13:06
山頂はぼちぼち人が少なくなってきた。スタッフの方々も、撤収準備にかかっている。「我々の手によって奪還された」松代城の前で記念撮影をしている人が減ってきたので、我々も記念写真を撮っておこう。
城の前には、よろいかぶとを身にまとった人が仁王立ちになっている。この山の上では一番の人気者で、かわるがわるみんなで記念撮影をお願いしまくっていた。我々もそれに倣い、一緒に写ってもらうことにした。
「すごい刀ですね、これは本物ですか?」
「まさかさすがにそれはないです」
そりゃそうだ。銃刀法で一発アウトだ。終了時刻までに間に合わなかったヤツをこの場でぶった切ってやる!軟弱者!とかいうこともなさそうだ。
「軽いですか?」
「見た目より軽いですよ」
わーわーわー
みんな子供のようにぺたしぺたしと模擬刀を触る。その勢いで記念撮影へGO。
ちなみに背後の松代城は、お城の側面が開け放たれ、レース終了で用済みとなった長机などが片付けられていた。あ、なるほど、物置になるのかこのお城。
13:09
山頂の景色があまりに絶景なので、眼下の景色を見下ろすようなアングルで撮影してもらうことにした。
しかし、カメラを渡したのが背の高くないよこさんなので、「人物も写しつつ、なおかつはるか下にある町並みも写す」というのはかなり大変だ。「やばいやばい、このままだと崖から落ちる」
特にフェンスなんてない場所なので、ギリギリまで攻めて攻めて記念撮影をしようとしたら、崖下に転落する。
そんなわけで、もうどうにでもなれ、と雪の上に仰向けに寝転がり、それで写真を撮ってもらった。雪が積もっているからこそ、できることだ。さすがに土の地面だったら、こんな格好はやりたくない。
13:10
名残惜しいが、我々もそろそろお城を立ち去るときがきたようだ。また来年ここに攻めあがるぜ。それまで待ってろベイビー。
「松代城制覇なり!」の横断幕をくぐり、三人で下山を開始した。
このゴールすぐ手前は、500人近くが通過し、なおかつ昼間の陽気もあって、斜面がツルンツルンになっていた。滑らないように滑らないように、とみんなヨチヨチ歩きになりながら下る。
「どうだ、城を攻め落としたぞ!」とがに股気味に、意気揚々と引き上げたいところだったが・・・現実は、随分とコソコソとした下山だった。んー、残念。
13:23
道中、まだ頑張ってお城を目指している人とすれ違わないか?と思ったが、誰一人ともすれ違わなかった。往生際が悪い人はもういないようだ。第二給水所のところで「もうアンタは無理だ、これ以上進むのはやめておきなさい」とテクニカルノックアウトが宣告されたのか、それともそんなに遅い人はそもそも参加していないということか?
会場では、歌のステージが始まったようだ。「Let It Go」が聞こえてくる。
なんだろうこの開放感は。レースが終わった!という達成感、そして走ったり坂を登ったりの負担感から開放された安ど感と喜び。それでお酒を飲んだかのような高揚を覚える。思わず、あらん限りの大声で「ありのーままのー♪」と歌ってしまった。
13:29
「おいバスが行ってしまうぞ」
第二給水所のところまで下りてきたところで、目の前をマイクロバスが出発していった。
思い出されるのは、昨年のこと。ここからバスで会場まで運んでくれる、という話だったのだけど、バスが来るべき場所には誰もおらず。ピストン輸送はもう終わっていたのだった。結局昨年は、ここからてくてくと会場まで歩いて帰った。
すわ、今年も会場まで徒歩か!と思ったが、まだ次の便があるという。良かった、映画「ブラックホークダウン」みたいに、レンジャー部隊が戦闘地域に取り残されてしまう光景を思い出してしまった。
なにせ500人規模のレースだ、修学旅行なんかに使うような大型の観光バスでも、のべ10台必要となる。マイクロバスだと、本当にピストンしまくらないとさばききれない。実際、このバス乗り場には長いバス待ちの列ができていた。
13:33
2回だったか3回だったかバスをやり過ごし、行列がじりじりと前に進んでいきようやく乗ることができた。
すし詰めになったマイクロバスは一路会場へ。考えてみれば当たり前だが、レースで使った道を走るのではなく、いったん松代駅の脇のほうに出て、国道を走ってから会場に入っていった。
なんかすげえ。
さっきまで雪道をハアハア言いながら走っていたのに、今や主要幹線道を車で疾走する。なんなのこのギャップ。なんなのこの贅沢な身分。贅沢でもなんでもないんだけど、ドキドキした。
13:57
会場に戻ると、水木一郎がステージで熱唱していた。
ステージパフォーマンスも気になるけど、とりあえず体育館に戻って着替えよう。あと、身支度も今のうちに済ませておかないといけない。なにせ、電車の都合上、表彰式の終了を待たずにトンズラしないといけない可能性が高い。
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