
13:12
七合目日の出館にやってきた。
もともと扉や窓があったであろう場所には、板がはめ込まれていてすっかり閉鎖されていた。
標高3,030メートル。
もったいないけど、この過酷な環境で経営を続けていくのは大変だ。年間2ヶ月しかオープンしない山小屋なのだから。
もし、ここの営業権を売買や譲渡できるんだとしたら、引き受け手は現れるだろうか?星野リゾートとか。
でも、場所が場所だけに大規模な増改築は無理だし、リゾートホテルに改造するのも無理だ。やっぱり厳しいか。しかも上りで利用する人が少ない御殿場ルートだし。

扉があったと思われる場所はガッチリと雪囲いのような板で覆われ、さらには石垣が足元に積み上げられていた。もう、復活させる気がないのかもしれない。

13:15
荒涼とした大地。
日の出館の直下を曲がったところで、御殿場ルートは上りと下りに道が分岐する。
五合目から登ってくるルートはヒイヒイ言いながらのつづら折れなのに対し、下りは「大砂走り」と呼ばれる直滑降ルートになる。
その名はあまりに有名で噂には聞いていたが、今回が初めての体験となる。楽しみだ。
この界隈は上りルートと下りルート、さらにはブル道が交錯している。ガスっているときは道を選択ミスしないように注意が必要だ。

なにもない砂地の斜面を下る。
上りのときの富士宮ルートが岩まみれの場所だったのに対し、こちらは全然風貌が違う。
のっぺりとした場所なので、天気が悪いとルートを見失いかねない。そのために、わざわざルートのあちこちにロープが張ってあった。

ブル道。斜面上のほうに日の丸が掲揚されている岩場があるので何かと思ったら、先ほど通り過ぎた「七合四尺わらじ館」だった。

13:16
「七合四尺わらじ館」。青空がきれいだ。標高が高いので、地面から舞い上がるチリやホコリの影響が少ない。お陰で空の青さが際立つ。

13:16
うっかりブル道に迷い込まないよう、ブル道を横断して先に進む。
ご丁寧にちゃんと標識が出ている。

13:19
入道雲。

13:20
さあ、ここからが大砂走り。
「1歩で3メートル進む」という噂だけど、実際どうなることか。
確かに、まるで砂浜のように柔らかい地面だ。そして斜面が相当急だ。

13:21
こういうとき、アルパインポールをうまいこと使いこなすと、一気に前に進むことができる。足元のバランスの悪さを補助し、ぽーん、ぽーんと駆け下りることができる。
まさに「駆け下りる」だ。これはすごい。1歩で3メートルかどうかはわからないけれど、想像を遥かに超えるスピードだ。むしろ、ブレーキをかける方に体力を使う。

なにせこの斜度だ。この角度で砂状の土だと、雨が降ったら全部麓まで流れ落ちてしまうんじゃないか?と心配になるくらいだ。もちろんそんなことはないのだけれど。
火山性の水はけの良い砂なので、降った雨は地表にとどまることなくだーっと山の奥深くに吸い込まれていく。そのせいで砂が流れ落ちることが少ないのだろう。
写真の足元を見てほしい。いしは普通のウォーキングシューズを履いていたのだけど、左足がずいぶん砂に埋もれてしまっている。大砂走りを駆け下りる、というのは砂が靴の中に入り込むこととの戦いだ。
くるぶしまで覆うハイカットの登山靴を履いていれば良いのだけど、タウンユースの靴だと、ばんばん砂が足の裏に入ってくる。それが痛いので、ときどき立ちどまっては靴を脱いで砂を捨てないといけない。
(つづく)
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