
14:19
桜が丘団地跡の脇に、人工河川のような溝がある。これが「流路工」なのだろう。来たるべき次の噴火のための備えとして静かに待機している。
そしてその奥に、えん堤がある。あのえん堤でまずは泥流を食い止め、それでも溢れたものは流路工に沿って下流に流す、という二段構えになっている。
ここで、何やら困った様子で右往左往している女性二人と出会った。中国人の親子で、観光でここに来たけど道に迷ったのだという。驚いた。ツアー旅行で有珠山というだけでも驚きだけど、個人旅行で有珠山か。しかも、親子単独で噴火口まで見に行こうだなんて。まあ、結果的に道に迷ってしまったわけだけど。
入り口で地図をもらわなかった?と聞いたら、もらわずにスルーしちゃった、という。あらら。道理で。シンプルな遊歩道なのだけど、ここから先にまだ進んで良いのかどうか、判断がつきかねたのだろう。
じゃあ一緒に噴火口を見に行きますか、ということで僕が彼女らを案内することにした。

14:38
親子は上海から来たのだという。へえ、上海なら僕も二度行ったことがあるよ!と会話を盛り上げようと思ったけど、言葉が出てこず断念。ちなみに会話は英語。
団地から流路工の脇を通り、木の実沢と呼ばれる沢を登っていく。すると、何やら噴火口らしいものが見えてきた。あれかな?

あった。
「有くん火口」分岐点、という看板があった。2000年4月に噴火した最大の火口。
この遊歩道を挟んで反対側には、「珠ちゃん火口」というのもある。そっちの火口は写真が残っていないので、遊歩道からはうまく見えなかったのかもしれない。記憶が残っていない。

14:41
有くん火口。
今は噴火口に青とも緑ともつかない色をした水をたたえている。静かなものだ。噴煙は一切ないし、始終ガラガラと崖が崩落しているような音もしない。しん、と静まり返っている。
これはこれで風情があるのだけれど、上海からきた親子は満足してくれただろうか?「なんだ、せっかくここまでやってきたのにこの程度か」と思われないだろうか、と少し心配になる。僕が心配するこっちゃないのだけれど。

有くん火口から眺めた洞爺湖。良い眺めだ。
でも、地味にこれだけの高低差がある、ということだ。噴火して、ここの土砂がどーっと流れ出したら、そりゃあ木の実沢沿いは大災害だ。
沢が埋まった状態が今この光景なのだから、昔はもっと谷が深かったのだろう。

有くん火口の縁は、登山用語で言うところの「馬の背」状態だ。非常に細い稜線になっている。平均台のようなものなので、お調子者が「この火口縁をぐるっと一周回ってくる!」なんてやると、途中で足を滑らせて火口に落っこちそうだ。
火口の水は、火山成分を含んでいて強酸性だったりするかもしれない。うっかり落ちたくはないものだ。火口縁には近づかないほうがいい。しかも今、雨のせいで地盤が緩んでいるし。
それにしても、富士山のような石や岩が全然みられない。土だ。で、火口がこれほどまでにごっそりとえぐれているわけで、じゃあその土砂はどこへ行ったの?というと、空中に舞い上がったり、団地を埋めたりしたわけだ。大地は人間のスケールと大違いだ。

14:52
お互いに記念写真を撮ったりして、有くん火口を離れる。

15:02
帰り道、カーブミラーが自然と一体化しかかってうなだれているのを見かけた。これも旧国道230号線の残骸。
ミラーが割れないまままだ残っているので、ぎょっとする。

ここで強い雨が振ってきた。少々濡れたくらいではびくともしない僕だけど、さすがにこれはやばい、と思えるレベルの叩きつけるような雨だった。でも大丈夫、登山装備一式を持参しているのでレインウェアだって・・・ああ!レインウェアは車の中に置きっぱなしだ!
肝心のときに役に立たなかった。
逆に、上海親子の雨がっぱ1つを三人で頭にかぶせ、ムカデ競争のようになりながら駆け足で下山する。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (2件)
「内海湾」ではなく「内浦湾」ですね。
つまらない指摘でごめんなさい。実は10年以上前から愛読してます。
米こうじさん、間違いの指摘ありがとうございます!こういうアドバイス、地味にありがたいことです。これからも愛読をよろしくお願いします!