大内宿を見て回る。
この地は、さすがに山奥深いこともあって外国人観光客の姿が少ない。
外国人観光客は貴重なインバウンド収入をもたらしてくれるけど、「騒がしくて折角の観光地の風情が毀損する」という残念な面もある。
特に、外国人観光客がたくさん訪れるところは、土産物屋での取扱商品が外国人向けになっていて、日本人からすると「うーん?」と唸ってしまうこともある。
その点この大内宿の媚びないところの素晴らしさよ。
いや、むしろこういうのが外国人にはウケるかもしれないが、とにかく地味だ。寒い冬の間、家でせっせと裁縫して作りましたといったものがいっぱい。
あいにく僕はこういうのを買って家に飾る趣味がないのだけど、小物好きならばついつい手に取って買ってしまうと思う。
正直、この僕でさえ、ネギはちょっと欲しくなった。
大内宿の最奥、突き当たりにある建物。昔から食堂として営業している。湯殿山、と彫られた石碑が建物の前に建っている。
街道なのだから、道路をデーンとふさぐような場所に建物が建っているのは不思議だ。
振り向くと、大内宿の町並みがほら、こんな感じ。
というのも、この食堂の背後には小高い丘が控えていて、ここがどん詰まりにあたる場所だった。
折角なので、丘に登ってみることにする。丘に登るのは初めてだ。
石段を登る。
それなりの人生経験を積まれたマダムやミスターが、「いやー、登るんじゃなかったァ!」と途中でアゴをあげてうめいていた。そんな坂。
丘の上からの景色。
よく大内宿が紹介される時、ここから写真撮影されている。特に冬の、雪がすっかり屋根に降り積もった状態の写真は有名。
こうやって見ると、アホみたいにまっすぐ街道は伸び、そしてずどーんと今僕がいる丘に突き当たっていることになる。
丘を下り、退却がてらいろいろなお店を見て回る。ちょっとつまめる軽食が、軒先でたくさん売られている。
カツの希望で、ねぎそばは二人で1人前にとどめてある。その分空いた胃袋を、この手の買い食いで満たそうというわけだ。
おい、前方を見ろ!「そば粉の天ぷらまんじゅう」というのがあるぞ!120円という値段も手頃だ!
速攻で買う。
笹の葉でくるんだ、そば粉の天ぷらまんじゅう。うまそうだ。
揚げまんじゅうだけど、しつこくなく美味なり。あんこが加熱されていると甘さが際立つけど、油の甘みも加わってうまいよなこれって。
道路脇の茂みには、つくしがたくさん芽吹いていた。
ここも蕎麦屋。
食事を済ませたまま、まだ片付けられていないテーブルが見えた。
あらー。
どうやらねぎそばを頼んだらしいが、ねぎを大して食べないままごちそうさまをしてしまったらしい。奥の丼はある程度ねぎをかじった形跡があるけれど、手前はほぼ手つかずの長さ。
単に箸として利用しただけなのだろう。もったいない。
とはいえ、ねぎをかじると、かなり辛い。「折角だから」と、無理してねぎをガリガリかじる必要はあるまい。そうか!こういう優雅な、贅沢な食べ方もあったのか!と今更ながら目からウロコだ。
僕なんか、「ねぎがあるからには全部食べるゥ!」と一人息巻いていたというのに。でも、その食べ方は面白いんだぜ?だんだん尺が短くなるねぎは、箸として使いづらくなる。どうやって蕎麦を食べつつねぎを食べるか?というバランス感覚が、愉快なんだなこれが。
いももちや岩魚を炭火で炙って売っているお店もある。
こういう場所だと、やっぱり炭火だよな!間違ってもケバブなんて売ってはいけない。売れるとは思うけど。物事には暗黙の了解というか、風情ってのがあるのでね。
おっと、いももちを買おうとは思わなかったけど、この「しんごろう」というのは気になるぞ?なんだこのネーミング。
1本200円。買ってみよう。
半突きの米に甘味噌を付けて焼いたもの。五平餅のようなものだ。
形がマッチのようで面白い。
ついでに山ぶどう果汁100円も買ったった。
「ぶどうジュース」だったら買わないけど、「山ぶどう果汁」だったら買う。こういうのも、旅情だ。
山の観光地で、「折角山に来たんだから!」と言いながら、山菜そばを食べる人を馬鹿にはできない。その山菜は中国産の水煮ですよ、と思っても、旅情なんだから仕方がない。
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