灼熱の台湾

松山駅前の慈祐宮

松山って「ソンシャン」と読むんですね、ということを今更のように知りつつ電車を降りる。松山空港というのが国内線専用飛行場になっており、日本の羽田空港の位置づけというのは前述したとおり。しかし、この松山駅からははるか彼方だ。

われわれはTAIPEI101に行くのが目的であって、松山駅自体に用事があるわけではない。ここからバスもしくはタクシーで現地に向かう予定だ。

しかし、せっかくなのだから松山駅近辺も見ておきたい。渋るジーニアスの背中を押しつつ、松山駅前の慈祐宮というお堂をみる。

それにしても派手な外観だ。日本と同じく台風が突撃してくる国の建造物とは思えない。いずれ強力な勢力を誇る台風でぽっきりとやられてしまうのではないか。

あ、でもそこは仏の威光で奇跡的に助かる、というわけか。

・・・いや、待て、仏、か?

奉請天上聖母様

中を覗いてみたが、どうもホトケ様ではなさそうだ。ガイドブックによると、奉請天上聖母様を祀ってあると書かれている。それはホトケなのかカミサマなのかそれとも実在の人物なのか架空の人物なのか、一体どれだ。どれなんだ。

饒河街観光夜市

まあ、慈祐宮はともかく(可愛そうに、「ともかく」扱いされてしまった)、興味があったのはお宮のすぐ脇から伸びている道路、「饒河街観光夜市」(ぎょうががいかんこうよいち、ラオハァジエグアングアンイエジィ)だ。夜市のような庶民的な風景を見るのは大好きだ。

しかし、ジーニアスは

「オレ、さっきからますます足が痛くなってきたんだよね。お宮の隣のコンビニで飲み物買って休んでるから、一人で行ってこいや」

と同行をやんわりと拒否。ならばとひとりででかけることにした。

この観光夜市は、一本道しかない非常にわかりやすい作りになっている。横道も、裏道もお店が並ぶということがないので、一往復すれば全ての屋台を見ることができる。片道500mくらいだという。

さあ、早速行くぞ・・・と思ったら、あれれ、なんだか閑散としている。そうか、時刻はまだ4時近く、夜市というだけあって昼間は屋台はでていないんだな。

ホントに台湾の人は夜猫子だ。夜になると出現する。

三媽臭臭鍋

とりあえず屋台が無い夜市を散策するのも趣向が変わっていて面白いだろうということで、まだ閑散としている道路を歩いてみる。

屋台ではないけど営業中の飲食店があったので、何屋だろうと看板を見上げてみて驚いた。「三媽臭臭鍋・松山店」と書いてあったのだ。なんじゃそりゃあ。臭豆腐、という存在は昨晩体験したが、このお店の場合「臭」が二つもついている。臭いのか?そんなに臭くてたまらないのか?

臭臭鍋が店頭で調理されている

店を覗くと、どぜう鍋を食べるときくらいの小さな鍋に野菜をたくさん入れて調理をしている真っ最中だった。小さいコンロ、小さい鍋がいくつも並ぶ。恐らく一人前なんだろう。こういう一人用鍋が外で食べられるのは、独り身のおかでんとしてはとても羨ましい。

それはともかく、「臭臭鍋」とななんぞや、と思ったら、メニュー写真があって、「大腸臭臭鍋」と書かれてあった。そのまんまやん。ちゃんと下洗いしたり下ゆでしてあるんだろうか、大腸菌が心配になるようなネーミングだ。まあ、多分大丈夫なのだろうけど。他には「海鮮豆腐鍋」などがあるので、臭うぞーというのはメインの1種類だけのようだ。

台湾人Aさんに後ほど「何で臭臭って名前なの?」と聞いてみたところ、「そのほうがちょっと面白い、可愛い感じがするからだと思う」だって。うへぇ、日本人の感覚とはちょっと違うんだな。日本人だと「臭さ倍増」って感じで敬遠する名付け方だ。

恐らく日本人って昔は臭う物はあまり得意じゃなかったんじゃなかろうか。「臭い(くさい)」と「臭い(におい)」って漢字が一緒であるところからも、それが伺える。だから、台湾のこういう店名や料理の名前に非常に抵抗感を覚えるのだろう。

屋台が出てくる前の道路

屋台が出てくる前の道路を歩くのもいいもんだ。

なるほどねー、という感だ。

今まで見てきた屋台街は、大抵道路の両脇に出店していたが、この饒河街観光夜市の場合、通りの真ん中が屋台場所として公式に認定されているようだ。四角い枠が道路に白線でひかれてあって、四隅にナンバーが記されている。何番の屋台はここで店をやりなさい、という指示なのだろう。

四店舗ごとに一つの島が形成され、島と島の間は歩行者用通路にされている。とてもユーザーフレンドリーだ。

これだと、屋台も運営できるし、道路脇のお店も営業できるし、もともとの商店街の人たちのビジネスを邪魔しないから良いね。観光客だって、実店舗と屋台をいったりきたりできるメリットがある。

そろそろ屋台が出てき始めた

感心していたら、そろそろ屋台が出てき始めた。あれ、どっかから引っ張ってくるのかと思ったら、道路脇の店の片隅から引っ張り出してきたぞ。どうやら、屋台を営業しているのは道路脇のお店の人らしい。昼も夜もお忙しいことで。夜のお店の営業はどうするんだろう。

しばらく観察していると、呆れるくらいてきぱきと屋台を組み立てていた。据え付けて、転倒防止のつっかえ棒をつけて、プロパンガスをつなげて、調理器具を並べて・・・。早いところだと、もう調理の下準備をはじめている。おい、臭豆腐を調理するのはもう少し待て。その臭い、嫌いじゃないけどあんまり積極的には嗅ぎたくないんで。

屋台は飲食店だけでなく、子供が遊べる射的なども含めていろいろあってこれまた感心。

士林のあの雑踏と複雑怪奇な道よりも、シンプルなこっちの夜市の方がじっくりと料理や屋台を楽しめる気がする。士林だと、雰囲気に飲まれる。しかし残念なことに、ここにはMRTが届いていない。台灣鐵路に乗って一駅とはいえ、MRTに乗るほどの気軽さはないのでちょっと惜しいところだ。まあ、それだけ観光客ズレしていない場所なのかもしれない。今度台灣に来る機会があったら、士林ではなくこういう「別の場所の夜市」を満喫してみたいものだ。

安東尼奥

どうでも良いが、アントニオというお店。ワニのロゴマークが描かれているところからすると、鰐皮のバッグでも売ってるのだろうか?シャッターが閉まっていて不明。なぜ写真を撮影したかというと、アントニオって漢字で書くと「安東尼奥」になるんだなってのが妙におかしかったから。ということは、アントニオ猪木は「安東尼奥猪木」ということになるんだろう。あんまり強そうじゃない名前になってしまった。

TAIPEI101前

さて話は一気に飛んでTAIPEI101前。

一気に飛んだも何も、タクシーでびゅーんといけばあっという間だ。タクシーの運転手さんに悪いくらいだ。
しかし、行き先を告げるときに一悶着。ジーニアスが「タイペイ・ワン・ゼロ・ワン、プリーズ」と英語で伝えたのだが、これが通じない。

「駄目だジーニアス、英語通じないぞ」

英語通じないのかー。タクシー乗るのも一苦労だな。非常に簡単な英語だったんだが」
「まあ、それをいったら、非常に簡単な中国語すらしゃべれていないわれわれが悪いっつー話にもなるけどな」

ちょっと待ってて、と筆談用に用意してあった紙に「TAIPEI101」と書いて運転手に手渡した。これなら完璧だ。しかし、運転手さん、悲しい事に老眼で字がよく読めない。台灣滞在中、老眼鏡が無いから字が読めねぇ、と駄々をこねる年寄りドライバーがたくさんいたが、お前らそんなんで車運転すんな、という感じである。何遍もメモ帳から目を近づけたり遠ざけたりして、ようやく運ちゃんは字が読めたらしく、「オーケーオーケー」だって。

「おい、オーケーという英語は理解しているらしいぞ!」

ちょっとびっくりするジーニアス。

さてそのジーニアスだが、この旅行中もっともわくわくしている時でもあった。到着初日からそのTAIPEI101に対する期待感はこの文章でも伝えてきたが、実際タクシーの中でも饒舌だった。

到着したTAIPEI101。高さ508m、「前日まで」世界最高の高さを誇るビルだった。営業稼働しているビルとしては今日時点でも世界最高だから、まあOKだ。101といっても、101階に展望台があるわけではなく89階と91階に展望台があるという。じゃあ残りの10階分はどうなっているんだ。VIP向け秘密会員クラブがあったりするのか。

建物の造りは、逆台形型を積み上げた形。日本では見かけないし、なんだかチャイニーズな印象を受ける(根拠無し)独特な風貌だ。建築には相当苦労したはずだ。台灣の高い建築技術が伺える・・・と思ったら、あれ、これ日本のゼネコンも入って作ってたんでスかそうですか。

TAIPEI101入口

TAIPEI101入口。

拭きぬけ
大行列のエレベーターホール

普通、展望階行きエレベーターといえば1階、せいぜい地下1階~2階くらいに乗り場があるものだ。しかしなぜかこのビルの場合、5階にあるという。エスカレーターをぐいぐい昇り、ブランドショップを尻目に5階に行く。乗り場に行ってみると、エレベーター乗り場に大行列。結構な繁盛を見せてるじゃあないか。

タコみたいな顔をしたゆるキャラ

そんな行列でお疲れの皆様を癒してくれるのが、このマスコットキャラクター。タコをイメージしているような印象だが、顔の構成が101となるように作られている。

正直、全然可愛くない。

後ろからけりつけてやりたくなるような顔つきだが、それでも子供には大人気だった。人形ものだったら子供は何でもOKなのだろうか、と考えてしまった。

TAIPEI101のチケット

これがTAIPEI101高速エスカレーターのチケット。1枚350元(1,400円)だから相当高い。横浜ランドマークタワーが1,000円だったと記憶しているので、それよりも高い。台灣物価を考えると、3,000円近い出費をすることになる。すごい。

それでもあのエレベーターの行列はというと、「一度は昇ってみたい」というただその一心なのだろう。一度はあっても二度目、三度目があるかどうか。

ちなみにこのエスカレーターも世界最速。時速60kmで打ち上げられ、38秒で89階までつくという。

エスカレーター表示1
エスカレーター表示2

ではわれわれもその速度を体感してみよう。

横浜ランドマークタワー同様、動き始めると証明が薄暗くなり、「スピードメーター」的な画面だけが明るく表示されて皆の注目を集める仕組みになっていた。

さすがに早い。

加速したかとおもったら、すぐに減速だ。

加圧・減圧もしっかりしていて、耳がつんとなる状態は全く起きなかった。

素晴らしいエレベーターだ。拍手。

あ、これも日本製でしたか。ううむ。

TAIPEI101解説板
台北101解説1
台北101解説2

エレベーターを降りたところには、まあ高層ビルの展望台ではよくありがちないろいろな展示物、喫茶スペース、お土産物屋などが並んでいた。加えて、このビルの場合は「どうだ世界一だぞ」展示に場所を相当割いていた。

世界の高層ビルベスト5の紹介なんかやっちゃって、当然1位のところには508m、台北101ビルとかかれている。あれ?日本語だ。

大変判りやすく、正しい日本語で解説文が書かれているのでやや拍子抜け。というかここは日本か?

いたるところに日本語解説が書かれており、日本人観光客が多いんだろうなということが伺える。まあ、隣国同士お互い仲良くしましょうということで日本語が多いのも良いんではないでしょうか。

それはともかく、ドバイに世界最高は抜かれてしまったので近日中には場所を移動させないと。No.2の場所に移動だな。ボードも書き直しだ。

TAIPEI101ボードの前で記念撮影

あんまり柄ではないが、せっかくなのでたTAIPEI101ボードの前で記念撮影。

窓から外を眺めてみる

窓から外を眺めてみる。

「見ろよおかでん、全然高いビルが存在しないじゃないか台北には。こんな高いビルを造る必然性なんてどこにあったんだ」

「あんまりなさそうだよなあ」

「てことは、『とにかく世界一を作るぞぅぅぅ』という情熱だけでここまでやってしまったということか」

「それにしてももう抜かれちゃったけどな」

「台灣人がっかりだな」

はるか彼方に高いビルが一つだけぽつんと見えるが、あれは台北車站の新光三越ビル。

無理やりポーズを作る

「写真撮ってやるからこのポーズをとれ」

「何でだよ」

「記念になるだろ?あのときあのポーズやっといて良かったーって後になって思うって」

「ホントかよ」

なんで女性のポーズを真似せんといかんのかいまいち納得できんまま、カメラに収まる。

今度は子供

「おかでん、次はこれだ」

「今度は子供か」

どうも、「TAIPEI101のある風景での1日の暮らし」を描いたボード群らしい。1日の時刻別に何枚もボードが用意されている。決してこれは記念撮影用ではないぞ。

でも、思わずポーズをとってしまう自分が悲しい。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください