小太郎茶屋到着。
それにしても迫力がある。今にも雨が降り出しそうな天気だから、というのもあるけど、木造建築の凄みというか、湿っぽさというか、古めかしさが際立つ。
まさに「崖っ淵」に立つ、細い建物。小太郎ヶ淵にあるのだから「崖っ淵」なのは当然っちゃあ当然。
てっきり建物の中に入って飲食するものだと思っていたけど、中は厨房兼倉庫という位置づけらしく、お客さんは屋外のベンチで飲み食いすることになる。
味わい深い建物なので、思わず「ほへー」と口をあけて見上げてしまう。
かすれた字で、「名物力だんご」と書かれた看板が二階の柵に掲げられている。広告宣伝効果は皆無に等しい。
ところで、「力だんご」なるものはお品書きにはない。あるのは「草だんご」だ。昔はあったのだろうが、いつしか消えてしまったらしい。
お茶を振る舞っていただき、お土産用の草団子が用意できるまで待つ。
建物の中には入れないけど、建物前は大きなビニールでひさしが作ってあり、一応雨はしのげるようになっている。しかし、風を伴う雨だと、全然ダメだと思う。横ががら空きだ。
「折角だからここで食べていこうか」
とカツと話をしていたのだけど、お昼を食べたばかりでおなかがすいていないし、ということでお持ち帰りにした。宿で食べることにしよう。そういえばさっき、とて焼も食べたんだっけ。
この景色を見ながらの草団子はなかなかワイルドだと思うが、いかんせん天気が悪い。気候もまだ暖かいとは言いがたく、薄ら寒い。新緑の季節になれば、さぞや心地良いだろう。
そういえば「草団子」に入っている「草」ってなんだ?ヨモギか?・・・まだこのあたりにはヨモギが生えるほど暖かくはなっていないようだ。
草団子を受け取り、小太郎茶屋を引き上げる。
あらためて帰り道を見ると、すごいなこれ。ほんっとに薄っぺらいベニヤの上を歩いてやってきたんだ。雨で濡れてテッカテカになってるし、これは人によっては怖くて足がすくむ人がいるかもしれない。実際はそんなに危険ではないのだけど。
それにしてもすごい所に茶店があるものだ。これまで見てきた中で一番すごい。良い体験ができた。塩原にお越しの際は是非こちらへどうぞ。
茶店の人から、「帰り道は来た道を戻らず、そのまま進んでいくように」と指示を受けていた。ええ?サルが出てくるような未舗装の山奥ですぜ。これ以上山を分け入れ、というのですか?
疑心暗鬼になりながら車に乗り込んだら、ちょうど一台の車がこちらに向かってやってきていた。ああなるほど、往路と復路を同じにしてしまうと、道路の幅が狭いから立ち往生になってしまう。なので、一方通行にしてくれ、ということなのだろう。
納得して、奥へと向かっていく。
未舗装の道路はさほど長くなく、ほどなくして舗装道路に戻った。それにしても一体どこへ向かってるんだ、我々は。
草団子を買うために、往路はサルに脅され、帰り道は細い道を走る。しかも肝心の草団子を売っている茶屋は、ベニヤ板を並べただけの橋を渡った先だ。なんだこの野蛮ライフは。
杉の木の間を走る。
おっかなびっくりだったけど、ちゃんと塩原温泉に戻ってきた。ほら、大型のホテルが見えて来たぞ。
そうだ、水分を買っておかないと。
今回、ちと調子に乗りすぎて観光をしているけど、本来の目的は温泉療養だ。これからはしこたま風呂に入る予定だ、そうしなければここまで来た意味がない。そのためにも、水分をしっかりと補充できる体制をとっておかないと、激しい便秘になる。
過去の温泉療養シリーズでは、便秘に苦しめられたり、便秘を恐れて薬を飲んでおなかを壊したり、そっち系では苦しめられてきた。結論として、風呂に入って汗をかいたら、その倍くらいは水分を摂ろう、ということだ。
ヤマザキデイリーストアが道路脇にあったので、ここで2リットルペットボトルのお茶を買っておく。これで心置きなく、ぐいぐい飲む事ができる。
塩原温泉街の外れに、「源三窟」という場所がある。なにやら怪しい雰囲気の鍾乳洞だということは分かったが、そのままスルーした。源氏の落ち武者がこの鍾乳洞に隠れていたという伝説があるのだとか。
え、源氏?「平家の落人伝説」というのは日本各地あちこちにあるけど、源氏にもそんなパターンがあるのか。なんでも、源氏でも、義経に味方していた武士たちは頼朝に追い立てられていたんだとかなんとか。へー。
へー、とかいいながらそのままスルー。
「武具資料館」などいろいろコンテンツがあるようだけど、おとなしく鍾乳洞として営業していたほうが入りやすかった。「なんか、面倒臭そうだね」とかいいながら、観光の選択肢から外れてしまった。
さあ、あとは今晩の宿である塩原新湯に向かうだけだ。12時からチェックインできるのだし、とっとと宿に向かったほうがいい。一刻も早く、だ。
だけど、まだ塩原のB級グルメに未練があったのは事実。いや、別に栃木名物の「しもつかれ」をカレーにした「しもつカレー」が食べたいとか、そういうわけではない。そんなものまで食べ始めたらきりがない。
でも、せめてッ・・・せめてあともう一つくらい、とて焼をッ・・・。
というわけで、通り沿いにあった和菓子屋、美由堂を訪問。小さなお店だ。
あれ?とて焼きをやってますよ、というのぼりが出ていない。大丈夫だろうか?
とはいえ、「とて焼き売り切れ」を示す青いのぼりは建物の裏に片付けてあった。多分やっている・・・のかな?
おお、店頭には「塩原名物とて焼」という記述があるぞ。
「当店のものは『和珈琲とて』」と書いてある。
珈琲ゼリーと生クリーム、そしてかりんとう饅頭の皮を刻んだものが入っているらしいぞ。
お店の中に入り、店員さんに聞いてみたら「本日はもう売り切れ」なんだそうだ。なんと、まだ14時だというのに。
やっぱり、クレープ屋のようにそれ専門でやっているわけじゃなく、片手間でとて焼も売っているのだから、品切れは起こりやすいのだろう。食べたいのならば、タイミングには気をつけないと。
かりんとう饅頭を試食していってくれ、と店員さんに薦められたので、ありがたく頂戴していく。
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