15:22
上海の親子とえっさえっさと小走りで駐車場に戻ってきた。彼女たちは洞爺湖温泉のホテルに泊まっているということだったので、筆談でホテルの名前を確認し、玄関先まで送り届けた。
ホテルの名前が中国名と日本名だと異なるので、「こんなホテル、地図を見てもどこにもないぞ?」と首を捻ることになった。スマホで検索しても出てこないし。結局、人力ナビに頼りながら、目的のホテルにたどり着けた。
別れ際、二人と固い握手を車中で交わした。この雨の中、噴火口を見に行ったのは良い思い出であり相棒だ。
しかし、慣れない英語を急に喋ろうとしたものだから、「グッドラック!」と言ってしまった。違う違う、それは言葉のチョイスがちょっと違う。あわてて、「Have a nice trip!」と言い直した。

15:22
ものすごい雨で、びしょ濡れだ。パンツの中までぐっしょりだ。よし、この勢いならきっとできる、服を着たまま、屋外でおしっこをするという野望をッ・・・!
そんな野望を自分が密かに持っていたことに驚いたけど、「屋外で」という但し書きつきというのにも驚いた。じゃあお前、屋内なら服を着たまま放尿したことがあるんか?と。
全部違う、僕はそんな趣味はない。信じてくれないかもしれないけれど、本当にそうなんだ。
それはともかく、次の目的地に向かう。「岡田屋」という甘味処だ。
つい数年前まで、自分が甘いものを求めて旅先を定めるなんて考えてもいなかった。でも、甘いものっていいよな。今更だけど。

白いおしるこ、だなんて面妖な。おしるこは黒い、と相場が決まっている。
よく偉い人の横暴さに対して、「あの人が『カラスは白い』といえば、黒いものも白くなる」なんて陰口を叩いたりする。それくらい、カラスは黒いものだ。同じようにおしるこは黒だ。
でもよく考えると、おしるこの中に入っている団子は白い。そうか、小豆を使わないで別の豆を甘く炊けば、白いおしるこは可能かもしれない。その発想はなかった。調べてみると、大福豆と牛乳を使っているらしい。へー。
ちなみに、僕はこれまでに「白いオムライス」や「白い酢豚」というのを食べたことがある。でも、本家の黄色いオムライスや茶色い酢豚を上回る味だとは思わなかった。奇をてらっていて面白い料理ではあるけれど。

白いおしるこ、350円。「幸せの白いおしるこ」は白いおしるこの上に雪見だいふくがのっていて+50円の400円だそうだ。温かいの、冷たいのがある。いやいやいや、今雨でびしょ濡れだし、当然温かいのをいただきたい。
お店の方も、「そうですよねー」と笑ってオーダーを受けてくれた。
白いおしるこ、英語の解説によると「white soup with rice cake」と書かれていた。ライスケーキ?なんだろう?と思ったら、ああ、白玉のことか。おもわず、雷おこしみたいなものを想像してしまった。

白いおしるこができるまでの間、店内を見渡す。
やー、こういうところにもアニメのタイアップっぽいポスターが貼ってある。本当に全国各地の観光地で、萌え絵を見るようになった。すごい時代になったものだ。なにせ、自衛官募集のポスターに萌え絵を使う国だ、日本最強。
「天体のメソッド」と書かれているので、そういう名前のアニメの舞台になったのだろう。
ただ、今後はこういうポスターもポリティカル・コレクトネスが厳しく問われてくるようになる。観光協会制作のものならなおさらだ。うかつにおっぱいが大きい女の子が描かれていたら、いろいろ指摘を受けそうだ。
じゃあ胸が小さければいいのか?それはそれでまた一定のニーズがありそうな気が、とかあれこれ考え始めると袋小路に入ってしまう。

これが「白いおしるこ」の温かいバージョン。350円。
へー。ホットミルクのような見た目だけど、たしかに甘い香りがするし、団子が中に入っているのがちらっと見える。

団子さんちわーっす
食べてみると、うん、「おしるこ」ではないけれど温まって美味しい。おしるこというのは、つぶあんのザラザラしった食感も含めて食べるものという印象だ。シャバシャバしたタイプのおしるこもあるけれど、それはちょっと物足りない。
この白いおしるこが物足りないというわけではないけれど、「おしるこ」という言葉に引きずられると「ん?」と戸惑いが生まれる。面白いものだ、人間っていかに先入観でメシを食べ味覚を感じているか、ということだ。

15:41
本来の僕なら、温泉街をうろつきまわるのが好きだ。旅館の裏側とか、お土産物屋が並ぶお店の隙間の路地とか、大好きだ。でも、今回はすっかりそれを忘れてしまっている。洞爺湖温泉しかり、今朝まで滞在していたニセコ比羅夫もしかり。
車でびゅーんと次の目的地を目指しちゃうから、歩いてフィールドワークをする、ということをうっかり忘れてしまう。また、北海道の温泉街自体が、本州にあるようなゴチャッと密集した作りになっていないのでこちらを油断させてしまう。
後で地図を見ると、洞爺湖温泉の温泉街もちょっとうろついても良かった。洞爺湖神社なんて、参拝してみたかった。面白いもので、神社の鳥居は山側にあって、参道から本殿は洞爺湖方面に向かっている。そりゃそうだ、「洞爺湖神社」なのだから。でも、すぐ目の前に火山という猛烈な大地のエネルギーがたぎっているのに、そちらに背を向けて静かなる洞爺湖を祀っているというのがおもしろい。
それはともかく、今回目指したのは「北海道洞爺湖サミット記念館」へえ、サミットが開催されると、開催地にこんな施設ができちゃうのか。
訪れてみると、「G8」と書かれた看板がたかだかと掲げられている。G8の文字の上には植物の双葉が描かれているので、環境などを意識した会合にするよ、という意気込みをここに込めていたのだろう。今となっては、洞爺湖サミットでなにが主要議題になったのか覚えていないけれど。

で、だ。
建物の中に入ると、先程ポスターでお見かけした女の子たちがずらりと並んでお出迎えとは一体どういうことだ。これがG8の首脳ということなのか。どうなってるんだ洞爺湖。

建物3階がサミット記念館になっているということなので、階上に向かう。

サミット自体は先程見た山の上にある悪の巣窟「ウインザーホテル」で開催されていたので、ここにあるのは施設を移設したものだ。でも、実際にサミット会場を再現した施設になっているようで楽しみだ。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (2件)
「内海湾」ではなく「内浦湾」ですね。
つまらない指摘でごめんなさい。実は10年以上前から愛読してます。
米こうじさん、間違いの指摘ありがとうございます!こういうアドバイス、地味にありがたいことです。これからも愛読をよろしくお願いします!