夕食後、引き続き食堂で宴会を開催した。
堂々とお酒を持ち込んでしまい、うしだ屋のご主人には申し訳ないのだけど、余った分はお裾分けをさせて頂くということでご主人のお許しを頂いた。
なにしろ、一升瓶の「越後で候」だけでなく、「八海山スパークリング」まである。これが四合瓶。合計で1.4升=2.5リットルだ。僕は飲まないので、残り4人でシェアをしたとして一人600mlくらいは飲める計算になる。まあ、無理だな。
酒飲みたちがワクテカで買ってきた「越後で候」の「しぼりだて原酒二年貯蔵」。
原材料名などが全部ラベルに書き込まれている親切仕様。
しかし、これを飲んだ一同、「うーん」と首をひねっていた。
「熟成が進んでまろやかになった分、面白みのない味になってしまった」
みたいなことを、たっぴぃさんが説明してくれた。
熟成すれば良いお酒、というのはウイスキーなどの蒸留酒では正解なのだろうけど、日本酒の場合は結構バランスを取るのが難しいようだ。もちろん、人それぞれの好みもある。
うしだ屋のご主人が、
「このあたりの集落は、昔はどぶろくの生産がよく行われていたんです」
と教えてくれた。もちろん、どぶろくは「特区」として認められている特別な場所でない限り、酒税法違反でそれなりの罪になる。なので最近はさすがにどぶろくを作るのは難しいかもしれない。
「税務署が調査にやってくるときは、一度に何人もの税務署員が集落を取り囲み、一斉に調査に入ったらしいですよ」
なんて昔話を聞くと、こののどかな田舎でもそんな壮絶なドラマがあったのか、と驚かされる。
なにせ、どぶろくなんて各家庭で作っていたとしても量は知れている。床下や押し入れの奥に隠すなんてのは造作ない。「隣の家に税務署が来たぞ!」なんて噂を聞きつけてから隠しても十分に間に合うだろう。だから、取り締まる時は一斉に、ということだったのだろう。へえええ。
そんな話を聞きながら、一升あたり216円の酒税を支払い済みの清酒をいただく一同。ついでに、消費税8%も払っているわけで、お酒を買うと高いなあ、とつくづく感じる。
話が一段落したところで、おーまさんが「ちょっとやりたいゲームがありましてね」と言い、なにやらゴソゴソと取り出した。
目隠しをした状態で食べ比べをして、どれがどの銘柄かを当てるゲームなのだ、という。
かばんからとりだしたのは、カールと、キャラメルコーンと、あともう一種類あんまり聞いたことがない銘柄のスナック菓子。
これを目隠しして食べると、どれがどれだかわからなくなるのだという。マジかよ。
さすがにキャラメルコーンはわかるだろ?と思ったが、最近のキャラメルコーンは「チーズ味」というのがあるんだな。びっくりだ。それは大変に紛らわしい。
「おーまさんがいつのまにかこういう人に育つなんて」
とおやびんが泣くマネをする。我々の中ではもっとも寡黙なキャラクターとして位置しているおーまさんだが、まさかこういう娯楽企画を持ってくるとは。
お酒が入っていい塩梅になっった人たちが、おーまさんが用意してきた目隠しをする。
手前には並ぶ一升瓶、そしてグラスに注がれた清酒。一升瓶のお酒を相手にしていると、グラスに注ぐお酒の量が雑になってくる。これ一杯飲んだだけで結構酔っ払いそうだ。
写真右端に見慣れない人が写りこんでいる。この人は、ちょっと離れたところの郵便局にお勤めの方なのだという。今日はこの辺りの取引先さんのところに顔を出し商談をし、お酒をしこたまご馳走になって宿に戻ってきたのだという。この宿、2部屋しか宿泊部屋が無いという話だったけど、空いている部屋にプラスαで宿泊ができるらしい。
気さくなおじさんで、こうやってゲームにもノリノリで参加してくれるし、何なら奥さんとの馴れそめまで我々は聞き出してしまった。なんかもう、フランクすぎる。しまいには、おやびんがこの人のことを下の名前で呼び捨てにしだす有様。
テイスティングタイム開始。
それぞれのスナックは大きさに特徴があるので、一旦おーまさんがスプーンでスナックをザクザクと潰し、原型が崩れたところでそれぞれの口に運んでいった。
もちろん、郵便局のおとーさんにも。
うしだ屋のご主人も、厨房から呼び出されて目隠しをしている。
案外味はわからないものだ。
というか、今回は「どれがカールでしょうか?」というクイズだったのだけど、カールの味自体をそんなに覚えていないので、答えに詰まってしまった。
さすがにキャラメルコーンは、味が似ていても堅さや太さが独特なのでわかる。しかし、もう一つのスナックとカールとの違いがわからなかった。
明らかに片方の方が味が濃く、複雑。そして片方は軽薄な味。・・・カールは歴史あるスナックだから、きっと軽薄な味の方に違いない。そう思って僕は軽薄な味のスナックをカールだ、と踏んだ。しかし答えは逆。周囲からさんざん馬鹿にされた。ちくしょう。
おそるべしカール、長年の歴史を積み重ねながら、味のブラッシュアップをしていたとは。
(つづく)
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