屯田兵になろう【北海道ハタケ仕事1】

「まだこっちにもハタケがあるから」

と、ハタケの端を通って藪をすり抜ける。藪、というか防風林のような木が生えているところで、その足元には白い花が咲いていた。

「これはハスカップ」
「おお!これがハスカップですか!」

初めて見たのでやや興奮してしまう。北海道を旅行すれば、地元名物としてハスカップの名前はよく聞く。・・・けど、それがなんだったかあんまり覚えてない。実はこれまで食べたことも、見たこともなかった。梅酒みたいにアルコールに漬け込んで飲むもの、という印象があったようななかったような?

調べてみたら、夏になるとブルーベリーのような実をつけるのだという。不老長寿だとかなんとか言われることもあるようだが、その割には雑草としてこうやってハタケの脇に生えているのを見ると、なんだかワクワクはしないものだ。

「小さな実がなるんだけど、種を取り除いたり面倒なんだよ。きりがない」

と井川さんはそのハスカップの花を一瞥する。

「夏の遠足の時は実がなってるかもしれないから、そのとき暇ならハスカップを収穫してもいいな」

と独り言を言っていた。

防風林のような細い帯状の林を超えると、そこもまた広大な大地で、ハタケの一部となっていた。といっても、この見渡す限り全部、ではなく、奥に見える青いドーム状の建物のところまで。さっきがメイン会場だとしたら、こっちはサブ会場という位置づけか。

いやあそれにしてもデカい。でも、これでも北海道じゃ、箱庭みたいに狭い部類に入るのだというからやっぱりスケール感が違う。さらに言うと、アメリカなんてのはその北海道の農業規模より遙かにデカい規模で、ガンガン機械化して作物をこしらえているわけだ。そりゃあ日本の農業が対等に渡り合えるわけがない。

青い建物を逆側から見たところ。中には農機具が収納されていた。トタンを貼り合わせたシンプルな建物ではあるが、やはりこれも規模がでかい。トーチカのようだ。そうか、農機具ってのはこういうところに入っているのだな、と当たり前の事にも驚かされる。知らない事だらけだからだ。

都会生まれ都会育ちの僕なんて、農機具ってのは「100人乗っても大丈夫!」の倉庫みたいなのに入っているもんだとばかり思ってた。でも、考えてみりゃトラクターとかその他もろもろ大きなものもあるわけで、それらを風雨、特に北海道なら雪から守るためにはこの規模のサイズは必要だ。

ちなみに扉は付いていない。フタができない構造になっているが、そこまでは気にしなくて良いらしい。台風がほとんどやってこない北海道だからだろうか?

ひたすらでかい土地。ああ、こういうのを「大地」と言うのだな、とあらためて思う。これまでも北海道は何度か訪れたことがあるが、観光客目線だったので「おおすげえすげえ」で終わっていた。しかし、いざ目線を落とし、暫定的とはいえ農家目線になると、この果てしない広さに圧倒される。

なお、写真に写っているのはお隣さんちの畑であり、今回我々の対象ではない。

こんな景色の中にいれば、さぞや心が落ち着くでしょう・・・と思われるだろうが、案外そうでもない。空港からさほど遠くないので、ひっきりなしに飛行機の離陸音が響く。そしてJR石勝線の列車が行き交う音も響く。だからそこそこやかましかったりする。

JRの線路なんてはるか先にあるはずなんだが、なにせ遮蔽物が全くない大地だ。音がやたらと遠くまで響く。これもまた、都会暮らしには新鮮な感覚だ。東京のような建物だらけのところに住んでいると、駅や線路からちょっと離れたらもう電車の音が聞こえなくなる。

あと、地図で確認してみるとここ千歳や隣の恵庭界隈は陸上自衛隊の演習場だらけだ。日によっては戦車がぶっ放す音がよく聞こえるという。この日は週末だったからか、その手の音は聞こえなかった。

無造作に置かれた農機具。捨てられているのかと最初は思ったが、用途に応じてちゃんと使うようだ。トラクターの後ろ部分は取り替え可能になっており、いろいろアタッチメントを付け替えることで土を耕したり畝を作ったり物を運んだり、一台何役にもなるんだって。へー、そういうものなのか。

何にも知らないんだな、我ながら。

てっきり、農作業の機能ごとに、それぞれの自走式農機具が並んでいるんだと思ってた。駐車場みたいなところにずらっと。

ハタケの隣には、サイロがあった。コンクリートブロックを積み上げたもので、このタイプは初めて見た。何のためのサイロだったかは聞いたんだけど忘れた。

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