飲んで、食って、走って。【のっとれ!松代城2015】

2014年3月、おかでんとよこさんの二人は越後の雪にまみれていた

「のっとれ!松代城」。そのふざけた名前のイベントは、ぱっと見「一回参加すればもう十分」というネタ的色彩を強く帯びた印象を与える。しかしいざ参加してみると、これがどうして、予想を遙かに上回るエキサイティングな内容で大満足だった。

一言で言うと、「うひょう!」だ。最近、こういう頭悪そうな感嘆の言葉を発する機会が乏しいので、心底楽しかった。

本番に向けての事前作戦会議、そして本番前日は松之山温泉で一泊。当日は会場に屋台がいっぱいあってワクワクするし、肝心のレースはトリッキーかつ過激すぎないレベル感でひたすら楽しい。そして最後はハワイ遠島の刑をはじめとする豪華抽選会が待っている。おっと忘れてはいけない、経由地の越後湯沢駅で土産物を探したりするのも大きな魅力だ。

とにかく、何から何まで楽しく、しばらくの間は余韻に浸れるこのイベント。帰りの電車の中では、僕もよこさんも「来年はもう少し頑張らなくては」と、早くも1年後に向けた会話をしていたくらいだ。

それから半年強。そろそろ「のっとれ!」のエントリーが開始となる時期がやってきた。今度もまた、暴れてやるぜ。レースそのものもそうだけど、飲むのも、食べるのも、温泉に浸かるのも、全て過剰なまでに満喫したい。

「のっとれ!松代城」・・・。

豪雪地帯として知られる新潟県の山間部にある自治体、十日町市が力を注ぐ冬の一大イベントだ。山奥だし豪雪すぎるしで、冬の間は観光客がなかなか集まらないからだろうか、十日町市はこのイベントにかなり力を入れている。ちなみに、「越後まつだい冬の陣」というお祭りのメインイベントとして据えられているのが、この「のっとれ!松代城」だ。

山のてっぺんにある戦国時代の山城、「松代城」に向けてふもとのイベント会場から3kmの道をタイムトライアルするという競技。「雪中鉄人レース」とも称されているが、新雪に腰まで埋まりながら前進する・・・といったムチャなことはさすがにない。全部整備され尽くした、安全なルートだ。

しかし、道中には障害物が何カ所も用意されており、それを乗り越えていくことが求められている。「風雲!たけし城」を現代に復刻したもの、といえば話は早い。

このあたりの話は2014年の記事を読んでもらうとして、今回も鼻息荒くメンツを募って松代城討伐隊を組むことにした。

しかし案外皆さん腰が重い。新潟県に新幹線を使って行くよ!しかも一泊だよ!となると、「えー?」といった雰囲気が漂う。場所を地図で指し示すと、あまりに山奥なのですっかり尻込みしてしまう。どんなに「上越新幹線とほくほく線を使えばあっという間だ」と力説しても、さすがにこればっかりは難しかった。

「全国的に見ても珍しい泉質の松之山温泉に一泊だよ」
「新潟は米がうまいよ」

とアピールしても、やっぱり賛同者は集まらなかった。まあ、実際「東京から案外近い場所」とはいえ、さすがに交通費宿泊費はそれなりにかかるのは事実だし、体を動かす系のイベントにエントリーともなれば、尻込みするのはやむをえない。

そんな中、たっぴぃさんとおやびんのご夫婦が参加を表明してくれた。ありがてぇ、この二人なら鬼に金棒だし、男女比が2:2になって宿の手配などちょうどいい。大歓迎で二人を出迎えた。今年は4名体制で、松代城を占拠しているという「冬将軍」と対峙することとなった。

ただし、おやびんは

「私はレースには参加しないわ。会場でお酒飲んでみんなが帰ってくるの、待ってる」

とひたすらマイペース。なので、実質レースに参加するのはたっぴぃさん、よこさん、おかでんの3名となった。

「でも朗報だ。前回は2名でレースに臨んだわけだけど、今年は1.5倍に増えたのだから!」

人数が増えることはよい事だ。なぜなら、完走者にのみ与えられる資格である、お楽しみ大抽選会の当選確率が上がるからだ。

ここでは呆れるくらいの大盤振る舞いが行われており、遠島の刑(ハワイ旅行)なんて4名(!)に与えられている。レースは400名弱が完走しているわけで、要するに100人に一人以上の確率でハワイに行ける計算になる。

ハワイは無理だとしても、他にも越後地酒が貰える「酒責めの刑」とか地元の温泉旅館に一泊ご招待の「釜茹での刑」など、大小合わせると数十名に何らかの褒美と罰が与えられる。こうなると、確率は10人に一人くらいになる。完走さえすれば、うっかり何かが当たってもなんらおかしくない。宝くじの当選を願うのなんかとはわけが違う。

・・・で、僕らは前回、それらの賞には一切関われなかった。なんてこったい!

しかし、今年たっぴぃさんが加わり3名で挑む、ということは、誰か一人くらいはハワイを引き当てちゃうかもしれない。いや、きっとそうだ、誰かハワイ当たるぞ!うわーどうしよう、水着持ってないよ!なんてエントリー前から早くも盛り上がってしまった。

一応の結論としては、「誰かがハワイを当てたら、全員連座制で一緒にハワイに行こう。費用は折半で。」ということになった。当たるといいよな、まったくもう。

さて、「のっとれ!松代城」はもちろんエントリー数に制限がある。最近、SNSの発達のせいでか、日本人は年々お祭り好きイベント好きになってきた。こんなに楽しい「のっとれ」のことだ、年を経るにつれどんどん参加希望者が増えるに決まっていた。「締め切り日までまだ余裕がある」うかうかしていたら定員オーバーになる恐れだってある。そんなわけで12月に入ったころからは毎日十日町市のwebサイトを確認し、「のっとれ」の募集がいつから始まるのかをチェックし続けた。

結局、募集開始は12月19日からとなり、締め切りは2月20日。先着500名だという公式発表が「まつだい幕府」からあった。

この募集開始の報を知り、我々は戦慄した。

「なにッ・・・!500名、だと?」
「昨年よりも100名定員が増えている・・・ということは、遠島の刑に当たる確率も落ちる、ということかッ!」

大変だ、あの城に500名もが取り付くとなると、各障害物は大渋滞大混雑でとんでもないことになりそうだ。しっちゃかめっちゃかになりそうな予感。さて今年はどういう作戦で行こうか?

募集はメールでも受け付けているのだが、募集開始日の朝8時くらいにメールを送ったらゼッケン番号は144だった。みなさん深夜なのに開始日早々にエントリーしてるんだな。ちなみにゼッケン番号1番は、前年度城主(松代城に一番乗りした人)が使う番号だ。

本番を控えた2月には2回も参戦者で集まり、作戦会議を開いたりどの宿に泊まるかを考えたりした。温泉旅行でもあり、スポーツイベントであり、お祭りでもある。いろんな要素がごった混ぜになっており、話のネタは尽きない。

今回、「のっとれ!」には参戦せずに会場待機となるおやびんは、ステージイベントに水木一郎が出演すると知り大興奮中。早くも「アニキ!と叫びながら服をブンブン振り回すかもしれない」と鼻息が荒い。そう、500名もの戦士が出陣し松代城目指して突撃している間、会場はもぬけの殻になってしまい暇なので、別のイベントがちゃんと用意されているのだった。それが「出陣歌謡祭」というもので、今年の歌のゲストは水木一郎と、演歌歌手の女性の方だった。

一方、松代城を目指す残り3名は、地図を睨みながら作戦を思案中。昨年とルートが変わっているので、その傾向と対策についてあーでもないこーでもないと酒を飲みつつ語り合った。

ルートが変更になっているのは、松代城直下の場所で、前回は道が回り込んで大回りしながら城に向かっていく形だったのだが、今回は直登となっていた。前回の記憶を紐解くと、かなりきっつい急坂を登らないといけないっぽい。そのために3kmだったはずのレース距離が2.7kmに短縮され、レースタイムは1時間に設定されていた。前回は1時間半くらいチンタラしていてもレース打ち切りにはされなかった筈だが、今年はタイトに運営するつもりらしい。

「どうする?」
「最後キツいから、前半は体力を温存したいな」
「でも、ゆっくりしていたら時間切れになる恐れが・・・」

なんて話をするが、そもそもペース配分ができるほど我々には体力がないのだった。そんなことを完全に棚に上げ、あーでもないこーでもないと話し合うひとときは本当に楽しかった。

いつ以来だろう?こうやって、一つのイベントに向けて事前にこってりと話し合ったり、夢想したり、過去のことを振り返ったりしたのって。最近、世の中にはイベントが掃いて捨てるほど存在しているので、「事前のワクワク、事後の余韻」を楽しむことが減ってしまった。スケジュールの中でイベント渋滞が起きているという感じだからだ。でもそんな中でも、この「のっとれ!」は他を押しのける圧倒的な存在感があった。

2015年03月14日(土) 1日目

駅売店

10:05
のっとれ!松代城の前日に、松代を目指す。昨年同様、今年も前日に会場入りし、まずは松之山温泉でゆっくりと一泊する予定だ。松之山温泉が素晴らしいから、ということもあるのだが、やっぱり「前夜祭」だとか「総決起集会」だとか、そういう名前が付く段取りが旅程に組み込まれるとワクワクするじゃん?それをやりたいからだ。

松代だったら、当日朝に東京を出て、日帰りで行って帰ってくることも可能だ。一泊しない分、費用は一人1万円以上浮く。しかし、僕らアスリートじゃないんだし、単に雪の中を走って城を目指したいわけじゃないんだよな。温泉に浸かるだとか、宿の食事を前にウヒヒヒと高笑いするとか、土産物屋で思案したりとか、そういう全部をひっくるめての、楽しさが欲しいんだ。

そんなわけで、まずは東京駅で入念に「行きの新幹線の中で食べるつまみ」を探す。僕は酒を飲まないけれど、残りの3名は当然ビールを買い込んで車中で酒盛りをすることだろう。そのために4人がけの指定席を確保したわけだし。だから、酒にあう手頃な酒肴なんぞがあるとええねえ、というわけだ。

ここで気をつけないといけないのは、まだ朝10時過ぎであり、さすがに酒好きであってもなかなかスイッチが入らない時間帯だということ。酒肴をしこたま買い込んでも、食べきれるとは思えない。

ついでに、新幹線で越後湯沢というのはあっという間だ。1時間半で着いてしまうので、ちんたら飲み食いをしていたらもう到着してしまう。

「まあいいや、余ったら宿で部屋飲みする時のつまみになるし」

という考えはとてもジャスティスなのだが、大抵の場合、宿メシでお腹がいっぱいになってしまって部屋飲みの際に何も食べたくなくなってしまう。で、「残りは帰りの新幹線用だな」と問題先送りされ、さらには「家へのお土産だな」になるという。東京で買って新潟を経由して東京に持ち帰るという謎行動。

そんなことも計算に入れつつ、「たこせんべい」を買った。手で気軽につまめるものだし、軽いし、何しろ日持ちがする。万が一「ご自宅用」に化けたとしても、まあこれなら大丈夫だろう。

それにしてもたこせんべいまでもが東京名物になるとは。もう、何にでも「東京」をつけるんだな。「東京さーたーあんだぎー」とか「東京鮭はらこめし」とか出てきてもおかしくないな。

ごった返す人々

10:07
東京駅の新幹線ホームはものすごい人。わっしょい!わっしょい!

この季節、スキー客が上越新幹線や長野新幹線をよく利用するからだ。スキーの人気は一時と比べて激しく落ちている、と言われてはいるが、まだまだこうして駅を見渡す限り、根強い動員力は誇っているようだ。

その証拠に、この時期(3月中旬)の週末の上越新幹線は、指定席を取るならきっちり1カ月前に手配しておかないと間に合わない。昨年、自由席で越後湯沢→東京を利用した際は、通勤電車よりスゲー混雑にかなりへこたれたものだ。レースで疲れた後に新幹線デッキで身動きがつかず直立不動、というのはもうこりごりだ。なので今回は2月14日と15日の午前10時ジャストに、往路復路ともにチケット手配を行った。

北陸新幹線開業

10:07
東京駅が混んでいるのはスキーシーズンの週末だからだけじゃない。2015年3月14日は、ちょうど北陸新幹線(東京~金沢間)が開通した初日だったからだ。電光掲示板には、「かがやき 金沢行」の表示がきっちり見える。

ホームに人だかり

10:09
僕が乗ろうとしていた新潟行きの新幹線の隣のホームが北陸新幹線で、東京駅にお目見えしたE7系の新幹線には人だかりができていた。

既に出発時刻になっているのに、ホーム上に集まっている人が邪魔で出発できていなかった。駅員さんが苛立った声で、「下がってください!下がって下さい!列車が出発できません!」とマイクでどなっていた。確かに、先頭車両あたりにはカメラを抱えた人が大勢いて、進路の邪魔になっていた。駅員さん、朝からずっとこんな調子で、いい加減うんざりしていたのだろう。お気持ち察します。当分こんな状態が続くのだろうけど、がんばれ。

E7系とフレッシュひたち

10:14
金沢行きの新幹線が出発していったあと、すぐにまた別のE7系が入線してきた。改めてカメラを持って群がる人々。僕も一応撮影しておいた。

E7系の隣の在来線ホームには、常磐線特急「フレッシュひたち」が停車しているというのも今日という日を感じさせる。昨日まではここは東海道本線のホームで、常磐線が入線するなんてことはなかったのに。

常磐線快速も乗り入れ

とかいってたら、特急以外にも常磐線快速も東京駅にやってきた。見慣れない光景に思わず「ひゃー」と声を出してしまう。

ぶさいくな顔の新幹線

一方こちらは見慣れたツラ。オール二階建て新幹線、MAXとき315号新潟行き。今日はお世話になります。700系新幹線のことを「カモノハシ顔で不細工」と批判する人は多かったが、新幹線史上もっとも不細工なのはコイツじゃないかと思う。収容人数確保のために、スピードも、外観のカッコよさも切り捨てた列車。

その奥には真っ赤なこまちE6系が停まっているのが対照的。こちらはフェラーリなどのデザインで知られる奥山清行氏が手がけたことで有名だ。

さすがにこのMAXときを撮影しよう!という人は殆どいなかった。このホーム周辺にいるみんな、E7系にお熱。

二階建て車両

オール二階建てという子供心をくすぐるコンセプトの乗り物だが、実際に子供受けがいいのかどうかはしらん。そんなE4系だが、2016年には全廃されるという話だ。ラストランの日には、今日の北陸新幹線ホームのように大勢の鉄道ファンが集まり、別れを惜しむことになるのだろうか?

上越、北陸(長野)、東北(秋田、山形)新幹線が行き来する過密路線なので、極力便数を増やさず、それでも輸送客数を確保したい・・・ということで作られた二階建て新幹線。しかし、スピードが出ないというデメリットのせいで結局運行の邪魔になってしまったらしい。ああ。