15:38
余市からニセコを目指す。
国道5号線を南下していくけれど、景色の雄大さがとても楽しい。
ハタケ遠足で何度も北海道を訪れ、その都度車に乗っているのでなんとなくだが、北海道のデカさっぷりはわかってきた気がする。
北海道旅行でよくありがちなのが、「地図上ではすぐそこに見えたのに、じつはスゲー遠くて移動地獄になる」旅行だ。実際僕は、それで疲弊した経験もある。
カーナビとかで予め所要時間がわかっていても、いざハンドルを握ってみると「思ったより遠いな、時間がかかるな、こんなはずでは」という気になるものだ。特に観光旅行の場合、あれもこれもと要素を詰め込みたくなるからなおさらだ。
その点今回の僕は、いたって余裕だ。もう夕方ではあるけれど、全然焦りがない。
この余裕は一体どこから来ているのだろう?と不思議に思ったが、なんのことはない、本来なら今日は丸一日登山予定だったからだ。それがキャンセルになり、丸一日すっぽり空いちゃって、しかもほぼノーアイディア。そりゃあ、気持ちに余裕が生まれるわけだ。
もしこれが、「今日は一日かけて札幌⇒小樽⇒余市⇒ニセコと移動していきます!」と予め決まっていたら、道中の名所とかうまいもんとか、あれこれ調べてぎゅうぎゅうに押し込んでいたと思う。
教訓。北海道旅行は特に、あれこれ詰め込まない方がハッピー。
車は、然別(しかりべつ)を経由して倶知安(くっちゃん)の盆地に差し掛かってきた。雄大な景色が、テンションを高める。
正面に羊蹄山が見えている筈なのだけど、今日は厚い雲に覆われていて山容がよくわからなかった。でもそれを見て、ちょっと安心した。だって、「じつは今日の羊蹄山、快晴でした!」という光景が広がっていたら、「しまった、山に登っておけばよかった!」と悔しくなるから。
まあ、ニッカウヰスキーの余市醸造所が悪天候で閉館しているくらいだ。山が快晴なわけがないけれど。
15:58
ニセコにやってきた。
時刻はもう16時近く。本来の僕ならば、とっとと宿に向かって、「夕食前のひとっ風呂。いや、なんならふたっ風呂」という時間だ。でも、ニセコなんて滅多に来られない場所なので、少しウロチョロしてみることにした。
・・・ああ、でも今回羊蹄山に登れなかったから、いずれまたこの地を訪れることになるのだろうな。
「有島記念館」。なんかよくわからないけれど、ニセコについてざっとネット検索をかけた時に見つけた施設。何かを記念しているくらいだから、少しは見る価値があるかもしれない。
そんな適当な理由。
で、有島ってなに。地名?人名?
あ、人名なのか。
施設の駐車場に車を突っ込んで、下車してからようやく施設の主旨を理解するのはちょっと遅すぎるけれど、まあいいや。
小説家・有島武郎を記念した施設なのが、この有島記念館だった。で、有島武郎って誰よ。
いちいちわからないことだらけだ。だったらここに来るなよ、と思うけれど、いや、こうやって人類の知識と経験は積み上がっていくものなのだよ。
有島武郎は「或る女」「カインの末裔」とかで知られる明治大正期の小説家だ。
解説の看板を見ると、ここで有島武郎が長い間生活したというわけではなさそうだ。東京出身で、北海道大学で教鞭をとっていた時期があったものの、亡くなったのは軽井沢。ただ、有島武郎の父がこの地を開拓していて、その土地を相続したということもあり、有島武郎ゆかりの地ではあるようだ。
なるほど、それで有島記念館なのか。
トンガリ屋根や、独特なフォルムの建物が並ぶ。
先程のニッカウヰスキーもそうだけど、北海道というのは比較的自由度の高い建築が多いような気がするけど気のせいだろうか?
それは僕が観光地ばかりを訪れているから、というシンプルすぎる理由が最大の理由だけれど、土地がたくさんあるので、床面積の制約を受けにくい、というのもあると思う。
東京界隈だったら、できるだけマッチ箱的に四角くしないと、土地の効率が悪い。
https://www.town.niseko.lg.jp/arishima_museum
で、僕は結局この建物を遠くから眺めただけで、中には入らなかった。閉館時間は17時なので、まだ見る時間はあった。でも、ここまでやってきても有島武郎にさほど興味が沸かなかったのと、入館料が500円とはいえかかるのでやめた。
スタンプラリー的に、「ここにたどり着いて、建物を鑑賞した」ということに満足。
有島記念館からニセコ駅まではすぐだ。ニセコ駅に立ち寄ってみることにした。
16:05
駅の向こう側に、黄色いニセコ大橋が見える。
16:07
ニセコ駅に通じる道には、ハロウィンに使われるおばけカボチャがずらっと並んでいる。面白い演出だ。地面に転がしていて、腐らないのだろうか?
ニセコ駅。やあ、これもスイス的というか、独特なデザインで異国感があって素敵。
駅舎の塔の部分に時計があるけれど、果たしてあの時計を見る人はどれだけいるのだろう?駅前は、当然のごとく人がほとんどいない。なにせ、函館本線とはいえローカル駅だ。
駅前にはどっさりと黄色いカボチャが並べられ、明るい雰囲気になっている。
まるでぶどうのように、カボチャが密集している。写真映えするので、ついカメラを持ってこのあたりをウロウロしてしまう。どの角度から撮影すると、もっともイイカンジになるか、というのを探す。
幌馬車周辺にも、かぼちゃがいっぱい。
駅前の地図を見る。
「ニセコ市街地」と書かれた、駅周辺の地図だけど、「市街地」と呼ぶほどあれこれ施設があるようには見えなかった。
ただし、あとでGoogleマップで確認してみると、さすが観光地だけあってあちこちにカフェやら飲食店が点在しているようだ。じっくり調べておくと、「あのお店にも行ってみたい、こっちのお店にも」ということになっていたかもしれない。
「ニセコ市街地」とは別に、「リゾートエリア」の地図もあった。
これは、ニセコから北に向かったところにある、ニセコアンヌプリ界隈の地図だ。オーストラリア人をはじめとする、外国人スキーヤーが大勢やってくるエリアとなる。
勘違いしてしまうのが、ニセコというと羊蹄山が写真に写っているスキー場のイメージがある。その写真の構図通りなのだけど、スキー場自体はニセコアンヌプリにあって、その対面に羊蹄山がある。羊蹄山そのものがスキー場というわけではない。
この界隈には何か所かにスキー場が点在している。今回僕が宿をとっているのは比羅夫(ひらふ)と呼ばれるエリアで、この地図には出てきていない。ちょっと寄り道しすぎちゃったか。
地図を見ると、ヒルトンホテルがこの地にあるのでびっくりする。あんな国際ホテルチェーンがここにあるのは、まったく知らなかった。
ニセコ界隈の鳥瞰図。
なんかもうこれ、とにかく「羊蹄山スゲー」ということしかわからん。右ににょーん、と富士山みたいな山がそびえているのが圧巻というだけだ。
ちなみにゲレンデが並ぶニセコアンヌプリは左側にあって、なにげに標高1,308メートルもあるのだけど、この中では完全に地味に埋没してしまっている。
じゃあなんで羊蹄山にスキー場がないのか?というのは不思議。ちなみにニセコにあるスキー場の解説は以下のサイトに詳しい。
https://hokkaidofan.com/nisekoski/
それぞれに特徴があるようだ。僕が今回比羅夫の宿に泊まるのは、オフシーズンということで値段が安かったというのもあるし、温泉があるからだ。あと、羊蹄山から近いというのが条件だった。
ここから少し離れたところに、「ニセコ昆布温泉」という温泉地がある。実際、JRでも「昆布駅」というのがあるくらいだ。いずれはこにも泊まってみたいと考えている。「昆布温泉入ったよ!」と言いたいがために。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (2件)
「内海湾」ではなく「内浦湾」ですね。
つまらない指摘でごめんなさい。実は10年以上前から愛読してます。
米こうじさん、間違いの指摘ありがとうございます!こういうアドバイス、地味にありがたいことです。これからも愛読をよろしくお願いします!