ただいま、わが愛しの山小屋泊【焼岳】

2017年登山シーズンは、昨年果たせなかった「山小屋泊を伴う登山」を敢行するつもりだ。

ただ、「体力がついたら山に行こう」「もう少し体重を絞ってからにしよう」と思っていると、あっという間にシーズンが終わってしまう。昨年は、まさにそうだった。こちらの気力体力と、お天道様とがうまくかみ合わなかった。

2017年は4月に早速鎌倉の山を歩き、山小屋泊登山に向けた気持ちを固めていた。

神社仏閣町歩き、おまけに登山【鎌倉・衣張山】
僕が勤めている会社には山サークルがあり、ごくたまにその活動には参加している。つまり、幽霊会員だ。 登山というのはチーム戦のスポーツではないので、「毎週○曜日に集まって、練習!」なんてことはない。そのため、MLで「今度○○山に行きます。...

衣張山は「登山」とは呼べない、とても低い山だ。でも、仲間とここを訪れ、歩くというのは「よし、今年は登山をガッツリやるぞ!」と気持ちを作るきっかけになる。

春のうちから低い山に登っておく。これが、夏になったときにビシビシと高い山に登っていくために必要なのだろう。

僕は、2017年の春に「さて、今後どうやって生きていこう?」と真剣に考える時期があった。独り身で今後過ごしていくにあたって、どういう「コアとなる生きがい」を持つのか?ということだ。

もちろん、その中には「日本百名山を死ぬまでに全部巡る」というものが含まれている。しかし、まだ折り返し地点に到達したに過ぎず、本当に死ぬまでに間に合うんかいな、という不安がある。歳を重ねるにつれ、気力も体力も財力も落ちていく。キツい山こそ、早いうちに登っておくべきだと思う。

・・・しかし実際はどうだ?「とにかく、登山数を稼ぎたい」という一心で、ついつい近場で楽そうな百名山ばかり登っている有様だ。このままだと、年老いた時になってみると、交通が不便だったり、激キツの山ばかりが取り残されてしまう。もう少し、遠出しなくては。

なので、もう今回はいきなり「泊まりを伴う山」に行っちゃう。「シーズンラストまでに体力を作っていこう」なんて悠長なことは言ってられない。

かといって、いきなりキッツい山にトライして、途中で立ち往生したり遭難するのはまずい。「比較的楽で、でもちょっと面倒くさい山で、ついでに一泊する山」がいい。

・・・どこだよ、そんな山。

でも、あるんだなこれが。それが、焼岳。

上高地を見下ろす位置にある山。上高地の中心地、河童橋から上流を見れば億穂高、下流を見れば焼岳がある。

ここは、上高地から日帰り登山ができる山だ。しかし、山の中腹に「焼岳小屋」という小さな山小屋があり、そこに泊まることもできる。朝東京発で、その日のうちに焼岳日帰り往復は到底無理なので、焼岳小屋に宿泊するという計画が手頃だ。

一泊二日かけて登るならば、比較的楽だろう。今回のターゲットは、ここにした。だいたい標準コースタイムが7時間で、標高差は1,000m。

2017年07月28日(金) 0日目

ネットでバスを予約する

すんなり「焼岳に行くぞ」と決まったかのような文章を書いたけど、実際はもうちょっと迷って、立ち止まって、「やっぱり来週にしよう」と考え直すというプロセスが挟まっている。

普通、7月の海の日を過ぎてお盆までの間というのは、大変に気候がよいものだ。梅雨が去り、太平洋高気圧が日本列島を覆うからだ。台風が頻繁にやってくるまでのこの期間は、まさに登山日和と言える。

しかし、人と同じことをするのがイヤ、というか、敢えて混雑する季節に山に登るのがイヤな僕は、この「7月下旬から8月上旬」シーズンは登山をしたことがない。中学時代の林間学校で強制的に裏山に登らされた時以来だと思う。

つまり、そういう「僕が敢えて避けるシーズン」に今回はずれ込んでしまった、というわけだ。本来ならもうちょっと早く山に入るはずだった。でも、そういう気合いが入っている時に限って、週末は天気が悪かったりする。

この週末も天気が良くなかったのだけど、もう交通機関のチケットを確保しちゃったからしょうがない。キャンセル料がかかるのはもったいないですよね、行くしかないですよね、と自分自身に踏ん切りをつけた。

上高地周辺の地図

久し振りの本格登山、ということで地図の印刷とか登山届とかに余念がない。

今回の焼岳は、特に道に迷うようなポイントはない。しかし、大人のたしなみとしてちゃんと地図は携行したい。

かといって、毎回毎回、登山時の必携アイテムである「山と高原地図」(登山道と、コースタイムが記された山岳地図)を最新版に買い直すのはお金がかかってしかたがない。どうしたものかな、と思っていたら、最近は何もかもがwebのご時世だ。「山と高原地図」相当の地図が、しっかり印刷できるwebサービスができていた。しかも、違法サイトなのではなく、ちゃんとした「山と渓谷社」のwebサイトで。

地図にはコースタイムも登山道も記載されていて、webサイト上で登山ルートを指定して入山時間をセットすると、山頂到着予定時刻や下山見込みの時間までちゃんと自動計算してくれる。そして印刷にもしっかり対応している。なんて慈愛の心に満ちたサイトなんだ。

コースタイムの自動計算、というのは本当にありがたいことだ。というのも、これまでは地図にたくさん書き込まれているコースタイムを足し算していき、登山口-山頂-下山口のトータル時間を手計算で算出していた。すると、時々うっかり1時間とか計算ミスをしてしまい、「やべえ!予定していた時間に到着できない!」と焦ることになる。自動計算だとそれがない。あと、別ルートで山頂を目指した場合どうかな?と試算するのが、すごく楽だ。

こうなると、「山と高原地図」を出している昭文社としてはたまったものではない。昭文社は、「山と高原地図」のスマホアプリ版を出していて、地図を有料で販売している。それはそれで使い勝手は悪くないけれど、やっぱり登山という場面において、デジタルガジェットに頼るのは不安だ。最終的に頼れるのは物理的な媒体、ということで、紙の地図は重宝する。その点、山と渓谷社のwebサイト「ヤマケイオンライン」はすごくいい。

さらに、ヤマケイオンラインで試算したルートをそのまま登山届に転記でき、情報を補足した上でそのまま長野県警にwebで登山届を提出することができた。便利な時代になったものだ。

これまで、面倒がって登山届は出したり出さなかったりしていた僕だけど、webで事が済むなら話は別だ。ちゃんと提出しておこう。

おかでん43歳、歳とともに無茶ができなくなってきているはずだ。いざ、というときにふんばりがきかずに遭難ということだってあり得る。保険に入ったり登山届を出したり、そういうガードはきっちりとやっておかないと、周囲に迷惑をかけるかもしれない。特に単身登山はなおさらだ。

今回は30リットルのザック

今回、荷物は思いっきりシンプルにしてみた。

衣張山登山の時にデビューした、25リットルのザックに装備を詰めた。

山小屋泊とはいえ、これまでの登山から比べると随分コンパクトにまとめてしまい若干の不安がある。なにしろ、こいつの下1/4くらいはレインウェアが詰まっている。その他のものは残り3/4だ。

今回、非常用食料以外は持参していない、というのがコンパクト化の最大の貢献だ。

朝飯:長野駅かどこかで食べればいいさ
昼飯:上高地バスターミナルで食べればいいさ
夕飯:山小屋のメシ
朝飯:山小屋のメシ
昼飯:上高地に戻っているので、そこで食べればいいさ

という割り切りができるからだ。こうやって見ると、上高地は便利だな。メシに困らない。

2017年07月29日(土) 1日目

長野を目指す

06:25
今回は、長野経由で上高地を目指す。

「えっ、東京から、わざわざ長野へ?」

と、驚く人もいるルートだけど、実は東京(特に東京東部)から上高地を目指すには最短のルートが、これになる。

普通、上高地といえば新宿から松本まで「特急あずさ」で移動し、松本から新島々まで松本電鉄に乗り、そこからバスに乗って・・・というルートをとる。別パターンとしては、新宿駅または東京駅から出ている「さわやか信州号」という夜行バスに乗り、直接上高地に行く方法もある。

で、もう1パターンが、長野まで新幹線で移動し、長野駅から上高地を目指す「せせらぎ号」に乗る、というやり方だ。

今回は、それ。

朝早くの新幹線で長野へ

新幹線で長野まで行って、そこからバスだなんて!交通費が高くつくやんけ!と言われそうだ。実際にその通りだ。

しかし、松本経由で上高地を目指すと、その日のうちに焼岳小屋に着くのは遅くなってしまう。夜行バスだと、仕事終わりの金曜夜にドタバタしてしまう。なので、「お金で時間を買ってもいい」と思っているなら、新幹線で上高地を目指すのは正解だ。

ただし、6時28分東京駅発の新幹線に乗らないといけない。というのも、バスの「せせらぎ号」は1日1便、08:25長野駅東口発だからだ。

北陸新幹線

06:26
考えて見れば、「北陸新幹線」に乗るのは初めてだった。どうもどうも、よろしくお願いします。

東京駅

何の写真を撮っているのかというと、発車まであと2分と迫り、キオスクに立ち寄る時間さえなく恨めしい気持ちの発露。

長野界隈は雨

08:07
残酷なまでにズバーンと突っ走るのが長野/北陸新幹線だ。長野なんて山奥の遠隔地という印象が未だにあるけれど、毎回新幹線に乗るたびにその認識が覆される。「えっ、こんなに近かったの?」と。

毎回そんなフレッシュな驚きを感じつつ、今回もまた長野県入り。

ただし今回の長野入りは、雨をもって出迎えられた。

まあ、天気予報でこうなることはわかっていたけど、キャンセルするのももったいないしなあ、と今ここに至る。

「山に登って荒天にやられ、まともに景色すら見ることができなかった」という事例は過去にいくらでもある。山で天気が良いなんて幻想なんですよ、現実は雨と霧なんですよ!ともう開き直ることにしている。

(つづく)