「ちょっと、百名山に寄ってくわ」【伊吹山】(その01)

2017年11月4日(日) 1日目

2017年は本格的に「日本百名山」登山を再開した年だった。

40歳を過ぎてくると、自分の人生のカウントダウンを意識しはじめる。「あと何年生きられるか」というのはともかく、健康寿命のほうが気になる。特に登山ともなると、五体満足でないと難しい趣味なので、43歳の僕は若干の焦りさえ感じている。

今回、ひさしぶりに広島に帰省する機会があった。中国地方に足を踏み入れるのは、盆暮れを除くと滅多にないことだ。

盆暮れは慌ただしいし、親孝行という観点からあまり実家を留守にしたくない。「実家を踏み台にして、あちこち遊びに行く」というのは、なんだか親に申し訳ない。しかし、今回は実家立ち寄りが一切なく、広島の往復だった。立場はフリーだ。

だったら、山に登っておくか。

11月ともなると、高い山に登るのはエキスパートモードとなる。でも、どこか登れる山は西日本にきっとあるはずだ。百名山で。

当初、奈良県の「大台ケ原」や

大峰山の登山を考えていた。

奈良県の南部に位置する、秘境だ。

交通アクセスがとてもわるい山奥なので、行くなら2つの山を一気に登りきってしまいたい。何度もここまでやってくるのは、相当時間もお金もかかる。

帰省ついでにここに立ち寄るのは、ちょっと時間的に無理だった。でも今回ならワンチャンあるかも?・・・と思って調べてみた。

しかし、どうルートを組み立てても、無理っぽかった。奈良の南部は秘境というより魔境に近い、というのは知っていたけど、予想を上回る山深さだったからだ。ごめんなさい奈良県さん、あんたはやっぱりすごかった。

そこで方針を変更して、今回は滋賀県と岐阜県の県境にある「伊吹山」を目指すことにした。

伊吹山。ちょうど関ヶ原を見下ろす位置にある山だ。標高1,377メートル。

広島から東京に戻る途中、いつも新幹線の車窓でお目にかかっていた山だけど、「のぞみ」号でビューンと通過するだけで一度も登る機会がなかった。それでもれっきとした百名山なので、今回これを機に登っちゃうことにした。

米原の人は怒るかもしれないが、「のぞみ」以外に乗る機会がない僕にとって、米原駅というのは「古い過去の思い出の駅」でしかない。そう、青春18きっぷを愛用していた学生時代の思い出だ。なので、米原駅からほど近くにある百名山なのに、伊吹山はすっかり後回しにされてきた。

そろそろ、登っておくか。

広島を日曜日の昼に出発し、その日のうちに滋賀県の彦根に移動し一泊。翌日は伊吹山を登頂し、下山後に東京に戻る、という行程だ。新幹線を途中下車して百名山登山となる。そんな山、あったんだな。

伊吹山は標高がさほど高くはないということもあって、下界から登る人が多い。山の南西に登山道がある。

しかしその一方、山頂直下まで「伊吹山ドライブウェイ」という自動車道路が通っていて、車で一気に標高を稼げてしまう。

どっちをとるかって?

そりゃもう、車ですよ。僕は結構こういうの、躊躇なく「楽な方」を選ぶ。「お前は登山が好きなんじゃない、単に百名山ピークハントをやっているだけだ、実質スタンプラリーだ」と陰口を叩かれても仕方がない。「それで何が悪い?」と堂々と開き直るレベル。

いや、下界から登るのも楽しいですよ?しかし今回は「所用のため広島に帰省した帰り道に、ついでに山に登ってくる」というどさくさ紛れの登山だ。そのために装備を固めて、水や食料、服装を用意するのは面倒臭すぎた。それよりも、普段着とタウンユースの靴でシュッと山頂に立ちたい。

そしてすぐに下山で、帰京だ。汗臭いわけにはいかんのですよ。

と、自分を正当化する。

14:22
つい1時間ほど前まで「肉のますゐ」でうまいうまいとサービストンカツを食べていたのに、一気に気持ちを入れ替えて広島駅新幹線ホーム。

米原まで移動して、そこでレンタカーを借りることになっている。宿は、彦根にほど近いビジネスホテルを確保した。無茶をすれば、今日のうちに登頂することもできる。そんな山だ。なにしろ、九合目まで車で行けるのだから。でも、さすがにそれはやめる。登山本番は、明日だ。

15:52
途中、新大阪駅で降りて「こだま」に乗り換える。

こだまに乗るなんて、いつ以来だろう?修善寺に用があって、三島で下車するのに使ったっけ、どうだっけ。そんなレベルだ。

いつも「のぞみ」を使っている人にとって、のぞみが停車する駅以外はほとんど「存在しないもの」にされてしまっているのが現状だ。せいぜい、「三河安城」と「小田原」を認識しているくらい、か。この二駅は、車掌さんが車内アナウンスで「ただいま、定刻通り小田原を通過いたしました。あと15分で新横浜駅に停車いたします・・・」などと言ってくれるから。

16:29
米原駅到着。

「おおー、ついに来たなあ」と思わず深呼吸をしてしまう。そんなに遠いところには行っていないし、いつもは超高速で素通りしている場所なんだけど。いざ、停車すると「遠いところに来た」感がある。

どうも、はじめまして米原駅。

おや。米原駅構内に、こんなポスターが貼ってあった。

「石田三成応援スタンプラリー」。

スタンプラリーストである僕の来訪を見越して、こんな罠を仕掛けられていたとは。やるな、三成。策士だな。

いや、今回は登山が目的よ?もう、帰りの新幹線のチケットだって手配済みだし、今更スタンプラリーなんてやらないよ?・・・でも、「ラリーポイント4か所」かぁ。対象範囲が長浜・米原・彦根と狭いし、なんかイケちゃうんじゃないかという気がする、16時半のわたくし。

16:34
米原駅北口に出てきたところ。

おう、見事に何もないな。

新幹線の駅ができれば町が発展するというわけではないのだな。なんで日本人は「えっ、こんな山奥なのに?」というところまでまんべんなく人が住んでいるのに、肝心の新幹線駅近くには住まないのかね?

でもその発想って、東京在住のデスクワーカーサラリーマンだからこそ、なんだろう。こっちの人からすると、「新幹線駅なんてあっても大したこと無い」くらいの感覚かもしれない。

新幹線以前に、米原といえば東海道本線と北陸本線が分岐する鉄道の要衝だし、青春18きっぷユーザーにとって米原はとっても馴染みがある場所だ。なぜなら、大垣~米原間の東海道本線はダイヤが薄く、ここを突破するのに難儀するからだ。東京方面からようやく米原に到着すると、そこから先の新快速やらなんやらの便数の多さにビビることになる。

でも、駅前としてはご覧の通り地味。これにもまたビビる。結局、通過されるだけなのか。

駅前にニッポンレンタカーがあるので、そこで車を借りた。どうせ一人で移動するだけだし、軽自動車で十分。明日の伊吹山登頂ルートは、急坂に車があえいでエンジンがやかましく鳴り響きそうだ。

16:49
車を借りたのち、米原駅の南側に回り込んだところ。これから、宿がある彦根を目指す。

そうか、「米原駅の北側はあまり栄えていなかったけど、きっと南側が栄えているんだろうな」と思っていたけれど、南側は田んぼだった。

この駅の近くに「鉄道総研米原」という施設があって、そこに新型新幹線の試作機だったものが保存されているという話だ。WIN350とかSTAR21とか。車道からでもチラ見できるんじゃないか、と思っていたが、なんかちらっと見えた気がする程度には「なにか」が見えた。これ以上横を向いていると事故るので、ガン見はしなかったけど。

16:58
彦根の市街地が近づいてきた。渋滞していて、車が前に進まなくなった。

なんだ、彦根って栄えているんだな。意外だった。

いや、もちろん彦根にはひこにゃんでお馴染みの彦根城があることくらい知っている。でも、「城下町」というだけで、町が栄えているイメージはなかったのだった。所詮、「のぞみ民」にとって、認識するのはのぞみ停車駅だし、せいぜいこだま停車駅までだ。それ以外に栄えている町がある、ということをろくに知っていない。

己の無知を知る。

16:59
あー、丘の上に天守閣が見えるぞ。あれが石田三成が拠点としていた佐和山城か。

目の前の道路は渋滞しているし、ちょっくらあっちに寄ってみるか。スタンプラリーのポイントにもなっているようだし、一応ちょっと見るだけ見るってことで。

山頂に行く?いや、さすがに日没前だ、そこまで無謀じゃないよ。

17:05
すでに街頭が灯り始めているような時刻に、やってまいりました佐和山城跡。そうか、天守閣があるけど「跡」っちゃあ跡なんだな。

駐車場には、僕が乗ってきた車1台。誰一人いない。

駐車場がある現在地から、お寺の脇を抜けて山を登っていった先に城跡がある。ところどころ✕印がついていて、どうやら通行止めになっているらしい。事実上、現在地からピストンで登って降りてくることしかできないようだ。

17:06
おや。駐車場脇に、まるで宝くじ売り場のような小さな小屋があるぞ。

シャッターが閉まっているけど、軒先にパンフレットが置いてある。どうやら観光案内所的な位置づけのものらしい。

おっとぉ。

石田三成応援スタンプラリーのスタンプ、発見。今まさに「押してくれッ!」といわんばかりに、スタンプが夕日を浴びて光り輝いて見える。

これは押しておくしか、あるまい。

さいわい、スタンプのすぐとなりにはスタンプラリー台帳となるパンフレットが置いてあるし。

(つづく)

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