大豆の種まきが終わったら、引き続き花豆のハタケ作りに取りかかることになった。
花豆?群馬県に行けばいやというほど見かける巨大豆だが、北海道でも作ることができるのか。
花豆はデカいが故に豆独特のほくほく感というか、もっさり感が強い食感だ。それ故に、嫌いな人は嫌いだと思う。僕も、あんまり美味い食べ物だとは思っていない。でもそれはそれ、これはこれでハタケはちゃんと作らなくちゃ。
そのためにはまず、「手竹」と呼ばれる竹の棒をトタンのトーチカから運ぶことになった。やたら長い竹で、地面に突き刺せるように片方の先はとがっている。どかっと束ねてあるので、運ぶのも一苦労だ。これを現地常駐のマメヒコスタッフ一人でこなすとなると涙が出てくるだろう。やっぱり、我々のような「お手伝い」が必要だ。
全員で力を合わせて、膨大な数の手竹を運ぶ。参加者は若い女性が多いので、唯一のおっさんである僕が頑張らないと。
手竹運びだけでも四苦八苦している、軟弱者の我々を尻目に、井川さんはどんどんハタケを耕していく。
「ほら!土が乾いちゃうよ!」
という無言のプレッシャーだ。結局今回のハタケ遠足では、公式な形での休憩時間は2日間ともに一切なく、参加者は時間いっぱいひたすら農作業を続けていた。水分をとりたけりゃ、自分で持参した飲み物をハタケ脇でちょこっと飲む、程度のことだけだ。
「すげえな、井川さんは容赦しないぞ」
後で僕らは、徹底したその農作業っぷりを笑いあった。遊びに来たわけじゃないし、むしろ望むところだが、だとしても容赦ない。
さて、ここからは修行のお時間です。
ハタケ脇に運び込んだ膨大な手竹を、等間隔に地面に突き刺していくことになる。適当に、じゃないぞ。当たり前の話だが、等間隔に、だ。
今回ばかりはトラクターとかごんべえといった文明の利器は存在しないので、人力でやっていくしかない。
手竹は地中数十センチまで突き刺し、そこから45センチ間隔でハタケの端まで延々と突き刺し続ける。45センチを測るため用の棒が用意されており、ちょうど45センチのところに黒いビニールテープが巻いてあった。こいつを地面において、45センチを測りながら手竹を刺していくことになる。
柔らかいハタケの土なんだから簡単だろう、と思ったが、案外そうでもなかった。
竹自体がしなるので、ぐっと押し込む力が逃げる。使い込んだ竹でもあるし、いつバキッと折れるかわからずヒヤヒヤしてしまい、全力で刺すのが難しかった。また、確かに土は軟らかいのだが、手竹が風雨に耐えられるだけの深さまで押し込むとなるとかなり硬い。特にハタケの端っこは耕されが甘い上にトラクターが向きを変える場所で踏み固められているため、全体重をかけても手竹が奥まで刺さらず苦労させられた。
こうしてヒイヒイ言いながら地面に突き刺した手竹3本を上で束ね、三角錐状態にしてできあがりだ。花豆は成長するとアサガオのようにツルを巻くので、こういう支えが必要となるのだという。
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