結婚決定で天にも昇る気持ち、じゃなくて富士山に登る【富士山登山(富士宮口)】

11:02
御殿場ルートの分岐看板が見えた。

写真のとおり、天気はガスと小雨、さらには強い風でわちゃわちゃ。

メガネを掛けている人にとって、こういう山の天気は本当に困る。この写真はカメラのレンズについた雨粒が写り込んだ結果だけど、ほぼこの写真と同じ光景が自分の目の前に広がっている。メガネのレンズが水滴だらけだからだ。拭いても拭いても、すぐに水滴がつく。

御殿場ルートはほぼ富士宮ルートと隣り合っているので、この分岐にたどり着いたということはお鉢をぐるっと一周回ったことになる。

御殿場口のルート脇には「頂上銀明館」という山小屋があるのだけど、休業中だった。

山頂泊の人は全登山者のうちどれくらいいるのだろうか?ゆっくり起床してご来光を楽しめる絶好の場所だけど、そのためには前日のうちに6時間くらいかけてここまでたどり着かないといけない。

さて御殿場口だけど、解説看板にはこう書いてあった。

御殿場口の誇る最大の特色は、下山道「砂はしり」です。箱根山・駿河湾を見おろしながら一歩3メートル余りで下る下山道は他の口では味わえない醍醐味が満喫できます。

ダイナミックだ。「1歩3メートル」歩けるって、日本だったら鳥取砂丘でもできるかどうか。

ちなみに、ここに書かれていることは紛らわしい。

一般的に「砂走り」と呼ばれている道は須走ルート(の下山ルート)にある。一方、御殿場ルート(の下山ルート)にあるのは「大砂走り」と呼ばれている。

富士山の東側は細かい火山灰で覆われた山肌が広がっていて、そのため砂の道をズサーと滑り降りることが可能になっているのだった。吉田ルート、富士宮ルートはゴツゴツした岩場のため、砂走りは存在しない。

ややこしいのが「須走(すばしり)ルート」に「砂走り(すなばしり)」があって、言葉が似ていることだ。えっと、御殿場ルートに砂走りってあったっけどうだっけ?とわけがわからなくなる。

いずれにせよ、かねがね噂には聞いていた大砂走りを今回少し体験できるのは楽しみだ。大砂走りの途中で僕らはルートから逸れ、宝永山経由で富士宮口五合目に向かってしまうけれど。

11:04
下山開始。富士山にある4つの登山口すべてがそうだけど、山頂直下の傾斜はきつい。

ゴロゴロした岩場で岩を避けつつ、下っていく。幸い、雨で滑りやすくなるタイプの岩ではないので、足を滑らせるという心配はない。でも、うっかり浮石を踏んでしまいガラッと地面が崩れる可能性があるので注意は必要。

11:43
今のうちにいしにアルパインポールの使い方を教えて、使ってもらった。本人はこんなものはいらない、とずいぶん抵抗したけれど。

こういう「難易度は低いけれど、ポールがあると便利」な場所で練習しておくと勘所がつかみやすい。僕がポールに頼りすぎて足を滑らせて捻挫した苗場山みたいな場所でいきなり実戦投入はやめておいたほうがいい。

12:01
ガスっている中、ジグザグにどんどん標高を下げていく。特に景色が見えるわけじゃないので、ただ黙々と歩いて行くだけだ。歩きやすい道でスピードが結構出るので、お互い横に並んでおしゃべりをしながらではなく、どんどんと進む。

すると、なにやら石垣が見えてきた。赤い石を積み上げて出来た、人工建造物だ。どうやら山小屋らしい。

あれ?こんなところに山小屋なんてあったっけ?地図には載っていないような気がする。

看板があった。「ここは八合目(標高3,400m)」で、その下には「見晴館」と書かれていた。ただし、家のアイコンのところにバッテン印がつけられ、「閉館中」となっていた。あ、そうだったのか。

この看板自体は最近のものではない。だから、今シーズンだけはちょっと都合が悪くて閉館、ということではなく、廃業または廃業に近い状態なのだろう。

富士山は国立公園だし世界文化遺産だ。今後新しく山小屋を建てるのは無理だろう。だから富士山に山小屋を構えている、ということはものすごい既得権益なのだけど、儲かるか儲からないか・営業が続けられるかどうかはまた別の話というわけだ。

登山者が増えすぎてオーバーユースが懸念されている富士山。でも、御殿場ルートのようなマイナー登山道だと山小屋が閉館している現状。

12:08
さらに下っていく。このあたりから御殿場ルートはゴロゴロした岩がなくなり、砂利っぽい道になってきた。

12:13
おっと、次の山小屋が見えてきた。あそこが「七合九尺」の地点だ。

八合目の山小屋の近くにもうひとつ山小屋があるものだから、片方の営業が続けられなかったのだろうか。

それにしてもこのあたりの地面は赤い。火星の地表のようだ。

12:16
おっ!ブルがこんなところで停まっている。

登山道がブル道と交差していた。あとでGoogleマップを確認していると、このブル道は「御殿場ルート専用」というわけではなく、八合目付近で富士宮ルートのブル道にも接続していた。

なんでこんなところにブルが乗り捨てられているのだろう?いや、乗り捨てられているんじゃない、すぐそばの山小屋に荷物を供給するために停車しているんだ。

12:16
というわけで、到着したのがここ。七合九尺「赤岩八合館」。

御殿場ルートは山小屋の数が少ないため、登りルートとしてここを使った場合、七合九尺以降は山頂まで何もない。大事な休憩ポイントだ。

12:17
標高3,290メートル。先程見た八合目見晴館から400メートルの距離。

もうちょっと山小屋の位置をバラせなかったのだろうか、とか、せめて9合目に山小屋があれば、とかいろいろ思うが、山小屋を建てるのに適した場所の問題とかいろいろ事情はあるのだろう。

12:18
トイレは1回300円。大でも小でも値段変わらず。

笑い話として、「便意をもよおしたので富士山でお金を払ってトイレの個室に入ったが、屁しか出てこなかったので腹が立った」というものがある。標高が上がると気圧が下がるため、おならも出やすくなる。それを便意と勘違いしてお金を払ってしまった人の悲哀だ。

今どきの富士山はバイオトイレが当たり前になっている。このため、トイレの背後に電柱が立っていて電線が張られている。もちろん下界から電気が届けられるなんてことはないので、自家発電だ。

バイオトイレなんて勝手に微生物がイイカンジに分解してくれるんでしょう?と思ってはいけない。まずそうするためには汚物を撹拌しないといけないし、微生物が気持ちよく活動できるように程よい温度にしなくちゃいけない。「標高が高いんで深夜は氷点下っす」なんて状態だと、微生物は働いてくれない。なので、かなり手間も電気も食うトイレだ。

12:19
値段表が山小屋の外に掲げられていた。一泊2食付で7,500円。山小屋価格としては良心的だ。北アルプス界隈だと1万円近くするけれど、意外や富士山は安い。その分、シンプルな料理提供に限定されるし、山小屋もシンプルではあるけれど。

それにしても「カレーお替り自由」というのが神々しいな。1回おかわりすると1,300円分食べた、ってことになるんだぜ?すごいよな。

一応記念撮影。

ときどきこうやって二人で撮影しておかないと、どんどん標高を下げてしまい気がついたら下山後、ということになってしまう。撮れるときに撮っておく。なにせ結婚を決めたばかりの相手との二人旅なんだし。

まさか僕が結婚できるとは思っていなかったし、その相手とこうやって登山が出来ているのも想定外だった。とても嬉しいことだ。「12歳も年下の人と結婚するなんて、羨ましい」などと年の差婚に目が行きがちだけど、それよりもこうやって一緒に行動できる相手だ、ということがいい。

(つづく)

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