おもてなし三昧な世界【台湾南部滞在】

※注意
この連載は旅行記ですが、旅慣れた方からすると非常に低次元なところでおかでんが悶々としています。海外に不慣れであるキャラクターであることを前提にお読みください。
また、文中、頻繁に「台灣では・・・」とか「台灣人気質は・・・」といった表現が出てきます。しかし、日本人全てが同一でないのと同じで、台灣の人や文化は多種多様です。「おかでんが見た限りでは」という狭い範囲を前提として書いていることをあらかじめご了承ください。

おかでん、2月にまとまった休みが確保できそうな気配あり。せっかくだから、「家でごろ寝」「まだ見ていない映画を一気に見る」なんてのはやめておきたい。積極的に外に出るべきだ。かといって、ちょうど今がシーズンであるスキーを倒れるまでやり続けるのもいまいちな案だ。スキーそのものは好きだが、「まとまった休み」がとれるのは俺様一人だけ。他に賛同者がいない中、一人で延々滑っているのは相当に寂しいものがある。

そんなわけで、福井県にある曹洞宗大本山・永平寺の門を叩き修行させて貰うことを真剣に検討した。3泊4日の修行で、朝3時半起床という「体験修行とはいえ容赦しねえぞコラ」という内容だ。これくらいキッツい方が、今のたるんだ自分には適している。キツいが故に、アドレナリン出まくって逆に快感なのではないか。そんな期待さえちょっとあった。

アワレみ隊の隊員に「永平寺で修行するけど、誰か賛同者います?」と隊員限定MLで聞いてみた。すると、「その後の越前蕎麦食べ歩きツアーになら参加する」と言ってくれる人はいたが、さすがに3泊4日の修行+蕎麦食べ歩きに日程を割ける人は居なかった。まあ、そりゃそうだ。

どうしたもんかなあ、と思っていたところ、Fishが2月の中旬に台灣に帰国するという。いっそのこと、そっちに便乗させてもらおうかしら。だんだん「極寒の寺で瞑想」から「南国でパラダイス」の方に考えがスライドしていった。

こういうのは、一度流れがつき始めると一気に加速するものだ。「実際に台灣に行こうとすると、何をいつまでにどう手続きすれば良いか?」なんてシミュレーションしていくうちに、すっかり台灣行きが既定路線のようになってしまった。

Fish。仮にこのサイトに掲載予定である全記事が文章化され、公開されていたら3年近く前に初登場していた人物。しかし、その全ての記事が未執筆のまま放置プレイされているため、結果的に今回の連載(2009.02連載開始)が初登場ということになる。

Fishはアワレみ隊の天幕合宿に参加したことはないので、隊員ではない。隊員になるためには、たき火を華麗に、高く、そして長距離飛ぶ度胸試しが必須。しかし、アワレみ隊企画に参加したり、おかでんの個人的思いつき企画に参加してはいる。

彼女は日本人ではなく、台灣人だ。知り合ったきっかけは、この「へべれけ紀行」に掲載されている「スペシャルオリンピックス・冬季世界大会長野」。Fishはその時、SOチャイニーズタイペイの通訳ボランティアとして参加していたのだった。大会期間中はおかでんとの業務の違いから全く接点が無かったが、その後知り合う機会があり今に至る。だから、足かけ4年近くの友人だ。

Fishがこの時期に帰省するのはちょっと意外だった。「あと2週間早く帰省すれば、春節(=旧正月。中華圏の国は、太陰暦を採用しているので、正月はだいたい1月末~2月中旬になる)に間に合うのに」と思ったからだ。しかし、Fish曰く、「仕事が逼迫している」ということと、「春節中はお店が閉まっているので、買物ができない」ということを理由に挙げていた。確かに、日本よりも物価が安い台灣。何か欲しいものがあったら、母国で買った方がお得だ。しかし、お店が閉まっている春節中はそれができない。また、日本語が達者とはいえ、病院に行く場合は細かいディティールを日本語で伝えるのは難しい。やはり、このような場合は母語の方が都合がよい。だから、不要不急な病気でなければ、台灣で受診した方が楽だし確実だ。

まあ、それ以前に彼女が参画しているプロジェクトがデスマーチに突入しかかっていて、正月返上、土日返上で仕事をしていたという実情もある。春節時は忙しさがピークだった。帰りたくても帰れない状態だったらしい。ようやく八甲田山死の行軍が一段落したところで、ちょうどタイミング良く帰省時期になったというのは運が良かった。

慌てたのはおかでんの方だ。なんとなく台灣行きの話が浮上してきたので、なんとなくパスポートを取り出してみたら有効期限が今年の4月。大至急パスポート更新の手続きになった。台灣には、パスポート有効期限が3カ月以上余っていないと入国できないからだ。

パスポート更新に要する事務手続き時間は7日~10日。渡航予定の2週間前になってからの有効期限切れ直前発覚だったので慌てたことこの上ない。パスポート番号がはっきりしないと、飛行機のチケットすら入手できないし、ホテル予約もできないので八方ふさがりだ。

結局、「永平寺に行くかもしれない」と思って散髪していなかったぼさぼさ頭のままで慌ててパスポート写真を撮影した。もし永平寺に行くなら、丸坊主にするつもりだったから、正式決定するまで散髪を延期していたのだった。このもっさりした髪の写真が、今後10年間パスポートとして使われると思うとなんとも憂鬱だ。

Fishと具体的に台灣行きについて打ち合わせできたのは、2月7日のことだった。Fishが台灣に帰国するのが11日なので、ギリギリの日だ。それまでは、全く何も検討されていなかった。

何しろ、Fishにとってはあくまでも「久々の帰国」。彼女の実家滞在や親戚・友人づきあい、買物をおかでんの訪台で邪魔しちゃいけない。「もし空いているお時間があったら、少しのお時間で結構なので台灣を案内してくれませんか」というスタンスなのが、今回のおかでんだ。とはいえ、おかでんは台灣語、台灣國語(ほぼ北京語)はおろか、英語すらまともにしゃべることができない。外国で単独行動は難しい。Fish頼みのところがある。

バックパッカー系の旅慣れた旅行者は、「そんなもん現地に行けばなんとでもなる」という余裕があるだろう。しかしおかでんはこれまで、ひたすら国内に閉じこもってきた。そしてたまに海外に行くとしても、ガイド付きのツアー旅行であったり、ジーニアスのように英語が堪能で外国人コミュニケーションに度胸がある人間が同伴した旅行しか体験がない。海外での一人行動には、相当足がすくんだ。

Fishの実家は、高雄(かおしゅん)からさらに南に向かった台灣最南端の場所、恆春(へんちゅん)にある。

高雄の位置

恆春の位置

鉄道はないので、高雄からはバスでの移動となる。日本人観光客慣れしている台北くらいだったらおかでん一人旅でもなんとかなるが、地方の町へバスで行くとなると途端にハードルが高くなる。バスの乗り方、乗る場所がさっぱりわからないし、台灣では車内アナウンスなんて気の利いたものはないので、降りる場所も方法わからん。どうすりゃいいんだ。

Fishと打ち合わせをする日、本屋で「地球の歩き方・台湾」を購入した。過去、ジーニアスと台湾に行った時は、「地球の歩き方・台北」を購入したのだが、今回は台北情報をあまり必要としていない。台湾南部の情報が必要だった。

しかし、その「台湾」編も、全ページの1/3以上が台北に関する情報。台湾第二の都市である高雄についてさえ、ページ数が少ない。ましてや、これから行こうとしているFishの実家、恆春なんてたったの1ページだ。この情報でどうやって一人で行け、というのか。頭を抱えてしまった。

まあそこはネット時代、どうにかなるとしておこう。Fishとしばらく打ち合わせをし、大ざっぱにだいたいこのように決めた。

・2月17日
朝NRT→TPE。そのまま新幹線で左營まで行き、バスで夜に恆春着。一泊。
・2月18日
一日恆春で観光。
・2月19日
恆春→高雄に移動。高雄観光。
・2月20日
朝、新幹線で左營から桃園。午後便でTPE→NRT。

Fishは台湾人気質なのか個人的性格なのか知らないが、あまり計画性がない。「その場で、その時になってから考えてもいいんじゃない?」という発想の持ち主だ。だから、上記の計画をFishの現地滞在スケジュールに合わせて策定するだけでも一苦労だった。日本人、特におかでんが「事前に、綿密に計画を行動する」のを得意とするのに対し、どうも台湾の人たちは「とりあえずやってみて、うまくいかなかったらその場で修正する」のを得意とするようだ。少なくともおかでんが知っている台湾人はそのタイプに当てはまる。

双方一長一短があり、台湾の人たちは見込みの甘さから作戦失敗に終わったとしても、すぐに発想転換して「まあ、これはこれで楽しめるし」なんてポジティブシンキングができる。ちょっと羨ましい。しかし、そのポジティブシンキングに付き合わされる日本人からすると、「自分勝手」ともとれる行動にブンブン振り回される事になる。逆に日本人は、事前計画がかっちりしているので失敗が少なく品質に安定感がある。しかし初動が遅いし、臨機応変性に欠ける。

他国の友人がいると、こうやって国民性(?)を知ることができて面白い。

Fishとのつきあいで、現時点においてこれ以上深く計画立案するのは無理だし無意味だと分かっていた。だから、この日はここでいったん打ち合わせ終了とした。後の細かい内容については自分で調査し、調査結果をこちらから提示しつつFishに実現性の確認を取ることにした。

しかし、その打ち合わせ直後に、Fishが「關子嶺溫泉(ぐあんずぃりぃんうぇんちゅえん)もいいところだよ」とぼそっと言い出したので大混乱。おいちょっと待て、それは何だと。せっかく打ち合わせが一段落して「さあご飯でも食べに行こう」という段階になって、なんでそんな良さげな提案を後出しにして議論を引っかき回しやがりますか。

温泉、といえばおかでんの大好きなものの一つだ。

台灣という異国の地で温泉に入る。それだけでよだれダラダラものの魅力。

四重渓溫泉の位置

今回訪問予定の恆春の近くには、「四重渓溫泉(すぃーぢょんしーうぇんちゅえん)」という場所がある。「台灣四大溫泉の一つ」と言われているところだ。もちろん、今回の行程の中に組み込む事はFishと打ち合わせ済み。

それとは別に、「もう一つ、台灣四大溫泉」で素晴らしいところがあるというのだ。それが、前述の「關子嶺溫泉」だという。

調べてみると、嘉義の南東28km、要するに台灣中南部の山間にある溫泉だった。おい、立地条件悪すぎだぞ。どうやってここに行くんだ。高雄、恆春といった台灣南部滞在を前提にすると、どう考えても無理な場所といえる。台灣は九州ほどの広さしかない国土とはいえ、ちょっと分が悪い。

關子嶺溫泉の位置

つまり、「今晩は開聞岳の麓(鹿児島県の南)で一泊しますが、明日は黒川温泉(熊本県と大分県の県境)でひとっ風呂浴びます」と言っているようなものだ。言葉が通じ、webサイトで情報収集が容易なら兎も角、外国人一人旅で行くにしちゃあハードルが高すぎる。

しかし、この關子嶺溫泉、調べれば調べる程魅力的だった。日本ではあまりない「泥湯」だったからだ。しかも、本格的な泥湯で、まるでコンクリートのようだ。この写真を見て相当参ってしまった。

もう一泊、するか?

幸い、帰国は金曜日だ。その後の土日は空き日程として確保してあるので、その気になれば一泊延ばして關子嶺溫泉に行く事は可能だろう。ついでに、美食の都と言われる台南に滞在することも可能だ。

悩む。大いに悩む。ただし、台灣滞在を延泊した場合、帰国便が既に確定しているFishは同行しない。完全に一人で行ってこい、ということになる。本当にそれは可能なのか。

さあそこからが大変だ。膨大な時間をかけて、あれこれネットで調査を開始だ。本当に「寝る時間を惜しんで」の作業となった。何しろ、台北の情報やblogは多数あれど、それ以外の地の訪問記はすごく少ないから、探し当てるだけでも大変だ。しかも、そういう「ツアーでは絶対に行かないような観光地」に足を伸ばす人は大抵、旅慣れした人だ。どのような手段で現地に行き、目的を果たすかという「過程」についての記述が少ない。多分、「そんなもん書くまでもない」と思っているのだろう。しかし、おかでんのように旅慣れていない人間となると、どうしてもその「過程」が一番重要になる。關子嶺溫泉に行くバスはどこからどうやって乗るの?どうやったら溫泉に入ることができるの?調べれば調べるほどわからない。

日本人のサイトだけでは情報が足りないので、繁体字(台灣)のサイトもチェックを開始しはじめたら、ますますきりがない。複雑な漢字である繁体字は、見ていてとても疲れる。そして、「理解できそうで理解できない。でもよく見ると何となく理解できる」という中途半端さがますます疲れる。同じ漢字文化圏の国で良かったと思うが、案外理解は難しい。

結局、關子嶺溫泉は諦めた。そんなに素晴らしい溫泉なら、一人で行くよりもアワレみ隊メンバーと行くか、Fishとあらためて訪問した方が良いと思ったからだ。楽しいでき事を一人だけで満喫するのは、何とももどかしいものだ。

あと、ここには銭湯がない。ホテルに日帰り入浴を依頼することになるのだが、さてフロントにて「溫泉に入りたいのですが」とどう説明すれば良いのやら。その言葉の用法は、電子辞書にも中日辞書にも掲載されていなかった。ちょっと特異条件過ぎたか。

まあ、最終的には「I want to use SPA.」なんて嘘丸出しのインチキ英語を適当に言えば通じるんだろうけど、それもやめた。調査を進めていくにつれ、この關子嶺溫泉、結構施設によって当たり外れが大きい事が分かったからだ。

この溫泉、巨大施設が新しく誕生したりして、絶対的に湯量不足に陥っているとのこと。そのため、湯を薄めている施設もあるようで、本来のドロドロの生コンクリート状態のはずが、さらさら湯になっているところがあるらしい。そんなところに行き当たったら、悔やむに悔やみきれない。もう少し情報収集し、完璧な予備知識を手に入れてから現地に挑みたい。

・・・と、あれこれ思案しているあたりが「日本人的」なんだろうな。多分、「台灣人」だったらもっと気軽に「行く」「行かない」を判断していたと思う。

台灣に興味津々なのは、Fishという「身近な台灣人」がいるからだけではない。

昨年後半、台灣に関するTV番組が複数放送されたからだ。

導火線となったのは、「世界の果てまで行ってQ!」という番組で、「ベッキー女ひとり旅・世界ワンコイングルメツアー」という企画。台北にて「500円玉一枚でどれだけ料理を食べることができるか」ということをやっていた。案の定、しこたま食ってやがる。ええのぅ。番組内で登場した士林夜市は、2年前に訪れた事がある地。ああ、また行ってみたいものだと画面に映る臭豆腐を見て思った。

その後、決定打となったのが「台湾再発見!」という番組。これは、台灣観光局が単独スポンサーになって放送された、台灣政府肝いりの番組。普通、台灣の紹介といえば台北が中心となりがちだが、この番組は早々に台灣高速鐵路(=台湾新幹線)で高雄まで行き、そこから台灣最南端の墾丁(けんでぃん)まで進んでいる。墾丁は恆春鎮の一部であり、すなわちFishの地元。Fishに録画したこの番組を見せながら、「地元民」ならではのコメントを聞いているうちに台灣南部にはぜひ行かなくては、という思いを強くしたのだった。

墾丁の位置

台灣観光局の思惑通りの行動をとっているとも言える。観光局としては、「台灣はもっといろいろ魅力ありますよ。とりあえず新幹線に乗って南へいらっしゃい」という誘い水を番組で披露したかったのだろう。台灣南部に集客できれば、必然的に滞在日数が伸び、観光収入が増える。はい、まんまとその釣り糸にひっかかっちゃいます僕。

HISのサイト

17日入国、20日出国というスケジュールがほぼ決まったので、まずは飛行機のチケット手配に入る。今回、あっけなく「台灣に行きます」と決めちゃったのは、マイレージが有り余っているからということが最大の要因だ。サーチャージや空港使用料がかかるとはいえ、20,000マイルで往復の運賃がタダとなれば、随分とお手軽に台灣には行ける。所用時間は大したことないし、台灣では物価が安いので現地でのお金もそれほど必要としない。良いことずくめだ。

さてANAのサイトで特典航空券利用での台北便を検索したところ、行きは午後便、帰りは朝便しか設定されていないことが分かった。行きの午後便はまだ許すとして、帰りが台灣桃園國際機場09:00って何。朝7時過ぎには空港に着いていないといけないじゃないか。冗談じゃない。そうなると、必然的に前日夜は台北にいる必要がある。これでは旅行の前提が崩れる。

大層ご立腹して、格安航空券の情報収集に移る。もうANAはいい、帰れ帰れ。

気を取り直してH.I.S.のサイトで調べてみた。すると・・・おい、「航空会社未定」だけど12,000円のチケットがあるぞ。なんだこの安さは。「片道切符?」と思ったくらいだ。羽田-伊丹の片道切符よりも安い国際便往復チケットってあるんだな。呆れた。

もちろん、「往路:夜便」となっており、実際に現地についたら深夜になるだろう。しかし、帰りが午後便なのはありがたい。台北には夜市があちこちにあり、深夜到着であってもそれから遊行するには全く困らない。タクシー運賃が安いので、終電がなくなってもタクシーを使えば無問題だ。

だから、朝便を選んで高っかい料金を支払うより、前泊にはなるが夜便の格安な奴を利用した方がよさそうだ。どうせ台北界隈で一泊数千円の宿なんてゴロゴロしている。運賃+宿代足しても、まだお釣りが来る。

早速H.I.S.に電話をかけてみる。オンライン予約は締め切られていたからだ。こういう辺りにも、旅行手配の期日が迫っているところが伺える。やばい、急がないと。

すると、さすがに12,000円の便は既に完売とのこと。でも、19,800円の便なら用意できるという。しかもこれは成田午後発、台北(桃園)午後発の便。それでお願いすることにした。結果的に、「想定よりも1泊増えた」事には変わりないが、まあ良かろう。勤務先と仕事の調整しておかなくちゃ。すんませんもう一日休みます、と。

なお、どうせノースウェストとかユナイテッドとか事故多発エアラインで名高いチャイナエアライン(中華航空)あたりがあてがわれるのだろうと思ったが、聞いてみたらエバーエア(長榮航空)になる見込みだという。あら、それは歓迎。

結局、16日発20日着で、予約を入れてもらった。

電話予約をしたのが18時過ぎだったのだが、その後1時間もしないうちに請求書と「手配旅行参加申込書」がメールで送られてきた。明日までにお金の振り込み及び「申込書」の返信をしなければいけないそうだ。せっぱ詰まってるな。何しろ出発まであと8日しかないから、旅行代理店としてはギリギリの取扱いだったのだろう。

なお、「手配旅行申込書」はMicrosoft Excelによるものだった。自宅のPCにExcelを入れておいて良かった。あまり使っていないけど、いざというときに助かる。もしExcelを持っていない人だったらお手上げだ。

翌日朝、コールセンターに確認の電話。

電話に出た人誰でもが応対するのではなく、「予約を承った人が担当者として責任もってお客にくっつく」スタイルをとるのだな。電話を、昨日の担当者さんに取り次がれた。

これ、意志の齟齬が発生しない分ありがたいのだが、担当者さんがお休みだったり退職したら非常に困る制度だ。実際、過去H.I.S.を利用したとき(1999年米国旅行)、途中で担当者さんが退職してしまい困った事がある。そのせいでレンタカー予約手配が無視されていたり、ジーニアスと男二人でダブルベッド宿泊になる寸前になったのは今でもはっきりと覚えている。

しかしこの日は担当者さん出勤でひとまず安心。2点確認してみた。

(1)お金の振込先がジャパンネット銀行になっているが、こんな使いにくいネット銀行はイヤだ。振り込み手数料がもったいない。近くのH.I.S.支店で現金払いするけど良いか?

(2)手配された長榮航空は全日空とコードシェアされているが、マイルを貯めたいので全日空便名で手配し直すことはできないか?

(1)についてはニコヤカに「ダメですー」と言われてしまった。経理の関係でダメだと。ネット通販を担当している部署と、各支店ではおサイフが違うらしい。なるほど。まあ、格安で航空券を払い出して貰っている以上、文句は言えないか。

ジャパンネット銀行の口座にどうすれば安く振り込めるか?というのを調べてみたが、よく分からなかった。だから、提携している三井住友銀行のATMから入金してみたのだが、きっちりと630円の振り込み手数料を取られてしまった。shit!

(2)についても「ダメですー」だそうで。やはり、BR(EVA)でチケットを出すから安いのであって、NH(ANA)だとそうはいかないんだって。確かに、同一便のNHは倍以上の値段になっていた。コードシェアでまったく同じ飛行機なのに、発券元の航空会社によって価格が異なるというのは何とも不思議で面白い。

結局、支払った金額の総額は37,400円(+振り込み手数料630円)。

内訳は、チケット19,800円、サーチャージ12,600円、成田使用料2,040円、台灣出入国税860円、H.I.S.手配料2,100円。

まあ、こんなものか。チケット代から相当上乗せがあるが、それを考慮しても格安だ。おかでんの実家がある広島と羽田を往復する航空運賃より安いってどういうことだ。しかも台北便は国際線だから機内食付きだぞ。

こうなるとマイレージって使い道に困るんだよなあ。

1年前まではマイレージを貯めるのに血眼になっていたけど、最近はばかばかしくなってきた。陸マイラーやっていると、「マイルを貯める行為で、むしろ損が生じる」事が増えてきたからだ。「日経トレンディ」あたりが制度の穴を見つけ、「最強のクレカ」なんて特集を組むつど、「やべえ!それは想定していなかった!」と制度改正していくし、時間とともに他にもっと費用対効果の高い買い物の仕方がいろいろ出てきているからだ。

マイレージを使うとなれば、実質国内便だろうな。となると、盆暮れの帰省時か。しかしその時期は無料特典航空券は非常に確保が難しい。なんだ、結局使い切れないじゃないか。どうするんだよ。

今年末で切れるマイルが5万ほどあるんだけど、さてどうしたものか。

チケット予約と入金の作業に並行して、台灣での自動車免許取得にも動き出していた。恆春滞在時、Fishの実家の車を貸してもらえる、という申し出があったからだ。えっ、いいんですか?会ったこともない怪しい日本人に車貸すなんて。なんて人がいいんだ。そもそも、日本と台湾ではハンドルの位置も車線も逆なんですよ。車ぶつけても知りませんよ。

恐れ多いご厚意ではあったが、せっかくなのでありがたく甘えることにする。しかし、これはまだ「ご厚意」の序の口。今回の旅行のタイトルである「おもてなし三昧」はここから火ぶたを切るのであったが、まだこの時点では気がついていない。

JAFのwebサイト

普通、日本で免許を持っている人が海外で車を運転する場合、「国際免許証」なるものを各都道府県の免許センターにて発行してもらうことになる。これも「単なる事務手続き」ではあるが、少々時間と手間はかかる。写真付きのしっかりした免許証で、有効期限は1年間。

しかし、台灣ではこの「国際免許証」は使えない。なぜなら、台灣は中華人民共和国からの圧力により、世界の中で孤立しているからだ。台灣を独立国家として認めていない国が大多数なので(日本もそのうちのひとつ)、免許についても他国と融通がつかない。だから、今までは「日本人が台灣で車を運転」するためには、「台灣で新たに免許を取得する」しかなかった。

しかし、2007年に日台間で協定が結ばれ、日本の運転免許証およびその「翻訳資料」があれば運転が認められるようになった。もちろん、誰か適当に免許を翻訳してもらえば良いというわけではなく、ちゃんとJAFに行って公式な翻訳資料を作成してもらう必要がある。

JAF=一般社団法人日本自動車協会。その名の通り、官公庁的な立場にある組織ではない。それが、国際的な公式文書を発行する権限があるというのにはちょっと驚いた。しかし、webサイトを見てみると「財団法人交流協会」からの委託を受けて作成している、と記述されている。なるほど。(財団法人交流協会については、ジーニアスとの台湾紀行のところで少々触れているのでそちらを参照のこと)

日本駕照中文翻譯

各都道府県にあるJAFの支部で翻訳受付をしているということなので、行ってみる。おかでんはJAFの会員ではあるが、JAFの支部になど行く機会はないし、JAFのレスキューを頼んだことすらないので「へぇー、こんなところに・・・」と思った。ちょっと辺鄙なところだ。

作成するのに2~3時間かかる、ということだったので翌日受け取りにする。料金は3,300円。たかが翻訳だが結構高い。次回からは自分で翻訳するから、認め印だけ押して安くしてくれないものだろうか。

翌日、でき上がった「日本駕照中文翻譯」を受け取る。交流協会とJAFのハンコとサインがある以外は、特にこれといって特徴はない。単に免許証の内容がA4の紙1枚に転記されているだけだ。これだったら、台灣の警察官だって、日本の免許証を見れば理解できる程度の事だ。なぜわざわざ翻訳文が必要なのか、理解に苦しむ。

日本駕駛執照適用台灣駕駛執照封照表

しかし、二枚目をめくってみてようやくこの必要性を理解した。

二枚目は「日本駕駛執照適用台灣駕駛執照封照表」と表題がついていて、台灣における車両区分において、おかでんの免許(普通自動車免許:8t以下の中型自動車まで運転可能)が台湾の免許制度のどれに適用するかが○×式で記載されていた。

たとえば、対比表の冒頭にある「聯結車」は「×」。解説を読むと、どうやらトレーラーの事らしい。日本だと「けん引免許」を持っていないとダメだな。納得。

専らおかでんが運転できるのは「小客車」と呼ばれるものらしい。小客車にも何種類かあるのだが、「座位在9座以下且在総重量3,500kg以下之客車」なんて説明されている。納得だ。しかし、同時に「3.5トン以下の車で、24席以下の幼童専用車」も運転できるらしい。オラ頼まれても絶対にやらねぇ。3.5トンの車に24人も乗れるのかどうかがまず非常に疑問だし、それだけの命の責任は持てん。まあ、台灣を観光旅行している限りはこんなシチュエーションは100%あり得ないが。

飛行機便が確定した。

14時成田発の17時(現地時刻)台灣桃園着となった。

台灣桃園國際機場の位置

17時かぁ・・・。入国審査や手荷物受け取りに1時間かかるとして、空港を出るのが18時。そこから台北に出ると19時。もしくは、空港から直接高鐵桃園駅まで移動して、新幹線で嘉義に向かったとしたら、20時くらいには嘉義に着く。翌朝早く關子嶺溫泉に行って帰ってくることは可能だ。うーん、どうしたものか。

未定のまま、台北に住むJennyにメールを送った。

「来週台灣に行くことになったんだけど、会う機会は無いと思うんだ、ごめんねー、また次の機会に」と。

JennyはFishの幼なじみで、過去2回彼女が来日した際に、日本を案内したことがある間柄だ。ちなみに1回目は「紅葉の日光」という定番を案内したが、2回目は「群馬県の法師温泉+JR土合駅」に連れて行くというマニア旅行編を展開した。このときの様子は「日本満喫お接待」に詳しく書かれている。

一応「友達(Fish)の友達」という位置づけではあるが、2回会っているし、そのうち1回は一泊旅行にも行っているので「おかでんの友達」とも言える。台灣に行くからには、一応ごあいさつしておかないと、失礼だろう。

幸い、メールでのやりとりは機械翻訳ができるので容易だ。だが、口頭では意志疎通はまともにできない。

すると、しばらくしてJennyからメールが返ってきた。「台灣に来るなら、都合つけて貴方たちに合流しますよ。日程教えて」と書かれている。おう、やる気満々ではないか。でもちょっと待って欲しい。おかでんが訪台するのは月曜日~金曜日、と通常の社会人ならまず休めない日程だ。しかも、台北在住な人が、台灣最南端の恆春に行くのは一泊でもしんどい。無理だろ、いくらなんでも。

翌日、こちらの予定表を送っておいた。まだ入国日の16日は嘉義にするか台北にするか美食の町台南にするか決めていないので「未定」としたが、それ以外は恆春と高雄泊だと書いておいた。ついでに、「いやー、台北泊だったら猫空(まおこん)や夜市に行きたかったんだけどねえ」なんて書いておいた。ちなみに猫空とは、台北南部にある茶畑が広がる山。茶畑を見下ろすようにロープウェイが通じていて、とても眺めが良いそうだ。なぜ「猫空」という名前なのかは不明だが、名前が可愛い。

すると、Jennyから「猫空にも夜市にも同行しますよ」という返事が。おい本気ですか。というか、日が暮れて真っ暗になった茶畑に行っても何も見えないだろ。どうするんだよ。

さらにJennyのメールは続く。「板橋(高鐵停車駅でもある)にある私のおばさんの家に一泊していけば?」と。

もうこの時点でおかでん大パニック。待て待て待て、台北に泊まる事は何となく既成事実になりつつあるが、「友達(Fish)の友達(Jenny)のおばさん」の家に泊まるなんて、どうなってるんだ。中国や台灣では親戚づきあいが深いこと、来客を非常にもてなす事は知ってはいたが、まさか自分にそれが適用されるとは思っても居なかった。びびりまくりで、後ずさり状態だ。

台湾客家風の豚足

その一方で、既に台灣に帰国しているFishからもメールが届いた。

「おかでんが萬巒(わんるぁん)に行くなら、高雄に居る友達に同行させるけど?」と。誰ですかそのお友達とは。

萬巒。客家(はっか)による豚足料理で有名な町。「地球の歩き方」には一言も触れられていないくらいなので、日本での知名度は皆無に等しい。屏東(ぴんどん)からバスで約30分のところにある小さな田舎集落だ。

この場所を知ったのは、前述の台灣観光局がスポンサーとなった「台灣再発見!」で「高雄から墾丁に移動する最中立ち寄った」と紹介されていたからだ。日本の豚足とは比べものにならないくらいの巨大な奴が、店頭でばんばんさばかれているのを見て大変に興味を持った。スゲー美味そう。ぜひここには立ち寄りたい。

萬巒の位置

「墾丁(恆春)に行く途中に立ち寄れるんでしょ?」

初回打ち合わせ時にFishには聞いていた。しかし、返ってきた答えは「全然ルートが違う」というものだった。実際、地図とバスのルート表を見比べてみたところ、高雄から墾丁に行くバスのルートからまるっきり外れている。萬巒に寄らなければ、高鐵左營駅からバス一本でFishがいる恆春に行ける。言葉の壁を意識しなくても大丈夫だ。しかし萬巒行きとなると、相当ややこしいことになる。

※一般的なバスルートは、東港を経由する「海沿いルート」をとる。屏東、萬巒、潮州がある内陸部は通らない。なお、内陸部を通るバスルートも存在するが、自動車専用道を疾走するために素通りされる。

いや、実際はそんなにややこしくはないのだが、なにせwebで情報量が少ないのと、繁体字のサイトを見るのがとても疲れるので参った。

そんな中、気を遣ってくれたFishからの「友達斡旋提案」。

台灣人ネットワークだなあ。その「斡旋される友達」もよく了承したもんだ。見知らぬ日本人のガイド役を買って出るとは。

人脈のパイプが多方面で、かつ太い。どうなってるんだ彼らは。

さすがにこれは丁重にお断りした。初対面の人と、現地で待ち合わせしてちゃんと会える自信が無かったからだ。もし双方どちらかにトラブルがあって、到着が遅れる等の事故があった場合、連絡のつけようがない。何しろ、お互い言葉が全く通じないからだ。相手に電話をかけても、状況説明が不可能。

また、もしうまく落ち会えたとしても、その後何をしゃべれば良いの?おかでんは中国語が全くできないので、無言になってしまうしかない。うわ、気まずい。

とにかく台灣の人は世話好きだ。どんどん提案をしてくる。

それはそれでありがたいのだが、言葉ができないなりに一人気の向くままに旅行しようと思っていたおかでんは大誤算。あちらさん(台灣の人)がそれを許してくれない気配だ。

さらに追い打ちをかけるようにFishから連絡。

「高雄に住む妹が家に泊まっていってくれって」

高雄でホテルの確保を検討していたこちらからすれば、ありがたい話だがちょっとびびった。

「いや、でも悪いし」
「妹は、来日したときにおかでんにはお世話になったから部屋を貸して当然だと思ってるよ」
「は、はぁ・・・、そんなものですか」

さすがにJennyの時のように、「おばさんの家」という誰やねんその人、という提案ではなかったのでこれは有り難く受け入れた。日本語ができるFishも同日同じ家に泊まるので、言葉には不自由しないし。

それにしても、知人が領海侵犯したら即座に拿捕、おもてなし尽くしというのがこの国の人の流儀なんだな。とても情が深い。

なお、このFish妹が来日した時には、諏訪にある毒沢鉱泉神乃湯に連れて行って一泊した。翌朝目が覚めたら外は季節外れの雪。人生初の雪を見たFish妹は歓声を上げて雪へと突撃していった。熱帯地方(台灣北部は亜熱帯地方だが、南部は熱帯地方に属する)の人は、雪を見ると発狂せんばかりに興奮する。

その翌日、さらにFishから提案あり。

「恆春のホテルだけど、親の知り合いが泊まっている部屋を貸してくれるよ」と。なんだなんだ、今度はホテルの部屋を貸す、だって?しかも親の「知り合い」?誰だよ、それ。

さすがに薄気味悪くなって、この提案はぜひともキャンセルしたかった。日本人は「遠慮」と「配慮」を美徳としている。来客をもてなすのは当然だが、もてなされる側はある程度のところで「遠慮」するのが礼儀だ。また、接客する側も相手が遠慮することを前提に、ある程度のところでおもてなしをストップする「阿吽の呼吸」がある。そういう文化に慣れてきたので、今回の様々な提案はさすがに気持ち悪い。有り難すぎるのだ。話がうますぎるのだ。

「さすがにそれはまずいだろ。宿泊約款に書いてあるはずだぞ。他人に部屋の又貸しはしてはいけないって。そもそも、外国人が宿泊する場合はパスポート提示が義務でしょ。勝手に他人になりすまして部屋に泊まったら問題だぞ。大体災害が起きたとき、宿泊名簿に名前が無いと・・・」

と、思いつく限り否定的なコメントを並べ立てた。いったんここで話は保留。

さらに翌日、Fishから連絡。

「親の知り合いが泊まっているホテルは、長期滞在用で一部屋購入したものなんだって。だから、知り合いを泊めても問題ないって」

要するに、リゾートマンションだ。リゾートマンションがホテルに併設されているというわけだ。だから、誰を部屋に入れようと、自由というわけだ。

これで完全にチェックメイト。逃げ道を失った。断る理由が無くなった。

あぜんとしているおかでんに対し、Fishからこんなメールが来た。

論語には、「有朋自遠方来、不亦樂乎」との言葉がある。このことわざの影響を受けて、中国、台灣の人は友達が遊びにきたらベストを尽くして、最大のもてなしをする。

論語。孔子の教えを弟子たちがまとめた書。日本の学校でも義務教育の中で教わるはずだ(あれ?違ったか?)。この言葉はおかでんも当然知っている。日本語風に読み替えると、「友あり、遠方より来たる。また楽しからずや」だ。

理解はできるが、それが具現化すると今回のような様々なおもてなし・・・むしろ、日本人的感覚からすれば「待ち伏せされて捕獲された状態」にすらとられるような対応になるのだな。すごい国だ。

Fishの解説は終わらない。

こっちの人は、お互いのプライベートにどれだけ邪魔しているかによって、親しいか親しくないかを判断する。逆に、おかでんみたいに「気を遣わせるのが悪いから、自分でなんとかする」という行為が、場合によって「私を友達だとは思っていないみたいだ」とか、「距離を置かれた。相手は付き合う気がないんだね」と考える人も少なくない。

ぐはあ。

これを見てしまうと、もう全てのお誘いを受けるしかないではないか。

申し訳ないやら、ふがいないやら、なんやらもう。

いや、相手はそんなことちーとも思っていないので、気にしなくて良いんだろうけど・・・。有り難くご厚意に甘えるけど・・・。やっぱねえ、凄く居心地悪い。

せめて、言葉が通じれば良いんだけどね。お世話になる都度、感謝の念を最大限表明することでそのご恩に報いたい。しかし、せいぜい「謝謝(しえしえ)」くらいしか言葉を知らないので、その願いは果たせない。それが、もどかしい。

結局、いろいろあったお誘いのうち、

Jennyのおばさん家宿泊→ホテルを自分で確保するので丁重にお断り
Jennyと台北の夜を観光→お言葉に甘える
萬巒に、Fishの友達が同行→丁重にお断り
恆春の宿はFish親の知り合いに借りる→お言葉に甘える
恆春の移動手段は、Fish家の車→お言葉に甘える
高雄の宿はFish妹の家→お言葉に甘える

という結果になった。ふぅ、疲れた。

なお、後ほどJennyと猫空の話をしていたら、「猫空のロープウェイは台風のせいで昨年10月から運休してるよー」とのこと。

おい、ロープウェイが運休しているのに「猫空行ってもいいよ?」って言っていたのか。

ただ、「猫空」というキーワードを持ち出したのはおかでん自身。つまり、「おかでんが望むならば、ロープウェイが止まっている上に、夜で真っ暗で、お茶のシーズンでもない、しょーもない猫空にも行っても良い」と考えたわけで、つくづく彼女たちのおもてなしは「本物(ホンマもん)」やと思った。

あ、あと一つ忘れていた。Jennyから別の提案があったのだった。

「墾丁には私の姉がいるので、墾丁を案内するよう連絡しておくよ!海鮮料理のお店に連れて行ってくれるはず」

と。うへえ、今度はおねーさん登場ですか。台北からの遠隔操作。

なんだか、台灣の至る所で「どこまで縁遠い人と接点が持てるか?合戦」が展開されているようだ。

今んところ、Jennyの「板橋のおばさんの家に泊めてあげる」が最強。「友達の友達の、親の、姉妹(←誰やねんこの人)」の家に「上がり込んで一泊」、しかも「言葉は全く通じません」だもんなあ。

「墾丁(及び恆春)滞在中については、Fishに予定を全て一任してあるんだ。僕からもFishに伝えておくけど、JennyからもFishに連絡してみて頂戴」

と回答しておいた。はっきり言って、責任丸投げだ。ああ弱虫だとも。びびりまくりだとも。

この一連の予定決定プロセスと現地滞在で気付いたのだが、台灣の人達に安易に「○○を見たい」とか「○○を食べたい」という希望を伝えてはいかんな、ということだ。

日本人的感覚だと、「いやー、せっかくだから○○にも行きたかったんだけどねえハハハ」と実現できないことを前提に、納得した上で語る事は珍しいことではない。しかし、その言葉を台灣人が聞くと、「なるほど、そういう希望があるのか」と真に受けて、日本人の想像を超える人脈と労力を駆使して実現に向けた努力をしてくれる。日本人からすると、「え、あの、いや、ありがたいし本望なんですけど、そこまでしていただけるとは想定外で・・・」と戸惑ってしまうのだった。なんて気さくな人たちなんだ。尊敬に値する。

さて。

台灣滞在2日目は、台灣最南端にほど近い恆春に大移動となる。

台灣島はサツマイモのような形をしているが、南東の部分だけカタツムリの頭のようにびょーんと伸びている。これが恆春半島。その先端に、屏東縣恆春鎮がある。

台灣の鉄道はシンプルな構成で、基本的には島一周の台灣鐵路(=国鉄)となる。これに盲腸線が何本かあり、民営の台灣高速鐵路(=台湾新幹線)と若干の観光用路線がある、という構成だ。

なお、恆春半島には台鐵は通っておらず、この半島に行くためには専ら高雄からのバスということになる。高雄からだと約2時間半の中距離旅行だ。ただしこのバスの便数が膨大。15分に1本くらいの割合で頻繁に行き来している。そんなに頻度が高いのだったら、鉄道を敷設すればいいのに・・・と思うが、Fish曰く、恆春半島は季節風と台灣山脈から吹き下ろす風が強烈で、鉄道の運行に支障が出るために無理なのだという。そんなに強風なのか?

いずれにせよ、汽車(バス)の便を調べないといけない。幸い、Fishは現在高雄のFish妹宅に寄宿しているので、電話が通じる。しかしもうじき恆春の実家に移動するので、そうなると連絡がつかなくなってしまう。いまのうちに合流時間をしっかりと決めておいて、当日はぴったりの時間に合流地点である恆春站(站=駅のこと)に到着しないと。

なおFishだが、台灣滞在時には「高雄と台北では使える」というPHSを通信手段としていた。何でPHSなんか持ってるんだ、それじゃあちょっと地方に移動したらすぐに使えなくなるじゃないか、と聞いたら、「基本料金がタダで、通話料金だけ請求されるから」だそうで。そんな便利なセルラーフォンがあるのか。

それ以前にアンタauの携帯持ってるでしょ。国際通話に対応していないのか。おかでんが持っているdocomo端末は何も設定しなくても大抵の国で通話可能だぞ。

しかし、それについては「国際電話に対応していない機種だから・・・」と。そりゃまた残念な話で。台灣に帰国することがあるんだから、今度買い換えるときはぜひ国際通話対応の機種にしてください。

話がずれた。とにかく、台灣の北、台北から台灣の最南端恆春への大移動だ。しかも途中は乗り換えがあるし、バスもある。萬巒で豚足という寄り道も計画中。こうなると、西村京太郎ばりの綿密な時刻表計算が必要となる。早速、16時に恆春站到着を前提とした逆線表を計算し始めた。

しかし、バス路線はとにかくややこしい。同じ路線を複数の会社が運行しているし、利便性のため街中をぐるぐる回るルートをとったり、部外者からするとさっぱりだ。仮に日本国内でも、地理感のない土地でのバス路線を調べるのは大変な苦労を伴う。ましてや、別の国となると、もうどうすりゃ良いのか。

高雄→墾丁の直行便(墾丁列車=Kenting Expressという)は比較的容易に情報収集ができた。しかし、おかでんの場合は直達ルートから外れた萬巒に立ち寄らなくてはいけない。ええと、どうすれば萬巒に行くことができるんだ?

調べる。ひたすら調べる。日本人の先達がwebで紹介してくれている記事が僅かにあり、大変に助かる。ありがたい。しかし、それだけではよくわからない。結局、台灣のサイトを直接調べまわり、バス会社のサイトを探り当て、ようやく萬巒行きのバスの時刻表、料金表を入手した。これで何となく「寄り道」に要する時間はつかめた。

しかしそれだけでは終わらない。バス停。バス停は何処だ?日本の駅前のように、都合良くロータリーがあってバス停があるわけではない。台灣の場合、站からちょっと離れたところにバスターミナルがある。しかも、運行会社ごとにターミナルが違う。だから、駅からどうすればバス停に行きつくかまで調べておかないと、アウトだ。「そんなん、現地について人に聞けばいいじゃん」と思うだろう。今思えばまさにその通りだと思うが、できるだけ自分で調べておかないと怖かった。一人海外旅行に慣れていないが故の、未熟さだ。

萬巒への寄り道ルートは分かったので、高鐵左營站から萬巒への最寄り駅への時刻表調べが必要だ。地球の歩き方には一応全線の時刻表が掲載されているのだが(掲載できちゃうくらい、台灣の鐵路はタイムテーブルがシンプルということだ)、情報が古い可能性がある。最新の時刻表を探さなければ。

困った時は大元に当たるに限る。「交通部台灣鐵路管理局」のサイトにつなげてみた。タロコ号がトップページに掲載されている。これはJR九州が博多-長崎間で走らせている885系(通称名:かもめ)をベースとした特急で、台鐵の秘蔵っ子。日立製作所製。秘境・太魯閣渓谷が近くにある花蓮行きの電車なので、「タロコ号」という愛称がつけられた。ただし、正式名称は相変わらず台鐵の特急代名詞である「自強号」。中国共産党に攻め込まれ、台湾に追い込まれた蒋介石の「いずれは大陸反転、中国本土に攻め込むぞ」という執念がいまだに息づいている。

このサイトでは、出発駅と到着駅を指定すると時刻が表示される「列車時刻査詢」と、「駅から時刻表」に相当する「車站時刻表」の二つがある。

「列車時刻査詢」の「進入本系統」というところをクリックすると、条件指定画面に到達する。「起程站」で出発駅、「到達站」で到着駅を指定。あと、何月何日の何時頃に乗車するのかも指定可能。

なお、日時指定だが、カレンダーに「民國98年」と書いてあっても驚かないこと。日本で言う「平成」のようなものだ。孫文が中華民国を建国した年が元年という扱いなので、2009年は「民國98年」だ。あと、月曜日が「一」、火曜日が「二」・・・と数字になっているのも特徴的。

注意が必要なのは、「選擇車種」という欄だ。ラジオボタンで3つのうちどれか一つを選択するよう促されるのだが、何を意味するのかがさっぱりわからない。その3つとは、「對號列車」「非對號列車」「所有車種」だ。

あれこれ試してみて分かったのだが、「對號列車」は特急・急行列車のみを表示、「非對號列車」は普通列車のみを表示、「所有車種」は全列車表示という意味だった。なるほど。

しかし困惑するのはそれだけではない。高鐵の終着駅である「左營站」は、台鐵の「新左營站」と繋がっている。その新左營から萬巒の最寄りである潮州站までで時刻表検索をしたら、該当する時間には一本も火車(=列車のこと)が走っていなかったのだった。そんな馬鹿な。超ローカル線なのか?

これにはからくりがあって、なぜか台鐵の時刻表サイトは「途中で乗り継ぎ」することを前提した検索ができないのだった。台鐵は、台灣第二の都市である高雄を終着/始発とする便が多いため、高雄を跨いでいく新左營→潮州は時刻表にヒットしなかったのだった。これに気がつくまで結構時間を要した。結局、新左營→高雄、高雄→屏東、屏東→潮州の3回に分けた検索でようやく全貌を掴むことができた。ああ面倒くさい。

結論としては、萬巒最寄り站である潮州へ行く便は少なかった。屏東止まりの列車が多く、乗り継ぎ待ちをしているのがかったるい。屏東から萬巒経由で潮州行きのバス路線があるので、ちと面倒だが屏東からバス→萬巒で豚足→潮州までバスで移動して台鐵、というルートに決めた。

ただ、潮州からは恆春方面に行くバスがない。できるだけ恆春に台鐵で近づきつつ、手頃なところで墾丁列車に乗り換えないといけない。これまた調べるのが難儀ったらありゃしねえや。墾丁/恆春に行った日本人のwebサイトは少ないながらも存在している。しかし、中途半端なところからバスに乗って恆春入りした人の例が少なすぎる。情報の多くが、高雄から直接墾丁にバスで訪れていたからだ。これでは参考にならぬ。

散々調べた結果、枋寮(ふぁんりゃお)という恆春半島の付け根にある站で汽車と火車がクロスすることが分かった。ここで乗り継ぎすることに決めた。

枋寮の位置

ただ、決めたのは良かったのだが、この枋寮は生しらすの漁獲が名物だという余計な情報まで仕入れてしまった。しらすのお好み焼きが美味だとか。ううむ、気になる。

萬巒で豚足を食べた後となるが、せっかくなので枋寮でもしらすお好み焼きを食する事に決めた。大丈夫か、おれの胃袋。

萬巒の豚足は、一斤(600g)からの提供になると聞いている。一人で600gの豚足なんて食えるんか、ほんまに。まずそこで心配なのだが、それに加えて枋寮のしらすお好み焼きだ。食い地獄だな。この日の朝食は抜きにしなければ。

※ちなみに台灣ではグラムという世界標準の単位も使うが、屋台や市場といった庶民の世界では「斤」「両」という単位が主流らしい。一斤=十六両。つまり、一両=37.5gとなる。萬巒の豚足は、一斤以上の販売となり、以降一両単位で増減可能。例えば「一斤十四両」なんて注文ができる。

ええと、16時に恆春着を予定すると、15時に枋寮発。となると14時に枋寮着でお好み焼き。13時に潮州。12時に萬巒・・・と逆算していき、ようやくこの日のタイムテーブルができ上がった。

[02月17日の予定(仮)]
06:50 起床、朝食
07:30 チェックアウト
08:00 台北站→(台灣高速鐵路111号)→09:36左營站
10:14 新左營站→(第3159次區間快)→10:50屏東站
11:20 屏東站→(屏東汽車客運314屏東忠心崙萬巒佳佐潮州線)→11:50萬巒
<猪脚を食べる>
12:50 頃萬巒→(屏東汽車客運314屏東忠心崙萬巒佳佐潮州線)→13:00潮州站
13:09 潮州站→(第139次區間車)→13:55 枋寮站
<枋寮散策&しらすを食べる>
15時頃 枋寮站→(墾丁列車)→16時頃 恆春站
<Fishと合流。ホテルに荷物を預ける。恆春見学、夕食>

完璧だ。というか、ここまで調べあげるのはちょっと執着しすぎだと我ながら思う。こういう性格だと、何か仕事などで失敗して人生足を踏み外すと鬱病になるぞ。適当に気を抜かないと。

台灣高速鐵路の時刻表

台灣高速鐵路。通称、「台湾新幹線」。

2007年1月に開業した、台湾西部を縦貫する新大動脈だ。

日本の新幹線「700系」をベースとした車両「台灣高鐵700T型」が採用されていて、日本人にとって感慨深いものがある。

高鐵の話題は、実際に乗車した時の模様を紹介する際にまた別途。

さすがに新しい路線、しかも民間企業のサイトだけあって使い勝手が良い。

日本語でもちゃんと表示されるし、ユーザーインターフェースも考慮されている。

さっきまで繁体字で書かれている地方のバス路線時刻を涙目になって調べていた身からすると、涙が出てきそうだ。あ、結局「涙目」も「涙が出る」も一緒か。

台北から左營までの全線を指定席(標準車廂という)で利用した場合、NT$1,490。2009年2月時点のレートだと、約4,500円ということになる。約340kmの距離でこの値段だから安い。速達列車だと96分で両駅を結ぶ。

ちなみにグリーン車に相当する「商務車廂」だとNT$1,950円。約6,000円だ。日本人の物価感覚だったら、この際商務車廂に乗ってみるのも面白い。しかも、商務車廂だとスナック菓子が供されるらしい。

面白いのは、時刻表のうち、標準車廂のところだけ、時間帯によっては「85折」や「65折」というアイコンが表示されていることだ。「85折」とは15%引きのことで、「65折」は35%引き、という意味になる。つまり、一日の中でも閑散期の時間帯は値引きますよ、ということだ。航空業界では特割運賃などでこういう柔軟な価格変動があるが、鉄道での事例はちょっと珍しい。

面白過ぎちゃって、変な事が起きている。15%や35%の時間帯は、なんと指定席と自由席の価格が逆転してしまっているのだった。どうしてこういう矛盾がまかり通るのか不思議すぎる。

なお、優恵(割引のこと)が適用されるのはお昼の時間だけ。2月17日の台北→左營は朝の便に乗る予定なので適用外だが、2月20日利用の左營→桃園だと35%割引適用の時間帯となる。すごくお得感ありでうれしい。

懷寧旅店のwebサイト

16時恆春站到着から逆線表を引っ張っていくと、08時台北站発の高鐵に乗らないといけないことが判明した。

となると、台北周辺でちょっと遊んでからさあ南下、というわけにはいかない。

当初、

「初日は淡水あたりに宿泊して、名物の魚丸湯(ゆぃわんたん。魚団子のスープ)を食べようか」
だとか、
「關子嶺溫泉に行くのが無理なら、その他の四大温泉である陽明山や新北投温泉に立ち寄ろうか」

なんて画策していた。いずれの地も台北の北部にあり、半日程度の時間があればむちゃなアイディアではない。しかし、台北に到着するのが19時過ぎ、翌朝は朝8時の新幹線、しかもその間にはJennyからの接待がある。まさに自由時間ゼロ。大人しく台北車站近辺の宿を確保した方が良さそうだ。

こうなると、「交通至便で、眠れれば十分。安宿歓迎」となる。台北車站周辺の安宿を探してみることにした。

海外旅行で宿を確保する際に毎度お世話になっている、「アップルワールド.com(現:ホテリスタ)」。そこで2月16日の宿を探してみてびっくりした。おわっ、既に受付が終了しているではないか。

しまった。直前の予約受付はやっていないのか。

とんだ大失態だった。ここ数日、あまりに繁体字のサイトを凝視しすぎていたので、昨日一日は「完全休養の日」にしていたのだった。その1日の遅れのせいで、様相は完全に一転。残された時間はあと4日。こりゃいかん、直接ホテルのサイトからネット予約するしかない。

この辺りの動揺っぷりは、旅慣れた人からすると「馬鹿だなあ、その程度のことで。現地で探せばいいじゃん。カタコトの言葉でもなんとかなるだろう?」と思うだろう。しかし、なにせこちらは人生35年ぬるま湯で育ってきたウブなコネコチャン。言葉が通じないという世界がもの凄く恐怖だった。日本の宿だったらこうも動揺はしないのだが。
※実際、この文章を執筆している俺様は一皮ズルむけまくりな状態であり、今となっては「ありがとう、若かりしオレの想い出。」と哀愁たっぷりに語れるようにはなった。

慌てて口コミ情報を片っ端からあたり、安くて便利な宿を探す。行き着いた先は、華華大飯店(Hotel Flowers)。・・・待て、ここは前回台北に来たとき泊まったぞ。安全牌と言えるが、面白みに欠ける。ただ、ネット予約ができ、価格が安いので安心だ。最後の保険に取っておく。

そのまま調査を続行したら、華華大飯店よりもさらに站に近いところで安宿を発見。懷寧旅店(Keyman’s Hotel)。「飯店」ではなく「旅店」なので、若干格が下がった位置づけになるようだ。でも、そんなのどうでよい。連れ込み宿に間違って男一人ちん入、という泣けてくるシチュエーションでなければ、許す。

ネット予約画面

予約画面のカレンダーを見ると、ギリギリ自分が宿泊する2月16日の分まで予約を受け付けていた。現時刻は22時。あと2時間遅かったらネット予約も締め切られるところだった。あぶねぇ。

慌てて予約の手続きに入る。なあに、宿泊予約なんて書くことぁ大してなかろう。ちゃっちゃと終わらせてやるぜ。

懷寧旅店の料金表

さすがにこのホテル、日本語表記の画面は一応あるものの、予約画面までは日本語化されていなかった。まあ、そこまですると予約管理システムがややこしくなるのでこれは仕方がない。ただ、予約画面は表記が英語と中文とのチャンポン表記なので理解に困ることはない。

ええと、シングルルームのことは中文だと「雙人歐式套房」というのか。面白いな。多分、「歐式」というのは「ヨーロッパ式=ベッド形式」という意味だろう。

で、ツインルームはというと、「雙床歐式套房」か。あれ、「人」が「床」になった。

・・・あっれえ?ちょっと待った。これ、「人」の方、英語表記が「シングルルーム」ではなく「スタンダードルーム」になっているぞ。待て、怪しい。

慌てて「雙人」という言葉の意味を辞書で調べてみた。その結果、「二人」という意味であることが判明。

「スタンダード」で二人って何だよ、これ。この宿、シングルルームが無いじゃん。というか、「スタンダード」な部屋が「ダブルベッド」ってどういうことだ。

怪しいなあ、連れ込み宿の可能性が出てきた。

台灣の宿事情について調べてみたら、「安い宿は連れ込み宿として使われることが多い」という記述を発見。むう。

そういえば、ホテルのロゴには「懷寧旅店」の両脇に「住宿」と「休息」の文字が。この「休息」という意味は・・・?やはりそうなのか。

まあ、どうでも良いですけどね。あんまり深く考えない事っすよ。でももしそうだとしたら、台北のど真ん中、つまり日本で言ったら丸の内とか八重洲にその手の宿があるということであり、驚く。

激しく動揺しつつ、「房型(Room type)」一覧を見ていたら、「和風套房(JAPANESE ROOM)」なるものがあることに気がついた。面白い。まさか畳敷きの温泉旅館風になっているとは思えないので、どれだけ勘違いした「和風」なのか見てみるのも一興だ。幸い、スタンダードルームと同価だったので、こちらを選ぶことにする。

お値段は、ネット予約かつ平日泊ということもあって、NT$1,720。約5,200円だ。立地条件からすると格安としか言いようがない。しかもこれには5%の税金と10%のサービス料込み、なおかつ朝食付きだ。最高じゃないか、台灣。

もし、この部屋に二人で泊まったら完全割り勘になるので、一人一泊2,600円となる。台灣の物価はどうなっているんだ。日本人の財布に優しすぎるぞ。

懷寧旅店の地図

ホテルの地図を印刷しておく。

ここ2カ月くらい、ひたすらネットブックに依存しまくりの生活を送ってきた。常時持ち歩き、何か分からない事があったらすぐにネットブックで調べる。そして、書き残しておくことがあったら秀丸エディタで書き留める。

しかし、海外ではそのようなフットワークは通用しない。もちろん可能だが、コストやら手間を考えたら、「必要資料は全部紙に印刷しておく」というローテクな方法が一番だ。

さてホテルの地図だが、「懷寧街」という通りに面しているから「懷寧旅店」という名前なんだな。前回台北訪問時に宿泊した「華華大飯店」とは道路を挟んで目と鼻の先。

忠孝西路一段の通りを挟んで、台北車運站。要するにバスターミナルだ。桃園國際機場行きをはじめ、台中や台南といった長距離バスがここを起点とする。

そしてその隣が台北火車站。台灣では列車の事を「火車」と呼ぶ。バスの事は「汽車」だ。大変に紛らわしい。「火車」は恐らく蒸気機関車時代の名残なのだろう。

そんな豆知識は置いておいて、「台北火車站」に描かれているアイコンは、なぜか0系新幹線だった。お懐かしゅうございます。昨年、その役目を終え退役した0系をここで見かけるとは思わなかった。というか、台灣の人、これを見て「あ!新幹線だ!」って分かるのか?

ただホテルの予約はこれで一件落着とはいかなかった。しばらくドタバタが続く。

まず、順調にいくと思った予約画面がよくわからない。こんなシンプルなところで躓くとは思わなかったので、意外だった。

房型:JAPANESE ROOM
住宿日期:2009-02-16 19時30分 左右
住宿天數:1晩
退房日期:2009-02-17
房間數:1間
應付總價:NT$1720元 信用卡
姓名:おかでん
身份証號:(パスポート番号)
電子信箱:(おかでんのメールアドレス)
聯絡電話:(おかでんの電話番号。携帯番号を記載)
地址:(おかでんの住所)

まで入力するのは造作なかった。もっとも、海外素人丸出しで、電話番号の国番号を「+81」ではなく、間違えて「+82」と書いてしまったが。82番だったら、韓国に繋がってしまうぞ。ダメじゃん。

そこまでは良かったのだが、次に「信用卡授權書」なるものの記述が出てきたのだった。なんだこれは。別フォーマットに、上記内容と同じ事をわざわざ入力させ直すようになっている。プルダウンじゃなくて、タイピングによる入力。かったりぃ。

そして、クレジットカード番号の記入欄もある。

繁体字の説明書きをじっくりと読むと、「このフォーマットにボクが記載したクレジットカードで宿代をデポジットしちゃってください。どうぞどうぞ。たとえバックレて宿に来なかったとしても、お金はきっちり引き落としていいからね。じゃあね、後はよろしくー」というもののようだ。「信用卡」はクレジットカードの意味、「授權書」は委任状を意味するらしい。

おっかねえなあ、もう。

まあ、一理あるのでそのフォーマットにもう一度宿泊日やら何やらを書き加えて、送信。ふう。

数分後、メールが届いた。おっ、宿の手配完了の合図か。

開いてみると、送信元:おかでん、送信先:おかでん、で送られたメール。要するに差出人不明。そして内容は先ほどの予約内容だった。しかも、せっかく手間暇かけて入力した「信用卡授權書」の欄はすっぽりと記述全てがカラになっているではないか。何だ、これは。

メールのタイトルは「懷寧旅店-線上訂房」。

その委任状フォーマットの上下には、宿泊日や部屋名などの記述がちゃんとある。予約が取れたんだか、入力不備で追い返されたんだかさっぱりわからない。

メールの表題である「線上訂房」とは、「ネット予約」の意味。ここからも、予約完了かどうかを伺えない。

おい、webサイトの予約フォーマット画面をそのままメールで送るのはやめろ。せめて何か一言添えてくれよ。どうすりゃいいんだ。

こっちとしては、クレジットカード番号を記述してweb予約したので、スゲー心配じゃないか。しかも、肝心のクレジットカードに関する記述の欄が空欄に化けてしまっているし。

やきもきしながら数時間待機していたら、今度はちゃんと懷寧旅店名義でメールが送られてきた。びっくりさせるなよ、もう。

ただ、そこに記載されていた英語の文章を読んで、またもやびっくり。それほど難しい文章ではないので言いたいことはすぐに理解できたのだが、書かれている内容が理解できなかったからだ。

それによると、おかでんを悶々とさせた「信用卡授權書」に貴方の直筆署名を入れてFAXもしくは資料をスキャンしてその画像データをセンドバックしてくれ、と書かれている。わざわざ直筆サインを求めるのか。まあいい、そこまでは許す。

その後で、ひるんだ。

with a photocopy of your credit card( both the front and back side )

と書かれていたからだ。要するに、クレジットカードの表と裏をコピーして、それも一緒に送ってくれということだ。そこまで求めるのか?やりすぎだろ、おい。

ネット決済をするだけだったら、クレジットカード番号と有効期限、名義人名で事は足りる。しかしそれじゃ信用できねぇ、ということだ。署名だけならまだしも、カードをコピーしろとは・・・。初体験だ、こんなの。

しかも裏面もよこせ、とはあんまりじゃないか?セキュリティコードが書かれているので、あまり見せたくないのだが・・・。

心配になってホテル予約で同様の事例があるかどうか、ネットで調べてみた。すると、同じように海外のホテル側から要求されてさあどうしましょう、と困っている人が結構居ることがわかった。おお、同士よ。

それらの意見を集約すると、「やはり見せるのはあまり好ましくない。ホテル側に、クレジット番号と有効期限だけで対応できないかお願いしてみるのが吉」となるようだ。あと、安ホテルだと今回のような過剰な要求をしてくる事が多いので、心配ならばある程度のクラスのホテルにするか、旅行代理店でバウチャーを発行してもらった方がよろしい、という事だった。

必ずしもアウトなわけではないが、リスクもあるから気をつけてねー、というわけだ。ううむ。

この話をFishにしたところ、「懷寧旅店には友達がバイトしていたことがあるので、遊びに行ったことがある。特に怪しいホテルではなかった」という返事が返ってきた。その言葉を聞いて安心した。やや不安ではあるが、先方の要望通り資料一式そろえて送った。

さすがにメールでの送信はやめておいた。情報漏洩したらたまらん。面倒でも、FAXだ。

すると3時間程度で先方から「受け取りましたよー。金融機関に照会かけるから正式なブッキングはもう少し待っててねー」という連絡があった。「3~5日かかるけどよろしくー」だって。待て待て、そんなに待っていたら宿泊日を過ぎてしまう。それは困る。

結局、半日後に「訂房確認單 Confirmation List」なるメールが届いて、無事予約完了。ふう。もう、ヒヤヒヤしたよ。

予約手続きをしたのが木曜日夜で、予約完了したのが金曜日夕方。土日になってからの手配だったら、「金融機関に照会かける」のが間に合わなかったと思われる。ギリギリセーフだった。

足ツボの本場だってさ

17時に台灣桃園國際機場着、18時入国、19時台北車站着、ホテルチェックイン。これが初日の流れだ。

その後、せっかくだから20時から整体を受けることにした。

安ホテル検索の最中、日本人が台北旅行をする際には必ず見るであろうwebサイト、「台北ナビ」を見ていたのだが、そこで整体がどうにもこうにも気になったからだ。

言うまでもなく、おかでんは首と肩、そして腰が非常に凝る。特に首が酷い。そのために体調を崩しやすく、2泊3日で草津湯治企画(「草津二十番勝負」)を決行したくらいだ。整体、金があるなら毎日でも受けたいくらいだ。

幸い、台北車站の近く・・・即ち投宿するホテルの近くに、日本語が通じる上にゴッドハンドな治療院があるという。台北ナビの口コミによると、「かなり強烈にいたぶられた」だとか「首が360度ねじれるくらいゴキゴキ回された」(注:おかでんによる相当な脚色あり)という記述が目に付く。いいねえ、そういうキッツいの。最近の日本の整体は、「ゴキゴキならすのは良くない」という考えが主流となり、「痛くない整体」を標榜するところが大半だ。その通りだと思うが、でもおかでんクラスになると「骨が曲がってはいけない方向に曲がる」くらいゴキゴキ言わせて貰いたくてウズウズしている。まさにうってつけではないか。

早速そこに予約を入れる。台北ナビのサイトから予約ができるので簡単でありがたい。しかも、ぐるなびみたいに割引クーポンもある。

しばらくして、台北ナビから「予約が取れました」という連絡があった。20時から1時間。オーケー、台灣の初日は体をぐにゃぐにゃにしてもらおう。

整体の予約を入れてしまったために、後ろに押し出されたのがJennyによる夜市見学だ。合流時間は21時30分になってしまう。週頭の月曜夜に、バリバリのビジネスマンに対して21時半集合を呼びかけるのはさすがに気が引ける。ホントにこれで先方にお願いしちゃって良いのだろうか。

心配になって、まだ高雄にいたFishに連絡してみた。「こんな遅い時間だけど、失礼じゃないかな?」と。そうすると、「気にしなくていいと思うよー」だって。ホントかよ。「「いやだって、台灣の人は宵っ張りだとは聞いているけど、でも翌朝も仕事があるでしょ。台灣の社会人ってそんなに夜遅くまでうろうろしていて大丈夫なの?」と念押ししてみたら、「でも私台灣の社会人、知らないし」だって。そうでした。アナタは学生時代から日本在住だからな。そりゃそうだ。

で、おそるおそる「整体の予約、入れちゃったんですけど、21時半集合でいいっすか」とJennyに聞いてみたら、即答で了承された。人がいいなあ。

ただ、正直、この時点でおかでんはJennyと会う事に若干のためらいがあったのは事実だ。過去2度も会ってきたし温泉に一泊すらした仲ではあるが、その時はFishという媒介者兼通訳がいたので問題なかった。そして、「日本」という自分のホームグラウンドだったので、言葉が通じなくても全然余裕だった。「台灣からわざわざ来てくれてありがとう。そりゃ日本語できなくて当然だよね、いいよボディランゲージでも何でも」って感じだった。

それが今や完全に立場逆転。アウェーで、言葉が通じない相手とマンツーマンで一緒に時間を過ごす事がこんなにも腰が引けるとは。なんてへたれなんだ、自分。

相手は英会話ができるので、意志疎通は英語となる。しかし不肖おかでん、英語と決別して早十余年。構文どころか、単語をほとんど忘れてしまっていた。英文なら読めばなんとなく理解ができるが、会話は全然ダメ。さあ困った。

こうなると、非常に屈辱的である。中国語はしゃべれませーん、といっても別に悔しくはないが、英語がしゃべれませーん、ってなると馬鹿の象徴のようで卑屈な気分になる。

だから、カタコト英語をしゃべるのもなんだかいやなんである。

もうこうなったら筆談と電子辞書しかない。

意を決して、中国語強化Ver.の電子辞書を購入した。ちゃんとボイスが登録されていて、言葉をしゃべってくれるやつだ。3万円ちょっとのお値段。高くついたなあ。

こんなので会話が成立するとは思えないが、せめて基本の言葉くらいは覚えておきたい。

そんなドタバタを出発前日深夜まで繰り広げ、ようやく当日を迎えたのだった。