11:45
謎の空き家となっている茶店を後にして、先にすすむ。ものの10分としないうちに、次の峠「底沢峠」にやってきた。
なにしろ、長い縦走路だ。いちいち一息ついてなんていられない。できるだけタイムを圧縮していかないと。
まだ正午にもなっていない時間だけど、日没を気にしながらのトレイルだ。
しかし、それは杞憂であるともいえる。というのも、高尾山の山頂まで到着してしまえば、後は楽勝だからだ。観光客がいっぱいいるし、少々日が暮れても問題はない。今回は16:55に下山、という想定になっているけれど、それは山腹にあるケーブルカーの駅に到着する時間だ。山頂ならば、16時には到着できる筈なので、日没を心配しなくて良い・・・筈だ。
とはいえ、どんどん先に進んでいくのに越したことはない。
鹿沢峠。
ここからでも、陣馬高原下バス停に下山することができる。また、南に下れば美女谷温泉を経由して相模湖に下山できる。
「美女谷温泉」という名前が素晴らしいのだけど、既に廃業していて入浴はできないようだ。
11:49
鹿沢峠を素通りして、縦走路を歩いていると突然視界が広がった。
この辺りは樹林を人工的に伐採し、広場のようになっていた。山火事の延焼を防ぐための防火帯なのかもしれない。
こういう景色の変化は、大変なごちそうだ。
今回の縦走は、標高3,000メートルクラスの山々を巡るというものではない。だから、ひたすら樹林帯の中を歩いて行くことになる。なので、風光明媚というわけではないのだけど、なにげに変化があれこれあって、楽しい山歩きになっている。
11:55
縦走路に分岐がある。
左に進むと馬鹿正直に小高い丘を登って下りるというルートで、右に進むとその丘を巻いて、位置エネルギーの無駄遣いをしなくて良さそうだ。
でも、気をつけないといけない。「きっとこっちの方が楽だ」と思って巻き道っぽいのを選んで、結果的にそのまま下山ルートに進んでしまう可能性がある。一度標高を下げてしまうと、今来た道を折り返して登り直すのはしんどい。もしそういう事態になったら、「もういいや」と縦走を打ち切るかもしれない。
おっかなびっくり、巻き道を選んでみた。すると、巻き道で正解だった。あぶねー。
12:01
峠でもなんでもないところに、分岐の表示があった。
えーと、堂所山0.1km?
てっきり、堂所山というのは縦走路上にある山だと思っていたが、縦走路から少しだけ離れたところにある山らしい。
道理で、縦走路を紹介する地図上では扱いが悪いわけだ。堂所山の標高は731メートル。この先にある景信山727メートルよりも標高が高いのに、国土地理院の地図ではフォントサイズが小さく描かれている。しかも、景信山には茶店があるのに、堂所山にはない。
あー、この先に堂所山かー。
ちょっと考える。
面倒くさがりの僕は、「縦走路から逸れて、標高を稼がないといけない」ということでやる気が湧かなかった。でも、キッツい登りならともかく、ほんのチョイで登れてしまいそうな雰囲気がある。
とりあえず、行ってみるか。
行かなくて後悔するより、行って後悔したほうがマシだ。
12:03
堂所山に行く、という判断をして良かった。わずか3分で山頂に到着することができた。
ただし、山頂といっても大して見るべきものはない。標識がある程度で、周囲の木々のせいで眺望はあまり期待できない。ベンチが並んでいるので、少人数なら休憩可能。
ひとまず、水筒に詰めてきたコーヒーを飲んでひといき。
ちょうど正午だし、そろそろお昼ご飯を・・・
いや、非常食を除いて、お昼ご飯なんて持ってきていないから。当たり前だ、さっき陣馬山で3軒ハシゴしたんだし。あれが朝飯兼昼飯だ。
しかもこの先、あと1時間で景信山に到着する。そこでもまた、何かを食べることになる。噂によると、ここでは天ぷらが食べられるというから、胃袋を空けておかなくちゃ。
天ぷらだぞ、おい。山で天ぷらって何だよそれ。
12:12
縦走コースに戻る。
ちなみに、堂所山から関場峠を経由して八王子城址に抜けていく道があるようだけど、あまり歩かれていない雰囲気だった。
その道中、Googleマップには載っていないけど、国土地理院の地図を見ると「高ドッケ」という山があることがわかる。「ドッケ」というのは奥多摩界隈独特の言い方らしく、「尖った峰」という意味があるらしい。雲取山の近くに、「芋ノ木ドッケ」という山があるのは有名。
・・・やべえ、僕はてっきり「峠」が訛って「ドッケ」なのだと思っていた。だから、むしろ「周囲と比べて低い場所」なのだとばっかり思ってた。これは墓場に行くまで内緒にしておかなければ。
(つづく)
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