自分なりの「風物詩」を作る、というのは楽しいことだ。「もうそろそろあの季節がやってくるぞ」と数ヶ月前から身構える、というのは、ワクワク感がかきたてられる。
エアコンの効いた部屋で生活し、仕事をしていると季節感が失われてくる。ご飯だって、旬のものをあまり意識しないような食材ばかりを食べている気がする。
今や、季節感といえば、流通業界やマスメディアが商売のために騒ぎ立てるものであり、自らの五感をもって「もうそろそろ」とか「今、まさに!」と感じるものではなくなってきている。
そんな昨今を残念に思っているあなたに朗報です。ヨコスカフレンドシップデー。一言で言えば、灼熱。二言で言えば灼熱地獄。そういう場が一年に一回、やってくるのです。今年もまた、そう。
通い始めて早5回目になる。過去4回、何人もの熱中症予備軍を輩出し、脱落者が出た「死の行軍」。それが今年もやってまいりました。
僕の場合、「冬の風物詩」は「のっとれ!松代城」だし、「夏の風物詩」は「ヨコスカフレンドシップデー」になる。どちらも両極端。思いっきり寒いか、暑いか、それくらいガツンとこないと納得感に乏しい。
正直言って、5回目にもなると惰性になってきている。しかし、惰性、大いに結構じゃないか。「またあの季節がやってきたのかよ」と毒づきながらも、「しょうがないなあ、そろそろ準備をしなくちゃ」ともみ手をする。こういうのが、いい。
新鮮さがないことがむしろ、新鮮。
そんなわけで、今年も行くことになりました、「ヨコスカフレンドシップデー2017」。通称名、「日帰りで行くアメリカ旅行」。
2017年08月05日(土)
今年の「日帰りで行くアメリカ旅行2017」は、総勢4名によるオフ会となった。昨年からの引き続きで3名、新たに飛んで火にいる夏の虫が1名。
オフ会募集告知記事では、「横須賀の最高気温が35度以上の予報だった場合、中止」としていたが、2017年の夏は雨が多く、予想以上に気温が伸び悩んだ。この日も余裕で35度を下回り、無事開催の運びとなった。
「こりゃあいかんな、気温が低いとお客さんがたくさん来ちゃうじゃないか!」
気温が低いなら低いで、ちょっと心配だ。第一回目の訪問時に見た、あの恐るべき長蛇の列を未だに忘れられない。あそこにいた人々が全員死んだとは思えない。いつでも、再び現れるだろうし、列をなすだろう。ちょっとくらい暑くて、外出する気が萎えるくらいが、ちょうどいい。
朝9時前の横須賀中央駅。
毎年、ここの人ごみを撮影している。そして「人が多いな」とコメントする。でも、電車が到着した直後に撮影したものなので、当然といえば当然だ。この人の数をもって、「今年も混むぞこいつァ!」と判断するのは早い。
例年通り改札を出たところにある「スカレー像」の前で全員集合。朝9時。
「よし、行くか」
とお互い若干の気合を入れつつ、米海軍横須賀基地を目差す。
今日は曇り空。雨の予報はないので安心だが、おかげで気温は抑え目だ。まだこの時点では気温が30度に到達していないはずだ。
以前は、横須賀中央駅駅前にある海鮮居酒屋「磯丸水産」を見て、
「もう、基地に行かないでここで朝から飲んじゃう?」
なんて冗談を言ったものだ。基地に行くまでにバテてしまいそうな暑さだったからだ。しかし今年は、スルスルと基地を目差す。誰一人ぼやきもせずに。
三笠公園のはるか手前、国道16号線の交差点にゲリラ屋台が出ていた。
「これまで、こういうお店が道中に無かったほうが不思議だったんだよな」
とみんなで話す。なにせ、駅から基地の入り口までは徒歩で20分近くかかる。往路ならともかく、くたびれた復路なら途中で遭難してしまいそうだ。冷気と、水分補充ができるとありがたい。
この屋台で売っているのは、シェイブド・アイス、すなわちかき氷だった。
「かき氷か・・・」
うーん、と思う。毎年これだけ太陽が照りつけるのだから、かき氷というのは一番ニーズが高い商品だろう。とはいえ、ここ最近の横須賀基地はみるみる「ワイルドさ」や「アメリカさ」が失われている。暑すぎて肉料理が売れないのだろう、どんどんかき氷やジュース、エナジードリンク売りの屋台が増えていて、客としてはとても残念だ。昔は、あまりに肉を焼くグリルが多くて、その煙で視界が不良になったくらいなのに。
今年はまだ涼しいけど、昨年までの淡白な屋台への志向性は変わらない気がする。残念だけど仕方がないね、だって酷暑の中、僕自身食欲は失せるんだから。
でも!安心しろ米兵諸君。たとえ熱くて食欲がなかったとしても、お土産をめいっぱい持ち帰るぞ!アメリカの食料庫はカラになることを覚悟するがいい!
三笠公園近くのエリアは、新しい建物と古い建物が入り乱れている。古いものは、本当に古い。確か初めてここを訪れた時、「うわあ古い建物がある!」と驚いて写真を撮った記憶がある建物が、相変わらず健在。
「あれ、人が住んでいるんですかね?」
今回初参加のあっきさんが聞いてくる。
「いや、住んでるでしょう?基地から近いし、普段は二段ベッドの相部屋で堅苦しい生活を送っている兵隊さんが、基地の外に部屋を借りているって珍しくないことだし」
「でも、扉がガムテープでとめてありますよ?」
「あれっ?」
見ると、確かに扉がガムテープだらけになっていた。ありゃ駄目だ、さすがにこんな状態で人は住めない。
それにしてもどうなってるんだこの家は。扉がガチャッと閉められないくらいボロボロなのか。もう建て替えちゃえばいいのに。まだ頑固に立ち退きを拒絶する人が住んでいるのだろうか?
準備を開始しつつある屋台の脇を通り抜ける。
彼らの本番は、夜の花火大会だ。朝から米海軍基地に行くような客ははなから相手にしていない。どうせ基地の中でしこたま飲み食いするんだろう?と思っているのだろう。実際そのとおりだ。もしこの時間から営業している、働き者の屋台があったとしても何も買うことはないだろう。
「今年も空いてますね、この調子だったらすぐに基地に入れますよ」
余裕をこきながら、前へと進む。
「昔はここを折り返すように行列ができていましてね・・・」
と昔話をすると、「えーっ、ホントですか!?」と驚かれる。ホントなんです、たった数年前まではそうだった。今あの人達はどこへ消えたんだろうね?
「昨年は、朝イチの行列解消のためか、9時から始まってたんですよね。だから、全くゲートに並ぶことはなかったです」
だがしかし、三笠公園にやってきてびっくりした。
「ほら、あそこにコーンがたくさん並んでいて、そこでつづら折れに並ばされるんですけど、実際は全く並ばなくても・・・あああ!」
つづら折れに人が並んでいた。
公園をあふれる程の人の数ではないけれど、それなりに行列ができていた。
まじですか。
警備員さんに誘導されながら、つづら折れの列に加わる。
前方を見ると、列が動いていない。
「あれっ、ひょっとしてまだ開門していない?」
その通り。誰かが手荷物検査でひっかかって大暴れしているので交通遮断、というわけではない。単に我々が早く到着しすぎたらしい。こんなことは初めてだ。
「朝9時からスタート、じゃなかったの?」
あらためてヨコスカフレンドシップデーの情報を確認してみたら、今年は「10時~20時(入場は19時まで)」だった。
それにしても、例年「イベント終了後の基地内取り残され」の人っていないのだろうか?敷地は広大だし、場所によっては夜だと暗いし、悪意の有無を問わず隠れることは容易だ。スパイ入り放題。もっとも、スパイ容疑で基地内で捕まったら、厳しく尋問されるだろう。吉田松陰よろしく、「亜米利加の文化を学びたい」とかなんとかいって密航するのは駄目だ。
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