
風呂場がある地下一階には、もう一つ大きな設備がある。
「レクリエーションルーム」と呼ばれているエリアに足を踏み入れてみる。
まさか、ゲームセンターではあるまい?

正体は体育館だった。
下手な学校よりもよっぽど立派な体育館。いやあ、贅沢だ。学校行事を行えるようにするには、かくもいろいろな設備投資をしなくちゃいけないのか。
雨が降っている中、さすがに子供たちを野外活動に駆り出すのは無理がある。じゃあ部屋でおとなしく自習していなさい、というわけにもいかない。体育館を作らないわけにはいかないだろう。

館内図が貼ってあったので確認してみた。
増改築を繰り返してダンジョンと化した温泉旅館とは違い、非常に整然と、あっさりとした建物の作りになっている。見ていて面白みはないけれど、逆にこのシンプルさが面白くもある。
もし火災とか地震があった時は、年端がいかない子供たち、しかもかなりの人数が一斉に避難しなければならない。ダンジョン状態な建物だと、さすがにまずい。

ありゃ。「1泊2食で3,650円?安っ!」と思っていたけど、平成26年(2014年)までは3,500円だったのか。さらに安かったとはびっくりだ。どうなってるんだここの施設は。
そして、150円の値上げに一体どれほどの意味があるのやら。
「苦渋の選択150円増額によって、財政健全化が図れました!」
ということはさすがにあるまい。どっちにせよ安すぎるから。
あと、やはりここの管理は「教育委員会」なんだな。となると、この施設の維持運営予算は一体どうなっているんだろう。さすがに義務教育のための予算で僕ら大人が宿泊できているとは思えないので、福利厚生関係の部署から助成してもらっているのだと思う。

18:03
さて、夕食時間だ。いよいよ今回の旅行のクライマックスともいえる時間帯にさしかかってきた。
食堂からは、相変わらずカレーの匂いがしてこない。どうやら、本当にカレーライスではないらしい。
食堂入り口に、献立表が貼ってあった。
「平成28年度 日光林間学園自然教室献立表」と書いてある。大人向けのものではなく、子供向けのものだ。
「年度」単位での献立、というのは初めて見た。つまり1年間ずっとこれでいくよ、変更はないよ、ということだ。季節もへったくれもない。
そもそも林間学校は夏を中心に訪れるものだし、生徒・児童は年に何度も訪れるものではない。なので、一年間お決まりメニューで問題ないというわけだ。
えーと、読み解いてみると、1日目夕食からスタートして、3日目昼食で終わっている。どうやら、この施設は「2泊3日」というのが定番パターンらしい。
全部の食事が献立表に載っている、ということは、野外に炊事場があってそこで飯ごう炊さんを行う、というイベントはないということだ。それはちょっと惜しい。
全部のメニューを書き出すのは大変なので、僕らの食事と関係しそうな「1日目夕食」と「2日目朝食」を抽出してみよう。
1日目夕食
- チキンカレー(おかわり可)
- 福神漬
- わかめとねぎの玉子スープ(おかわり可)
- 小松菜とコーンの野菜炒め
- 御飯(おかわり可)
- 果物(オレンジ)
- 麦茶
やたらと品数が多いな!と驚かされる。でも、よく見ると「カレー」と「御飯」が分けてかかれているし、麦茶まで書いてあるので実際はもっとボリューム感は少ない。
麦茶まで書く必要ってあるのか?と驚くが、最近の子供は食物アレルギー持ちが多いので、念には念を入れているのかもしれない。麦茶アレルギーっていうのがあるのかどうか、聞いたことがないけれど。
いずれにせよ、カレー食って寝ろ、というシンプルなものではなく、副菜があるというのに御道路犯される。さすが21世紀。
2日目朝食
- 鮭塩焼き
- がんもどき
- ほうれん草胡麻和え
- 焼海苔
- 笹かまぼこ
- ヨーグルト
- 具だくさん味噌汁(おかわり可)
- 厚焼き玉子(おかわり可)
- 御飯(おかわり可)
- 麦茶
- しょう油(机上)
朝から結構料理が出るんだな!びっくりだ。鮭がメインディッシュに鎮座しているぞ、おい。旅館メシみたいじゃないか。
厚焼き玉子がおかわり可能、というのもびっくりだ。食べ盛りの人は、これで胃袋の加減を調整してくれ、ということなのだろうか。食べ残しは良くないので最初はちょっとしか盛り付けないけど、たくさん食べたい子は厚焼き玉子をおかずにガンガン喰え!と?
どさくさに紛れて献立に「しょう油」というのが混じっている。これも・・・アレルギー対策?

食材の産地がびっしりと書いてある表。
地産地消を意識していますので、基本的に足立区産のものか、日光界隈のものを・・・となっているかと思ったら、さすがにそれは無理だった。そりゃそうだ、なにしろ朝食が鮭だもの。足立区も栃木県も、海が存在しない。
国産品を使おうと努力はしているようだけど、予算や仕入れの関係でどうしてもそうはいかなかったものがあるらしい。ずらりと国産野菜が並ぶ中、「たけのこ」と「里芋」は中国、「パプリカ」は韓国産だった。知らなかった、パプリカって韓国から輸入するものだったのか。

全ての規模が巨大な林間学園だけど、食堂もかなり広大。
山小屋の食堂のように、30分とか45分刻みでどんどん客を入れ替えるなんてことはしないので、一度に百名以上がどかっとやってきても対応できる大広間になっている。
そして感心させられるのが、そんな食堂の傍らにずらりと並ぶ洗面台。
ああ、食中毒防止のために手洗い励行なんだな。

ずらーっと並ぶ机と椅子、そしてカウンターの奥には厨房。
林間学園として利用する場合は、セルフサービスで子供達に配膳はやらせるのかもしれないが、僕ら大人は料理が既にテーブルに配膳済みだ。ただし、下膳の時はセルフになり、お茶碗はこっち、小鉢はこっち、と細かく仕分けることが求められる。

で、既に配膳されている食事なのだけど・・・
なんだこりゃーーーーーーーッ!?
嘘だろ、おい。
僕らVIP待遇じゃないですか。やだーもー。
到底、「林間学園の食事」とは思えないものが、そこには待ち受けていた。チキンカレーでも鮭の塩焼きでもない、れっきとした宿メシだぞ、おい。
固形燃料使用の鍋があるし、お刺身まである。
ええええ?
繰り返す、1泊2食3,650円だ。
マジかこれ。
僕、足立区にそんなに税金を納めたつもりはないんですが、こんなに厚遇を受けてよいのでしょうか。
茶碗蒸しまであるし。完全に温泉旅館じゃないかこれだと。

全ての料理のふたを開け、御飯お吸い物などの配膳を終えた状態がこちら。
そもそも、椀ものにわざわざ蓋がついている、というところが憎い。洗い物が増えるし、コストがかかるし、安い宿ならばやらない小技だ。よくぞやったものだ、この施設は。
チキンのトマトソース煮、お刺身盛り合わせ、ロールキャベツ、ほうれん草の胡麻和え、茶碗蒸し、鍋、香の物、ご飯、お吸い物、フルーチェみたいなデザート。
なにせ、料理の皿数が多すぎて、2名で訪れた場合「向かい合わせに座ることができない」有様だ。自分の料理が、テーブルの2/3くらいを占めてしまうからだ。なので、連れがいた場合、斜め向かいに座ることになる。なんて豪勢なんだ。

お酒も飲むことができます。
ざっと食堂を見渡したところ、小さな子供連れの家族、年老いた父母を連れてきたと思われる中年夫婦など年齢層は幅広かった。しかし、土曜日だというのに客数はさほど多くない。てっきり激安だから倍率の高い競争なのだと思ったけど、ハイシーズンでもない限りはさほど混まないのかもしれない。
なにしろ、区報を熟読する人がどれだけいることか。
とんでもない穴場を発見してしまった。
この食事、この施設に何の不満があろうことか。ご飯を食べ、のんびり過ごし、初日は終わった。
(つづく)
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