ハタケ仕事と山登り【羊蹄山】

3階の洞爺湖サミットを紹介する展示会場では、「サミット開催が決まるまで」と書かれたパネルで誘致から開催決定までの経緯が紹介されていた。

現地の悲願としてサミットが誘致されたのかと思ってよく読んでみると、

2007年3月7日にサミットの誘致を決定 ⇒ 同年4月23日、洞爺湖でサミット開催が決定

つまり実質1ヶ月半程度でバタバタと開催が決まったことが分かる。

裏では相当な準備や苦労があったと思うが、日程だけ見るとあっという間に決まったという印象で拍子抜け感がある。

教科書に載るような昔の話ではなく、つい最近の出来事を紹介する歴史的施設の面白いところは、詳細な記録が残っているということだ。

特にカラー写真が残っていると、「今この瞬間を生きている自分」と地続きで起きた出来事なのだという実感がある。

先ほど見た火山博物館もそうだけど、この「地に足をついている感がある歴史」というのはとても大事なことだと思う。

特に、日本の歴史授業は近現代を「授業の時間切れ」という理由で正しく教えようとしない。白黒写真が出てくる明治大正時代までがやっとだ。その結果、僕たちは歴史からなにかを学ぼうという姿勢が希薄だ。「学ぶ」のではなく、「暗記する」ことしかしてきていない。

洞爺湖サミット自体は何か歴史的な転換点となったような大きなイベントではない。でも、歴史に向き合うという自分を再認識する、良い機会となった。

洞爺湖サミットの晩餐会で提供された、料理のメニューが展示されていた。

メインは子羊のポアレ。美味しそうではあるけれど、サミットの会場で食べても場の雰囲気に飲まれ、何も味がわからないと思う。

むしろうまい酒を飲んだ方が記憶に残るかもしれない。この時提供された清酒は「磯自慢純米大吟醸中取り」だった。静岡県のお酒だ。地元北海道からは選出されなかったから、さぞや残念だっただろう。

とはいっても、北海道を代表する清酒といえば「男山」とか「国士無双」なので、ちょっとこの名前を外国語に翻訳するとポリコレ的によくなかったのかもしれない。

サミット会場の机が展示されていた。

とても大きくて、端に座った首脳は対角線上の偉い人の顔が見えないほどだ。

ドラマ「半沢直樹」の役員会で使われそうな、いやそれよりも倍ぐらいは大きな机だった。

端っこのほうは椅子がない。まさか「お前には席はないよ。立ってろ」というわけではなく、単に全部の椅子を並べるのは大変だから、展示の際は(以下省略)ということなのだろう。

中央に議長国の日本が座っているが、その右隣がアメリカ、左隣がEUという配置になっていた。

そしてその正面がエチオピア、中国、世界銀行という配置になっているのが面白い。

これほどまでに大きな、奥行きのある机を使う必要があったのか?と思うが、大きな机は権威の象徴でもある。この奥行きは譲れなかったのだろう。

しかし、無駄にデカいときりがないし写真写りが悪い。だから隣の人との横幅は案外広くない。

円卓に9つの席が並ぶ 。

G 8サミットなので8カ国の首脳に加えて EU の席が設けられている。

各国首脳の顔ぶれを見るとメルケルやブッシュと言った名の知れた首脳の中に、日本の福田首相の姿が見える。誘致の段階では第1次安倍内閣だったけれど、安倍内閣はサミット前に退陣。福田首相が後継者としてこのサミットを取り仕切っていた。

各国首脳と一緒に記念写真が撮れるスペースがあったので、自分も一緒に鳴って撮影。

福田首相の隣に陣取る。

みんなスーツ姿なのに一人だけ登山用の格好をしていて、場違い感が半端ない。そして各国首脳の中で最も笑顔で写っていて、能天気っぽさがにじみ出ている。

しかし、「サミット」とは「山のてっぺん」という意味だ。登山の格好をして参加して、なんらおかしくない。・・・ああ違うか、ここにいる各国首脳そのものが「山のてっぺん」なんだ。彼ら彼女らはもうこれ以上登る場所はないんだな。じゃあ登山の格好をしていなくて納得だ。

僕みたいな平民こそが、登山の格好がふさわしい。

「G8の首脳たち」と書かれたパネルで首脳の名前を確認してみると、「こんな人いたっけ?」という人、そしてまだこの人現役だよねという人、いろいろいて興味深い。

そういえばイギリスはブラウン首相だったっけ、とか、フランスはサルコジ大統領だったなぁなどと思い出す。やはり、国際政治の舞台においては、ある程度の長期政権は必要だ。

おそらく記者会見の会場に置いてあったであろう演説台でも、記念撮影ができた。せっかくなので、ここで一席。

世界平和や環境保全について特に喋ることはなかったので、今回のこの北海道旅行における台風と雨で、いかに私が精神的損害を被ったかについて、熱く語った。もちろん一人で。

ちなみにこの記念館、客は僕以外いなかった。

演説の甲斐あってか、屋上に出てみると空は晴れ間が広がり始めていた。

そろそろ本格的に天気は回復していくようだ。

時刻はそろそろ16時前。新千歳空港に向かわないと飛行機に間に合わなくなってくる時間だ。

これにて北海道旅行を切り上げ、退却を開始する。

飛行機は18:25出発予定。15:50に洞爺湖にいて、まだ間に合うのか?と不安になる。一応カーナビでは間に合うことになっているけれど、「ごめん、勘違いしてたわー」ってことにならないか少し不安。なにせ広大な大地の北海道だ、ちょっとした「勘違い」が大番狂わせになる。

(つづく)

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 「内海湾」ではなく「内浦湾」ですね。
    つまらない指摘でごめんなさい。実は10年以上前から愛読してます。

  • 米こうじさん、間違いの指摘ありがとうございます!こういうアドバイス、地味にありがたいことです。これからも愛読をよろしくお願いします!

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