10:44
ブリーフィング終了後、戦士たちは外に移動する。これから戦士入場の儀式があって、それから開会式、そのあとにレース開始だ。
我々はレースに参加しない来場者からしたら、体を張るお笑い芸人的位置づけになる。「とっととレースやろうぜ」なんて言ってはいけない。場の空気を暖め、盛り上げなければならない。
それにしてもさすがは500人近い参加者だけあって、相当な数だ。「のっとれ!松代城」ではなく、このまま「のっとれ!十日町市」なんてやって市庁舎を強奪してしまうテロだってできなくはない。ただし、市庁舎まで相当遠いのでそれは無理だけど。
「コイツら全員がハワイの敵」
仲間で楽しくレースを楽しもう!なんて悠長なことを言ってはいけない。レースそのものは早くゴールしようが遅くゴールしようが、ハワイ抽選の権利はかわらない。しかし、ゴールインした人の数が多ければ多いほど、当然ハワイは遠のいてしまう。確率の問題だ。
「精子も同じような心境なんだろうなあ」
とこの光景を見ながら嘆息してしまう。
10:57
いまごろになって気がついたが、ヘルメットには「のっとれ松代城」と赤字で書かれ、さらにはお城のシールまで貼ってあった。わざわざそこまでやるのか。手間隙かけているな。
「普段は、防災用の備蓄として使ってます」というものではない。年に一度の「のっとれ」専用品、ということになる。
ひょっとしたら、レース後にこのヘルメットを持って帰っちゃう人が後を絶たないので、「これ、レースの備品だからね」ということを明確にしたのかもしれない。いや、それはさすがに考えすぎか。
11:01
11時、のっとれ戦士の会場入場。パフォーマンス部門の参加者である「歌舞伎者」が列の先頭に立ち、仮装した出で立ちで周囲に愛嬌を振ふりまく。あくまでも歩みはゆっくり、ゆっくりと。時間をかけて、前へ進んでいく。
周囲の屋台から「がんばれー」という声援がひっきりなしにかかる。
11:11
松代城がある山を振り返ったところ。ちょうど角度が悪く、天守閣は見えていない。しかしあのとんがった山のてっぺん、あれが目指すゴールになる。近くて遠い場所だ。
戦士の入場が終わったところで、ステージ上では早速歌舞伎者部門のパフォーマンスが始まった。彼らは我々同様レースに出場することができるが、それに加えてレース前のパフォーマンスができる。もっとも歌舞いてみせた者(チーム)には、「大歌舞伎者」賞としてコシヒカリ10キロの褒美が与えられる。
昨年は4組の参加でこじんまりとしていたが、今年はチームが多いうえに人数も多かった。仮装も派手になっており、時代だなあという気がする。かくいう僕は自衛隊のコスプレ(?)をしているのだが、特に披露する芸があるわけでもないので歌舞伎者としてはエントリーしていない。
写真に写っている西洋風の鎧甲冑の人は、やたらと大きな剣を背負っていた。ゴール後に話を聞いてみると、「エクスカリバーだ」と笑って言う。
「デカくて邪魔じゃないです?」
と聞いたら、
「障害のところで、これを立てかければ踏み台になるんです。人に頼らなくても一人で段差を乗り越えられる。普段は邪魔ですけど」
と教えてくれた。あ、なるほど、剣先にはノコギリのような大きなぎざぎざがついていて、そこを階段代わりに使うという案か。
歌舞伎者パフォーマンスとしても魅力的なギアだし、レース実戦でも使える。よく考えたものだ。
歌舞伎者にエントリーしているチーム数が多いため、時間が押すしバタバタしていた。しかし、所詮素人芸なので、段取りもキレも悪い。なので、チーム数が多く1チームあたりに与えられる時間が短い今回は良かったと思う。チーム数が少ないと、1チームで何分もだらだらとパフォーマンスが続き、見ているほうがしんどくなるかもしれない。
キレの悪さ、については、むしろ全員で微笑ましく鑑賞していて、楽しかった。youtuberとかニコ生主がもてはやされるように、プロの芸とは違うリアルさというか、ハラハラ感がむしろ面白い。これもまた時代の流れなんだと思う。オチがないシュールなパフォーマンスとか見せられると、「おいおいそれで終わりか!」なんて会場全体が心の中で突っ込みを入れる。そういうのがいい。
昨年同様、ペンタゴンとブラックホールマンの「四次元殺法コンビ」が登場し、パフォーマンスをやっていた。僕は当然昨年の1回しか見ていないのだが、既に師匠の貫禄十分で、「いよっ、待ってました!」と声をかけたくなる愛すべきキャラクターだ。しかしやってることはグダグダ。いや、グダグダっぽいけど芸として成立している、不思議なバランス感覚。それが素人芸としてとても面白い。
コメント