林間学校の思ひ出【日光・足尾】

大谷資料館

14:28
谷のどん詰まりにある大谷石資料館。

建物自体は小さいけど、「地下坑内入口」の看板が悪の巣窟の予感をプンプンさせている。

昔、まだオカルト雑誌「ムー」に書かれている記事が結構ガチだと思われていた時代・・・そう、80年代くらいだろうか。あの頃は、「地底人」の存在がまことしやかにささやかれていたものだ。

人工衛星から撮影された、南極だか北極だかの写真には、極地のところにぽっかりと真っ黒な穴が開いているのがしっかりと写っていた!ここは地底人が出入りする場所だ、とかなんとか。で、その地底人の乗り物がUFOなんだ!とか。

荒唐無稽にもほどがある。

でも、科学も疑似科学もごちゃ混ぜで、まだ「未知なる世界」に夢がたくさんあった時代は、結構こういうのが大々的に語られていたものだ。で、「そんなわけがない」と否定する人に対しては、「地底人の存在がばれたらまずいと考えている各国政府の隠蔽工作」という陰謀論をふりかざしていたっけ。

で、今日僕はいよいよ地底人になる。お帰りなさい、童心の僕。

大谷資料館内部

地底に潜る前に、地上にある資料館部分でまずは簡単にお勉強。

大谷石を切り出していたツルハシなどの工具が陳列されているのだけど、「えっ、こんな工具で掘ることができたの?」と拍子抜けするような、細さだ。炭鉱や金山・銀山に陳列されている工具と比べると、迫力が薄い。

でもそれが大谷石の魅力なのだろう。切り出しやすい軽さと加工しやすい素直さを持つ石。

地下に潜る

14:36
いよいよ地下に潜る。

あ、この光景はテレビで見たことがあるぞ。エジプトのピラミッドの中に入っていく光景と一緒だ。

この奥にファラオの棺があっても、何らおかしくない雰囲気。

地下採石場跡

うわあ・・・

なんだこれ。

視界が開けた、と思ったら、そこは想像を絶する光景が広がっていた。

「想像を絶する」というのは案外ありふれた言葉だけど、この眺めに関しては言葉の額面通り、本当に想像を絶する。

地底にこんな空間が広がっているなんて。

見たことがない。

地下採石場跡

とにかく巨大な空間だ。横幅もさることながら、高さがものすごい。

普通、僕らが地底に潜るというのは、鍾乳洞の観光か、金山銀山銅山または炭鉱の坑道見学だ。それらは必ず、狭い。湿っぽくて、あちこちに地下水がボタボタ垂れている。

それがどうだ、ここは広い。おそろしく広い。そして、湿気が少ない。

僕らに限らず、訪れている人皆、この光景に唖然としている。

人形

昔の採掘を再現した人形もわずかに展示されていたけど、鉱山のような悲壮感が全然ない。泥まみれ、危険と隣り合わせ、または流刑の犯罪者、といった世界ではないからだ。

ツルハシの跡

ダイナマイトで発破しながら掘削したわけではない。なにしろ、石の塊が欲しいのだから。

だから、壁は丹念にツルハシが打ち込まれた跡が残っている。天井まで、びっしり。

人間の執念に驚くし、よくぞここまでぴっちりとまっすぐ、掘り進めていけたものだと思う。

上を見ろ

上に矢印が示されたホワイトボードがあった。

この上に見える立坑はこの坑内の位置が地表上のどのあたりに来ているか、知るために掘られたものです。

と書いてある。どれどれ。

吸い込まれそうな天井

はるか上にある天井に、煙突のように四角の穴が開けられ、そのはるか上部にわずかに日の光が差し込んでいた。

巨大な空間

それにしてもここはすごい。

すごいとしかいいようがない。

大谷石の削った跡

年によって堀り方が変わっていったようで、壁に刻まれている溝の形が違う。

展示物

ひたすら、地下の大空間をさまようというのがこの地の楽しみ方。

それで十分なのだけど、ちょっと気を利かせてアート作品も飾ってあった。でもむしろ、こういうのはいらない。

無機質な、「空間だけ」という異様さが際立っているほうが、エキサイティングだ。

幻想的な空間

地表に貫通しているところもあり、そこから光が差し込んでいる。

幻想的な空間

薄暗く、気温は低い。女性なら、夏場でも羽織るものがあったほうが良いと思う。

幻想的な空間

単に、巨大なホールのような空間が広がっているならば、遠目で見ておしまいだ。

しかしここの地下空間の憎いのは、壁があったり柱があったりして、そのさらに先にまだ空間が広がっていることだ。この地下空間を散策する楽しみがある。

そして歩けば歩くだけ、見える風景が変化する。ああ、こっちからのアングルはさっきとはまた違った風情があるね、などとカメラを構えていたら、ついつい長居してしまう。恐るべき魅惑の地下空間だ。

幻想的な空間

ああ、オレ、地底人になってもいいかも、と一瞬だけ思った。

でも駄目だな、一日以上ここで暮らしたら、多分鬱屈してくると思う。そして、太陽の光を浴びて生活している地上人が憎くなってくると思う。

もし地底人なるものが実在するならば、絶対地上人とは仲良くなれないだろうな、と実感した。

幻想的な空間

こんなフィクショナルな空間、芸能界がほっとくわけないだろう・・・と思ったら、案の定いろいろなミュージシャンがPV撮影に使っているそうだ。そうだろうな、ここならいい絵が撮れそうだ。

この地下でコンサートをやるのも良さそうだ。ただしどれだけ音がワンワンと反響するのか、よくわからないけど。でもひょっとしたら大谷石のブツブツした表面が吸音して、イイカンジのコンサートホールになるのかもしれない。

(つづく)

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