菊池珈琲を後にしたわれわれは、また農作業びとになるためにハタケへと向かった。道央自動車道をひたすら東へ。目指すは、千歳。
地図で見ると、札幌から千歳って近いんだよなあ。何度見ても、そう思う。しかし、縮尺がほかの日本とはぜんぜん違い、どうやっても慣れない。だから、「まだ着かないの?」と車を走らせていて思うことしばし。
道央自動車道は北海道の中核都市・札幌と新千歳空港を結ぶ重要な路線。なので、高速道路の脇にある野立て看板などは結構ビジネス要素の強い広告が多かった。
この日も、日帰りでハタケに参加する!というつわものが新千歳空港にやってくるという。その人をピックアップ後、ハタケに向かうことになった。昨日も1名、そんな人がいたが、今日もまた同じ。すげーな、北海道って日帰りで行く場所じゃないぞ?飛行機で一発でいける場所とはいえ。しかも仕事ならともかく。
なんで日帰りなの?とその人に聞いてみたら、お店をやっている商売人で、連休を取るというのが難しいのだという。だからせめて日帰りで参加なんですー、とうれしそうに言う。いやいやいや、連休が難しい、というところまではよーく理解できたが、その後「日帰りで北海道に行く」という思考回路に結びつくところがわかんねーよ。すごいな、このモチベーション。せっかくだから、今日はがっつり働いてもらおう。
せっかくの道央自動車道だけど、なぜか空港と直結していない。空港にアプローチするためには、いったんインターを下り、下道をしばらくチンタラ走らないといけない。何でこんな中途半端な作りにしたんだ?と思うが、たぶん「下道だって大して信号なんてないし渋滞知らずなんだから、いいじゃん。」ということなんだろう。さすが北海道。
二日目のハタケ到着。
「全部終わるまで帰れないからね?」
と井川さんにせかされ、われわれはブリーフィングなどほとんどなくすぐに着替えてハタケへと向かった。今日は快晴。
いやあ、それにしてもあらためて見ても広い。で、この広い大地のうち、種まきが済んだのはまだごく一部であるということを考えると先が思いやられる。
昨日、必死で立てた花豆用の手竹が見える。こうやって見ると、あれだけ苦労した割にはハタケのごく一部に過ぎないことがわかる。なんて人間は無力なんだ。というか、花豆、手間がかかりすぎだ。もっと楽させてくれよ。けしからんな、つるを巻く植物ってのは。ちゃんと自分で自立して育ってくれよ。
と、植物に文句を言っても始まらない。人間様の都合で勝手に飼育し、勝手に収穫して食べているんだから。美味いんなら許す。
ハタケの敷地いっぱいに手竹を植えるような計画が当初はあったが、どうもそれは無理っぽかった。手竹の絶対数が足りないからだ。本数自体もさることながら、長さが足りない短いものや、痛んで途中で折れているものなども混じっていた。
手竹がなくなるまでハタケに埋め込みまくろう、ということでこの日の作業はスタート。
今日は分業制にして、手竹をハタケの最前線まで運ぶ人、手竹同士の間隔を計測する人、手竹を実際に刺す人、手竹を地中深くまで差し込む人、そして手竹を縛る人と分担したらやたらとスピードが上がった。
写真上:昨日まで使っていた、手竹を縛る紐。昨年も使ったらしい、お古だ。はさみで切ったりしなくて良い分楽ではあったが、やっぱりぐるぐる巻いて縛るのには若干手間がかかる。
それだけでなく、途中でこの紐が足りなくなってしまった。日ごろの風雨に曝されていると痛みやすいものらしく、何年も使い回しがきくわけではないのだろう。
その結果、今日ハタケに顔を出してみると、新兵器が用意されていた。手竹を縛るゴム(写真下)。フック状の形と輪ゴムを足したもので、手竹をこれで束ねて、輪の部分にフックをかませばそれで縛り上げることができる仕組みだ。これは楽だ!
作業が一気にはかどったのは言うまでもないが、それにしてもこのシンプルなゴムでさえ、数が馬鹿にならない。1つ1つは安いものだとは思うが、なにしろ数が多いのでコストは相当なものになっているはず。つくづく農業ってのはお金がかかるものだ。これで天災などで収穫が台無しになったら、泣くにも泣けない。
そういえば、ハタケがこの千歳に移転してくる前には帯広にあったのだが、鹿に作物を食い散らかされてひどい目にあったという。サラリーマンというのも決して楽な仕事ではないが、農には農の大変さがあるのだなと身をもってわかる。
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