14:50
部屋においてあったお茶請けは、しんこ餅だった。これ僕好きなんだよな。
昨年はお土産に買った気がする。上新粉で作ったあんこ入り団子。笹にくるまれているのも、香りがゆたかで嬉しい一品。早速食べてしまった。うん、うまい。もち米で作った団子と違い、歯切れが程よいのでパクパク食べられる。
いかんなー、スポーツイベントに参加するため、越後にやってきたというのに。太って帰京したとなればそれは恥ずかしいことだ。
でも既にお昼に爆弾おにぎりを食べているし、この後宿メシを食べるつもりだし。・・・まあ、酒を飲んでいない分、他の仲間と比べるとローカロリーと言えるのだけど。
薬湯に入ってもアルコールは抜けません! 松之山温泉組合
と書かれた警告が宿の案内冊子の中に入っていた。
「なんだ、アルコールは抜けないのか。たいしたことないな松之山温泉」
とか言ってはいかん。そんな便利な温泉など世界中探してもどこにもない。
宿泊客に対してこの警告をするというのはあまり意味がないような気がする。宿泊客なら、じっくりと宿に腰を落ち着けて酒を飲み、風呂に入るからだ。ああでも、中には「翌朝もお酒を頼んじゃう」っていうおじさんがいるからな。そういう人はアウトだ。
僕が酒飲みだったときでさえ、「宿で、朝からお酒を頼む」というおじさんたちの行動原理が全く理解できなかった。あれは社員旅行とかなんとかで、「羽目を外す楽しさ」を満喫しているだけなんだろうか?「普段やらない、悪いことをやってます!」という「ウヒョー感」として?
松之山温泉街を紹介した紙も置いてあったのだが、そこにふと目がとまった。「松之山のビックリかつどん」だという。んん?なんだこれ。
津南産ポーク250gのとんかつがごはんの上にドンとのる。大きさもすごいけど、完食したときの達成感もすごい。
「ほう?」
「どうなんですかねえ」
男部屋のたっぴぃさんと僕とが顔を見合わせる。
「250グラムって多いんですかねえ?」
「カツ丼って、あんまりカツの重さについては意識しないですよねえ・・・?」
「しかし、ステーキで250グラムっていったら結構大きいですよね」
「なるほどそれは大きい」
「でも、見てみないことにはなんとも判断しかねますな」
「見に行きます?」
「ええ?(ニヤニヤ)」
どっちかが「まあ、夕飯もあるからやめておきましょう、量が多いならなおさら」という常識的な判断をして、この話は終わりになるはずだった。しかしどっちもニヤニヤして否定しないものだから、なんだかイイカンジで話が盛り上がってしまったところでToBeContinued。
「営業時間が10時から21時、なんだよなあ。今行ったら営業してますよこれ」
「中休みないのか!ならば・・・今なら、まだ夕飯にはしばらく時間が」
ずるずると引きずられていっている気がする。
まあ、女性部屋の面子も交えてこの話を蒸し返したら、たぶん一笑に付されて終わると思う。
宿の案内冊子をぺらぺらめくっていると、この宿では出前も受け付けていることがわかった。素泊まりの宿泊プランがある宿なので、気を利かせてくれているのだった。ただ、メニューはオーソドックスな店屋物であり、「旅情!」を期待するならやはり宿メシを食べるのが正解だ。
おっと、よく見てみるとこの出前って、先ほどのかつどんを提供しているお店がやっているらしいぞ。メニューの中にしれっと「カツ丼(250g) 1,100円」という記述がある。
「お店でなくても、この部屋で食べることができるんですねえ」
また余計なことを考えてしまう。
「しかも、土産用とんかつ、というのもありますねえ」
いい加減やめとけ。
松之山土産で、250gのつなんポークトンカツをお持ち帰り、ってすごく驚きだ。
廊下には、アイスペール、氷だけでなく、水を詰めるためのポットも用意されていた。これはありがたい。僕みたいに酒を飲まない人にとっては、口を湿らすための冷水が傍らにあると助かるからだ。あとで是非使おう。
15:04
本来、温泉宿に到着したからには「まずは宿の大浴場にごあいさつ」としたいところだ。そこで骨抜きになってふぅ、とリラックスできた後に、温泉街散策とかお土産物屋物色といったことをやり、夕食に向けてテンションを高めていく。
しかし、さすがにこうも寒い季節だし、メンバーが4名もいるし、「いったん風呂に入ったのち、1時間後に集合。その後外に出かけるよ」というのは無理がある。湯冷めするので勘弁して~!と言われるだろう。そもそも、1時間もお風呂に入っているうちに日が傾いてきて、寒さが増してしまう。何しろここは谷間にある場所だ。しかも冬。
とはいえ、旅情っていうのはこういうことですよ!とばかりに浴衣に着替え、浴衣で外に飛び出すおかでん。上下ともにヒートテックを装着しているのだが、案外これでなんとかなるものだ。端からは罰ゲームのように見えるかもしれないが、本人は「いやあ旅行ですなあ、温泉街ですよぉぉぉ」とご満悦。
あとの3名はさすがに浴衣着用とはいかず、コートやダウンジャケットを羽織った状態でお出かけ。そりゃそうか。
まずは温泉街の最奥にある、鷹の湯源泉を見に行く。
15:06
鷹の湯源泉。
周りは雪なのに、ここだけしゅうしゅうと湯気を噴いている。
この温泉街にある旅館および外湯は、ここからお湯を引っ張っている。地層に閉じ込められた古代の海水が強い水圧によって地表近くまで吹き上がってきたものであり、それだけを聞くとあんまりありがたくは感じない。よっぽど、「火山の成分が混じって、硫化水素臭いです、白濁しています」というほうがお得感がある。しかし、この温泉は塩水であるだけではなく、ホウ酸の含有量が日本一であり、消毒効果が高いというから面白い。そんなわけで、「日本三大薬湯」のひとつになっている。
松之山温泉のにおいを表現する際、「アブラ臭」という言い方をよくする。実際、灯油のような臭いがする。そういえば、新潟の沖合いって以前は石油の掘削が行われていたし、このあたりはそういう「古代のあれこれ」が現代によみがえる場所なんだろう。パワースポットだとか心霊スポットとかに祭り上げて一儲けできないものだろうか?
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