ハタケ仕事と山登り【羊蹄山】(その1~18)

11:48
ニッポンレンタカー到着。

地図で見ると、空港のターミナルから近いのだけれど、H型になっている滑走路を避ける形で道路が敷かれているため、それなりに時間がある。

だとしても、路線バスサイズの送迎バスをバンバン運行しているのだから、さすが北海道!だしさすがニッポンレンタカー!だと思う。

なにしろ、カウンターがこんなのだもん。大手銀行の窓口よりも、窓口が多い。

そういえば、さっき成田でチェックインしたバニラエアのカウンターよりも大きいじゃないか。どうなってるんだ、おい。

北海道を今更「でっかいどう」と表現するのはクソダサいと思いつつも、この地図を見ると思わず「おおぅ」と唸ってしまう。新千歳の営業所から、各地がどれほど距離があるかを示した地図だ。

つまり何が言いたいのかというと、「本州感覚で、北海道を狭い・近いと思うなよ?実際はかなり遠いからな?いいか、警告したぞ?」というわけだ。

函館まで278km。稚内まで410km。根室まで412km。

「えーと、時速100kmで走ったとして、根室まで4時間ちょっと、といったところか。」

なんてうっかり考えてはいけない。なにしろ、高速道路がない場所のほうが多いのだから。あと、当たり前だけど片道の距離がこれであって、往復するならその倍だ。広大な大地を走るのが目的ならまだしも、この距離は長い。

これからの4日間を共に過ごすことになる車。

フィット、スイフト、デミオ、ノートあたりはレンタカーとカーシェアで本当によく見かける。しかも青いヤツならなおさら。僕は以前青いフィットに乗っていたので、馴染みの車だ。でも、今あらためて車を買うとしたら、青いフィットは買わないだろう。レンタカーっぽくて。せめて、黄色とか赤とか、突拍子もない色にする。

新千歳のニッポンレンタカーのすごいところは、車がずらーっと並んでいるところだ。しかも屋根付きのところに。

お客様は、受付をする事務所からこの屋根の下、濡れずに自分の車までやってきて、外装の傷をチェックし、安心して出発できる。なんてぇ規模だ。しかも、敷地内にガソリンスタンド併設なので、利用者は返却前に給油をしなくていい。

さぞや儲かるのだろう、とゲスの勘ぐりをしてしまうけれど、たぶんそうはいかない。お客さんがどーっと押し寄せてくるのは初夏から初秋までの間で、それ以外の半年以上は客が少なくなる。雪で覆われた土地になるのだから。

山小屋と一緒で、オンシーズンのときだけで1年分の稼ぎを得ないといけないのだから、大変だ。

自分の荷物を車のトランクに乗せる。今回は、スーツケースと25リットルのザックの2つだ。

なにせ、3泊の装備に加え、ハタケ仕事用の装備(=作業着としての迷彩服)、そして登山装備だ。さすがに飛行機に乗るので、ガスストーブのような火器は持参していないけれど。

LCCを利用する際、こういう大きな荷物はヒヤヒヤする。ANAやJAL以上に荷物の重さや寸法にシビアだからだ。空港のカウンターで「アンタ、これ超過してますぜ」と言われると高額の追加料金を請求される。ギリギリのところを狙わないで、最初から荷物を多めに見積もって荷物預け入れの予約をしておいたほうが、結果的に安心だし安くつく。

13:01
ハタケ到着。

ハタケは、雑草に覆われていた。これがなにかの作物として、収穫をもたらすものではない。雑草を煎じて飲んだら、ひょっとしたら漢方的な効果があるかもしれないし、ないかもしれない。

なんでこんなことになったのか。それは、植えた豆が連作障害を起こしたからだった。今年の春に豆を植えたのには僕らも手伝ったのだけど、それがうまく生育しなかったのだという。

豆という植物は、荒れ地でも育つ。空気中の窒素を取り込んで、根っこから地面に送り込む機能があるからだ。しかし、何年も豆を育て続けると、線虫が豆類の根に寄生することが起きやすく、作物の生育を壊滅的に駄目にしてしまうという。

なので、豆科の植物を育てる際は、他の植物と交代交代に育てる「輪作」や、育てるにしても数年に限って、そのあとはしばらく畑を休ませるなどして対処する。

このハタケだって、連作障害について知識がなかったわけじゃないけれど、予想よりも早く障害が訪れてしまった、ということだ。種撒きをしたのが5月だったけど、夏前には「おかしいぞ」ということに気づき、即刻トラクターでハタケを掘り返してしまった、と教えてもらった。生育が駄目だとわかったら、すぐに断念しないといけない無情な世界。

じゃあ代わりにじゃがいもとか別の野菜を植えればいいじゃない、といっても、野菜には植えるベストシーズンというものがある。ご家庭のプランターでこじんまりと遊びで育てるのとはわけが違うので、「すまんすまん、一ヶ月遅れだけど今から植えるわー」というのはムリだ。

あと、農業を本業としているわけではなく、あくまでも本業のカフエで使う豆類を自家栽培するのが目的だ。カフエで使いもしない野菜を大量に育てても、使いみちに困ってしまう。もうこうなると、今年の収穫は諦めるしかない。

20170916-02

こうなると、ハタケ仕事といってもやれることはあまりない。D型倉庫越しに見えるハタケは、先程の写真とは違うブロックのハタケだけど、ここもまた何もない状態。5月に手竹を組んでずらりと並べたのに、その余韻がもう残っていない。

そのかわり、D型倉庫はずいぶんと片付いていた。これまで、いろいろな資材が積まれたままになっていたのだけど、ハタケ仕事がないぶん片付けに人材を投入したのだろう。

北海道に行って、倉庫の片付け!シュールな話だけれど、これもまた農業の一つだ。なんなら堆肥をこしらえるのも農業だし、機械のメンテナンスも農業だ。やっていることは実に幅が広い。

そのD型倉庫だけど、いよいよ劣化が進んできているようだ。真ん中の支柱がぶらんぶらんになっているのは以前から気になっていたけれど、前回と比べて屋根がとんがってきている気がする。本当はきれいな円形の屋根のハズなんだけど。

「前回からこうだったっけ?」
「いや、前よりも尖ってきたと思う」

仲間たちでそんな会話をする。

せっかくハタケまできたのだから、やれることをやらなくちゃ。何も農作物が育っていないハタケを眺めていてもはじまらない。

倉庫の片付けをみんなで行う。片付け、といっても、倉庫の中でいらないものを台車に載せて、敷地内の片隅に捨てるということの繰り返しだ。敷地内不法投棄、みたいなものだ。敷地内なので不法でもなんでもないのだけれど、「えっ、ここに野ざらしで捨てるんスか?」とちょっと驚いた。そうか、広い土地があるというのは、こういうこと(一時的にゴミを捨てる)ができるのか。

都会ぐらしに慣れてしまうと、「いらなくなったもの=ゴミの日に回収してもらう=ゴミは目の前から消え、なかったことになる」というイメージしかない。ゴミが目に見えるところに留まるということに驚いている自分に驚いた。

それにしてもトラクター(正式名称は不明、たぶんちゃんとした名前があるのだろうけれど、よくわからないのでトラクターと呼ぶ)は万能だ。

今はこうやって台車を連結させ、ゴミを運んだり人を運んだりしている(公道を走っているわけではないので、人を乗せても問題はない)

あるときは地面を掘り返すアタッチメントを取り付けて豪快に地面をかきむしり、またあるときはシャベルのようなものを取り付けて、ハタケにうねをを作る。よくできたものだ。ただし、あくまでも昔ながらの機械だ。「スマホにアプリをインストールする」ように簡単にアタッチメントの着脱ができるわけじゃない。農家さんというのはあれこれできなくちゃいけないからマルチな才能が必要だ。

雑草が生えているのでそれを取り除こう、ということになった。えっ、ここにある雑草、全部むしるの!?とその面積にびっくりしたのだけれど、これが簡単だった。

よく見るとこの雑草、コンクリートの地面の上に生えているものだった。なので、端っこをシャベルでガツガツやってコンクリートから引き剥がすと、あとはカーペットを巻くようにくるくると。えー、雑草がこんなに簡単にめくれるのは意外だ。

それだけじゃない、雑草の生命力にも驚かされた。そこまでして生きるのか、と。

で、そんなたくましい生命力のところを恐縮なんですが、全部引っ剥がして猫車に積み、廃棄されていった。

もっとも、廃棄といってもさきほどのトタン板などと同じ「敷地の端っこ」だ。おそらくこの雑草は、その「端っこ」でまた息を吹き返して育っていくのだろう。

(つづく)



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