」

とFishが言う。聞くと、渡り鳥らしくちょうどこの時期恆春あたりに滞在しているそうだ。

スクーター

がらんとなった駐車場に、われわれのスクーターが一台だけ停めてあった。

Fishから「運転してみる?」と聞かれたが、人生初めてのスクーターであるし、二人乗りだし、ひっくり返って怪我をすると保険やらなんやらややこしいのでやめておいた。

あと、スクーターの側面に「Smile 100」と名前が書いてあったのが気になった。100ccの排気量、ということだろうか。だとしたら、日本では50ccの原動機付き自転車しか運転する資格がないおかでんではこのスクーターは運転できない。

・・・帰国してから調べてみたら、確かにこのスクーターは100ccだった。危ねぇ、うっかり無免許運転するところだったぜ。

台灣では、150ccスクーターまでが簡単な試験で免許を取ることができるらしい。日本よりも規制が緩い。日本より規制が緩いのは、二人乗りする事が当たり前の国なので、50ccの低排気量では使い物にならん、という事情もあるのだろう。

逆に、150ccを越えたスクーター、バイクは台灣にはほとんど存在しない。そういう免許が存在しないので、一般国民は所持できないのだった。大きなバイクが町中にやってきたら、あの大量のスクーター軍団の波に呑まれて身動きつかなくなりそうだ。妥当な判断だろう。

さて、スクーターの発進準備をしているFishだが、やや独特な格好をしている。まず一つは、リュックを前に背負っていること。これは後ろにおかでんが乗るので、こういう格好をする。そして、二点目はフリースを前後逆に着ていること。これは日本ではまずお目にかからない謎の格好だが、台灣ではよく見かける。

要するに、フリースを普通通り着て運転すると、裾が風でバタバタするので、だったら前後ろ逆に着ちゃおうという発想だ。

これを妙齢の女性でも誰でも平気でするので、正直日本人的感覚からすると「どんくさい」と思える。しかし、便利であるのは事実だ。

なお、このときの気温は多分27度くらい。長袖フリースを着る必然性は全く感じないのだが、台灣人からするとちょっと寒いくらいらしい。すげえ。

岬周回道路

時刻は17時を回ったところ。

今日この後の予定は、19時半頃にJennyのお姉さんと合流し、夕ご飯を食べに行くことになっている。Jenny曰く、「シーフードのお店」ということだが、さて南国恆春の地ではどのようなシーフードが出てくるのだろう。魩仔魚(しらす)やマグロだろうか?サバヒーは・・・さすがに出てこないと思うが。

夕ご飯の時間まではしばらく余裕があるので、せっかくなので岬をスクーターでぐるりと一周回ってみることにした。昨日訪れた、關山や猫鼻頭がある岬だ。

海洋生物博物館から岬周回道路を進む。道がよく整備されていて、幅が広くて気持ちが良い。あらためて、日本ではないことを実感する。何しろ、岬の外周を回っている道路だというのに、海が全く見えない。そして、平地だ。崖に沿うような形で海沿いをぐねぐね走る日本の岬道とは大違いだ。

もの凄く快適な道を走っていると、時々海側に向けて狭い脇道が延びている。集落に通じる道のようだ。せっかくなのでこの地に住んでいる人たちの暮らしぶりが見たかったので、Fishにお願いして次の集落に立ち寄って貰った。

脇道に入ると急に道が悪くなる

うわ。

いきなり道が狭く、そしてガタガタになる。このギャップが台灣らしいといえば台灣らしい。二人乗りのスクーターだと、ばっこんばっこん跳ねるので走りにくいことこの上ない。

しかし、こういう集落を走るのは楽しい。何度もバイクのステップから足を踏み外しながらも、感心しながら風景を眺めた。

日本で言うところの一戸建て住宅は無いようで、そのほぼ全てがビル風の建物の3階建て住宅だった。一応一戸建て・・・ではあるが、長屋風でもあるし、雑居ビル風でもある。

建物の1階入口部分は、道路からコンクリートが盛られており若干高い位置になっている。雨が降った時に一階部分に浸水しないようにという配慮だろう。日本のように、「玄関に段差があって、靴を脱いで上にあがる」という発想がない国だ。外と、家の中との高さは全く一緒。

だったらもっとちゃんと段差を作るなどすれば良いのに、と思うが、「そんな見栄えはどうでもいいから」という考えなのだろう。実利追求型だ。

この手の集落は漁業で生計を立てているのだろうか。しかしその割には集落のメインストリート(?)から港は見えなかったし、漁具も見えなかった。でも漁業なんだろうな。

このあと集落をいくつか見て回ったが、面白いのはその全てに早點店(朝飯屋)があるということだった。さすが台灣だ。小さな集落でも、必ず朝メシを食うお店があるというのは偉大だ。ちなみに集落には、よろず屋と朝飯屋は必ず存在していた。

白砂に通じる道
白砂看板

先へと進んでいくと、標識で「白砂(バイシャ)」という文字を見つけた。砂浜があるのだろうか。ぜひ立ち寄ってみることにした。

脇道に逸れて「白砂」方面に向かってみると、そこはこれまでの集落と違い、なにやら南国リゾート的な雰囲気が若干ある。いったん適当なところにスクーターを停め、先へと歩いてみる。

白砂
白砂の地面

白砂。

想像した通り、非常に奇麗な砂浜だった。日本の本州でよく見かける、まさに「砂」で作られた砂浜はもっと黒っぽい。しかし、ここは明るい色をした海岸を形成していた。

間近で見ると、白い理由は貝殻や珊瑚の破片だった。この辺りは沖合に珊瑚礁があるので、その破片が浜辺に打ち上げられて白い砂浜が作られたそうだ。

しばらく砂浜に座り込み、南からの風を受けつつ景色を愛でる。

Fishによると、「墾丁の方に行けばもっと奇麗な所がある」とのこと。これよりまだ奇麗ってどんなところなんだ。明日ぜひ確認しよう。

食在自助飯包

小さな岬だと思っていたが、時速30kmのスクーターで走ると案外時間がかかった。途中ショートカットして恆春に戻る。

いったん陳さんの家に立ち寄り、おかでんの荷物一式を抱えてFish宅へと向かった。なぜなら、今朝Fishからこんな話を聞いたからだ。

「お母さんが、陳さんの家と私の家とを往復するのは手間だから私の家に泊まっていきなさいって言ってるよ」

いやいやいや・・・今度はFish家に一泊ですか。それはぜひ勘弁願いたい。恐れ多い。せっかく、今晩は陳さんの家で一人きりになって、ほっと一息つこうと思っていたのだが、それは許されないらしい。極限まで台灣の人はおもてなしをする気だぞ、おい。

お断りしたいところだったが、せっかくの好意をむげに断る理由が見あたらなかったのと、陳さんという、おかでんからしたら遠縁の方の家を一晩お預かりするという事を積極的に承る理由もなかった。追い詰められた状態で、「あ、ありがとうございまする」と拝命するしかなかった。いやもう、背中から汗が出るわ。

しかし、気になる事が一つ。生乾きの服が臭くなってしまっているので、今晩は風呂場で盛大に洗濯祭りをする予定だった。Fish家にお世話になると、それができなくなる。その点をFishに伝えたら、「家で洗濯するよ」とあっけない。はあ、そうですか。「お母さんがやってくれるよ」。・・・いや、ちょっと待て。そこまでお世話になるのか。うわあ、針のむしろ。

妙齢の女性のご実家に一泊する時点で、「ムコ殿来訪」的な感じなのに、さらにパンツ含めておかーさんに洗濯までして貰うなんて、もうボクどうしたらいいの。

恐れ多いやら、恥ずかしいやら、何だか情けないやら、でがっくりきてしまった。もちろん、Fish家の好意には多謝なのだが、日本人ってこういうのに慣れていないもんでして。

そんなわけで荷物を抱えてFish家にお邪魔。萌萌がお出迎えしてくれて、「また来たの?遊んでくれるの?」という顔をして遠くから眺めている。

早速Fish母に「お世話になります」と深々とお辞儀。もうね、一体何度この方にお辞儀したことやら。お世話になりっぱなしだ。できればこの人の前にいる間は、ずっとお辞儀の角度で頭を下げていたい。

そんなおかでんの脇から、Fishが母親に「これ、洗濯してあげて」と言ったことを伝えていた。Fish母が洗濯物の袋を覗き込み、Fishと何か会話している。何で洗濯するの?という内容らしい。そこで、Fishは「臭いがするから」とかなんとか答えたらしく、Fish母は袋の中に鼻を突っ込んで臭いを嗅いだ。おい、ざっくばらん過ぎるというか、それはちょっと勘弁してください。女友達の母親に、自分の洗濯物を洗って貰う時点で結構恥ずかしいのに、さらに臭いまで嗅がれるとは。卒倒しそうになった。

しかも、その後、台所の方から「洗剤持ってきてない?」とFishから聞かれ、「持ってきてない」と答えた時は恥ずかしいやら情けないやら。己が、洗剤すら持参しないで洗濯をお願いする厚顔無恥な人のように思えたからだ。

ただ、Fish陣営は全然そんなことを気にせず、さも当たり前のように衣類を受け取り、洗濯をしてくれた。来客が望むなら当然、ということなのだろう。

そんな針のむしろ状態の中、リビングでかしこまっていたら、また蓮霧が出てきた。いやもう、食事時間が近いんですが、今からフルーツですか。はあ、有り難く頂戴します。蓮霧尽くしだ。

しばらくすると、洗濯から戻ってきたFish母からプチトマトの差し入れ。ますますフルーツ尽くしだ。頂いたプチトマトは、日本のものよりも細長く、肉厚で酸味が強かった。日本だったら品種改良して甘くしてしまうだろうが、台灣では日本人と味覚の嗜好性が違うようだ。しかしこのトマトは、多分玉子と一緒に炒めたり、スープにするとよく合いそうだ。Fish母にそう伝えたら、「そういう食べ方は素晴らしい」と言っていた。

そろそろJenny姉と待ち合わせ時間のはずだが、Fishは一向に出発する気配を見せない。しかも、Fish母が「今日の夕食はこんなのだったよ」と、夕食を見せてくれて、ますます出発する雰囲気では無くなった。

ちなみにその夕食は、油飯(小エビやシイタケを入れた混ぜご飯)、蓮霧などのフルーツ、というものだった。シンプルだ。フルーツが全体の半分近くを占めている。

「ぜひ油飯を味見してご覧なさい」と言われ、「いやもう食事時間なんですが・・・」と思いつつ、いただく。これがなかなかおいしかった。干しエビがいい出汁を出し、なおかつぱりぱりした食感があるので楽しい。どうやって作るのか、レシピが気になった。

そんなことをして、気がつくと既に集合時間から15分遅れくらいになってようやくFishが動き始めた。何なんだこの時間のルーズさは。でも、こっちがこれだけルーズなのだから、向こうもそれを見越してルーズなのだろう。では、「集合時間」という概念は一体なんなんだろう。

Fish家から歩いてしばらくのところが待ち合わせ場所になっていた。Jenny姉は車で来ていて、すんなり合流できた。「Jenny姉とはどれくらい親しいの?」とFishに聞いたら、「会ったことない」と言われて面食らったのだが、無事合流できて何よりだ。この辺りが台灣人の人なつこさなんだろう。おかでんがいきなり「友人の兄弟と単独で会う」って事になったら若干緊張するぞ。何を話せばいいんだ、って。でもFishは全然平気で、けろりとしている。

Jenny姉が運転する車に乗り、お店に向かう。

「ええと、シーフードのお店、って聞いているけど?」
「いや、鴨肉のお店に行くよ」

・・・はあ、そうですか。いつの間にか話が変わっているあたりは台灣クオリティというか、もう今更驚く事ではない。普通変更があったときは相手に報告するだろう、というのは日本人的発想なんだな、きっと。

ただ、鴨肉のお店といえば、おかでんがリクエストしていたのも事実だ。「地球の歩き方・台灣編」では、恆春は1ページだけの紹介であるが、その中で唯一飲食店として取り上げられていたお店が鴨肉料理のお店「鴨肉蔡」だった。だから、「このお店は候補だねえ」と、Fishには伝えてあったのだった。ひょっとしたらその事を覚えていて、予定を変更したのだろうか。

お店に到着してみると、シャッターが降りていて真っ暗だった。

「今日は定休日みたいだね」

なんと呆気ない。ちなみに、このお店は先ほどの「鴨肉蔡」ではなかった。一体どういう基準で選ばれたのだろう?

違う店にしなければ、ということで今来た道を折り返す。

途中、「食在自助飯包」という看板を見かけ、「おお」と思わず写真を一枚。

自助飯。ずらりとおかずが並び、ビュッフェ形式でそのおかずを自分の皿に盛り、最後にお会計をするタイプのお店だ。大皿料理中心の台灣において、一人でも気軽に食べる事ができるお店ということであちこちに店舗がある。また、いろいろな料理を選択できるので、台灣料理をあれこれ試してみたい人にとっては適している。

「自助飯、今度台灣に来た時は食べてみたいなあ」

と言いながら、この景色を見送る。

北門のあたり

「何が食べたい?」

とJenny姉から聞かれたので、

「地元の人が行くような、普通のお店がいいです。地元の物が食べられればうれしいです」

と答えておいた。しかし、実際のところ恆春は観光地とはいえ、ほとんどが地元民。恆春内にあるお店はほぼ全て地元民用であり、上記リクエストはあんまり意味が無い。

「んー」としばらくJenny姉は唸ったあと、車を北門の方に向けた。

実際、北門の目の前で車は停車し、ここだと言われる。ほう、こんなところに飲食店が?

北門家常菜

ああ、確かにお店がある。

煌々と明かりが灯っているわけではないので若干地味だが、確かに飲食店だ。店の前が細長いテラスになっていて、そこにぎっしりと並べられたテーブルにはお客さんがこれまたぎっしり、大繁盛。

店の壁を見ると、「北門家常菜」という名前のお店だった。飲食店という事を外部にアピールしているのはこれだけなので、観光客、ましてや日本人がふらりと立ち寄って食事をするなんてことはまずあり得ない外観だ。いいねえ、こういうの、好きです。「家常菜」とは、「家庭料理」の意味。こちらの希望を確実に汲み取ってくれた店選びでうれしい。楽しみだ。

Jenny姉曰く、「ここは地元民しか来ない店だったが、最近評判になって少しずつ観光客も増えてきた」んだそうだ。

店に入るとき、Jenny姉が入口近くで飲み食いしている10名以上もいる集団とあいさつをしていた。どうやら知り合いらしい。決して広くはない恆春のことだ、飲食店に行けば知り合いに出逢う。

北門家常菜の店内

「地元民御用達の店」とはいえ、ディープな感じではない店内。カジュアル・・・というより、質素な感じ。大きな机、しかも円卓というのが台灣の定番かと思ったが、さすがにどんなお店もそういうわけではなさそうだ。このお店は大きな食卓の他にも小さなものもあった。小さい机は店内スペースの関係で壁に密着しており、壁を取り囲むように4名が座ることができるようになっていた。

われわれが訪問した時は超満員札止め状態だったが、幸いにもお店を後にするグループがいたのでそこに滑り込むことができた。本当に繁盛店だ。

菜單

菜單(ツァイタン=お品書きのこと)はどこ、とテーブルを探したが見あたらない。

ええと、どうやら目の前の壁にかかっているこの黒板、これが店内唯一のメニューらしい。

常時書き換えOKだぜ、という事は、頻繁にメニュー変更をしているのだろう。それは大変に結構な事だが、注文する側からすると「机に座って、とりあえずの啤酒を飲みながら料理を検討」とはいかない。黒板の前に立ちつくし、むむむと菜單を睨み付けて比較的短時間で料理を決定していかないといけない。

「何か食べたいもの、ある?」

とFishに聞かれたが、さてお品書きを見てもどうもピンとこない。いい加減目と脳みそが中国語に慣れてきたので、何がどのような料理なのかは何となくわかるようになったが、全体のバランス、われわれの胃袋、珍しさ、酒のつまみとしての適合性などをトータルで判断するほどの経験が無い。ここは大人しく「お奨めの品」を女性陣のお二方に選んで貰うことにした。

とにかく、「一人前」を頼んだ時に出てくる量、というのがいまだによく分かっていない。居酒屋感覚で皿数を増やしてしまうと大変な事になる。この辺りはプロに任せた方がよろしかろう。

黒板を前に料理を選んでいる二人の脇に、店員さんがぴったりと張り付く。メモとペンを手に、料理名を書き取っていた。難しい漢字の国だから、書き取るのは結構大変そうだ。

テーブルの上

汚れた皿などが片付けられ、われわれに開放されたテーブル。

取り皿などの基本セットがスタンバイされている。

平皿、汁椀、グラス、割り箸、ティッシュ、そして冷えたお茶。
お茶が卓上に置いてあるのは今までで初めての体験だ。とても気が利いている。

そして、割り箸が日本同様、紙袋に入れられていたのは非常に珍しかった。ビニール袋で密封されているのが全国共通なのかと思っていただけに、意外。

なお、ティッシュだが、このような飲食店には日本の「紙箱入りティッシュ」にお目にかかったことは一度もない。台灣のデフォルトは、ビニール袋入りの簡易包装ティッシュのようだ。そういえば、何で日本は紙箱入りなんだろうな。あれ、中が空になったときにゴミになって邪魔なんだが。台灣のスタイルの方が好きです。ただし、見栄えはあまり良くないが。

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