結婚決定で天にも昇る気持ち、じゃなくて富士山に登る【富士山登山(富士宮口)】

10:22
吉田口登山道の終着点付近に密集する山小屋。富士山山頂界隈では一番の繁華街といえる場所だ。

とはいえ、登山道の左右に店が軒を連ね、商店街の様相を呈している・・・なんてことはない。

山小屋、登山道、そして崖。ここはあくまでも火山の噴火によってできた火口縁であり、そんな悠長な場所ではない、ということだ。

その証拠に、「うっかり落ちるなよ」ガードが馬の背同様、ここにも設置されている。

人通りが多い場所だからだろう、馬の背で見かけた柵とは比べ物にならないくらい、頑丈に作ってあった。里山で見かける鹿よけのフェンスみたいなものだ。僕らはシカか。

10:23
富士山山頂周辺の地図。

現在地はこの図の右端のほう。そして、僕らが登ってきた富士宮口は図の左端。

「お鉢めぐり」の名のとおり、富士山山頂の真ん中には「大内院」と呼ばれる火口の穴が開いている。さすがに「よーく目を凝らすと、地底深くのマグマが赤く見える」なんてことはなく、穴はふさがっている。それでも火口は深く、最深部まで下りると八合目相当の高さになるらしい。

もっとも、下りる道はないので、この火口の底まで行く人というのはいない。中には冒険する人がいるが、夏山シーズンだと怒られるかもしれない。春頃は、ここまでスキーヤーやボーダーがやってきて、火口の底に向けて滑る人がいるそうだ。すごい体力だ。息がすぐに上がるぞ。

10:24
4軒並ぶ山小屋の一つ、「扇屋」。

風雨に耐えられるよう、ガッチリ作られている。建物の側壁は石垣で固められている。ここに豚が立てこもれば、狼からの攻撃に耐えられること請け合いだ。

10:31
軒先で売られていたドリンク、ペットボトルで500円。ビールは800円だった。

あれ?富士山頂の飲み物はクッソ高い、ということが記憶に深く染み付いているんだけど、こうやってみると案外普通の山価格だな、と思った。他の山小屋でも、これくらいはする。

多分、「富士山は標高が高い山だからドリンクが高い」というのは登山初心者だったころの思い込みだったんだろう。そして僕以外の富士山登頂者も、笑い話として「富士山で売っている飲み物は高い」ということを語る。まあそうだろうな、と思っていたけど、他の山と大差なかったという。

富士山は標高が高いし気候が厳しいこともあって、ヘリコプターで山小屋まで荷物を運び上げることができない。そのためブルドーザーを使うわけだけど、高コストのヘリとはいえ時間は圧倒的に早い。ブルドーザーでドドド、と五合目から運び上げるだなんて、一体何時間かかるというのか。物流は大変だ。

10:32
その荷揚げ用重機の一つがこれ。ああ、ブルドーザーというのは適当な表現ではなかったな。軽トラみたいな荷台をもった、無限軌道の乗り物だった。男の子ならみんなワクワクするやつや!

無限軌道なので、運転席にはハンドルがついていない。かっこいい!ただし、乗り心地は相当悪そうだ。だって、サスペンションとか当然ないし、方向転換をするときはガックンガックンしそうだ。

おっ、こっちにもはたらくくるまが。

こちらはキャタピラ社製の乗り物。なので、「無限軌道」と回りくどい表現を使わないで、ずばりキャタピラで動くくるま、と言える。

この車は幌の付いた荷台と、ボンネットの前にむき出しの荷台がついている。一度の輸送でできるだけ多くの荷物を運びたいだろうから、たいへんだ。

10:38
はたらくくるまに見とれながら道を進んでいたら、なんだか下り坂になっていった。

当然山なんだし、アップダウンはあるだろう。おかしいな、と思いながらガスっている中をしばらく進む。・・・あれ?なにやら道が下り続けている。

いしが

「この道、おかしくないですか?」

という。うーん、確かにそうだ。あっれえ、道を外れてしまったか。

ガスっているので、この道がここから先どこに向かっているのか、よくわからない。これが山の怖さだ。

10:43
しばらくして、「さすがにこの急降下ルートはおかしい」と思い直し、Uターンする。

正常性バイアスというのは怖いものだ。こんなわかりやすく標高を下げる道なんて、お鉢めぐりルートじゃないに決まってるのに「あれ?おかしいな?」と思いながら先に進んでしまう。おかしいと思ったら立ち止まる、ということができない。

結局往復10分ほど時間をロスして、もとの場所に戻った。どうやら今歩いていた道はブル道だったらしい。須走口・吉田口は渋滞緩和のため、上りの登山道と下りの登山道は別に分けられている。今歩いたのは下山ルート。ブル道兼用だったらしい。

10:44
ああ、標識が出ている。やっぱり道を間違えていた。軌道修正。

10:47
お鉢めぐりを続ける。

これから歩く「山頂から宝永火山を経由して富士宮口五合目」は、宝永火山まで御殿場口ルートを使うことになる。御殿場口ルートの下山開始は、富士宮ルートと近い。つまり、ほぼぐるっと一周富士山山頂のお鉢を回ることになる。

先程の山小屋密集地帯は比較的幅があったけど、多くの場所は痩せた尾根のようになっている。右にも左にも逸れるなよ?という警告で、フェンスとトラロープがしっかりとガードしている。

そして前方はガスで視界が悪い。今からどこに向かうのか、視力だけでは判別がつかないくらいだ。

(つづく)

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