「ミニ温泉湯治シリーズ」として、2014年12月の那須湯本温泉を皮切りに、四万温泉、大沢温泉、鬼怒川温泉と療養を続けてきた。
この頃の僕はかなり頭がオーバーチューンされていて、余計なことを考えて一喜一憂したり随分疲れやすかった。だからこそ、温泉に単身乗り込み、今晩のメシを気にしたり、休みの日にお出かけする場所をネットで調べたりしなくてよい環境を無理矢理作ってゆっくりと過ごすことは大事だった。
その甲斐あって、ずいぶん気持ちがほぐれたのは実感している。ただし、平日に何泊も遠方の温泉に繰り出しているわけで、仕事の面でも金銭面でも、随分と贅沢をしたことになる。
こんな贅沢はいつまでも続けてはいられない。不労所得を得ているわけでもないし、プロレタリアートおかでんはちゃんと働いて稼がないといかん。
とはいえ、温泉療養は今後計画的に設定し、頭がカリカリし始める前に湯船にドボン、としようと決めた。転ばぬ先の杖だ。
家で長風呂に入るのでいいじゃないかって?それじゃダメなんだ。それだと、「風呂から上がったあと、何のご飯を食べようか?」「ご飯を食べながら、何の録画済みテレビ番組を見ようか」なんてあれこれ考えてしまう。そういうものを考える余地がないのが、宿に泊まるということだ。
メシは既に用意されたものだし、録画されたテレビなんてそもそも存在しない。あと、家の風呂だと、暇つぶしと称してスマホを浴室に持ち込んでしまう。これでは全く脳が休まらない。
2015年3月は「のっとれ!松代城」があったので、一応松之山温泉に一泊している。仲間と一緒だったので、「リラックスのため」ではなかったけど。
で、2015年4月。あらためてどこか温泉に行ってこようと思う。こんな時、オレ様の「一人で泊まれる安宿ストック」が火を噴くぜ。じゃらんや楽天トラベルで、「一泊1万円以下、一人泊OKかつ魅力的な温泉が湧く宿」を既に調査済みだ。さて、今回はどこへ行こうか。
今回は、僕一人ではなく同行者がいる。「あくまでも療養目的だからね?」「できるだけ観光はしないからね?」と相手には言ってあるが、そうはいってもついつい欲が出てしまい、「折角だから」の殺し文句とともに計画が詰まっていった。相手の意に沿うまま、というよりは、むしろ自爆だ。自ら予定をどんどん入れてしまった。これまでの教訓が全く活かされていないことが露呈。
さて、今回宿泊するのは、奥塩原温泉新湯。
有名な塩原温泉からさらに奥に入ったところで、塩原から鬼怒川に抜ける「日塩もみじライン」の途中にある。
「あれこれ観光を詰め込まないようにしよう」というのが今回のテーマなのだけど、宿に向かう途中にちょっと立ち寄るのはセーフ、ということにした。幸か不幸か、東北自動車道のインターから下りて宿までの道中、あれこれと観光地がある。そういうところに「ちょっと休憩」することにした。
あくまでも、車の機動力を活かしてあっちこっちには行かない・・・という縛りを設定して。日光だの鬼怒川だの、那須湯本方面だのに行くのは簡単だ。しかしそのあたりまで視野に入れ出すと、きりがない。僕の性格だと、「なんとか短時間で観光地を効率よく回ろう」として、計算しまくって疲弊する。それじゃダメだ。療養の意味がない。
初日は、塩原温泉を中心にちょこっとだけ観光をすることに決めた。これまで、素通りばかりして、まともにこの地を見て回ったことがないからだ。で、宿は12時からチェックインできるということなので、早々に宿に入ってあとはグッタリする。夕飯まで6時間近くもあるとは、最大級の贅沢だ。
2015年4月17日(土) 1日目
早く宿に着いてのんびりするには、早く家を出る、それに尽きる。
朝7時過ぎに家を出て、東北自動車道・西那須野塩原を下りたのは10:10だった。やばい、チェックインができる時間まであと1時間50分しかない。
さすがに12時チェックインができるとは思っていないので、そんなに慌てるつもりはない。とはいえ、今回は一泊しかしないので、現地でのんびりとはできない。できるだけ早く宿には到着したい。お湯に入って「ああ~」と嬌声をあげたい。特に奥塩原の湯は白濁した良いお湯だと聞いているし。
10:10
はやる気持ちを抑えつつ、まず最初に向かったのは千本松牧場。インターのすぐ近くにある。
特にここで何かをしたいというわけではないけど、「牧場」って山方面にドライブした際、格好の旅情かきたて地点だよな。売店で牛乳とかチーズが売られていると、無駄にワクワクしてしまう。非日常感の象徴的な存在だ。なので、旅の途中に観光牧場があると、ついつい立ち寄ってしまう。
この牧場の存在を知ったのは、前年12月に那須湯本で温泉療養をした帰り、東京行きのバスがここに立ち寄ったからだ。バス停の名前が「ホウライ」だったため、なんだそれ?ととても気になったので、未だによく覚えている。
今こうやって看板を見ると、「ホウライの千本松牧場」と書いてある。ホウライ、という会社が運営する牧場ということらしい。
ちなみに高速バスの停留所は、「ホウライ」の次が「千本松駐車場」で、この牧場のために2つも用意されている。それだけ広いということだ。
千本松牧場の売店。
かなり大きいので圧倒される。いかん、ここでゆっくり滞在すると半日は潰れそうな予感。
千本松牧場の案内図。「食べて、遊んで、楽しい一日。」というキャッチコピーが書かれているが、その名の通りアホみたいに広くて、いろいろな施設があった。東京ドーム178個分の広さ、というからケタ外れだ。
温泉があるやら、ジンギスカンが食べられるところがあるやら、動物ふれあい広場やパターゴルフ、アーチェリー、熱気球・・・本当にここで遊んで過ごせそうだ。
最初からそういう覚悟があるなら、ここでだらっと半日過ごして、そのあとに宿に向かうというのも良かったと思う。しかし、既に宿に向かう道中、あれこれ予定を入れちゃってるんだよなあ。あらためてここにはゆっくり訪れようと思う。
千本松牧場の桜並木。
やあ、こんなに桜が奇麗に咲いているとは思わなかった。満開で、とても奇麗だ。那須高原界隈は、4月中旬が桜の見頃なのだな。
東京でも花見はやったけど、あいにくの雨で残念な結果だった。それをここで取り返すことができた。しかもこの咲き乱れっぷりよ。もう今日はこれで終わりでもいいや、というくらい満足度高し。
野外ベンチがあるし、いろいろな食べ物を売っている屋台はあるし、花見をするには言うこと無しだ。敢えてここまでお花見ドライブっていうのは、十分アリだと思う。ここは入場料がかからない場所だし。
売店の軒先から随分前に出たところに、玉ねぎが山積みになって売られていた。自己主張激しいな、おい。道行く人々に熱烈PR中。
みっちり入って一袋100円だという。そりゃ安い。今思うと、ぜひ買っておくべきだった。しかし、旅の一発目で、重たい玉ねぎを買うという気にはどうもなれなかったのでこの場はパス。
それにしてもややこしい。玉ねぎは北海道産だという。別に那須産ではない。で、サッポロビールのケースが土台になっていて、北海道産と微妙にリンクしている。しかしその上には、ヤマザキパンのケースが乗っかり、そこに玉ねぎが積んである。もう何がなんだか。
売店でイヤなものを発見してしまった。
僕の大好物、スタンプラリーだ。
「あーあ」
思わず声を上げてしまう。見てしまったからには、やらざるを得まい。いかんなー、温泉でゆっくり療養するのが目的のはずなのに。
しかしこのスタンプラリーは、3カ所を巡ればオッケーという非常に簡単なものだった。しかも、その3カ所全てがこれから訪れる場所だった。なんだ、これなら楽勝だ。全部スタンプを集めよう。
知らず知らずにウキウキしている自分。「あーあ」とか言っておきながら。
食堂では、ジンギスカンができる。牧場ではすっかり定番料理であるジンギスカン。何でだろう?その牧場で飼われていた羊が、朝締めでそのまま食べられます!というわけではあるまい。ちゃんと公営のと畜場で処理されたものを使っているわけで、牧場イコール肉がうまい、という方程式はまったく当てはまらない。でも、これが「旅情」ってやつなんだろうな。
実際、「じゃあお前、牧場に行ってお昼ご飯食べるとなったら、何を食べたい?」と聞かれたら、「ハイ先生、ジンギスカンが食べたいです!」と即答するはずだ。いかんなー、大いなる惰性だなー。でも、「うどんでいいです」とか、「牛丼が食べたいです」というわけにはいくまい?つまらないだろ、それじゃ。
ちなみにこのジンギスカンが食べられる食堂、名前が「ジンギス館」っていうんだぜ。イカしてるだろ?駄洒落だぞ。
先ほど入手したスタンプ用紙を手に、この地でゲットできるスタンプを探す。
事務所にある、ということなので、探し当てたのがここ。時計台が目印。
そういえば、「牧場でジンギスカン」というのがベタベタのイメージだけど、それに加えて牧場って洋風・・・敢えて言うなら、スイス風・・・でなくちゃ様にならないよな。茅葺きの牧場とか、数寄屋造りの建物じゃ、観光牧場としては成立しないと思う。
あったあった。スタンプを発見したので、まずは「千本松牧場」の欄にスタンプをぺたり。
残り2カ所は、「もみじ谷大吊橋 森林の駅」と、「塩原もの語り館」にあるのだという。
3つ溜まったスタンプを提出する場所によって、貰える景品は違うようだ。千本松牧場に提出すればお菓子だけど、「塩原もの語り館」に提出すると「粗品」だそうだ。僕らは塩原もの語り館に提出する見込みなので、「粗品」が貰えるらしい。うわあ、なんだろう粗品。
こうやって心がフラフラと流される。全然精神の療養になっていない。・・・が、まあいいか。あくまでも「療養のための宿に向かっている道中」の出来事なんだから。
宿についたら、じっくり療養するぞ!いやホント、マジな話。そのために、周囲に歓楽街なんてない、山奥の温泉地を選んだんだから。
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