10:37
けんちん汁を信玄茶屋で食べ終わり、また山頂に戻る。
するとそこには、先ほどとは大違いの人が集まっていた。団体客ではなく、個人または数名のグループばかりだ。どうやら、バスや電車の便の都合で、わっと人が押し寄せる時と人がいない時の差があるらしい。
登山口から小一時間で登れる山だけど、こうやって見ると誰一人としてナメた格好をしていないことに気がつく。みんな、真面目なトレッキング装備を装着している。
これだけ寒い季節になっても山に登ろうとする人は、ガチ勢なのかもしれない。
これくらいの季節感と山の難易度ならば、スニーカーにデニムでも登れちゃうんだけど(おすすめはしない)、そういう人は見かけなかった。
10:32
白馬像のすぐ近くにも、茶店がある。もっとも山頂に近い茶店だ。
店名を示す看板が見えないけど、ここは「富士見茶屋」という。富士見茶屋の前に、スタンプラリーのスタンプが設置されてあった。
小屋の周囲にベンチと机が並べられている。
10:40
何やら茶屋はてんてこまいらしい。なめこ汁300円を注文したけど、出てくるまで5分以上かかった。「すいませんね、バタバタしてまして」と店員さんから言われた。
この清水茶屋は2階建てになっていて、厨房は1階にあるようだ。2階でのオーダーは1階に伝えられ、そしてできあがったら2階に届けられる。ちなみに僕が今いる山頂部分は、2階。
なめこ汁が陣馬山登山では定番らしいので、いただく。
さきほど、味噌味のけんちん汁をいただいたばかりなので、立て続けに味噌汁を飲むことになる。塩分とりすぎ注意だな、これは。血圧が高い人にはおすすめできない。いくら登山で汗をかくとはいえ。
富士見茶屋の名にふさわしく、富士山を眺めながらのなめこ汁は大変においしゅうございました。
いかんなー、すっかりくつろいで、これから縦走する気が萎えてくる。
「縦走ツアー」という観点でいうと、ようやく今ここがスタートラインなのに。
10:45
なめこ汁を食べ終わり、富士見茶屋の下に下りてみる。
ああ本当だ、確かに二階建てになっている。
山の斜面を削って平らにするくらいなら、斜面から建物をせり出して作った方が楽、というわけだ。1階部分が半地下風になっている。
1階部分にもベンチはあり、ここでも食事や休憩ができる。
10:47
で、忘れちゃいけないのがあともう一軒茶店が陣馬山頂にはある、ということを。清水茶屋。
山のてっぺんに3軒も茶店があって経営が成り立つんだから、驚きだ。いずれ、「石窯を備えたピザ屋」とか、「ここで醸造したビールを振る舞うブルワリーパブ」とかできるんじゃないか?と冗談でも考えてしまうくらいの密度だ。
当然ここも「食い倒れ」企画のチェックポイントだ。何かを食べていかなければ。
しかし、メニューを見て、「うーん」とうなってしまった。
当たり前だけど、先ほど2軒のメニューと似ている。石窯ピザなんて当然ない。揚げたてコロッケとかもない。あるのは、醤油味または味噌味系のもの主体だ。
もちろん、それ以外のものもある。しかし、
- まだ一発目だし、腹に溜まるものはあんまり食べたくないよね
- 何を食べてもよいとはいえ、風情を全く感じさせないものは食べたくないよね
- これまで食べた料理とはかぶらないようにしたいよね
と考えると、なかなかチョイスに困るのだった。
「自家製さしみこんにゃくあります」という張り紙が目を惹く。これは今後の茶店巡りでも出会わない気がする。オリジナリティあふれるので、食べるなら今だと思う。・・・しかし、あまりに唐突に「さしみこんにゃく」が出てきたので、心の準備ができなかった。思わず、スルー。
それにしてもすげえなあ、アイスクリームを売ってるぞ。山のてっぺんなのに。
保冷剤をギチギチに詰めた保冷バッグにアイスを詰めて、山の上まで運び上げたのだろう。大変だ。
しかも、運び上げたらそれでおしまい、ではない。それから先、山の上で保存しつづけないといけない。冷凍庫の電気、どうしているんだろう。太陽光?
ここも富士山がよく見えるテラスがある。
今が11月だからここまでくっきり、きれいに山々が見えるのだろう。夏だったら、かすみがかかってぼんやりしているだろうし、雪化粧がないので若干物足りない景色になっている可能性がある。
10:54
食べるものに困って、選んだのは「陣馬そば」。
「陣馬」と名が付く食べ物は、これから先出会うことがないだろう。だから、今ここで食べておかないと!という判断だ。名前で選んだ料理。
まだ現時点では、蕎麦のように腹に溜まるものは食べたくはなかったんだけど、もうこの際しょうがない。食べちゃえ。
10:55
「ついでに、この際」ということでノンアルコールビールまで買ってしまった。
祝杯をあげるには早すぎで、何に対して乾杯するのか自分でもわかっていない。でも、とりあえずプシュっとな。
これが本当のお酒なら、ニヤニヤしながら背徳感を楽しむことができる。しかし、飲んでいるのはあくまでもノンアルコール。飲んだ後になって、「だからなんなんだ」と我に返ることになる。全然、カタルシスがないからだ。
陣馬そばだけど、予想以上に具だくさんだった。
山の上で提供されるそばだから、適当に山菜の水煮ときのこが入っている程度だろう、と思っていたのに、嬉しい誤算。たけのこやなると、果てにはさつま揚げまで入っていた。うん、うまいうまい。
ただし、明らかに塩分を取りすぎだ。健康には全く問題ないのだけど、こうも立て続けに塩っ気の強い汁物を食べると、喉が渇く。ノンアルコールビールに手を出したのも、それが理由だ。
考えて見ると、山で売られている軽食ってガツンと塩分がきいたものが多いかもしれない。
(つづく)
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