灼熱の台湾

愛麺屋

開いている店は当然何軒かあったが、ジーニアスが強く「昼飯こそ冷気開放(間違った使い方)していない店にしよう」と主張したこともあって、何軒かパスとなった。また、ちゃんと扉が閉まる店もあったが、麺線と臭豆腐の店だったのでやめておいた。

ぐるりと回って駅前に戻ってきてしまい、結局われわれが入ることに決めたのはこのお店。「愛麺屋」と看板には書かれている。フォントがなんだかふざけたPOP体でむかつくが、空腹の前にはしょうがない。ちゃんと扉が開閉するお店で、中は涼しいだろうし。ただ、ちと気になるのは店名もさることながら店名のサブタイトルが「Rosa’s Noodle Shop & Sushi」と書かれていた事。何屋だ、これ。

入口に飾ってあったメニュー

入口に飾ってあったメニューを見ると、牛肉飯100元を筆頭に、韓式辣麵、豚骨拉麵、味噌拉麵、日式涼麵、海鮮烏龍と書かれている。あんまり魅力的ではないが、まあいいか。とりあえず中に入ることにした。

ジーニアスは牛肉飯、おかでんは海鮮烏龍を選んだ。海鮮はわかるが、烏龍って何だろう。烏龍茶がかけられているとは思えないが、はて。

店内の様子

店内の様子。厨房との間仕切りに暖簾を使っているあたり、和のテイストを意識しているつもりなのだろう。インテリアは至ってシンプル。学食みたい、といってしまうとかわいそうか。

牛肉飯100元(400円

待つことしばし、ジーニアスのところに牛肉飯100元(400円)が届けられた。

むー。これは、牛丼ということでよろしいですね?
青梗菜とキムチが添えられた牛丼。

大きなレンゲというか視力検査用の目隠しみたいなものが付いているが、これはこの巨大スプーンでがっついても良し、ということなのだろうか。

海鮮烏龍130元(520円)

ほぼ同時期におかでんの目の前に海鮮烏龍130元(520円)がやってきた。

う、うどん。

烏龍=うどん、ということだったのか。語呂が似ているから、ジャパニーズスパゲティのうどんを烏龍と当て字しちゃえ、というわけだったのか。

まいったなあ、今うどん食べたい気分じゃ無かったんだけど。というか麺類は朝食べたからもういいんですが。もっというと、台灣に来てまでうどんは食べたくなかった。

ちょっと軽くカルチャーショック。

具は、「海鮮」と言ってるけど海老井が確認されたくらいか。あとはゆで卵、青梗菜、半重苦玉子、とうもろこし、しいたけ、かまぼこ、魚のすり身団子、何かの内臓?らしきもの。

トウモロコシが輪切りで入っているが、台灣では鍋物などにとうもろこしがごろんと入る事は別に珍しい事ではない。それはAさんが作る料理などでも体感済みだったので「ほらお越しなすった」という感じ。

やや白濁したスープだが、見るからに味が薄そう。実際啜ってみると見事に塩気が足りなかった。ああ、物足りない。

渋い顔をしてメシを食うジーニアス

ジーニアスの方はというと、こちらもあまりお口にはあわなかったようだ。「んー、吉野家で牛丼食べている方がよっぽど美味いや」という間接的な表現でこの牛肉飯を批判していた。100元といえば屋台の魯肉飯5杯分だ。それを考えるとスゲー損した気分になってしまうのであった。

台灣鐵路の券売機

昼食は「小腹を満たす」だけにしようじゃないか、夜があるさ、夜が・・・とお互いを納得させあいながら、MRT淡水線に乗り台北車站に戻る。さてここからは台灣鐵路という別の鉄道会社に乗り換える事になる。鉄道会社、といっても早い話国鉄だ。中華民国交通部に所属する一部門、ということになる。台灣の島一周をぐるりと回る路線を有しており、台灣における遠距離鉄道旅行といえばこの鉄道を使うことになる。

例のばかでかい台北站の地下2階がプラットフォームになっているので、切符売り場と改札は地下1階になっている。MRTから降りて、そのまま台灣鉄路(略して台鐵)の自動券売機に向かう。

自動券売機には、大きく「交通部台灣鉄路管理局多功能自動售票機」と書かれている。その下に並ぶ自動售票機。どこの国製かはしらんが、どうしてMRTにしろこの台鐵にしろ頑丈でごついのを据え付けるんだろう。日本の自動券売機がすごくスタイリッシュでおしゃれに見える。日本の工業製品はセンスが無いものも多いが、少なくとも鉄道のあれやこれやに関しては世界最先端のセンスなんじゃないかと思うが、どうか。

タッチパネル付き画面

暑苦しくなるくらいごついハードウェアなので、ぼろいのかとおもったらタッチパネル式の液晶画面を備えているちゃんとした機種だった。ちょっと驚き。われわれは特急に乗る予定なので、行き先を入力した後は特急の時刻を選択し、人数を選択し、指定された金額を投入すればはいOK。全く問題ない。分かりにくい事もなかった。ふむ。

12時18分発の自強號チケット

出てきたチケット。さすがに指定席だし全国展開しているのでトークンではなかった。

われわれが乗るのは12時18分発の自強號。台北から約45分の瑞芳まで行く。見ていて面白いのが、「発」のことをこの国では「開」と言うんだな、とか到着予定時刻まで書いてあるんだな、ということだ。

「自強號、ってなんだか強そうな名前だな。日本語に訳すとオレは強いぞ号ということか」

「台鐵の場合、特急が自強、急行が莒光號、準急が復興號って名前になってるんだよ」

「なんじゃそりゃ?どれもありがたい名前ばかりではないか」

実際そうなんである。やはり国民党政権下、いずれは中華民国も力をつけて捲土重来、という思いが強かった。だから、その思いを国鉄の列車名に託しているのである。ちなみにわれわれが乗る自強號の「自強」の由来は、中華民国が国際連合を脱退した際に残した言葉、「莊敬自強 處變不驚」(恭しく自らを強め、状況の変化に驚くことなかれ)に由来しているという。なんとも政治の臭いがぷんぷんするではないか。

その点日本は平和だ。「ひかり」とか「のぞみ」なんて名前をつけているんだからな。そもそも、走行地域を問わず一律で特急や急行の名称をつけているのが珍しい。

ちなみに、「自強」を日本語読みすると「じきょう」になって、なんだかホントに強そうなんだが、現地読みすると「ツーチャン」になる。ツーチャン号。なんだか日本語的にはカッコよくない名前ではある。

「それにしても44分の特急列車の旅で一人80元か。安いなあ。オレがさっき食った牛肉飯よりも安いじゃないか。どうなっとんのよ、この国の物価は」

さあ、それは僕に聞かれても。

電光掲示
地下二階ホーム

改札を済ませて地下2階に降りる。おっ、奥には開業して間もない台灣高速鉄道(通称台灣新幹線)が停車しているぞ。台灣第二の都市で南部に位置する高雄まで、最短90分で結ぶ(予定。まだ実現していない)列車だ。それまでは自強號で4時間かけてゴトゴト揺られていたというので、乗客は国内線飛行機や高速バスに流れていたというが、これで一気に流れは変わるだろう。

それにしても台灣北部と台湾南部を90分で結ぶとは、なんと小さな国だろう。長野新幹線で東京から長野に行ったって、2時間はかかる。それを考えると、いかにこじんまりしているかが判るってもんだ。

ちなみにあちらさんは民間鉄道。国鉄ではない。

列車運行情報がCRTで表示

これから当站を発車する列車の名前と出発時刻が天井からつり下げられたCRTに表示されていた。

・・・ん。おかしい。右上には「ただいまの時刻」として12:14と記されているのだが、12:05発の電車がまだ出発していない事になっている。どうなってるんだ、おい。

よく見ると、右端の表記に「晩14分」と記されている事に気がついた。どうやら14分遅れで運行されているらしい。

「事故でもあったのかな?」

「それだったらまだいいけど、それにしても遅れを取り戻そうというこの緊迫感の無さは一体何よ」

確かに、日本だと電車到着が1分でも遅れることになったらヒステリックに「電車が遅れます」とアナウンスが入る。また、そういうアナウンスをしてくれないと、乗客がヒステリックになる。台灣では電車遅延が当たり前なのか、その点おおらかだ。そもそも、遅延を表示する「枠」を画面に用意している時点で遅延するぞこの野郎、という感がありありだ。

「オレらが乗る自強號は12:18発だから・・・8分遅れか。まあ、なんとか遅れを取り戻そうと徐々に回復には向かっているということだな」

台灣ではプラットフォームの事を「月台」と呼ぶようだが、列車の引き込み線毎に1番線、2番線と名前が振られる訳ではなかった。島ごとに1番、2番と振られ、それにA、Bと名前がつけられる。今われわれが居る月台は4番目の島で、列車はB側に来るので「4B」と表記される。わかりやすいような、わかりにくいようなネーミングだ。

區間快車

本来われわれが乗るべき電車が来る時間になって、2本前の區間快車(区間快速)がやってきた。日本ではお目にかかれないようなレトロな列車だ。

「おいおい、凄いのが来たなあ」

「見たか?扉開きっぱなしでホームに入ってきたぞ。自動ドアじゃないんだな」

「われわれの自強號はどうなんだろう?特急だからもう少し良い列車だとうれしいんだが、これはあまりに古すぎる。何十年前の列車だ?」

見るからに重そうだ。動かすだけで相当電力食いそう。最近日本ではアルミ製の軽やかな電車ばかり見てきたので、こういういかにも鉄板を溶接しました的な外観には圧倒される。

「あと、行き先表示もいい味出してるな」

区間列車が遅れて出発

結局、12時19分、われわれが本来電車に乗っているべき時間を過ぎてからこの快速は出発していった。特に時間を短縮しようという気迫はなく、乗客の乗り降りをせかすようなアナウンスも無し。のんびりしている。
きっちり14分遅れで出発するあたり、「14分遅れですよ」と示していたCRT表示と合致している。こういうところだけは正確だな。より遅れを短縮しようという気は起きませんかそうですか。

「うわ、最後尾車両、通路をひもで仕切っているだけだぞ」

ジーニアスが驚きの声をあげる。

「落っこちたら自己責任、ということか」

ちょっと前の日本もこうだったのだろうが、今では全く考えられない光景だ。

おかでんとジーニアスの実家である広島では、JR山陽本線でビシバシ数十年ものの電車が現役で走っているが、ここまですさまじくはないぞ。というか早く新型車両入れたらどうだJR西日本。

自強號の案内が出た

さらに1本やり過ごしたところで、ようやく次の電車の案内にわれわれが乗る自強號の案内が出た。パタパタパタ、と様々な表示が回転して、目的の表示になったところで停まるタイプのものだ(うまく表現できない・・・)。これを駅で見たの、20年ぶりくらいじゃないか?久しぶりだ。

花蓮行き。花蓮(日本名かれん。國語だとほありぇん)は、20キロにも及ぶ断崖絶壁(太魯閣渓谷)の国立公園として有名。花蓮行きの最新型自強號には太魯閣號(タロコ号)と名付けられているくらいだ。これは政治的色彩を帯びた名称からの脱却という点で新しいのと、日本の日立製作所製(JR九州885系。ソニックやかもめで利用されている)が採用されている点が新しい。

自強號には様々な車台があると聞いているので、当然「当たり外れ」があることだろう。今回タロコ号には惜しくも乗れなかったが、せめて先ほどの快速列車よりはましなものにのりたいと願う。「古い電車、それもまた風情也」と割り切っても良いのだが、あまりに風情がありすぎてびびってしまったのだった。

自強號

やってきた自強號(われわれが乗る列車の一つ前の列車)。特急とは思えない面構えをしている。もっと特急というのはだな、とんがっていたり悪そうな顔をしていなくちゃいかんと思うんだが、これはどう見ても「鈍行列車でーす」という感じだ。これで本当に特急ッスか?

まあ、とりあえず「連結部分の通路はドアでふさがっている」のでさっきの列車よりは進化しているようだ。あと自動ドアだし。

それにしてもいろいろな電車があると、メンテナンスに苦労するだろうに、と思う。メンテナンスマニュアルが一体いくついるんだ。

8車30號

「さて、オレたちが座る席は・・・」

と、お互いのチケットを見比べて、重大な事に気がついた。

「あ!号車が違うぞ!」

見ると、片方は「8車30號」と書かれていて、もう一方は「9車39號」と書かれている。「ええ?そりゃありえんでしょー。だって同時にチケット買ったのよオレら」

ジーニアスがにわかには信じられないといった顔をしている。

「どこに座ってもいいんじゃないか?」

「いや、それは違うぞ。自強號は全席指定列車のはずだ。これ、座席指定に間違い無いよ」

「どういうことだよ、それ。同時に2枚チケットを買って、号車さえ違う席があてがわれるってありえんだろ」

あぜんとするわれわれ。どういう発券システムになっているんだ?別々にチケットを買ったなら当然離れてもしょうがないが、われわれは「二人分」を「一度に」購入したのだ。なんで8号車と9号車なのよ。

まあ仕方がない、文句を言う相手もいないので、「じゃあ、駅が近づいたら合流ってことで」とようやく到着した列車の別々の車両に向かった。

座席の配置

わかりにくいのが座席の配置。

日本だったら1列目のA席、B席、C席・・・と並んでいるわけだが、ここは号車全部の座席にナンバーが振られている。それはまだいい。ナンバリングが、なぜか変なのだ。通路を挟んで進行方向左側が偶数番号(写真だと窓30、道32と書かれている)、進行方向右側が偶数番号(窓31、道33)となっているのだった。どうしてこういうわけのわからん配置にするのかしらん。普通におとなしく右から順に番号振っていけばいいのに。

客席は満員御礼

客席は満員御礼。おかでんの座席には勝手に金髪碧眼の西洋人が座っていたので、「お前そこはオレの席だ、のけ」と英語で言って押しのけた。ただでさえジーニアスと席が離れて「?」な状態なのだ、席くらい当然の権利として座らせてもらいますよ。

ちなみに自強號は、指定席が完売の時は立席特急券が発売される。あと、日本ほど席の指定に厳しくないので、空いている席があったら勝手に座ってよろしいとされている。でも、そうはいくか。オレ様は座るぞ。

列車は外壁がアルミ製ということもあって比較的新しい列車だった。そのせいもあって、特にガタピシ変な音がしたり、揺れがひどいということはなかった。快適な旅だった。ただ、快適だったが故に・・・

ジーニアスに「おい、起きろ」と言われて目が覚めた。故宮博物院でも熟睡してしまったくらいのことだ、電車の旅だとついうっかり居眠りしてしまった。ジーニアスもさすがにそこは警戒していて、わざわざ一つ前の駅を過ぎたところで起こしに来てくれたのだった。ありがとうジーニアス。あともう少しで僕は一人花蓮まで行ってしまうところだったよ。いやあそれにしても疲労困憊してるなあ。

ジーニアスとしても大変だったと思う。路線図を持っているわけではないし、車内に次の駅を表示するLEDが着いているわけでもない。高速で通過していく駅の表示を、抜群の動体視力でキャッチしてわれわれが降りる瑞芳駅の手前でおかでんを起こしに来てくれたのだった。

瑞芳駅で降りる。九份(じゅうふぇん)観光に向かう人たちだろう、続々と降りていく。乗客の半分くらいがここで降りてしまったのではなかろうか。日曜日だからな。

瑞芳駅で降りる

降りたところに、かごを持ったおばちゃんが居て大声で「弁当ー!弁当ー!」と叫んでいる。わっ、日本語だ。しかも、昔こういう光景って日本でもあったよな。懐かしくなってしまったぜ。

でも何で日本語なんだ?ひょっとして國語(閔南語?)と同じ呼び方をするのだろうか。

不思議に思って帰国したのだが、Aさん曰く「あれは『べんとう』と言っているのではなく、『べんとん』と言っているんですよ。國語では弁当のことを『ベントン』と言います」とのこと。ああ、なるほど、「弁当ー!」と言っていたのではなく、「ベントーン!ベントーン!」と言っていたのか。

台北方面行きのプラットフォーム

降りる人の数も多いが、隣の月台で台北方面行きの電車を待つ人もとても多い。まだ13時過ぎだが、既に九份観光を済ませた人たちなのだろう。こりゃあ、現地は大混雑するぞぉ。

不思議なのは、改札が上り線・下り線を束ねた場所に位置するのではなく、われわれの下り線ホームから地下連絡通路に降りるところにあったということだ。上り線ホームも同じく、地下連絡通路の階段を上ったところに改札と自動券売機がある。要するにホーム毎に券売機と改札があるということだ。何だ、こりゃ。よくわからん。

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