温泉街のはずれに、大きな駐車場を持つ建物がある。これが、もうひとつのスープ入り焼きそばの有名店「釜彦」。
先ほど、「森林の駅」売店でおみやげ用のスープ入り焼きそばが売られていたが、それが「釜彦」の名を冠していたっけ。
そんな有名店だけど、ぜんぜん車が停まっていない。あれー?どうしたんだろう。もう14時を回っているので、お客さんがすっかり引けてしまったのだろうか?観光地、しかも幹線道路沿いのお店なので、まさか土曜日が定休日ということはあるまい。
ありゃー。「本日休業」の立て看板が店頭に据えてあるではないか。なんてこったい。
「なんだよー、休業かよー」
思わずぼやいたら、助手席のカツから
「ひょっとして、また食べようと思ってました?さっきあれだけ食べたのに」
と呆れられた。いや、まあ、既に食事は済ませているんだけど、「あわよくばもう一軒」を狙っていたのは事実だ。食べ比べ、したいじゃないですか。
「草だんご、ありますよ?」
おっしゃるとおりで。
「宿の夕ご飯をおいしく食べるためにも、ほどほどにしたほうがいいんじゃないですか?」
もう、全てそのとおりでございます。はい、未練を残さず、とっとと次へ向かいます。
うぉりゃー。
ようやく、ようやくだ。
これで本日の主題である「温泉療養」にたどり着ける。道中やるべきことは全部やった。お待たせしましたおかでんにおける肉体の各部位。ミシミシと凝りや詰まりで悲鳴を上げている日々はもう終止符だ。湯けむりまであともう少し。
いかんなー、結局チェックインは15時前だ。観光は極力省いたつもりだったし、実際に大幅にルートから逸れたことは一度もなかった。でもなんやかんやで盛りだくさんの観光をしちゃったし、時間もかかってしまった。
こういう「あれもこれも」をばっさり切り捨てるのも、温泉療養の大事な要素なのに。
まあもういい、過去のことを悔やんでも始まらない。前向きに湯船にダイブだ。
塩原11湯のうち、新湯と元湯はやや離れたところにある。新湯は、塩原から鬼怒川方面へ抜けていく有料道路、「日塩もみじライン」沿いにある。たぶん、冬になると近場のスキー場「ハンターマウンテン塩原」の利用客がよく利用するのだろう。
「宿に到着するためには、道路料金を払わないといけないのだろうか?」
とヒヤヒヤしながら車を進める。そんな馬鹿な話はあるものか、と思ってはいけない。万座温泉なんて、片道1,050円の万座ハイウェーを通らないとたどり着けないんだぞ(冬の場合)。
ほどなくして、建物が見えてきた。旅館らしい。
ここが「新湯」と呼ばれるエリアというわけだ。
宿が密集していたり、大型の華やかな旅館があるわけではない。大型観光バスで乗り付けるようなタイプの宿はないようだ。
この奥塩原新湯には、「日本秘湯を守る会」の会員宿が2軒も存在する。宿の総数にたいして、やらたと「秘湯を守る会」の割合が高い場所といえる。
「やまの宿 下藤屋」「秘湯にごり湯の宿 渓雲閣」がその2軒。以前僕は「秘湯を守る会」のスタンプを集めることをライフワークにしていたので、昔だったら必ずこの2軒のうちのどちらかに宿泊したことだろう。しかし今じゃ、「安い宿に泊まれればいいや」と妙に物分りがよくなってしまった。
写真では、ちょうど「渓雲閣」が見えている。
道路が大きくカーブするあたりが奥塩原新湯の中心的な場所らしい。
そこにちょうど今晩の宿、「湯荘白樺」がある。楽天トラベルで予約ができたということと、一泊二食付9,000円程度で泊まれること、さらには早い時間からチェックインできるという点で選ばれた宿だ。ちょうど写真正面が、白樺荘。
・・・あれ?そういえばここにくるまで、白樺の木って生えてたっけ?あれって、標高1,000メートル以上の山に生えるものだけど。まあ、宿の名前に過ぎないわけだから、あんまり気にしちゃだめだな。
湯荘白樺の前の駐車場に車を止め、下車するとそこはもう温泉風情。においが例のあれですわ、硫化水素臭。
いったいこんな普通の山奥に何で、と思うが、その正体は湯荘白樺の横からうかがうことができた。
「新湯爆裂噴火跡」と書かれた看板と、柵。その向こうには、荒涼とした山肌。
びっくりだ、このあたりは火山なのか。
そりゃそうか、湯量豊富な塩原温泉にしろ、いきなり何もなくお湯が吹き出るわけがない。火山があるからこそだ。
航空写真で確認してみると、この新湯エリアのごく一部だけがズル剥け岩肌ゾーンになっていることがわかる。なんて唐突なんだ。それ以外の場所は、全く何事もなかったかのように普通の「日本の山」してる。
けしからんなー、油断も隙もあったもんじゃない。これだと、実家の裏山もひょっとしたら温泉がボコボコ沸くかもしれん。温泉大国だもんな、ニッポンって国は。
そんな「新湯爆裂噴火跡」の柵の隣が、湯荘白樺。最高のロケーションじゃないか。お湯が「沸いたッ!何百年もかけて、ようやく地上に戻ってこられたッ!」と喜んだ瞬間に、もう湯船に注ぎ込まれているような距離感。いいぞ、温泉は生鮮食料品。活きがよければよいほど、すばらしい。
こりゃあ、「安く泊まれる宿」だなんて甘く見ちゃいけないな。実はこの界隈では最高の湯かもしれない。
よくぞ爆裂した際に建物が壊れなかったものだ・・・あ、「爆裂噴火」したのはずっとずっと昔の話か。
湯荘白樺のフロント。
外観からして色気はあまりない、質実剛健な宿ではあるけど、内装もしかり。昔ながらの温泉旅館といった風情。
館内の写真だけど、何でこんなアングルの写真を撮影したのか、今となっては覚えていない。
スキー板を立てかけておくところがあるから、だろうか?
いずれにせよ、すっげえワクワクしていていたので写真を撮りまくった、というのは間違いない。
客室廊下はこんな感じ。
室内。
二人で泊まるには十分の広さ。
部屋の窓から外を見ると、「塩原新湯爆裂噴火口」がバーンと、ドカーンと見えるのかと思ったけど、視界は開けていなかった。ありゃ?向きが違ったらしい。
ちなみに、地図を見ると爆裂噴火しちゃった山の名前は「富士山」というらしい。ナントカ富士、という富士山にあやかった名前ではなく、そのものズバリで「富士山」を名乗っているところがすごい。温泉にも期待したい。
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