09:53
「のっとれ!戦士」は10時までに受付を済ませないといけないので、結構ギリギリの到着だった。
体育館の入口で、受付を済ませる。
体育館は、恐ろしく冷え込んでいる。「底冷え」という言葉がぴったりだ。屋外は雪まみれの大地とはいえ、日光が照っている限りは暖かい。一方で体育館は、冷気だけが詰まった感じで、じっとしているのが辛いくらいだ。
で、毎年「しまった!」と思うのが、下履きを持ってくるのを忘れていたことだ。ソックスのままでこの建物内煮いると、床からの冷気で全身がすくみ上がってしまう。
あと、トイレのスリッパが何故か不足していたりなかったりするので、ソックスのままだと「粗相して水たまりが出来ている男子トイレの床」の上をノーガードで歩く羽目になる。これは精神的にもキツい。
というわけで、来年こそはスリッパを持参しないと。教訓のために、今ここに書き残しておくわ。
まず、全員で壁に貼りだしてあるルールを確認する。毎度のことだ。
今年も、例年通りのルールやスケジュールだろう・・・と思っていたら、一カ所これまでと違うカ所があった。
「戦士入場」、つまりのっとれ!戦士が隊列を組んで会場に入り、レースの開会式に臨む場面だ。これはこれまで、11時からだったはずだが、今回は10時50分に前倒しになっていた。
「歌舞伎者のエントリーが多いので、開会式が長引くんだな?さては」
年々、歌舞伎者のエントリーは増えている。歌舞伎者としてはエントリーしていないものの仮装っぽい格好をしている戦士も増えた。そういう「お祭り感を楽しむ人」が増えたのだろう。実際僕だって、昔っから自衛隊の迷彩服を着ての参加だ。コスプレといえばコスプレだ。
僕とよこさんがこのレースに初参加した5年前は、歌舞伎者エントリーはわずか4組だったのに。そのうち1名は、単にビールを一気飲みするという宴会芸だった。そこから今や、開会式の時間を延長しなければ収まらないくらいに人が増えたのか。時代だなぁ。
レースのコースを確認。
あれっ?
一カ所、僕らにとって初めてのルートがあった。それは、ゴールの松代城直下にある、「城壁越え」という障害だ。過去、このルートは何度となく予告されてきたけど、道なき道に500名規模の人が歩くルートを切り開くのが困難なのか、当日になって却下されていた。で、夏になれば車道となっている、普通の道を戦士たちは駆け抜けるのがこれまでの歴史だった。
でも今年は、いよいよ本気で山の急斜面を直登するルートの開拓に成功したらしい。やるなあ。
そのかわり、このレースの目玉の一つだった障害物、「地獄谷渡り」が消えていた。ワイヤーに吊されたタイヤにしがみついて、谷の対岸まで滑り降りていくというものだ。昨年は雪不足が理由で地獄谷渡りは中止だったけど、今年はどうしたのだろうか。
なにせ、谷底は雪による天然のクッションが敷き詰められていないといけない。タイヤから落下したとき、戦士が怪我をしてしまうからだ。雪不足だと、そもそもできない障害物となる。今年も雪不足なのか?雪は多い、と事前に聞いていたのだけど。
ひょっとしたら、レース参加者が500名になったため、毎回順番待ちの大渋滞を引き起こしているこの障害物は運用が厳しくなったのかもしれない。名物障害物がなくなってしまったのは残念だけど、ちょっとほっとしたのも事実。
というのは、「殆ど歩いてゴールしよう、走ったところで上位入賞できるわけでもないし」と考えているやる気のない戦士の僕は、己の体力のなさではなく、制限時間をもっとも恐れている。レース中ボトルネックとなる地獄谷渡りがないということは、より一層チンタラと歩いても時間内ゴールができるってことだよ!
こうも毎年律儀に参加していると、「あっ、今回もあの人がいる!」という馴染みの方が増えてきて楽しいのです。
そんな中の一人、僕らが「勇者様」と呼んでいる方も、エントリー。嬉しいね、相変わらずオリジナルの武器と装備をひっさげての参戦だ。
昨年は、トゲのついた巨大なハンマーみたいな武器(モーニングスター)を持参し、そのあまりの重さに勇者様自らが疲れ果て、最後尾ゴールだった。こういう自虐的要素も含めたセンスが最高にカッコいい男だと思う。
今年は新兵器として、槍のような武器を持参していた。おそらく鉄製で、これだけでもすげえ重い。さらに全身は鎧だし、とても重たい楯まで持っている。レースを通じて筋トレと心肺機能向上を狙っているのか!?
5回も出場している、とえらそうなことを言っているが、未だに障害物の名前を覚えていない。
「城門越え」とか「城壁越え」など、名前が紛らわしいからだ。さらには「堀越え」という障害物もあるし。
おお、すげー!アイアンマンがいるぞ。
今年は凝った戦士がいるなぁ。
身支度を済ませた我々は、寒い屋内にいるのが耐えられないので外へ脱出。戦士向けのブリーフィングが行われる前に、会場の様子を見て回ることにした。
レースを終えて戻ってきたら、ここで何を食べるのか、考えておかなくちゃ。
屋台がびっしり並んでいるのは例年と同じ。
プロの屋台商人が営んでいるわけではなく、地元のお店などが出店しているところが多い。なので、メニューの種類がトリッキーで、毎年何が売られているのか見るのが楽しみだ。
おっと、「テズニーランドと同じ!」という売り文句のチュロスが売られているぞ。なにがどう一緒なのかさっぱりわからないのだが、製法を真似たのだろうか。気になる。
会場に十日町市雪まつりのキャラクター、「ネージュ」がいたので一緒に記念撮影。
レース前なのに何一つ緊張感がない。
今年はアウトドアメーカーのキャプテンスタッグが協賛している、と聞いていたが、会場の片隅にテントやらハンモックやら、さまざまなアウトドアギアを持ち込んで展示していた。
見るからに寒そうだ。なにせこういうのは夏に使う物というイメージがあるから。
そんな中、ファットバイクの試乗ができるコーナーがあった。おやびんが早速「わたし、乗りたい!」と言い、何の躊躇もなく自転車に突撃していった。
「ファットバイク」というのは僕は今回初耳だったのだけど、柔らかくてMTBのものよりも大きな、ちょっとした浮き輪みたいなタイヤを持つ自転車のことだった。こんなの、街中では見たことがない。
どうも、接地面積が広い分、今このような雪面を走るには向いているらしい。
ひとしきり、おやびんが雪の中を走りまわる。
それをじっと見守る、レースに出場する我々。体力温存中。
今年はさらに、スノーチューブ乗り場が設けられていた。
わざわざ雪の斜面をこしらえているので、本格的だ。
有料で、「3回で100円」を選ぶか、「1回10分乗り放題で200円」を選ぶかはあなた次第。
おやびんはここでも「わたし、やりたい!」と突撃していった。
50歳を超え、我々からは「アラハン(around hundred、要するに四捨五入すると100歳ってこと)」と呼ばれている御大だけど、気持ちの若さはメンバー中一番だった。
嬉しそうに、何度もスノーチューブに乗って傾斜を滑り降りてきた。
(つづく)
コメント