おもてなし三昧な世界【台湾南部滞在】

この連載は旅行記ですが、旅慣れた方からすると非常に低次元なところでおかでんが悶々としています。海外に不慣れであるキャラクターであることを前提にお読みください。
また、文中、頻繁に「台灣では・・・」とか「台灣人気質は・・・」といった表現が出てきます。しかし、日本人全てが同一でないのと同じで、台灣の人や文化は多種多様です。「おかでんが見た限りでは」という狭い範囲を前提として書いていることをあらかじめご了承ください。

おかでん、2月にまとまった休みが確保できそうな気配あり。せっかくだから、「家でごろ寝」「まだ見ていない映画を一気に見る」なんてのはやめておきたい。積極的に外に出るべきだ。かといって、ちょうど今がシーズンであるスキーを倒れるまでやり続けるのもいまいちな案だ。スキーそのものは好きだが、「まとまった休み」がとれるのは俺様一人だけ。他に賛同者がいない中、一人で延々滑っているのは相当に寂しいものがある。

そんなわけで、福井県にある曹洞宗大本山・永平寺の門を叩き修行させて貰うことを真剣に検討した。3泊4日の修行で、朝3時半起床という「体験修行とはいえ容赦しねえぞコラ」という内容だ。これくらいキッツい方が、今のたるんだ自分には適している。キツいが故に、アドレナリン出まくって逆に快感なのではないか。そんな期待さえちょっとあった。

アワレみ隊の隊員に「永平寺で修行するけど、誰か賛同者います?」と隊員限定MLで聞いてみた。すると、「その後の越前蕎麦食べ歩きツアーになら参加する」と言ってくれる人はいたが、さすがに3泊4日の修行+蕎麦食べ歩きに日程を割ける人は居なかった。まあ、そりゃそうだ。

どうしたもんかなあ、と思っていたところ、Fishが2月の中旬に台灣に帰国するという。いっそのこと、そっちに便乗させてもらおうかしら。だんだん「極寒の寺で瞑想」から「南国でパラダイス」の方に考えがスライドしていった。

こういうのは、一度流れがつき始めると一気に加速するものだ。「実際に台灣に行こうとすると、何をいつまでにどう手続きすれば良いか?」なんてシミュレーションしていくうちに、すっかり台灣行きが既定路線のようになってしまった。

Fish。仮にこのサイトに掲載予定である全記事が文章化され、公開されていたら3年近く前に初登場していた人物。しかし、その全ての記事が未執筆のまま放置プレイされているため、結果的に今回の連載(2009.02連載開始)が初登場ということになる。

Fishはアワレみ隊の天幕合宿に参加したことはないので、隊員ではない。隊員になるためには、たき火を華麗に、高く、そして長距離飛ぶ度胸試しが必須。しかし、アワレみ隊企画に参加したり、おかでんの個人的思いつき企画に参加してはいる。

彼女は日本人ではなく、台灣人だ。知り合ったきっかけは、この「へべれけ紀行」に掲載されている「スペシャルオリンピックス・冬季世界大会長野」。Fishはその時、SOチャイニーズタイペイの通訳ボランティアとして参加していたのだった。大会期間中はおかでんとの業務の違いから全く接点が無かったが、その後知り合う機会があり今に至る。だから、足かけ4年近くの友人だ。

Fishがこの時期に帰省するのはちょっと意外だった。「あと2週間早く帰省すれば、春節(=旧正月。中華圏の国は、太陰暦を採用しているので、正月はだいたい1月末~2月中旬になる)に間に合うのに」と思ったからだ。しかし、Fish曰く、「仕事が逼迫している」ということと、「春節中はお店が閉まっているので、買物ができない」ということを理由に挙げていた。確かに、日本よりも物価が安い台灣。何か欲しいものがあったら、母国で買った方がお得だ。しかし、お店が閉まっている春節中はそれができない。また、日本語が達者とはいえ、病院に行く場合は細かいディティールを日本語で伝えるのは難しい。やはり、このような場合は母語の方が都合がよい。だから、不要不急な病気でなければ、台灣で受診した方が楽だし確実だ。

まあ、それ以前に彼女が参画しているプロジェクトがデスマーチに突入しかかっていて、正月返上、土日返上で仕事をしていたという実情もある。春節時は忙しさがピークだった。帰りたくても帰れない状態だったらしい。ようやく八甲田山死の行軍が一段落したところで、ちょうどタイミング良く帰省時期になったというのは運が良かった。

慌てたのはおかでんの方だ。なんとなく台灣行きの話が浮上してきたので、なんとなくパスポートを取り出してみたら有効期限が今年の4月。大至急パスポート更新の手続きになった。台灣には、パスポート有効期限が3カ月以上余っていないと入国できないからだ。

パスポート更新に要する事務手続き時間は7日~10日。渡航予定の2週間前になってからの有効期限切れ直前発覚だったので慌てたことこの上ない。パスポート番号がはっきりしないと、飛行機のチケットすら入手できないし、ホテル予約もできないので八方ふさがりだ。

結局、「永平寺に行くかもしれない」と思って散髪していなかったぼさぼさ頭のままで慌ててパスポート写真を撮影した。もし永平寺に行くなら、丸坊主にするつもりだったから、正式決定するまで散髪を延期していたのだった。このもっさりした髪の写真が、今後10年間パスポートとして使われると思うとなんとも憂鬱だ。

Fishと具体的に台灣行きについて打ち合わせできたのは、2月7日のことだった。Fishが台灣に帰国するのが11日なので、ギリギリの日だ。それまでは、全く何も検討されていなかった。

何しろ、Fishにとってはあくまでも「久々の帰国」。彼女の実家滞在や親戚・友人づきあい、買物をおかでんの訪台で邪魔しちゃいけない。「もし空いているお時間があったら、少しのお時間で結構なので台灣を案内してくれませんか」というスタンスなのが、今回のおかでんだ。とはいえ、おかでんは台灣語、台灣國語(ほぼ北京語)はおろか、英語すらまともにしゃべることができない。外国で単独行動は難しい。Fish頼みのところがある。

バックパッカー系の旅慣れた旅行者は、「そんなもん現地に行けばなんとでもなる」という余裕があるだろう。しかしおかでんはこれまで、ひたすら国内に閉じこもってきた。そしてたまに海外に行くとしても、ガイド付きのツアー旅行であったり、ジーニアスのように英語が堪能で外国人コミュニケーションに度胸がある人間が同伴した旅行しか体験がない。海外での一人行動には、相当足がすくんだ。

Fishの実家は、高雄(かおしゅん)からさらに南に向かった台灣最南端の場所、恆春(へんちゅん)にある。

高雄の位置

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